[an error occurred while processing this directive]

 
「ああ、志貴さんがいっぱい、私の中……。凄く熱い」
 感極まったように晶が言う。
「アキラちゃんの中こそ熱いよ」


 さっきとはだいぶ違う。
 肉体的な快感とは別に、アキラちゃんも喜んでいるという事実が暖かい幸せ
を志貴の胸を満たす。

「やっと志貴さんと一つになれた気がします」
 同じ様な事を考えていたのか、晶が呟く。

「そうだね。こうしているとそのままどろどろに融けて本当に一つになっちゃ
いそうだ」
「融かしてあげますね」

 悪戯っぽく言うと晶は動き始めた。
 志貴の腰に跨ったまま体を揺すり始める。
 しばらくそうして感触を味わってから、晶は上半身を倒した。
 志貴の胸に手を置いて支えとすると、腰を上下の動きに転じる。
 軽々と体を動かし、そのリズミカルな腰の動きが志貴の性感を高めていく。
 志貴はただ、晶の動きを受け入れていた。
 じっとしていないと、すぐに限界を迎えそうだった。
 二度目だと言うのに、あまりに受ける快感が強すぎる。

「志貴さん、気持ち良いですか?」
 顔を間近に近づけて晶が問う。

「お願い、アキラちゃん、もう少しゆっくりにして。すぐに出ちゃいそうだよ」
「構いませんよ。いつでも気持ち良くなっちゃって下さい」
「ああ……」

 むしろスピードアップしてしまう。
 志貴にしてみれば、さっきも自分だけ絶頂を迎えた訳だし、一方的に手も無
くイカせられてしまうのも男の沽券に関わる様な気がする。
 もしかしてアキラちゃんて男の人に奉仕するのは慣れてても、一緒に絶頂迎
えたりとかはあまり意識にないのかなあ。

 それはいけないよなあ。

 そう思って目の前で魅惑的にふるふると動いている胸に手を伸ばす。
 自分の気を逸らし、晶の動きを少しでも牽制する為に。
 悲しいかな揺れるほどの大きさはないけど、手のひらにすっぽりと収まる大
きさもまた可愛い。少なくとも胸ってわかる程度にはあるものな。
 そんな事を思うと少しだけ気がまぎれる。
 指の間につんと突き出したピンクの突起を挟んで晶の動きにあわせてむにゅ
むにゅともみほぐす。
 やっぱり芯があるというか柔らかいけど硬い感触。

「ああ、志貴さん。だめ」
「何がだめなのかな」
 言いながら乳首をきゅっときつめに締めつける。

「うんん。そんな事されたら動けません」
「だって、俺一人で楽しんでるんじゃ申し訳なくて。気にしないで続けてよ」

 素直に従いかけるが、志貴が都度乳首に刺激を与える為、動きがぎこちなくなる。

「志貴さん。胸は止めて下さい。こんな事されたら……」
「そうか。わかったよ」

 素直に志貴は手を離す。
 ほっとした様に晶は腰を動かしかけ、今までより悲鳴をあげてのけぞる。

「やだ、何をやってるんですか。だめ、そんな処……」
「胸はダメだって言うからさ」
「そんな処触らないで下さい。やだ指入れちゃ、ダメ……」
「危ないよ、晶ちゃん、体勢崩すと」
「お願い、志貴さん、止めて下さい」
「だって、ここはこーいう事にも使えるってアキラちゃんよーく知ってるでし
ょ。それとも男と女は違うって言うのかな?」
「それは……、でも変です」

 晶の胸から追い出された志貴の手は、今度は反対側に向かっていた。
 腰の方から背後へ回り、小さな晶のお尻に辿り着き、さらに二つの丘陵の奥
を探る。晶の秘めやかな場所へ。
 ある意味、性器以上に見られる事を拒む器官、すなわちお尻の穴に。
 少し盛り上がった辺りを弄り、窄まりに爪先をつぷと挿し入れる。
 そのまま内周をぐりぐりと軽く抉られ、その刺激にひくひくと周辺の筋肉が
痙攣したかのように蠢動する。

