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/一子

酷く…ハイな気分だった。

酷く…背徳的な気分だった。

気がつけば私はほとんど飲んだことがない(有彦が飲む)ビールを五缶ほど潰していた。

目の前がくらくらする…
思考が単純化する。
体が意味のない熱を帯びる――。

結局…私は酒の力に頼らなければ…

「有間…」
「はい…?」

ガバッ!!

思考より早く体が先に動いた。
追いついた理性で確認すれば…私は。

――驚く有間志貴の唇とその口内を蹂躙していた…。

なにも出来ない女なのだ。

だから自分の心の弱さを隠すために……私は有間を犯す。

/志貴

「ん、…くっは、……くぅ……」

俺は突然のことにどうしていいか分からず目を白黒させるだけだった。

ただ恐ろしきはその行為が酷く俺の理性を溶かしていくこと――

恐い…このままいったら俺はどうなってしまうのか…

だから俺は彼女を引き離そうとする。

それは壊れれば何をするか分からない俺への恐怖。

だが固く組まれた両腕からは逃れられず遂には

どさっ……

俺はマウントポジションをとられてしまった。

「くっ…ぷ…はあ!!お、お姉さん!?ちょっと落ち着いて!!酔ってますね!?」
倒れた拍子に唇が離れやっと俺は解放された。
「……」
お姉さんは何も答えない
ただ目の色がさっきとは打って変わって

ギラギラと輝いていた。

「あり、ま…」
歯止めが利かなくなったのか、お姉さんは本能の趣くままに動き始めた…。

/一子

酷く狂暴な気分だった。

故に止まらなかった…

私の中では今、理性という名のブレーキのネジが全て外れてしまっていて、
全く歯止めが効かなくなっている。
だからこんな時に愛がどうとか甘ったるいことを考えている暇はないんだ。

私が唇を離すと私と志貴の唇から銀色の弦が伸びる。

「「は、はあ…はあ…はあ…」」
激しいキスに息を切らす。
お互い初めての行為だったのか、動けずにいた。

――どうしたらいい…私は?

「……軽蔑する?」
「え?」
それは何の考えもなしに投げかけた質問
「…ずっとあの馬鹿(有彦)の姉だと思ってた人にこんなことされて…有間は軽蔑する?」
言った後で後悔した…それはあまりにも残酷な問いかけ…
有間志貴はその答えを一つしか持たない。
……まったく酷い問いかけだ…有間が、ましてや…拒否の言葉なんて――
「しませんよ、そんなこと…」
予想通りの反応に私は乾いた笑みを零した。
「……」
突然、有間が動いた。
私を抱き寄せ耳を甘噛みする。

「あう…っ…!」

/志貴

「…ずっと親友のお姉さんだと思ってた人にこんなことされて…有間は軽蔑する?」

その一言で思考はもう完全にショートした。

お姉さん…いや一子さんが感情にまかせたのだ、俺もまかせればいい…

たとえそれが…一夜限りのものでも…

「!!うっ…!!」

突然のことに驚いたのか一子さんは口内への侵入を許してくれない。

ならば…

右腕で一子さんの胸を揉んでみる…。

「!!…ひゃうっ」
彼女の歯が開いた。
そこで一気に押し倒し、上下を入れ替えさせる。

ソファに流れる濡れた黒髪の美しさに見惚れる。

「う、…くあ…はぁ…」

奪うような口付け…

すでに心は反転していた。

二人の舌と唾液が交じり合い、理性はさらに混沌へ沈められていく――

一子さんの唇を奪いながら彼女の大きくも小さくもない胸をYシャツの下から弄る。


「う、……ああ…」

柔らかな胸の弾力を楽しみながら、俺は彼女のYシャツのボタンを外していった。
彼女の胸がさらけ出された時、一子さんはぼやくように言った
「……有間、あまり…見るな」
恥ずかしいのか顔を背ける一子さん。だが、その仕種は返って俺の劣情をヒー
トさせる――

「……」

無言で一子さんの乳首を口に含む
「!!……ああ、馬鹿、何を…くぅ…」

吸い、噛み、舐め、弄ぶ…

乳首は数秒で立ち上がる。

俺はそれを見て、信じられないが…微かに黒い笑みを浮かべていた。

/一子

――目の前にいるこの少年は誰?

――私の体を舐め尽くすこの少年は誰?

