その言葉に導かれて、いきりたって脈打つそれを彼女に押し当てる。
 先にあたる柔らかく湿った感触がたまらない。

 「……違うわ、もっと下よ」

入り口を求めて、下に下げる。
 先のその感触だけでイきそうになる。

「――そう」

 熱いねっとりとした彼女の声。

「……そこよ」

その声に抑えきれず、挿入した。




















月姫18禁SS


ト キ エ





















 それは飲み込まれていった。
 よく書かれているように、いれたとたん出してしまうようなことを考えていたが、それは杞憂だった。
 というより、快感が強すぎて、感じすぎていて、出なかったというのが正しいのかも知れない。
 ともかく初めて入れた時、いきなり放出することはなかった。
 それよりも、その柔らかく暖かな女の人の体に溺れていく、その感触は、とても淫らで、とても気持ちよかった。
 気持ちいいというものではない。
 暖かく湿ったそれが、俺のを締め付け、撫であげ、こすり、しごいていた。
 たまらない。
 たまらない。
 たまらない。
 女の人がこんなんだって――。
 それだけで、腰をふるった。
気持ちよくて、たまらなくて。
10秒でも、1秒でも、一瞬でも、刹那でも女を味わいたくて腰をふるう。
彼女は俺を抱きかかえる。
俺は彼女の胸に頭を埋めながら腰をふるう。
 熱く、とろけていく。
 淫らに、蕩けていく。
 快感が腰から脊髄を駆け抜け、脳髄を灼く。
 とまらない。
 とめることができない。
 もっと味わいたい。
 この柔らかな肢体を
 この暖かな女の体を
 このしなやかな朱鷺恵さんの躰を
 もっともっともっと味わいたくて
 腰をふるう。
 頭が真っ白になってくる。
 全身が熱く震える。
 酸素を求めて口を大きく上げる。
 が足りない。
 息ができない。いや息する時間さえもったいない。
 耐え難い快楽の前に、俺はただただ腰をふるばかり。
 ――そして何かが見える。




















 まんまるな銀の月。
 まわりは深い深い森に囲まれていた。
 まるで大きな劇場のようだった。
 自分の名が呼ばれたような気がして、
もっと奥には言っていった。




















 なんだろう、これは――。




















 今組み敷いて抱いているのはトキエさん。
 初めての体験で――。
 …………。
 …………。
 …………。
 …………ワカラナイ。




















 みんなばらばらのてあし。
 ばらばらになったひと。
 トマトのように赤い水。
 その、おかあさん、というひとは
 それっきり、ボクの名前をよばなかった。
 ただ寒い。
 みんなぶぞろいのかっこう。
 ――よくわからない。
 こんなにもツメタク――わるいユメ。
 こんなにも
 月がきれい――――――だ。




















 彼女に抱きかかえられたまま、この愛おしい『女の躰』を抱く。
 淫らな息と喘ぎ声が聞こえる。
 それだけが、このヘンなものを消してくれる。


   コレはナニ――。


 腰の奥がむずむずする。
 むず痒い痛みがたまってくる。
 それがたまらなくて、我慢する。
 我慢すればするぼと、むず痒くなり、それが気持ちよい。
 甘い吐息が耳に聞こえる。
 しなやかな躰を抱きしめる。
 淫らな女を貫き、こね回す。
 たまらない。
 このたまらなさが、アレをケシテくれる。
 腰の奥にだんだんとたまってきて
 その圧力に背を押されて。
 気持ちよくて。
 わからなくて。
 いや、しかし、もしも、あぁ……
 なにを考えているのかわからない。
 真っ白になっていく。
 真っ赤になっていく。
    甘い――
 頭の中がそれだけになっていく。
    血の香り――。
 赤い快感に溺れていく。
 乱れていく。
 そして、とうとう我慢できなくなり、俺はもっとも奥へ突き入れる。
 そして放つ。
 攣りそうなほど出す。
 今まで我慢してきた、なにかが吐き出されていく。
 柔らかい襞の中に、あの白くねっとりとした粘液を吐き出している。
 体が震えて、魂まで消え去りそうになる。
 そのまま死ぬのかと思うぐらい、おもっいっきり出した。
 …………トキ……エ…………サン。






