「なんでこんな事するんです」
「アキラちゃんが自分だけ楽しんでいたから、お仕置きだよ」
「えっ、自分だけって、だって私……」

 心外そうな晶の顔に一瞬くすりと笑ってから、ようやく後ろを責めていた手を戻す。
 そして志貴は真面目くさって言った。

「ええとねアキラちゃん、こういう事はね、お互いに気持ち良くならないとい
けないと思うんだ。
 相手の事考えずに自分だけ気持ち良くなればいいやってのと、相手の意思も
無視して一方的にしてあげるだけってのは、逆向きだけど同じ事だと思うよ。
 俺はアキラちゃんに気持ち良くして貰って嬉しいけど、同じだけアキラちゃ
んにも気持ち良くなって欲しい」
「はい」
「もう少しゆっくりとしてくれるかな。それにこんな幸せな瞬間はすぐに消え
て欲しくないから」

 納得した顔でアキラは頷くとまた腰を動かし始める。
 先ほどまでの激しい動きは抑えられ、幾分ゆっくりと優雅に晶の体が律動を続ける。

「気持ち良いよ、アキラちゃん……」
 心から満足そうに志貴が声を洩らす。
「嬉しい……」
「お返し」

 志貴は晶の腰の辺りを両手の四本指で支えて、残った親指を二人が繋がる合
わせ目へ伸ばした。
 白くなった愛液を指で広げるように陰唇の端を擦ったり、包皮からはちきれ
そうな肉芽を強すぎない様にしながら指の先でくりくりと刺激する。
 晶も快感に顔を歪めつつも、異を唱えない。
 
 そうして二人で高みへと近づいていく。
 このまま……、とその時。
 突然、晶が目を大きく見開いた。

「あ、志貴さん。あの……」
「どうしたの、晶ちゃん」

 晶の様子に志貴も動きを止める。
 身を離しかけて晶はためらう。
 せっかく志貴とここまで登りつめたのにと。
 もう少し、ぎりぎりまで我慢しよう。
 それに自分の体も快感を中断させられて文句を言っている。
 晶は何かを推し量る様にじっとして、ちらと志貴の顔を見る。

「何でもないです。ごめんなさい、続けますね」

 再び晶は動き出す。
 しかし動きに幾分かのぎこちなさが混じっている。
 そして何かに耐えるような顔。
 
「大丈夫なの、アキラちゃん」
「大丈夫です。志貴さん、もう少しですよね?」
「うん、もう限界近い……」

 晶は微笑むと、動きを速める。
 その晶の態度に違和感はあったが、志貴はたちまち快美感に満たされる。
 ぐいぐいと引き返せない領域へ上昇していく。

「ああ、やっぱりだめ。もう、もたない……」
 何かに耐えるように身を震わせる。
「もう動けない。志貴さん、ごめんなさい」
 そう言って立ち上がろうとする晶の腰をがっしりと志貴は掴む。
「アキラちゃん、俺もう限界で……。こんな処でやめられたらおかしくなっちゃう」
 志貴はアキラの体を押さえると、下から突き始めた。
 晶は抗う素振りを見せたが、志貴の手を払う事が出来なかった。 

「ごめんね、アキラちゃん。よくわからないけど、あと少しだけ我慢して」

 志貴の懇願に頷き、晶も体を揺する動きを強くする。
 不安定な体勢で完全に上半身を前に倒し、胸を志貴のそれに擦り付ける。
 晶の体もまたひくつき、顔が何かに耐える様に切なげな表情を浮かべている。
 志貴を呑み込んだ膣内がぎゅっぎゅっとさっきまでと違う収縮を起こす。

 あ、もう限界だ。
 志貴は抗わずに従った。
 腰全体にむずむずとした痺れが走る。
 じゃあ最後にせめてアキラちゃんを少しでも。
 堰を切って晶の中に果てる前にと、何度も強く腰を打ち付ける。

「ひあ、ああっ、志貴さん。凄い。私……」

 ぎゅっと足を掴んで出来るだけ奥へと志貴は突っ込んだ。
 それに応える様に晶の全ての肉壁と襞とがぎゅっと志貴に絡み、これまで以
上の締めつけをもたらす。
 それで堰が切って落とされた。
 晶の体の奥へ向けて迸らせる。
 下半身ごと爆発した様な愉悦の極みの中、晶もまた感極まって叫んでいるの
を、志貴はどこか別世界の事のように聞いていた。