――暗い笑みを浮かべ私を見ているのは誰?

――――恐怖――――。

初めて有間という少年の心を垣間見た気がした。

有間の闇は私が思っていた以上に深く、広いのではないか?

―ひょっとして私は有間の触れてはならないものに触れたのでは?―

私は犯しているのではなく、犯されている?

「一子さん―――」

私の名を呼ぶ有間。しかしその声は、その呼び方は初めて聞くもので……全く
の別人のような気がした。

今の有間は有間じゃない――

抵抗しようともがく。
しかし私の両肩にかけられた力は信じられないほど強かった。

「――いいですね」

有間の手が両肩から離れ、下着に手が伸びていた。
自由になったのに、動けるのに有間の瞳がそれを赦さなかった。
「あ、あり…」
抵抗もままならず簡単に下着は脱がされた。

――露になる私の裸体――

/志貴

――美しかった…

上はボタンが外れたYシャツ一枚――

――形の崩れない綺麗な、端整な胸

そして無駄がない白く、艶かしい生足――

我慢できなかった。

やり方?やり方は……

俺はズボンを脱ぎトランクスも脱ぐ。

俺もまた……

ズベテヲサラケダス

彼女の足の間に入り、股に両手を添え、力強く、一直線に一子さんを貫いた。

「ああああ……!!」

何の前準備もないのに一子さんのそれはすんなりと、滑るように、俺を受け入れた。

メリメリ……

じゅるり……

「あ、ああ……くぅっ……」
顔を紅潮させ、喘ぐ一子さん。

「あ、…ああ…」
聞こえるのは、一子さんの痛みに耐えているのか快楽に身を震わせているのか
分からない喘ぎ声と

―処女を破る音―

/一子

小さい頃から私は女らしくしろだのなんだの言われてきた。
近所の同級生(男)とガチンコしたこともある。

私が中学二年に上がった時。親が事故で死に、あの馬鹿(有彦)と二人で暮ら
すことにになった時。

私の心は潰れそうなほど苦しかった。

だが葬式の時、あの馬鹿(有彦)は泣かなかった。

まだ十歳にも満たない甘ったれたガキが…だ。
ただじっと…床の一点を見つめていた。


弟が泣かないのに姉の私が泣くわけにはいかない…

だから泣かないあいつを見て私は強くあろうと思った。

しかし、今はどうだろうか…

「あうっ…く……あっ、あっ……」

有間に貫かれ、私は嬌声を上げ悦んでいる。

四年間築き上げた私が崩れていく。

初めての痛みが涙となり頬をなぞる。
有間が動くたびに私の喉からはいやらしい、淫猥な声が出る。

「一子、さん…」

有間の腰の律動はどんどんと早まっていく。

ぐちゅぐちゅぐちゅ……

淫らな音がリビングに響く

「あっ、あっ、あっあっ、あっ…あっ…くっぅ……」

「だ、だめだ俺……も、もう……!!」

有間のピストンがトップスピードに入った。

信じられない速さで私の中を出入りしていく…

それは本当に初体験の者同士ができるものなのだろうか?

「くっ……あ、ああぁ……!!」

どぴゅ……

白い液体が勢いよく私の白いYシャツにかかった。

それは生臭く、生温かい…

「はあ…はあ…」

有間は暫く荒い息をついて私の体の上に覆い被さった。
「ありま……」
耳元で私は囁く
「……なんですか?」
有間が顔を寄せる。
そのスキを逃さず呼吸を整えようとしている有間のうなじに私は被り付いた。

/志貴


「!?……いちこさ……」

どさっ!!