「――よかった? 志貴君」

いつもの、凛、と澄んだ声がする。
少しうとうとしていたらしい。

え、と胡乱な頭で返答する。

「志貴君、わたしが初めてでほんとうによかったの?」

 突然、何を言いだすんだろう、この人は。

「決まっているじゃないですか、朱鷺恵さん」

 でも胸がズキリと痛む。


   みんなばらばらのてあし。
   ばらばらになったひと。
   トマトのように赤い水。


 これは何だ。
とても気分が悪い。
   あぁ、トキエ――
朱鷺恵さんの名前がぐるぐるまわる。
気持ちが悪い。
 めまいがする。
   あぁ――。
        みんなばらばらのてあし。


 目の前がぐにゃりとゆがむ。
        ばらばらになったひと。1234


  朱鷺恵さんの顔色が変わる。
トマトのように赤い水。12345678


   「……」
    何かいっているようだけど聞こえない。
その、おかあさん、というひとは123456789012


     大丈夫だよ、朱鷺恵さん、と言うけども
      舌が回らない。
それっきり、俺の名前をよばなかった。123456789012345


       朱鷺恵さんがおたおたしているけど、大丈夫――。
          ――これは
             ただの貧血だから


ト キ エ オ カ ア サ ン



ト キ エ オ カ ア サ ン ハ ウ ゴ カ ナ ク ナ ッ タ


 そして暗転。


























 あれから朱鷺恵さんとは会っていない。
 なぜか会いたくなかった。
 なぜだかわからない。
 あんなに恋しくて、苦しかったというのに。
 熱病のようにひいてしまい。
 そうしているうちに、彼女は都会の学校へ行き、俺は高校に進学した。
 朱鷺恵さんを思い出すたびに、なぜかトマトのような真っ赤な水を連想する。
 あのトキエという、響きになぜか苦しみを覚えるようになって――。

 だから今宵、また外を歩く。
 ――そう
 もっと――
 もっと、一緒にいたかったはず。

 もっと、あの桜色の唇で呼ばれたかったはず。
 もっと、あの大きな茶色い瞳で見て欲しかったはず。
 もっと――もっと、あの綺麗な手を感じていたかった。
 なのに、苦しい――。

 夜空には、ガラスのような月がある。
 こんなにもまんまるな月。
 アノトキ モ オモッタ ケド、
 ナンテ キレイナ――――――――ツキ
 オレ ハ ナゼカ ナク
 涙は流さない。
 深夜、たった一人で思い出せない失った何かを嘆いて。
 トキエという響きが締め付けてくる。

 あぁ――月が綺麗、だ――。

 オレ ノ ココロ ガ ナミダ スル。

 オ カ ア サ ン




あとがき

 こちら版のあとがきです。
 なぜ、トキエという名前に惹かれたのか――
 そのイメージ――妄想ともいいますけど――をふくらませると、トキエという名前の誰かが七夜志貴にかかわっていたのでは? という推測が成り立ちました。
 そしてオープニングをみると、おかあさん、がいます。
 親父と槙久さんを呼ぶ志貴くんです。これならお袋というはずです。なのにおかあさん。
 これはたぶん、記憶操作によって無意識に入り込んだお父さん「黄理」とお母さん「ときえ」のイメージがあるから――と思ったら。
そしてそれを区別するために遠野槙久を「親父」と呼ぶんだ、と――。
 朱鷺恵さんへの憧れはただマザーコンプレックスとなり、朱鷺恵さんと一回結ばれることによって昇華され、そしてはじめてアルクェイドさんやらシエル先輩やら、秋葉さんやら、翡翠さんやら、琥珀さんを「本当」に「愛する」ことができるのだなー、と思いまして。
 だからふたりは別れたんだな、と腑に落ちまして。

 そしてこれがどうしても気にかかったのは、これが月姫SSということ。
前の作品って、自分でいうのもなんだけど志貴くんと朱鷺恵さんでなくても書けてしまう内容なんですよ。
 憧れ以上、恋愛未満ですから。
 でもこの「トキエ」は、志貴くんでないと書けないので。
 そういう意味では、こちらの方が正当のSSなんですよね。
 そのキャラである理由、そのキャラでないといけない理由というのがある。
 だからこっちもアップしたんですよ。

 でも初体験にこういうのは、志貴くんらしいというかなんというか。


 

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