「はーい秋葉さま、下着脱ぎ脱ぎしましょうね」
外で志貴さんが耳をそばたてているのを知って、わたしはわざとそんなこと
を口に出してみたりする。
今日も今日とて、秋葉さまは人形のように大人しくしている。
あの日から、わたしの仕事にそんな秋葉さまのお召し物を取り替えることが
加わって、わたしと翡翠ちゃんが手すきのときにすることにしている。
服は取り替えやすいように、素っ気のない前開きのもので、秋葉さまが食事
をするのは一日に一度、志貴さまの血を飲んでいるばかりだから、汚物の心配
はほとんどなく、汚れ物といってもさして匂いさえ気にならないくらいで、本
当に着せ替え人形みたいだと思ってしまう。
秋葉さまの髪の手入れをするときなど、秋葉さまの表情が変わったりしない
かな、と思って騙まし討ちするみたいに覗きこむのだけれど、何度試してもやっ
ぱりそんなことはなくて、薄く瞼が開かれている以外は秋葉さまの表情は硬い
彫像さながらに変わることがなく、その面持ちがあまりに整っているだけに、
期待が裏切られてもわたしは沁みいるような感動を覚えるのだった。
細い瞼の間からはくすんだ輝きばかりが返されているばかりで、一日に一度
だけ秋葉さまの瞳孔に澄んだ光が戻るのは、志貴さまの血を吸うときだけである。
それだけしか動かない秋葉さまでも、垢やフケは溜まるし、月に一度は女性
の印が訪れる。だから少なくとも三日に一度は秋葉さまをお風呂に入れること
にしている。今目下わたしは脱衣所で秋葉さまのお召し物を外している最中。
移動用の車椅子に座らせた秋葉さまから、着脱がしやすい前開きの服を脱がす
だけだからさして造作ない。
秋葉さまの下着を膝から少しだけ下ろして、秋葉さまの秘部を覆うナプキン
をずらしてみる。わずかに鼻をつく生臭さ。わたしは自分で自分がおかしいな
と思いつつも、ついほくそ笑んでしまう。でもいいですよね志貴さん。これく
らい役得があったって。
秋葉さまの介護もあって取りつけることにした手すりを頼りに、秋葉さまを
椅子の上に座らせる。
「さーきれいきれいしましょうね、秋葉さま」
おどける口調でわたしはシャワーのノズルを秋葉さまへと向ける。噴き出さ
れる奔流が秋葉さまのなだらかなラインを伝って流れ落ちて行く。続けている
と秋葉さまの白く褪めた膚に色が戻って、段々と瑞々しくなっていくのにわた
しは得意気な気分で眺めていた。
シャワーを止めて、スポンジにボディソープを沁みこませる。それを秋葉さ
まの胸の膨らみに宛てがって、円をなぞるようにこねていく。すると秋葉さま
の足がつっぱって、わずかに宙に浮いた小指がふるふると揺れていた。
こんなになってしまった秋葉さまの躯が、わたしの愛撫に応えてくれる。そ
れを知ったのは最初にお風呂に入れてあげたときのことだった。それからわた
しは秋葉さまの反応を見るのが楽しくて、いつもこんな悪戯をしている。
秋葉さまの動悸がちょっとずつ速まっているのがわかる。もっとドキドキさ
せてあげますからね、とわたしは秋葉さまの耳元で呟いて、スポンジを胸の曲
線にある出っぱりをいたぶるように動かした。
秋葉さまの耳たぶを口に含み、耳腔にちろちろと舌を伸ばした。背筋がぴんっ
とこわばって、秋葉さまの肩がぶるぶると大きく震える。
わたしはスポンジを掴んだままシャワーの蛇口を回した。ノズルから勢いよ
く噴出され、真下にいた秋葉さまへと流れ落ちる。シャワーはお湯ではなく冷
水だった。間違えたのではなく、意図してのことである。身体が冷えていた