射精後で力の入らない俺は一子さんの突然の行動に対処できなかった。

すると、一子さんが俺の上に来るわけで…

「……自分だけ愉しむなんてことはないよな?」

妖艶な嗤みを浮かべる彼女…

それは映画とかに出てくる悪女のそれに似ていた。

――今度は一子さんが攻める番

一子さんは俺の昔の傷痕をなぞる
その姿は何故か俺の目にはすごくいやらしく見えた。

「――有間、今夜は寝かせないぞ」

そう言う一子さんの顔は哀しそうだが…ひどく嬉しそうな顔をしていた。

一夜限りの情事はまだ終らない

/一子

私が攻め有間が受け

有間が攻め私が受け

これは延々と二日目の夜まで続けられた。

ソファのシーツについた私の純潔の証の血や有間の何回外に出したか分からな
い精液をほったらかしにして

有間との情事にふける――

昼も夜も……飽きることなくだらりとした性活は続いた。
疲れて寝て、起きては体を重ねる。
バイトも休んで…
学校も行かず…
有間の家にも連絡せず…

唯、求めるままに……

そこに愛をこじつけることは出来ない。
愛をこじ入れる空間はこの二人には…ない。
それはつまり…

トゥルルルルルル………

/志貴

トゥルルルルルル………

三日目の早朝――
電話のコール音とともに俺と一子さんは目が覚めた。

それは…俺と一子さんの情事の終りを告げる合図だった。

「……乾です」

シーツで裸身を隠し、一子さんは電話に出る。
おそらく、有彦からの電話だろう。
「……いちいち連絡するな…こんな時間に…気持ちよく寝ていたのに…ああ、
分かった。じゃあな」
おそらく、相手は有彦からの電話だろう。
一方的に電話を切ると彼女は俺に視線を送る。それはなんて哀しい瞳だったこ
とか――

「……一子さん、最後に聞いていい?」
それは暗黙の内に二人が決めたルール
「なんだ?」                      SEX
ここに戻るべき者が戻ってくるまでの長いようで短い「Show Time」
「俺のこと…愛している?」

愚問――

と一子さんは聞き返す

「ならお前は――私を愛しているか?」

答えられなかった…愛しているかなんて言葉は俺には浮かばない。
だから俺は彼女から目をそらす。

そんな俺を見て「だろうな…」と呟き彼女は俺に背を向けた。

それきり、俺と一子さんはそれ以上語ることなく終った。

黎明がそこまで来ていた。




エピローグ/一子

高校を卒業した日、私はその足で美容院に向かい自慢の髪の毛を黒から赤に染
めてもらった。

そしてその帰りがけ、コンビニに立ちより、初めてタバコを買った。

――さすがに初めての紫煙とその苦さに私はむせた。

私は未だに有間のことは有間と呼び続けている…
あいつはあいつで多少ニュアンスを変えて「いちごさん」と呼ぶようになった。

私と有間の関係はアレで終った。

それでもせめてもの救いは…あんな情事があった後も私と有間の関係が以前の
それと変わらなかったこと

感情に身を任せた一夜限りの情事が愛に結びつく道理はない。
だから、有間を愛せないなら今までの自分のスタンスを壊してしまおう。

髪を赤く染めたのはあいつだけの私に別れを告げるため…

タバコを吸うのは新しく強い自分の虚像を作り出すために新しいスタンスが必要
だったから。

/志貴

夕方、公園でイチゴさんに会った。
本当に唯の偶然に。

そのイチゴさんは髪は真っ赤で咥えタバコで噴水近くのベンチに腰掛けている。

――こちらには気がついていない

有彦の言ったことは本当だった。
髪の毛を染め、タバコを口にし、以前より強暴、グータラぶりを発揮しているらしい。

――多分、あの夜が原因。

今更ながらに俺が処女を貫いた時、一子さんが流した一筋の涙を思い出す。

「あの時俺は何をやったんだろう?」

わからない、どうして彼女は変わってしまったんだ…?
どうしてあんなDryな雰囲気を纏うんだ…。
ねぇ…なんでなの一子さん?

――教えてよ…――

気がつけば体は彼女に背を向け歩き始めていた。

どうして…どうして…

何も分からないまま俺は彼女に背を向けた。
頬に何か熱いモノが流れた気がした。

FIN……?



あとがき/こんなSS、修正してやるぅぅぅ!!スペシャルゥゥゥ!!
……局部を修正してみました。このSSは誤字脱字が多いのになんで
しにをさんへ寄贈した「酒の上の不埒?」は少ないの?
正直に申しますと

「スイコをしている暇はない」

と勝手に勘違いしていました。スンマセン(汗)

それでラストなんですが書き直しました。
そんな志貴はカンがよろしくない(絶対)
もしそうなら志貴君は「色欲魔」の称号を手にしているはずです。
というわけでただでさえ後味の悪いSSをさらに悪くしてみました。(爆)
だから…続編を今書いてみたり…(謎)
果たして日の目は見れるのか?

それでは!!

戦闘BGM「NIGHT OF FIRE」