夢、幻といえども ― 逢瀬 #2 ―


月姫18禁SS 逢瀬

 兄さんはそっとわたしを抱きしめる。
 いつもの行為。
 わたしも兄さんに答えてその大きな背中に手を回し、抱きしめる。
 華奢に見える兄さんの、男の体を感じて、ドキドキする。
 あるのは、ほのかなランプの灯りのみ――。
 電気を点けてしまうと、この離れにいるのがわかってしまうから。
 でも見回りをしているのだから、このことはとうに使用人の二人にはわかっているはずだというのに――。
 それでもわたしたちはランプを灯す。
 これは一種儀式みたいなもの。
 兄妹で交わるだなんて、世間では不義な兄、妹と呼ぶでしょうけど――。
 その背徳感が逆にふたりを密着させる。
 交わらせる。
 溶かし、ひとつにしてしまう。
 そんな耽美な世界にわたしたちはいた。

 このときは、わたしは襦袢一枚で――。
 兄さんにむかっていやらしく尻を突き出すような形で布団の上にいた。
 腰をあげ、兄さんによく見えるように、お尻を突き出すその様は、浅ましく、飢えた牝のようで――。
 そして兄さんはわたしを嬲る。

「ほら――」

兄さんはわたしには直接ふれず、ただ襦袢の上からお尻をなで回すのみ。
 後ろから責められて、わたしはただ顔を羞恥に染めあげ、下を俯くばかり。

「どうだい、秋葉」

 そう兄さんはわたしに聞く。
 どのように感じているのか。
 どのようになっているのか。
 恥ずかしくていえないわたしを、兄さんは嬲る。
 そして兄さんはわたしのお尻に顔を埋める。
 羞恥で身を焦がす。

「うーん、秋葉の匂いがする」

 なんて変態的なことを――。
でもその言葉でわたしの花はゆっくりと開いていく。
じんわりと体の奥から露がにじみ始めてくるのが感じる。
兄さんはそのままだた匂いを嗅ぐのみ。
そしてただわたしは耐えるだけ。
  体がついわなわなと震えてきてしまう。
 ただそれだけというのに、
 火照ってしまう。
 高ぶってしまう。
 求めてしまう。

「兄さんは……わたしを苛めて楽しいのですか……」

つい非難してしまう。
 その次に、もっと直接的な快楽に誘って欲しいという心を隠して、つい言ってしまう。
 なのに――。

「いや、秋葉がを苛めているわけではないよ」

なんてしれっという。
 そして兄さんはそっと割れ目にそっと襦袢の上からなで始める。
 布越しだというのに、兄さんの指がとても感じられて――。
 とても敏感になっているのがわかって。

「ん、どうしたの、秋葉」

わかっているくせに、兄さんはわざと尋ねる。
わたしから淫らな隠語を引き出すために――。

「……なんでも……ありません」

そぉ、と言いながら、兄さんはゆっくりと、わざとゆるやかに刺激を与える。
 私の声でわかっているはずだというのに、兄さんはただゆるやかに触れるのみ。
 もっと強くといいたいのに、それがなんだか浅ましくてどうしてもいえない。
 でもゾクゾクと何かがやってくる。
背筋をなにかが這い昇ってくる。
 兄さんの指はお尻の合わせ目を触れ合う程度に撫でるだけで、それ以上にはけっしてしてこない。
 なのに、わたしの女が爛れていく。
 兄さんのがほしいと、花開いていくのだ。
 薄く蜜を滴らせて。
 牡が、兄さんが欲しいと、濡れて誘いはじめる。
 たぶん襦袢にも染みとなって現れていて、兄さんにはわかっているというのに。
 兄さんはその動きしかしてくれない。
 なぜ。
 もっと
 もっとつよく。
 触れて
 いじって
思いが交差する。
その思いがわたしをもっと貪欲に敏感にさせる。
何時の間にかわたしは汗をかいている。
 じっとりとした汗――。
 でもそれは赤く火照った私の躰を冷やすどころか、より淫らに誘う。
 その汗の匂いの中――兄さんの匂いが感じられる。
 兄さんの、男の汗の匂いである。
 浅上では感じることはできない、牡独特のあの匂い。

