えー、このお話ですが、一応アルク・グッドエンド後、という設定です。
 あくまでも一応、ですが。

 なお、次が最も重要な注意点になりますが――――

『このお話に登場する志貴ちんは、礼拝堂でシエル先輩に拳突っ込んじゃった志貴ちんとは別人です』(四倍角希望)

 そこのところをお間違えのないようにお願いしますー(笑)


妹にはちょっと無理
                        からたろー


「―――あ―――さ」

 むにゅ。

「ん…………?」

 左腕を包む、暖かくて、柔らかい感触。
 顔に触れる、さらさらと柔らかい何か。
 そして、女の子特有の、柔らかな香り。

「…………」

 左腕が動かせないので、頭を枕に預けたまま、右手で眼鏡を取り上げた。
 眼鏡をかけながら左横を見る。

 視界の大半は、窓から差し込む朝日を受けて輝く金色の髪に覆われていた。

 アルクェイドは、きちんと服を着たままで、俺の左腕を抱え込むようにして
横たわり、すやすやと軽い寝息を立てている。
 例によって窓から忍び込んできたものの、俺が起きるのを待っているうちに
眠り込んでしまったのだろう。 
 楽しい夢でも見ているのか、細く長い眉を緩め、小さな唇を綻ばせている。

 「ホンット、猫みたいなヤツ……」

 思わず苦笑しながらひとりごちた。
 次の瞬間。
 はっと我に返った。

 今、何時だ?

 今は朝だ。
 そして、今日は平日だ。
 と、いうことはつまり……
 そろそろ翡翠が起こしにくるということだ。

 翡翠がこの状況を見たら、何と言うか……
 いや。翡翠の場合、何も言わないかもしれないが。
 その方がもっと怖い。

「……アルクェイド?」

 そっと声をかけてみた。
 全く反応がない。
 左腕を抜こうとしながら、もう一度呼びかけてみる。

「アルクェイド、起きろ」
「…………ん。し…き?」

 目を閉じたまま、アルクェイドが呟いた。
 起きたのかと思ったら、アルクェイドは俺の左腕をぎゅうと掴むと、再びすー
すー寝息を立て始めた。

「起きろってば」

 言いながら、空いた右手でアルクェイドを揺さぶる。
 瞼が持ち上がり、うさぎみたいな赤い瞳がこっちを見る。

「…………?」

 やっと起きてくれた。
 安心したのも束の間。

「おはよ。志貴」

 声と同時に、アルクェイドが俺の上に覆いかぶさってきた。
 そのまま、ぎゅう、と抱き締められる。

 暖かくて、柔らかくて、いい匂いがする……

 などと言っている場合じゃない。

「ア、アルクェイドっ!今はそれどころじゃないんだって!」
「なにが?」

 アルクエイドが上体を起こした。
 その隙に、肘を使ってヘッドボードのところまで後退する。

「そろそろ翡翠が起こしにくるんだよ!」
「えー?大丈夫だよー」

 のんきなことを言いながら、アルクェイドはベッドの上に横座りになった。
 今気がついたけど、靴を履いたままだ。

「あの子、わたしが毎朝志貴の部屋にきてるの知ってるもの」
「な、なんだって!……知ってる?翡翠が?」

 翡翠は、俺の前ではそんな素振りは見せないが。

「あたりまえでしょ、メイドなんだから。毎朝誰かきてれば気がつくわよ。
志貴って鈍感だから、気づかれてることに気づいてなかったのね」
「そういう問題じゃないんだって!とにかく!早くベッドから下りてくれ!」
「えー?なんで?」

 アルクェイドは小首を傾げている。
 本当にわかっていないらしい。

「靴、履いたままじゃないか」
「あ。これ?」

 ちらりと足元を見たアルクェイドだったが、すぐに視線をこっちに戻した。

「志貴がいつまで待っても起きないのが悪いんだからね。
 それで待ちくたびれて眠っちゃったんだから」

 文句を言いながらも、とりあえずベッドからは下りてくれた。

 ひとつ大きく息をついて身を起こし、あぐらをかいた格好になる。
 もう起きる時間だ。翡翠がいつやってきてもおかしくない。

「へいへい。俺が悪うございました。お姫さま」

 眠っちまったことまで人のせいにするな。
 そう喉まで出かかったが、我慢だ。今は言い争っている暇なんてない。
 早くアルクェイドに機嫌を直してもらって、部屋から出てもらわないと。