 束の間意識が飛んだだろうか。
 まだ繋がったままで、志貴は脱力して余韻に浸っていた。
 本当に融ける様な気持よさだった。
 腰の辺りが、晶と触れている処が暖かい。

「アキラちゃん、よかったよ。こんなの初めてだよ」
「……」
「アキラちゃん?」
「……志貴さんの馬鹿」

 思いもよらぬ言葉に愉悦の余韻が覚める。
 愕然として晶を見ると、一緒に高みへ到った筈の少女は泣き顔だった。

「え、あの、アキラちゃん? どうし……」
「志貴さんの馬鹿」

 また言われた。
 志貴は慌てて身を起こそうとした。

 びちゃ。
 
 何やら水音がした。
 何かこぼれている様な。
 驚いて志貴が目を向けると、お腹がびちゃびちゃに濡れている。

 ええっ、これ何?
 何かこぼしたっけ。
 お腹だけでなく、胸も腰も足の方も、周りの毛布も濡れている。
 冷水ではない、どこか生暖かい。

 指でこすって間近に見る。 
 この独特の匂い。
 もしかして……。
 志貴が舌を伸ばしかけた処で晶に止められる。

「だめ、そんな舐めちゃ汚いです」
 がっしりと手を押さえられる。
 あ、やっぱり、そうなのか。

「あの、アキラちゃん、これって……」
「志貴さんの馬鹿」
「ええと、女の人で感じすぎちゃうとこうなっちゃう人いるそうだよ……、お
もらし」

 その一言が駄目押しになったのか、晶の目からぼろぼろと涙がこぼれる。
 しきりに志貴を馬鹿馬鹿と責めながらわあわあと泣き出してしまう。
 志貴は必死に晶をなだめる。

「ごめん、アキラちゃん、ごめん。俺が悪かったから。ね、泣き止んでよ……」

 功を奏したのか、テンションが弱くなる。
 志貴がほっと仕掛けた時、スイッチを切り替えた様にまた泣き始める。
 志貴への非難が止まり、今度は別な言葉を繰り返す。
 
「嫌われちゃう。こんな恥かしい事して。志貴さんの上でおもらしして、やだ、
嫌われちゃうよう……」
「ああ、泣かないで、アキラちゃん。嫌いになんかならないから。体冷やした
り変な処いじって刺激したからだろ。俺は全然気にしないから」
「ほ……、ほ、ん……とですか……」
「本当。拭けばどうって事ないから。ね、泣かないで。本当にどうって事ない
から、ね」
「……すん、はい」
 
 ようやく鼻をすんすんする程度に収まった晶の頭を、志貴は優しくぽんぽんと叩く。
 晶も身をすり寄せた。

「絶頂を迎えてああなるのは、そんなに変な事じゃないから。晶ちゃんも気持
良くなったんでしょ?」
「……はい。体がどこか飛んでっちゃうかと思いました」

 ああ、まだぴくぴく動いてる。アキラちゃんの中……。

「ちゃんと拭いてきれいにしようか」

 晶ははいと答えて膝を立てた。
 じゅぽっという音と共に、志貴の肉棒が晶の狭道から抜け出る。
 先ほど放ったものも大分残っていたのだろう。
 どろりとした志貴と晶の性交の名残りがこぼれ落ちる。
 ぽとぽとと滴り落ち、太股にぬめりながら伝う様に、二人の視線が集まる。

「やだ、恥かしい」
「ああ、我ながら凄くいっぱい出したなあ」

 愛し合って結ばれている以上、誰にも文句も言わせないとは思う。
 だが、まだ幼いと言ってもよい秘裂からとろとろと己が放った精液が滴り落
ちる様は、やはり幾ばくかの罪悪感を志貴に感じさせた。
 同時に、その光景にすぐまた体を求め貪りたくなる様な、脳髄が麻痺する興奮を。
 さっきと違い、今は後悔はなかった。
 うん、後悔なんかしない。
 志貴が己の感情の始末をつけている間に、晶がタオルで志貴と自分の混じっ
たどろどろの粘液と、おもらしの滴りを拭き清める。
 改めて自分が引き起こした惨状に泣きそうな顔をする。