「……兄さん」

匂いにつられて、つい、言ってしまう。
 震える声でせがむ。
 もっと愛して、と。
 すると兄さんは手を離し、わたしの前へと来る。
 胡乱なわたしの前に、兄さんのものがあった。
 熱くたぎったそれは、牡そのもので――。
 それを見ただけでわたしは軽くイってしまう。
 口をあけ、軽く嗚咽を漏らしてしまう。
兄さんがなにを望んでいるのかはわかる。
 でもその行為はとても恥ずかしくて――。
 まるで獣になったようで――。
 ちらりと兄さんを下から見上げる。
 這い蹲るわたしに、立っている兄さんはかがみ、そっと手を伸ばし、頬を撫でる。
 そしてその指はそのままわたしの唇にふれ、わって入ってくる。
 その指はわたしの歯と歯茎を撫でる。
 その指をしゃぶる。
 舌を絡めて、啜る。
 音をたてて、舐め、頭を前後に揺すって、快楽を引き出す。
 ただ指をしゃぶっているというのに。
 口も、顎も、舌も、歯茎も、喉も、まるですべてが性感帯になったかのようにジンジンと甘く痺れ、心地よい。
 すると兄さんは指をそっと引き抜く。

「あ……」

悦楽でわたしは声を漏らす。
 唾液が指から滴り、わたしの唇と連なる。
 それは延びて、そして途切れる。
 わたしは唇についた唾液を舌で舐めとる。
 下唇も上唇も、ぺろりと舐め上げる。

「……秋葉」

兄さんは耐えられなくなったかのように、私に命じる。
 兄さんのあそこはびくんびくんと震え、先からは腺液がもれていた。
 わたしは手を伸ばすと、ソレを握ろうとする。
 それわ握ることにやはり抵抗があり、つい躊躇する。
 それにまだ触れていないというのに、その熱さが伝わってきて、ドキマギしてしまう。
 すると兄さんは私の手をつかむと、強引に握らせる。

 ――熱い。

それを握った感想。
 初めて触った時からその熱さは変わらず、たとえ何度逢瀬を重ねても変わらないであろう。
 わたしは座り、兄さんのものをこすり始める。
 こするたびに腺液がてらてらと漏れはじめる。
 わたしは左手をそっと、兄さんの陰嚢に当てる。
 これも兄さんが教えてくれたこと。
 兄さんが喜ぶように、わたしは調教されている。
 でもそれでいい。
 わたし遠野秋葉は、兄さんの女、なのだから。
 兄さんの喜ぶことをする牝でよくて――。
 陰嚢にふれると、そっともみ始める。
 二つの玉が感じられる。
それを5本の指でかるく握り、時にはきゅっと、時にはやさしく揉む。
 すると先からとろとろと液が漏れ始める。
 わたしはそれに舌を伸ばし、すくう。
 なんともいえない味。
 でもその味が口の中に広がっていく。
 それは、なんともいえない男の味で――。
 わたしをたまらなく淫らにさせる。
 舌を亀頭に被せ、ゾロリと舐め擦ってから、口に含んだ。
 そして前後に動かす。
 快感が後頭部を灼く。
 まるで口が性器になったかのようで。
 口蓋が、唇が、舌が、それでこすられるたびに快感が甘く疼く。
 舌でカリ首をつつき、息をするために、唾液をすすり上げる。
 舌が動く限り、それをしゃぶり尽くした。

 もっと、もっと、もっと。

 ――兄さんのを求める妹、浅ましく頬張る自分の姿を思い描きながら、わたしは高まっていく。
  兄さんの味が口の中に広がり、匂いがする。
 もっとそれを味わいたくて、舌をその先の切れ目にあてる。
 そこをつつき、唇で吸い上げ、舐め上げる。
 そのたびに兄さんは軽いうめき声を上げ、感じている。
 わたしで感じてくれている。
 それがうれしくて、
 それがたまらなくて
 もっと淫らに音をたてて啜りあげる。
 喉の奥に兄さんの熱さを感じ、軽く歯をたてて刺激する。
 兄さんのそれはあまりにも熱く、そして――美味しい。
 裏筋をちろちろと舐め上げる。
  横咥えにして、顔を振りながら舌を這わせ、きつく、弱く吸いあげる。
 キスマークをつけて、これは私のものだという印をつける。
 いったん唇を離すと、わたしは袋の方へと舌を伸ばす。
 袋を軽く唇に挟み、皺を舌で選り分けるようにつつきまわす。
 玉を唇ではさみ、味わうようになめ回す。
 口に頬張って、舌で弄ぶ。
 ここからあの熱いほとばしりがでるのだと思うと――。
 それだけでつい頬張り、なめ回したくなる。
 兄さんの股から発散される、澱むほどに充満した熱い牡の臭いを吸い込むたびに。
 鼻を鳴らして匂いを胸一杯に吸い込むたびに、触れてもいないのに雫が溢れだしてくる。
 そしてわたしは、そのままさらに奥へと舌を伸ばす。
しかし震えてしまう。
 なんて破廉恥で、淫らで――。
 でも、わたしは舌を伸ばした。

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