「さて、これからがお仕置きの本番ですよ、秋葉さま」
吊されることから解放はされたが、未だに上半身を絹縄で緊縛されたままの
秋葉は、為すがままに琥珀の手によって四つん這いの格好にさせられていた。
襦袢は腰までたくし上げられ、無防備な秋葉の下半身が余すところ無く晒される。
志貴は、秋葉の姿を後ろから含み笑いをして眺めていた。あの気高いお嬢様
である秋葉が、目の前でお尻の穴までを自分に晒している事を見るのは、心の
中をくすぐられるような快感を覚えることであった。
秋葉のお尻はつんとつり上がるような形の良さであったが、四つん這いの格
好では容易にお尻の穴までが見えてしまう。先ほどの陵辱でまだ濡れたままの
秘所と相まって、いやらしくも淫らな光景を見せつけている。
志貴と琥珀によってイかされてしまった秋葉は、冷たい床に顔を着けて荒い
息を吐いている。そして、自らの恥ずかしい格好を見られているのを興奮する
かのように。
「……お仕置きか。次はどうするんだ?琥珀」
琥珀はテーブルの上で、ビーカーに何かを混ぜていた。先ほど空けたブラン
デーをビーカーの中に測りながら入れ、一緒に置いてあってボトルの水を入れ
て薄めていく。水割りにしては味気がない入れ物だな、とそれを眺める志貴は
思っていたが、やがて次に琥珀が手にしたモノを見て得心する。
琥珀が手に取ったのは、ガラスの浣腸器であった。半リットルほど入る浣腸
器のノズルとビーカーに差し込むと、その中身の液体を吸い上げていく。
やがて、浣腸器を満たすと琥珀は吸い上げる手を止め、脚を剥き出しの秋葉
の腰の方に向ける。
「お仕置きはですね、秋葉さま……志貴さまの前で、排泄してもらいますね」
「え……な、何を言っているの?琥珀」
秋葉が琥珀の謎の宣告を耳にし、秋葉は驚いて声を上げる。志貴も、琥珀の
宣告に驚きはしたものの、手にしている浣腸器を目にしている以上意外の念は
ない。
しかし、目隠しをされたままで床の上で四つん這いにさせられている秋葉に
とっては、この宣告は不意打ちを受けたに等しい。秋葉は、震える語尾で琥珀
に問いかける。
「嘘、嘘よね……琥珀?」
「いいえ、残念ながら。志貴さまの前で、大きい方をして貰うんです」
「そ……そんなこと、兄さんの前では出来ませんっ!」
すでに下半身を剥き出しにし、陰部と肛門を晒すのみではなく、先ほどは二
人の手によってイかされた秋葉であったが、さすがに目の前で排泄行為鵜を強
いられると言うのは、彼女の人間としての誇りが許さないものであった。
だが、そんななけなしのブライドの発露を琥珀は嘲弄する。
「もちろん、何にもしないで秋葉さまがしていただけるとは思っていません。
ですから……これを入れるんですねー」
琥珀はさも嬉しそうに薄く色の付いた液体の入った浣腸器を掲げてみせるが、
もちろん目隠しをされたままの秋葉にはそれが見えない。ただ、琥珀の自信に
あふれた言葉を前に、恐怖に震えるのが精一杯であった。
「さ、志貴さま。秋葉さまのお尻を開いてください」
そう言われて志貴が腰を上げ、秋葉の腰を跨ぐようにして立つ。そして、秋
葉の薄いお尻に手を置くと、むに、と両側に押し広げる。
腰を持ち上げる格好のまま、肛門を晒される……秋葉は屈辱にまみれる。
「いや、やめて、兄さん……そんな、恥ずかしい格好を……」
「ふーん、秋葉のお尻の穴も綺麗なモノだね。ほら」
志貴は感心したように言うと、秋葉のすぼまったお尻の穴にちょん、と指を
触れる。
その瞬間に、秋葉は背をびくんと反らせて身を捩った。自分の体の中の一番
奥にある器官を嬲られ、指で志貴がぐりぐりとマッサージをし始めると、それ
に従って秋葉の声もリズムをつけるようにある時は上がり、ある時は下がって
いく。
「に、兄さん……そんな……汚いのに……」
「いえいえ、これは序の口ですね、秋葉さま……それでは」
浣腸器を持つ手を秋葉の腰に近づけて琥珀はそう言う。
志貴の指が外れた秋葉の肛門は、刺激に寄ってひくひくと震えている。琥珀