 そう思って低姿勢に出たのだが、逆効果だった。

「むっ。志貴、そんなにまでしてわたしを追い出したいわけ?」

 アルクェイドは、険しい表情で俺を睨みつけてくる。
 図星だったが、それを認めてしまうと火に油だ。
 さりげない風を装って言い返す。

「謝っただけじゃないか。それなのに、なんでそういう風に受け取るんだよ」
「………………」

 アルクェイドは、黙ってこっちを睨んでいる。
 やがて、不意に口元が笑いの形に歪んだ。

「……そう。志貴がそういうつもりなら……」

 激怒して、そのまま俺を張り倒す。
 または。
 激怒して、そのまま窓から飛び出す。
 そのどちらかだろう。
 そう思って、とりあえず両腕で頭をガードしようとした。
 だが……
 続くアルクェイドの行動は、こっちの予測とは全く異なる物だった。

 両手を交差させて白いハイネックの裾を掴み、がばっと胸元まで捲り上げ、
今度は肩越しに持ち上げて頭を抜き、腕を抜き、脇に放る。
 スカートのジッパーを下ろすと、すとんと足元に落とす。
 床に輪のように広がったスカートの中央に立ったまま、アルクェイドは靴を
脱ぎ、黒いストッキングを脱ぎ、ブラジャーを外した。
 さらに、ためらうこともなくショーツを引き下ろしにかかる。

 肩口までの金色の髪。
 染みひとつない肌。
 完璧なプロポーション。
 窓から差し込む朝日を背にしているので、全身が眩く輝いて見える。
 吸血鬼にこういう表現はどうかと思うけど、神々しくさえあった。
 俺は、ぽかんと口を開けたまま、それを呆然と眺めているだけだった。

 アルクェイドが、ゆっくりとスカートの輪の中から足を踏み出した。
 それでようやく、こっちの脳も活動を再開した。

「お、おい!どういうつもりだよ!」
「こういうつもりだよ?」

 言い終わるが早いが、アルクェイドが毛布の端を掴み、一気に引っ張った。
 ぶわっと舞い上がった毛布を放り捨て、ベッドに上がってくる。
 俺の膝の間に膝立ちした格好で肩に手を置き、耳元に顔を寄せてくる。

「さーて、今翡翠が起こしにきてこの状況を見たら、どう思うだろうねー?」
「ばっ、ばか!そんなシャレにならないこと……よせってば!」
「そう?でも、志貴のここはそうは言ってないみたいだよー?」

 アルクェイドの右手が、肩から胸板へ、お腹から腰へと下って行き、さらに
パジャマのズボンを押し上げているナニカに触れた。

「ほらほら。もうこんなになってるよー?」
「違うっ!」

 それは単なる生理現象だっ!
 若くて健康な男子なら、朝には誰だってそうなるんだっ!

「ぷくくく。なにが違うのかなー?」

 含み笑いしながら、アルクェイドが掌で問題の箇所をひと撫でした。
 パジャマのズボンとぱんつ越しなのに、びくっとナニカが震えた。

「あ。またおっきくなったみたい」
「やっ、やめろ!翡翠が……!」

 翡翠が来る。
 そう言おうとした瞬間。

 コン、コン。

 絶妙のタイミングで、聞き慣れた控え目なノックの音が響いた。

『志貴さま、お目覚めですか?』
「ひ、翡翠!ちょっと待っ……わっ!」

 ドアの方にこっちの注意が向いた瞬間、アルクェイドが屈み込んだ。
 やおら俺のパジャマのズボンとぱんつを引きずり下ろそうとする。

「わぁっ!やめろってば!」

 アルクェイドの手を押さえようとしたが、もう間に合わなかった。
 パジャマのズボンとぱんつが膝の下までずり下ろされ、状況をわきまえずに
朝立ちしている親不孝な物体が、びよんとバネみたいに顔を出す。
 無意識に、両手を前にやって隠そうとしてしまう。
 その隙に、アルクェイドにズボンとぱんつを引き抜かれてしまった。