うえに水を浴びせられた秋葉さまは、反射的に逃れようと身をよじりくねらせ
るがわたしが手を動かす方が速い。
秋葉さまに水を浴びせながら、スポンジを掴んでいるもう片方の手でお湯の
張られた桶へとスポンジを浸ける。たっぷりとお湯を染みこませたスポンジを
引き上げ、シャワーの噴射口を秋葉さまから遠ざけた。そして怯える秋葉さま
の膚にボディーソープを含ませたスポンジを宛てる。お湯で温められたスポン
ジの感触に秋葉さまの表情がこころなし和らいだ気がした(実際には変化はな
かったけれど)。
スポンジの温もりは秋葉さまの抵抗をたやすく奪い取った。秋葉さまは身を
固くしながらもスポンジごしの愛撫を受け入れている。
透き通った膚は冷水を浴びたため白く褪めていて、なすがままになっている
秋葉さまが一層脆く見えた。膨らみの頂には小さなしこりがムクリと突端を起
こしていた。腕が邪魔だったがわたしは強引に指を滑りこませる。泡にまみれ
たわたしの指が、秋葉さまの胸をなぞり、くにくにと揺れる先端部を押し潰し、
そして弾きだす。ツン、ツン、ツン、プクッ。
秋葉さまの乳首は点みたいに小さい。それを取り囲む桜色の輪もつつましや
かなものだ。だからこそ丹念に丁寧に扱って、紅いしこりをツンと膨らませる。
泡を集め、乳首の周辺にかき集める。指を動かすたびにくちゅくちゅと水音
が立つ。指の動きを早くする。泡立ちが大きくなり、秋葉さまの小さな膨らみ
はすっかり隠れてしまう。すかさずわたしは泡をかきわけ、秋葉さまの乳首を
つまんでしまう。
「……っ」
秋葉さまの無言の抗議。でもわたしは知らないふりをして、もっときつく指
をひねる。秋葉さまの鼻が小さく鳴って、息を大きく吸いこんでしまう。数瞬
遅れて口の中でたまっていた唾をこくこくと飲み下す音。
ドキリ、と胸が鳴った。
わたしの体はきっと狂ってしまっている。秋葉さまの喉が鳴る音がわたしの
なかのスイッチをおかしくしてしまう。
気がつくとわたしの指の動きが止まっていた。突然途絶えた愛撫に、秋葉さ
まは定まらない視線を宙で泳がせながら静かな表情に戻ろうとしている(気がした)。
わたしは自分が服を着たままなのも構わず、たまらず秋葉さまを抱きしめた。
泡まみれになった割烹着を肩からずらして脱ぐ。秋葉さまと同じ姿になりたい
欲求と、すぐにでも自分の秘部をぐちゃぐちゃに掻き回したい欲求の板ばさみ
になり、着物をずらしながら秘部を秋葉さまの太腿へとなすりつけていた。
ようやくあらわになったわたしの胸を秋葉さまの胸へと合わせる。二つの胸
の間で泡がかきたてられ、二つの乳首が互いを押し潰すたびに泡が弾けた。
パンティーに浮かんだ筋を秋葉さまの太腿の上で滑らせる。秋葉さまの秘部
の下にもわたしの太腿を挿し入れて、くねくねと動かした。膝を立てて秋葉さ
まのとくに敏感なところでぐにぐにと円形に揺らす。秋葉さまの秘部からぬら
ぬらとしたものが膝に垂れてきて、自分の太腿が真っ赤になることにさえわた
しを欲情に駆りたてた。
水を吸って半透明になったわたしのパンティーは、筋の上端にある肥大した
膨らみの形をありありと見せつけていた。すごくいやらしくて、でもこれが秋
葉さまの太腿を使ってこんな形にしてしまったことがわたしのこころを嬲る。
わたしは太腿だけでは我慢ができなくなって、秋葉さまの手を取って指を筋
へと宛てる。布ごしに温かなぬめりが、くちゅりと直接の愛撫を待つように涎
を垂らしていた。
湿ってぐしょぐしょになったパンティーから水がひっきりなしに滴り落ちて