は秋葉の肛門を撫でると、浣腸器を志貴に渡して袂から何かを取り出した。
たっぷり中身の入った浣腸を受け取る志貴の目の前で、琥珀は小さな容器を
取り出し、その中の透明なワセリンを指に取り、秋葉の肛門に塗りつける。そ
して、志貴の手から浣腸器を返して貰うと、その嘴口を秋葉の肛門に宛う。
「や、や……やめてぇっ!」
「それでは行きますよ、秋葉さま……息を抜いてくださいね」
琥珀は悲鳴を上げる秋葉の呼吸のタイミングを読みながら、浣腸器をぐ、と
秋葉の肛門に押し込んだ。
「や、やぁぁぁぁ……兄さん……お願い、許してぇ……」
秋葉は肛門に浣腸器の先を押し入れられ、哀願するような口調でそう志貴に
助けを呼びかける。だが、秋葉のお尻の肉を開き、浣腸を受け入れるさまをま
じまじと見つめる志貴の耳に、その言葉は届いたかどうか。
「それでは、注入しますねー」
「ひっ、いや……そそぎ込まないで……気持ち悪い……」
琥珀は浣腸器のシリンダーに手を添え、ゆっくりとガラスの浣腸器の中の液
体をそそぎ入れている。志貴と琥珀の目の前で、秋葉の肛門にじっくりと液体
がそそぎ込まれて行く。半リットルある浣腸器の目盛りが半分ほどに進んだと
きに、組み敷かれた秋葉から苦痛の声が漏れ始める。
「うーん、秋葉さまはさすがに浣腸の経験はありませんので、これが目一杯か
も知れませんね。でも、これだけ入れば十分ですねー」
琥珀はシリンダーを進める指を止め、満足したように浣腸器を傾け、きゅぽ
ん、とお尻の穴から抜き出す。秋葉の肛門は浣腸器の嘴を吐き出すと、すぐに
襞をすぼめて中身の液体を出すまいと、生理的な反応をする。
秋葉も、肛門に液体を注がれたことで浣腸をされたことを知ったが、それで
も志貴の目の前で排泄するまいとしてお尻の穴を引き締めた。だが、その行為
こそが自らの首を絞めると言うことを、今の秋葉は知らない。
ただ、注がれた室温の液体と、お腹が張ってくるような感覚に耐えるばかり
である。
琥珀は浣腸器を置き、部屋に用意してあった琺瑯の洗面器を秋葉の脚の元に
置く。そして、志貴の腕をとって秋葉から数歩離れた位置に誘う。
「志貴さま……秋葉さまが浣腸されるのを見て、興奮されました?」
琥珀は志貴の背中に回り込んで、後ろから志貴の股間の上に指を這わせる。
志貴は、目の前で腰を突き出しながら、そそぎ込まれた浣腸液に苦しめられる
秋葉の姿態を眺めながら答える。
「ああ……まぁね」
「志貴さまのこちら、楽にしてさし上げます?」
琥珀は志貴の盛り上がった股間の肉棒をなぞる。志貴はそれに頷いて答える
と、琥珀は志貴の腰のチャックを開いて硬さを増した肉棒を抜き出し、跪いて
志貴の剥き出しの肉棒に唇を寄せる。
「それでは、失礼します」
琥珀は髪を軽く書き上げると、志貴の血の巡る亀頭に唇とつけて舐め始める。
志貴は琥珀に股間の逸物を舐めさせながら、苦痛に呻く秋葉を眺めている。
「お、おねがい、兄さん……お手洗いにいかせて、ください……」
「ああ、秋葉、足下に洗面器があるだろう、それがある」
ぺちゃりぺちゃり、という琥珀の唇と唾液の立てる音に混じって、志貴が簡
潔にして冷淡な言葉を投げかける。秋葉は脚に触る冷たい洗面器の感触を知っ
ていたが、まさかこのまま排泄させられる……という事を恐れ、身を震わせる
ばかりである。
それよりもなによりも、注がれた浣腸液によって苦しめられるお腹を抑える
のが秋葉には精一杯のことであった。お尻の穴から液体を注がれると言う経験
は初めてであり、その未知の体験ゆえに秋葉の心は混乱しきっていた。それに、
入れられた液体はお腹の中を駆けめぐり、耐え難い便意をこみ上げさせる。
時折吐き気がするような感覚に襲われながら、秋葉は脂汗に布の目隠しを濡
らしていく。それに、この液体をそそぎ込まれてから、身体が燃え上がるよう
に熱い。
「琥珀さん……秋葉の中に何を入れたの?」
志貴の何気ない質問に耳を立てる秋葉。そして、耳に響く嫌らしい舌音を止
ませて、琥珀が答える。
「うふふ、薄めたアルコールです……志貴さま、アルコール浣腸ってご存じで