「へっへー」

 思い切り人の悪ぅい笑みを浮かべながら、アルクェイドはひとまとめにした
ズボンとぱんつを、ご丁寧にも部屋の一番遠い隅を狙ってぶん投げた。

『志貴さま?どうかなさったのですか?』
「どどど、どうもしてないから!入ってこなくていいから!」

 パニクってる俺をよそに、アルクェイドはくすくす笑いながら、がちがちに
固くなっている物に、白い、ほっそりした指を絡め、弄び始めた。

「志貴……」

 ペニスに、アルクェイドの吐息が、かかる。
 それだけで、既にがちがちになっていた物が、爆発寸前にまで膨れ上がる。

「んっ………んふ………」

 アルクェイドが顔を横に向け、いとおしげに唇を寄せてきた。
 雁のくびれをちろちろと這う、舌先のねっとりと熱い感触。
 竿を横咥えにされ、指先で亀頭と袋を、そっと、撫で、られる。

「―――うっ!」
『志貴さま?体調でもお悪いのですか?』

 翡翠の声のトーンが変わった。
 まずい。完全に怪しまれている。

「全然大丈夫だよ。もう起きてるし。
 すぐ下に行くから、先に行って食事の仕度をしておいてくれないかな」

 アルクェイドにこ〜んなことをされながらでは、声が裏返りそうになるのを
こらえるだけで精一杯だったが、どうにかこうにか平静な声を絞り出した。

『しかし、着替えられませんと……』
「制服だったら、そこに置いといてくれればいいからさ」
『…………………………』

 沈黙。
 翡翠の迷っている気配。
 あとひと押し。
 びしっと一言。

「――翡翠。もう下がっていいよ」

 翡翠はメイドとしての分をわきまえているから、主人に、つまり遠野志貴に
そう言われては、引き下がるしかない。

『………………はい』

 納得はしていないようだが、翡翠は引き下がってくれた。

 思わず安堵の息をついた。
 そのとたん。
 アルクェイドが俺のペニスを両手で包み、先端に唇をつけた。
 そして。

 ず、ち、う―――――

 アルクェイドが、亀頭を、尿道を、凄い音を立てて吸い上げた。
 頬を凹ませながら、強烈に。

「う、うわあぁっ!」

 完全な不意打ちだったので、全く抵抗出来なかった。
 次の瞬間、アルクェイドの口に精液を迸らせていた。

「うぅ――――!」
「志貴さま!」

 俺の悲鳴を聞きつけて、翡翠が叫びながら部屋に飛び込んできた。

「あ…………」

 翡翠が、部屋の真ん中でたたらを踏んで立ち止まった。

 ベッドの上の、下半身丸出しの俺と、裸で俺の脚の間によつんばいになり、
俺のペニスを咥えてちうちう音を立てて精液を吸い上げ、こくんこくんと喉
を鳴らして精液を飲み下しているアルクェイド。

 翡翠が、胸元に抱えていた学生服をばさっと取り落とした。
 翡翠の顔が、みるみるうちに真っ赤に染まって行く。

「あ……志貴……さま……」
「ひ、ひ、ひす、い……」
「おはよー。翡翠」

 固まっている俺と翡翠をよそに、俺の股間から顔を上げたアルクェイドは、
やっほー、とでもいうように右手を振って翡翠に声をかけた。
 ついでに言うと、左手で俺のモノを握ったままだ。
 それに対し、翡翠は俯いてごにょごにょと口の中でなにか呟いただけだ。

「し、失…礼しま、した」

 翡翠がしどろもどろに言いながら逃げるように部屋を出て、ドアを閉めた。

                                         《続く》