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 朝、目が覚めたら都古は寝室から消えていた。
 下半身にずり下がったパジャマを布団の下に隠していたが、不思議な寝相は
翡翠の眼に奇異には映っていたようだが、そのことも指摘せずに翡翠は黙々と
朝の支度を整えていた。

 なんとなく気まずいような気恥ずかしいような思いをしながら、志貴は朝食
のために一人廊下を歩いていた。昨夜に都古と関係してしまったことで、嬉し
いような気が重いような不思議な気分に襲われながら、緩み掛けた頬を時に抓っ
て歩いている。

 志貴がぼんやりと歩いていると、後ろから駆け足の足音がする。
 志貴が振り返る暇もなく――

「お兄ちゃん!」

 ごすっ!と言う音共に志貴は真ん前に吹っ飛んでいった。
 
「おはよう、志貴お兄ちゃん!」

 たたらを踏みながら姿勢を直す志貴は、なんとか振り返ってそこに都古を見
出す。
 中国風の半袖の上着とズボンの都古は、にぱっと笑いながら志貴に会釈をする。
妙に硬く挨拶を返す志貴は、その姿を見るとつい昨夜の痴態を思い出してしまう。

「おはよう、都古ちゃん……その」
「うん?」
「……まだ痛くない?」

 その言葉が発せられた瞬間、かぁぁぁ、と見る間に都古の顔が真っ赤になる。
 そしてそのまま、たっと脚が床を蹴って――

 ドス!

「ふぐぉ!」
「バカバカバカ!志貴お兄ちゃんったら何言うのよっ!」

 ドガシっ!
 バスッ!

「昨日あんなことしたのはお兄ちゃんなのにぃっ!」
「はふぁ!」
「それは……まだちょっと痛いけど……って何を言わせるのよ!」

 がすっ!

 四発目の肘突きで、志貴は口から血を引きながら飛んだ――様に見えた。
 そして肩ではぁはぁとする都古は、真っ赤な頬に顔を手を当てて独り言のよ
うに言う。

「……痛いって聞いてたし、我慢してたけど……今度は優しくして欲しいな」
「わかったよ、都古ちゃん……」
「へぇ、兄さん。何を優しくするんですか?」

 凛とした声が廊下の中に木霊し、都古も、志貴も声の方を振り返る。
 そこには、変ににやにや笑う琥珀を引き従えた秋葉が、腕組みをしながら端
然と構えている。

「おはようございます、兄さん、有間さん」
「お、おう、秋葉」
「お……おはようございます、秋葉お姉さん……」

 ぎこちない二人の朝の挨拶を聞いて、ぴくり、と秋葉は眉を動かす。
 秋葉のただならぬ気配を察して、志貴は知らずに冷や汗が流れる。都古も手
を後ろに組んで、まるで先生に怒られる子供のように緊張している。

 秋葉は怒っていませんよ、と言いたげににっこりと笑うが――眼が笑っていない。

「で、兄さん。痛いとか優しいとか気持ちいいとか、なんのことですか」
「秋葉さまー、気持ちいいとは言ってませんよー
 でも、志貴さまと都古ちゃん、年は違えども男の子と女の子、であればする
ことは一つ……ふぐっ!」

 秋葉の無拍子で肘を腹に食らって、琥珀はしゃがみ込む。
 いきなり秋葉の逆鱗に触れた琥珀がこれだから……志貴も都古も青くなる。

「お二人の口から……特に兄さんの口から伺いたいのですが?」
「…………」
「…………」

 ふるふると首を振ると、都古は志貴を救いを求める瞳で見つめる。
 そして志貴も似たような顔色であったが、やおら都古の腕を握ると――

「すまん、秋葉こればっかりは!」
「ごめんなさぁぁぁい!」

 脱兎の如く逃げ出す二人。
 そしてその後ろから、長い髪を逆立てんがばかりに憤激する秋葉の追撃。

「お待ちなさい!」
「そうは言われてもこればっかりはぁぁ!」
「ひゃーん、怖いよー志貴お兄ちゃんー」
「兄さんを兄さんと呼んでいいのは私だけです!!」

 どどどど、と足音もけたたましく始まる追いかけっこ。

 しゃがみ込んでいた琥珀は、すくっと立ち上がって埃を払う。
 遅れてその場にやって来た呆れ顔の翡翠に、にっこりと笑いながら一言。

「……面白いことは、たくさんあった方がいいじゃない。ねぇ翡翠ちゃん?」
「姉さん……それはあんまりなお言葉です……」

                           〈おしまい〉 

 

 

【あとがき】

 どうも、阿羅本です。

 月姫本編・歌月十夜にも登場しないけども名前は出ていて、おまけに蒼本などでも
存在が語られている妙に人気が高い有間都古ちゃんで18禁SSを書いてみました。
スペック情報は極小なので、殆ど阿羅本の想像だけでしたが、その……

 ……しょ、小学生を毒牙に掛ける志貴ちんが妙に楽しげに書けてしまって(笑)

 いや、あれです、ほんとーに小学生が大人とデきるのかどうかというのは私は知り
ませんが、その辺のことに詳しい方に聞くと「無理ではないが準備には時間が掛かる」
そーでして、振り返って自分のSSを見てみると志貴ちんは都古ちゃんを指で慣らし
てもないのに入れているので大変なことにならんかなーとか不安になってしまったり
したのですが、ソコはそれ。

 限りなくリアルに書くと、こう、「阿羅本さんはペド……」という有らぬ疑惑がッ(爆)

 でも、都古ちゃん、書いていて可愛かったですね。殆ど自分の妄想を鑑に写して
いたよーなものですからかわいいも何も、ですけども……いやぁ、目覚めちゃったら
どうしよう、という感じでした(笑)

 あと、都古ちゃんのロジックがちょっと黒桐鮮花になってしまったのは……ぬぅぅ、
コレくらいしか思いつけなかった自分が……未熟ですのう……

 こげなSSでございますが、お気に入り頂ければ有り難く存じます。
 皆様の感想も是非是非〜

 でわでわ!!