すか?」
「……いや、知らないけど」
「アルコールを浣腸すると、口で飲むより遥かに早く回るんですねー。もちろ
ん、多すぎると急性アルコール中毒になりますけど、秋葉さまに入れた分では
問題ありません」
その言葉を聞いた秋葉は、全身の毛がそそけだつような思いであった。
自分のお尻に入れられたのはアルコール、そして吸収が早いとなれば……
秋葉は、自分の頭がくらり、とぶれるのを知った。これは間違いなく酩酊の
症状であり、かなり飲んでも自分は酔わないはずなのに――秋葉は混乱する。
「そうなると……」
「ええ、秋葉さまが無理しないでお出しになれば問題はございませんが、頑張っ
て仕舞われると……アルコールに酔っぱらってそのまま垂れ流しになりますね。
秋葉さまへのお仕置きとして、なかなか素敵だと思いませんか?」
志貴はそれに答えなかった。また、琥珀が志貴の肉棒を口に含む、淫らな音
が響き渡る。秋葉は、便意と吐き気に耐えながら、朦朧とする頭で何とか身体
を起こす。そして、なんとか琥珀の話を頭の中で理解しようとする。
――このままだと、アルコールに酔っぱらって垂れ流し……
――それだけは、それだけは嫌っ!
秋葉の頭の中の計算は、すでに正気の時のそれとは違う動きをしていた。普
段なら何とかこの恥辱から逃れようと考えるのであるが、今の秋葉にとっての
最大の恐れは、意識を失って垂れ流しになる様を、志貴に見られると言う恐怖
であった。
もしそんな姿を見られれば、一生兄さんに軽蔑される――ふらふらの秋葉の
頭の中では、それを避けるために志貴の前で排泄するのも、いつの間にか仕方
ないことになってしまっている。
秋葉はなんとか体を起こすと、脚の下の洗面器を確かめるまでもなく、限界
を迎えていた。そして、なけなしの意識がこう、秋葉の喉を叫ばせた。
「兄さん、お願い――見ないでぇっ!」
その言葉、果たして志貴に聞き届けられたや否や。目を隠された秋葉には分
かる術はない。秋葉のお尻の間から、ぶしゃ、と液体が噴き出される。
志貴は、その有様を見守っていた。肉棒を舐める琥珀も、舌と指を止めて秋
葉の排泄の姿に見入る。膝立ちになって洗面器を跨ぎ、上半身は緊縛され、下
半身は剥き出しになって液体混じりの便をを排泄する秋葉の姿は、恥辱にまみ
れた陰惨なものではあったが、見る者の心の中で、言いしれぬ欲望をかき立て
る姿であった。
「いやぁぁ……出ちゃう……」
秋葉は朦朧した頭で、便意から解放され、肛門から排泄する快感を味わって
いた。今の秋葉の頭からは、兄である志貴に見られているという意識は吹き飛
んでいた。
やがて、一滴残らず排泄を終えると、秋葉は前のめりに倒れ込んだ。今まで
の我慢で精根が尽きたのと、回ったアルコールが既に身体の支配権を奪ってい
たからであった。
「あ……あはぁ……はぁ……」
秋葉は、自分の汚れた肢体を拭われるのをまるで他人の身体の事のように感
じていた。腰を掲げたままの淫らな格好であったが、濡れた布で膝から肛門ま
で拭われるのを心地よく感じていた。ただ、排泄の快楽を酩酊のもたらす多幸
感によって味わっており、また、心の隅で自分のプライドがズタズタに切り裂
かれたことも、むしろ心地よい痛みとして味わい始めている
「さて、志貴さま……アルコールのお陰でお尻も緩んでいる様ですし、是非お
楽しみになられてください」
秋葉のお尻に、また何かの軟膏が塗られる。先ほどのワセリンとは違った別
のモノであり、それは緩んだ秋葉のお尻の中にまで、細い指で丹念に塗り込ま
れる。
そして、秋葉の背中にのし掛かる、暖かい男性の体温と薫り。もはや意識が
曖昧な秋葉は、その感覚に驚喜した。
「兄さぁん……はぁぁぁ……」
そして、後ろの穴をめりめりと広げて押し割る感覚に、秋葉の脊髄は随喜の
叫びを上げる。直腸に注がれたアルコールに酔い、恥辱に翻弄され、もやは一
匹の雌狗のような秋葉は、入れられたこともないアナルでの性交に喜びを覚え
ていた。
「きついな……ああ、秋葉、お前、感じてるんだな?」
