Answer


 体はとっくに壊れている。
 倒れないのは、体が剣で出来ているから。
 剣で出来た体は、生きていると言えるのだろうか。
 でも、動いているのだから、生きているのだろう。
 生きていないと、約束が果たせない。

 魔力はとっくに尽きている。
 剣製ができるのは、魂を削っているから。
 魂を削りきって、生きていると言えるのだろうか。
 でも、この剣を作らないと、彼女を救えない。
 彼女を救えないと、約束が果たせない。

 剣はとっくに出来ている。
 使えないのは、力が尽きているから。
 自分の力が尽きていても、この世のには沢山の、夢を織る機械がある。
 だから、あとは願うだけ。
 でも、それを願うと、約束が果たせない。

 なぜ、こうなったんだろう。
 まぁ、仕方が無い。
 せめて、彼女を救おう。
 約束は果たせないけど、目的は果たせる。

 不意に、右手に痛みが走った。
 それは、最後の魔術。
 小さなペンダントに残された、一欠片の魔力。
 忘れていたことを思い出させる、小さな奇跡。

 思い出したのは、彼女の名前。
 この剣の、本当の持ち主の名前。
 それは、とても虫の良すぎる願いだけど。
 彼女のためになら、他の全てを、何度でも踏み躙る覚悟は決めてある。
 だから、こう願おう。

 「力を貸してくれ、セイバー」

                                       《fin》



 

 

 

 

 

 

 

  Notes


 桜シナリオのノーマルエンドとトゥルーエンドの差分を取ってグッドエンド
にしてみた話です。

 桜の行っているセイバー・バーサーカーの使役は、再召喚でないと道理が通
らないので、聖杯を扱えれば再召喚可能と解釈しました。ただし、桜にルール
ブレイカーを使うと、桜という聖杯を失った英霊の人格は門の向こうに帰って
しまって、今次聖杯戦争での再召喚は不可能になると思われます。そこで、意
味深に壊れるアゾット剣を利用しました。アイテム持ち逃げはアーチャーのペ
ンダントのネタがあるので、出来ると想定しました。
 アヴァロンの加護は治癒ではなく不死(不滅)としました。よって肉片から
でも再生可能と想定しました。もっとも、壊れているだけでまだ死んでいない
ので治癒(復元)でもセーフでしょう。でないと他シナリオで受けている大ダ
メージから復帰できないので。
 魂の再生はアヴァロンか聖杯か、どちらとでも取れますが、アヴァロンを不
死とした場合、魂も含まなければ不死とは言えないだろう、と思います。
 トゥルーではペンダントを使った水中での腕の振り上げは、左腕と限定した
のが仕掛けです。令呪のサーヴァント共鳴を想定していますが、アーチャーの
御節介という解釈もアリです。
 セイバーの現界における魔力供給は、桜という供給源から士郎という仲介者
を通して供給する。ライダーへのフォローも同じ。その指導は凛が体得させ、
ついでに予備供給源になる、イリヤも聖杯ということで予備供給源になる、と
いう手段を想定していました。が、その辺へ言及したところ凛が暴走し始めて、
まとまりがつかなくなったのでカットしました。士郎が独力でセイバーを養え
るようになるのかもしれませんが、その日はまだ遠そうですし、ハーレム状態
は避けられないだろうと思います。その辺を含めての士郎の甘やかな煉獄だっ
たのですが。

 仕込みネタは以上です