「うう、志貴さん酷いです。止めてって言ったのに……」
「ごめん、アキラちゃんがあまりに気持良すぎて」
「さっきは自分だけ気持ち良くなっちゃダメとか言ってたのに……」
「本当にごめん。怒ってる?」
「怒ってません。でも、ちょっとだけ怒ってます」
「今の分、もう一回アキラちゃんを喜ばせたら許して貰えるかな?」
「えっ。…………はい」


 
                §     §     §



 そしてまた数刻後。
 疲れ果てた志貴と、満ち足りた笑顔の晶が体を重ねる様にして毛布に包まっ
て横になっていた。
「もうこれで思い残す事はありません」
「縁起でも無い事言うんじゃないの」
「はい……」
「大丈夫だよ。もっと切羽詰まった目にあった事もあるし。とりあえずこうな
ったら、助けを呼ぶよ」
「助け、ですか? でも……」
「まあ警察とかに駆け込んでも相手にされないだろうし、今は逆に普通の見方
すればこちらの方が悪者だろうから近寄れないね。
 でも、こんな常識外れの事を当たり前と思って力を貸してくれる人もいるんだよ」

 それも一個部隊相手に出来る人がねと一人呟く。
 死徒相手じゃないけど手を貸してくれる……、と思う。
 
「志貴さんを信じます」
「うん。だから今は休んでおこう」
「はい」



 
 
 志貴の横で晶は寝息をたてていた。
 昨日部屋で見た時の、悪夢を見ているような陰は無い。
 安らかな寝顔。
 ぷにぷにと頬を突付いてみる。
 可愛いなと思う。
 とてもこの寝顔からは、さっきの妖艶な姿は連想できない。

 守らないとな、アキラちゃんを。何があっても……。
 そう新たに決意すると不思議と胸の不安が消えていった。
 これからどうしよう、どうやってシエル先輩と連絡を取ろうか、等といろい
ろと思案して寝られなかったが、心地よい睡魔がやって来た。
 いいや、今はアキラちゃんと一緒に寝ておこう、そう志貴は思った。
 欠伸をして志貴は目を閉じる。
 久しぶりに平穏な眠りにつけそうだった。


 いまだ星一つ見えぬ曇雲が空に広がっていたが、いつの間にか小屋に吹き付
けていた風は収まり、穏やかな夜に変わっていた。
 
 さらなる試練の前のささやかな二人の平穏を守るが如く。


  ⇒ To be continued CHAPTER3-5

 

※補項※
 本作品はWeb上で不定期連載している『月姫』のアナザーストーリー、
『カサンドラの微笑』の1シーンを抜き出して大幅に膨らませたものです。
冒頭の粗筋で最低限の状況説明はしましたが、恐らくよくわからないと思います。
 でも本編で十数行でさらりと流した晶ちゃんと志貴の初えっちシーン(18
禁ではないので……)をきちんと描きたいなあと思って独立させて書いたもの
ですので、くどくどと説明パートから入るのも冗長かな、と割り切って取っ払
いました。
 出来れば本編を読んで頂ければ幸いです。
 全六章での完結を予定しており、「予兆」「過去」「慟哭」「閃光」の四章
までが終了、現在は第五章「汚名」の途中まで公開しています。
「それ、晶ちゃんと違う」と厳しい意見が多いですけど……。趣味爆発で暗め
のお話ですしね。でも頑張って書いてます。









―――あとがき

 ……なんてね。
 嘘ですよ。そんな長編アナザーストーリーは存在しませんよ、念の為。こう
いう虚構を実在として扱うのが好きなもので。

 晶ちゃんで書きたいシチュエーションとか台詞・シーンは断片的に浮かんだ
のですが、悲しいかなあまりに彼女のバックボーンとなる物語が少なくて、ど
うしても形になってくれませんでした。脇役としては良いのだけど、メインと
いうか志貴とそうした行為に到るのは無理があると言うか。
 じゃあ、自分で創ればいいんだと考えて脳内妄想機関発動。
 前にBBSで晶ちゃんはお赤飯前という話題があってそれが強固に頭に刷り
込まれていたのでその設定採用、さらに個人的な趣味で非処女。
 ……この時点で「不許可」と親指を下に向ける方多そうですが、あくまで俺
妄想ですので悪しからず。

 よくわからない作品ですが少しでも気に入っていただけ……、どうなんだろう?

  by しにを  (2002/2/21)