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「痛い、痛いよ秋葉ちゃん」
「あ、ごめんなさい、つい」
「なんか怨念すら感じるよ、今のおまえさんの手つきは」
「うるさいわよ、蒼香。でもなんで羽居ばっかりこんなに大きいのよ。
 まさか男の人に揉まれてこんなに……」

 冗談めいてはいるが幾分かは真顔な遠野。

「そんな訳あるか」

 冗談めかした遠野の言葉に「俗説だろう、そんなもの」という意味のツッコ
ミを入れた。

「そうだよ。わたし初めての時からこれくらいあったもの」

 ……マジボケが入った。

「へえ、そうなんだ」

 遠野も機械的に頷く。
 あたしも一瞬言葉を消化できなかった。
 一瞬後に私と同時に驚愕の声を上げる。

「おい、羽居、おまえ」
「えっ、それって羽居、もう……?」

 羽居は自分が何を言ったのか理解していないのか、にこにことしている。
 
「だからね、そんな事される前から、胸はこれくらいだったし、だいたいわた
しそんなに大きくない……」

 わかってない。
 とは言ってもこんな事訊ねるのも……。
 そうあたしが躊躇っていると。

「羽居。もう初体験しているの?」

 遠野、おまえさん、それ、ストレートすぎる……。

「うん。あまり他の人に言ったら嫌だよー」
「ああ。それはまあ言わないけど」
「羽居、あなた恋人とかいないって、言ってなかった?」
「いないよ」
「じゃあ、誰と」

 さすがにちょっと口ごもりつつ羽居は答える。

「お兄さん」
「ええっ」

 その言葉の意味する処にあたしは少し引いた。
 お兄さんって……。

 対照的に身を乗り出す遠野。
 羽居の胸倉をつかまんばかりの勢い。
 どうしたんだ、こいつ。

「お兄さん? どういう事よ」

 あの羽居が少し怯えている。
 
「怖いよ、秋葉ちゃん」
「いいから答えなさい」
「あれ、おまえさん男の兄弟なんていたっけ?」
「だからね、本当のお兄さんじゃなくて、従兄弟のお兄さんなの」

 なるほどね。
 そして羽居は脱線しながらもそのお兄さんとやらのぷろふぃーると二人のえ
ぴそーどを語ってくれた。
 話が進むうちに顔を赤くするあたしと遠野。
 
「でね、親族会議であたしは浅上女学院に放り込まれてて、お兄さんは何処か
遠くの寄宿制の学校に入れられて連絡も取れないの」
「それは随分と大時代的な」
「それで、その人とはおしまい?」
「最後に会った時にね、あたしが卒業して、その時まだ恋人がいなくて俺の事
を忘れてなかったらって言ってくれたの。ずっと待ってるからって」

 はあ、と遠野とあたしは頷くしかない。

「そんな事があったとはまるで見えないな」

 まじまじと見つめる。
 でも良く考えるとそっち方面には興味が薄いあたしと、本命以外にまったく
目を向けていない遠野の方が奥手なのであって、羽居がそういう事をしてても
不思議ではない。
 正直、話すとくらくらするが、そういう処を含めて可愛いと思う男は多いだ
ろう、そう思う。

「そんな事より、わたしだけなんて不公平だよ。ええと、まずは蒼ちゃん。え
い」
「ちょっと待て、おい」
「うふふ、やめてあーげない。あ、秋葉ちゃんも手伝ってよ」
「な、なんだ遠野、おまえまで……、あああ」


           ◇     ◇     ◇


 ……てな陵辱を受けて体を汚されて快楽の奴隷にされてずるずると関係を深
めて。

 と、回想モードに入っていたら、羽居は羽居であたしを待っていないで一人
行動を進めていた。

「ちょっと待て、羽居」
「え、何? 蒼ちゃん」
「何をしようとしている」
「蒼ちゃんのここを舐めようとしてるんだよ」

 いつの間にか羽居はあたしの足の間にうずくまり、顔を股間に近づけていた。
 そう言いながら羽居は、あたしのあそこを指を走らせている。
 爪の先ほどがちゅぷと潜り隠れている。
 微かにそこはもう潤んでいる。

「今までそんな事した事ないだろう。こんな処、舐めるの変だろう」
「そんな事ないよ。それに指でもこれだけ気持ちいいんだから、舌だともっと
凄いんだよ」
「待てって」
「蒼ちゃん私に舐められるの嫌?」

 顔を上げて羽居が問う。
 なんでそんな可愛い顔をしているんだ。
 無碍に断れないような雰囲気を漂わせて……。
 駄目だ、駄目。流されるな。

「だって、こんな処……」
「綺麗だよ。それに舐めてもらうのも気持ちいいし、舐めるのも気持ちいいん
だよ。私も女の子とは初めてだけど……」
「遠野と一緒のときはこんな事しなかったじゃないか」
「だって他の人に見られるのは恥ずかしいもの」
「そうなのか?」
「うん。ええとね、蒼ちゃんにしてる時に秋葉ちゃんに見られるのは恥ずかし
いし、秋葉ちゃんにしてる時に蒼ちゃんに見られるのも嫌だから、それでしな
かったの。
 ほんとはね、蒼ちゃんにも、秋葉ちゃんにも、すごくね、こうしたかったの」