いる。それが全て愛液なわけがないけれど、それでもうわたしのからだはどう
しようもないくらいに火照ってしまった。
肩からずらしただけだった割烹着を完全に脱ぐ。ぴったりと貼りついた布地
がなんてことのない場所をこするだけで、わたしは胸を高鳴らせる。
蒸れたパンティーを脱ごうとするけれど、穿いたままでエッチなことをしす
ぎたせいか肉襞が絡みついてうまく脱げない。わたしははしたないことと思い
つつも、秋葉さまの指を借りてパンティーの脇に滑りこませる。そして指を蠢
かせて筋に潜りこんだ布地をほじりだしていく。秋葉さまの指を穢す、それが
こんなにも背徳の快感を呼ぶなんて想像もしなかった。
溝から離れたパンティーをずらす。秘部が晒され、そのことは秋葉さまの指
がわたしの穢れた場所に直接宛てがわれている光景を直視することを意味して
いた。
秋葉さまの指は露でてらてらと光り、粘っこい液にまみれてわたしの恥毛が
一本みっともなく絡みついていた。自分のもので汚れた秋葉さまの指を口の中
に含む。わたしの愛液が糸を引いているのも気にせずにぴちゃぴちゃと舐めしごく。
根元まで呑みこんだ指を、唇をすぼめながら指先まで吐き出す。くの字に折
られた指を舌の中で唾液で包んで、舌先で指の谷間を突つく。わたしはペニス
を愛撫しているかのような心持ちで秋葉さまの指をもてあそんだ。
秋葉さまの指から精液の雫が噴き出したら、なんて考えてしまう。槙久さま
やシキさまの相手をしているときはついに好きになれなかった作業だけど、秋
葉さまの細い指が射精する瞬間ぷくっと膨らんで脈を打ち、生臭い粘液を吐き
出すことを夢想していると、わたしは本当にそんなことがありえる気さえして
きて、ますます秋葉さまの指がふやけてしまうほど舐めつくしてしまう。
秋葉さまの精液を受けとめたい。そんな妄念がわたしのなかでぐるぐると渦
巻いて、いびつな輪郭を形づくっていく。
こんなふうに指を舐め続けていても秋葉さまの精液が出てくるわけではない。
だけどわたしは諦めたくなかった。精液が出なければそれなりのものを出して
もらえばいいだけだし、と。
わたしは蛇口から吹き出た水を一杯に口に含み、秋葉さまの唇にキスをして、
舌を唇の間に滑りこませた。歯列を割って咥内に潜りこませると、わたしの口
のなかに溜まっていた水を唾液に混じらせて送りこむ。秋葉さまが咽かえらな
いよう、秋葉さまの鼻をつまんで呼吸を止めさせる。口のなかに流しこまれた
水がこくりと喉を鳴らすのを確認して、わたしはその作業を続ける。
それを何回か繰り返した後、わたしは顔を秋葉さまの秘部へと寄せた。秋葉
さまへの愛撫で抑えつけていた疼きが、それを中断していたことでまた高鳴っ
てくるのを覚える。わたしはいてもたってもいられなくて、薄く開いた秋葉さ
まの陰唇へと舌を潜らせた。
秋葉さまの縦筋のような割れ目に普段はすっかり隠れている肉襞を、わたし
は自分の切なさを塗り潰す気持ちで責めたてる。筋に沿って舌を縦に前後運動
させる。縦筋からあふれてくる蜜を逃がすまいして、舌を秘唇に宛てたまま啜る。
水や蜜で薄まったメンスの生臭い味が口の中いっぱいに広がる。
口をいったん離して、秋葉さまの表情を覗きこむ。やっぱり変化はなかった
けれど、不規則になりつつある呼吸や、薄い胸の膨らみから突き出ている桜色
の突起が否応なく秋葉さまの昂ぶりを告げている。
こんな程度じゃまだ許しませんよ。もっとしてあげますからね。
《続く》 |