「はい……兄さん……秋葉は感じてます……」
秋葉の意識は、もはや正気ではなかった。秋葉の口は、勝手に自らを辱める
言葉をはき続ける。後ろの穴を犯す志貴のリズムに従って、秋葉の口が動く
「秋葉は……兄さんの血を飲んで感じる淫らな女なんです……兄さんの前で粗
相をしちゃう恥ずかしい女です……後ろの穴で感じちゃう女なんです……だか
ら、悪い娘の秋葉をお仕置きしてください……」
肛門を犯し、肉壁越しに子宮の入り口を突かれ、激しい志貴の腰の動きに髪
を振り乱して喘ぎ狂う。痛覚はなく、身体を押し割る熱い志貴の肉棒に酔いし
れ、叩き付ける志貴の腰と、背中に被さる志貴の身体を熱く感じる。
そして、自分の身体の奥で志貴がぶるりと震え、中に射精をするのを――薄
れ行く意識の中で快感と共に感じていた。
「ああああーっ、兄さぁぁぁんっ!」
ぬぽん、と秋葉のお尻から抜かれる男根が、秋葉の感じた最後の感覚であった。
§ §
春の信州。山並みは白い雪を頂き、澄んだ空気は芽吹き始めた命の息吹を含
んで清々しく吹く。氷は既に溶け、せせらぎには雪解けの澄んだ流れがある。
そして、一車線の道を歩いて農家の垣根を潜り、軒先に現れる一人の青年。
正午の日差しを浴び、縁側に腰掛けていた少女はその姿を見る。
「志貴さま――?」
そう尋ねられた志貴は、ばつが悪そうに笑って庭先に入っていった。背中に
大きなデイパックを背負っている。
「いやぁ……琥珀さん……」
「どうされたのですか?志貴さま」
何の連絡もなく尋ねてきた志貴に、琥珀は目を白黒させる。志貴は何とも引
きつった笑いを浮かべたまま、中庭を横切って琥珀の元までやってくる。琥珀
は志貴の荷物を下ろすのを手伝いながら、心配そうな顔で見つめる。
「琥珀さん、その……」
「……?」
「……秋葉から、逃げてきた」
そう一言、重要なことを言うと志貴は荷物を下ろし、はーっ、と長く脱力の
息を吐いた。琥珀は発言の意図を読みとれず、小首を傾げて志貴を見つめる。
「と、仰いますと?」
「あの日以来、秋葉がな……俺の血を吸いたがったり、秋葉は悪い娘だからお
仕置きしてくれと言って迫った来たりと大変なんだよ」
縁側に腰を下ろして心の底から疲れた仕草をする志貴に、琥珀は苦笑いする。
あの時、踏ん切りの悪い志貴にダチュラを盛ったのが琥珀であった。その結
果、琥珀の期待通りのノリで秋葉のお仕置きをした志貴であったが、まさかそ
れが――
「秋葉様が、病みつきに?」
「というか、目覚めてしまっったらしい。曰く『私をこんな身体にしたのは兄さ
んと琥珀です、だから責任をとってください!』って」
その言葉を聞き、二人ともあーはーはーはーはー、と寒い笑いを浮かべる。
――逆効果だったかな?と今にして思う琥珀であった。
「で、逃げてこられたというのは?」
「最初は有彦の家とか有馬家とかに逃げ込んできたんだけどな、秋葉が追っか
けてきて……たまらんぞ、アレは、人前で泣き始めて何言い出すかわかんない
のだから」
志貴は青い顔でそう頭を振りながら述べる。その顔色の憔悴した色から、よ
ほど凄まじい修羅場を演じたんだでしょうねー、と琥珀は内心同情したくなる
思いであった。
「夜這いしようとするし、油断すると噛みつくし……俺に残された安楽の地は、
ここしかないんだよ、琥珀さん……」
「まぁ……それはまたご苦労様です。とりあえず、上がってごゆっくりお茶で
も飲まれませんか?」
琥珀の言葉に頷いて、志貴は靴を脱ぎ、縁側に上がる。琥珀もその後を追い、
二人で廊下に並ぶ。
「……いい場所だな、琥珀さん……俺も一緒に住みたいよ」
「まぁ……何もないところで、きっと退屈されますよ」
二人の恋人同士の会話は、久々の再開にほのかに暖かくお互いの心を和ませ
ていく。
――だが、黒髪の少女が目を爛々と輝かせ、信州の電車に揺られて来ている
とは、今のこの二人には知りようがないことであった。
〈おしまい〉
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