 止める間もなく羽居はあたしの中心へ顔を寄せる。
 息がかかるほど近い。
 そして……。

「あ、馬鹿、ああっ」

 え、な、何これ。
 指でされるのとまるで違う。
 ひゃん。
 こんな……。

 ぴちゃぴちゃという音がする。
 体を仰け反らせながらも羽居の頭を手で押しやろうとするが、意に介さない。
 舌が唇があたしの敏感な処を。

 もっと気持ちの悪いものだと思っていた。
 こんな処を、それも同性の少女に舐められるというのは。
 しかし、電撃のように走ったのは未知の快感だった。

 羽居を除けようとしていた手の力が弱まる。
 ぎゅっと羽居の頭を挟んでいた脚の力が抜ける。

 それに気がついたのか、舌の動きを止めて羽居が顔を上げた。

「どう、蒼ちゃん?
 嫌ならやめるよー」
「……」
「お返事がないよー」
「……」
「じゃ、やめちゃおうかなあ」
「…………続けてくれ」
「うん」

 また顔を埋める。
 素直に認める。
 気持ちいい。
 もし、中断されて「お願いしないとしてあげないよー」とか言われたら、躊
躇しつつも懇願してしまうかもしれない。
 子猫がミルクを舐めるようにぴちゃぴちゃと羽居の舌があたしのあそこを動
いている。
 あ、濡れてるんだ。
 いや、凄いことになってるっぽい。

 単調にただ舐めているのではなく、下の方をちろちろと小刻みに刺激したと
思うと、上をつんつんと突付いたり、唇で軽く噛んでみたり、その度にあたし
は抑え切れず声を洩らす。
 
「や、やだ。そこダメ、噛むなって、んんんん」

 唇の上の突起を包皮ごとかぷりと甘噛みされた。
 痛いくらいの刺激が全身を痺れさせる。

 耐え切れず軽くイった。
 ふっと宙を舞うような浮遊感。
 精神だけが軽くなったのか体は逆に強張っている。

「気持よかった?」
「ああ、凄かった」
「わたしも我慢できなくなっちゃった」

 うずくまっていた羽居が体を起こす。
 わたしも、って事はだ。
 お返しを要求されるのかな。
 あたしも羽居のを……、しなくちゃいけないのかな。

 これだけ熱心にしてもらってこっちは嫌だと拒否するのは不公平かもしれ
ないが、やっぱり女の子のあんな処を舐めるのは抵抗がある。

 でも強くねだられたら、お願いされたら、あたしはどうするだろう。
 いつもみたいに嫌なものは嫌ときっぱり拒絶できるだろうか。
 いや、嫌なのだろうか。
 羽居の事は嫌いじゃないけど、それだけにそんな事をしたらどっぷりと深み
にはまってしまうような気がして、それは少し怖い。

 気持ちの整理ができずにいると、羽居は別な動きを始めた。
 あたしの足を取ると自分の体を差し入れる。
 お互いに脚を交差して相手の間に入るというか挟むというか。 
 これは何と言ったっけ、この体位は。

「松葉崩しー」

 私の心の声が聞こえたかのように羽居が嬉しそうに宣言する。
 そうだ、それ。
 羽居も知っているのか、そんな言葉。

 その松葉崩しの体勢に移行する。
 羽居はゆっくりと動き始める。
 ああ、これも、気持ちいい。
 刺激自体はさっきの羽居の舌使いの方が上だけど、二人で女の子の大事な処
をこすり合わせて刺激しあうこの行為は、全身が痺れるように心地よい。
 どこかむず痒い感じ。
 気がつくと羽居だけでなく、あたしの方からも体を動かし刺激を求めていた。

 さっき軽く絶頂を迎えたから、すぐに高まっていく。

「蒼ちゃん、可愛い顔してる」
 
 かあっと顔が赤くなったのが自分でもわかる。
 そんなあたしを羽居はにこにことして見つめている。
 ……。
 いいや、羽居に見られるのなら構わない。
 恥かしいけど、恥かしくない。

「もっと、もう少しで……」
「うん、もっと可愛がってあげる」

 上半身を起こして唇を寄せる。
 あたしも体を動かし羽居に顔を向ける。
 ちゅっと唇が合わさり、そちらに気をとられた瞬間に羽居の手が二人の合わ
せ目に伸ばされた。
 指が、クリトリスを探り。優しく摘んだ。

「ああ、羽居、は、ね、い……」

 自分の体が実体を無くしたみたいに頼りない。
 目の前の羽居の体だけが確とした存在に見える。
 それにすがり、ぎゅっと抱き締めた。

「や……、とんでっちゃう、あたし、羽居お願い、放さないで」
「うん、大丈夫。つかまえててあげるから、とんじゃって」
「うん……、あぁぁぁんっっ、んんっ」

 白くなった。
 何もかも。
 あたしも、周りのもの全て。
 羽居ですら消えてしまった。

 でも、あたしをぎゅっと抱いてくれた手だけは確かだった。
 ・
 ・
 ・

                                      《つづく》