「ぅ………ん…………」

心地よいまどろみ。
しかしあまりに心地よすぎたためか、私はおぼろげながら意識を覚醒させる。

「ん………起きたか?」
「ぇ――――ぁ、ぅん」

すぐ横から聞こえた声に返事をしながら、上体を起こす。
あ、少し寒い。

「もう大丈夫なのか? あまり急に起きると」

ぶり返すぞ、と心配そうな顔でこちらを見るそいつ。
そっか、一緒に寝てくれてたんだ。
一緒に。
一緒のベッドで。
ふぅん………ずっと、い、っしょ?

「なななななな――――――――!!!!!!?????」

気づいた。
思い出した。
完全に覚醒した。
がばっ、と上半身を起こしながら、自分の格好を確認する。
汗は、あまりかいてない。
パジャマは上下共に脱いだまま、つまり裸。
それは真横の彼も同じで。

「お、おい………遠、坂?」
「ぁ、いや……何でも、ない」

顔が熱い。
もうこれでもかってほど。

おぼろげだったはずの記憶が、鮮明に。
自分が口にした言葉まで………全部。

「―――――(チラッ)」
「ん? どうした、まだ具合悪いのか?」
「ぇ、あ、………っと………うん、結構良くなったみたい」

うん、それは本当。
頭痛も収まったし、鼻も喉も、別に異常は感じられない。

そっか、と頷く声。
士郎が意外にも落ち着いていてくれたおかげか、私もすぐに正常な思考を取り
戻す。
まだ気温は低い。
毛布の中に戻りながら、士郎に答えを返した。

「ま、随分ぐっすり寝てたからな。明日の朝にはよくなってるだろ」
「………随分って、どれぐらい?」

時計を見ながら聞いてみた。
おそらく夕方におかゆを食べて。
それから士郎と……………してから5,6時間ほどというところか。
外はすっかり暗くなっていた。

……………んっ、5、6時間?

ということはつまり。

「アンタ、その間ずっとこうしてたの?」
「まぁな。別に今日はバイトも休みだったから」

あっ、セイバーには連絡しておいたから。
とかとか笑顔で言っている。

「それはいいわ。で、そのあとずっと私と一緒に寝てたわけ?」
「うん。一応見舞いに来たわけだし、放っておくのはまずいだろ? 遠坂だっ
て昨日はずっと俺についててくれたじゃないか」
「それならベッドの横で看病してくれればいいじゃない?」
「で、でも……お前、なかなか腕離してくれなかったし、起きた時隣にいなか
ったら怒るだろうと思って……」

ま、正論だ。
正論か?
まあそれはいい。
というか寝てるのだから怒られるも何もないと思うが………まぁ、それもいい。
いいのだが、どこかペースを握られているようで少し気に入らない。
一度彼に目をやって、

「ふぅん、で女の子の寝顔を5,6時間も、それも真横で見続けてたってわけ」
「な―――――――!?」
「ふぅ〜〜ん」
「なっ、なっ何言って……ち、違っ、それは仕方なくっ………!!!」
「あれぇ、顔が赤いわよ〜?」

よし、これで元通り。
ふふ……こういうところはかわいいんだから。

ふんっ、と顔を背ける士郎。
あ、本当に可愛いかも。
なんて考えながら。

「あ、怒った?」
「ぶぇ〜つ〜に〜〜」
「もう、拗ねない拗ねない。感謝はしてるんだから、ね?」

本当か?
といった視線が返って来る。
そのあと納得したように溜息をつく音。

本当にこいつは分かり易い。
でも、そこがいい。
馬鹿がつくほど正直で、歪だけど真っ直ぐで、未熟なのに変に凄い時があった
り。
でもやっぱり、私が一番望む彼の姿は、いつでも隣に居てくれる普段の士郎の
姿な訳で。

「ま、そういうわけだから、最後までちゃんと看病してよね」
「えっ………遠、坂?」
「頼んだわよ、士郎」

そう告げて。
心からの笑顔を一瞬だけ見せてあげた。
気づいただろうか?
いや、気づいてない、絶対に気づいてない。
こいつの鈍さといったら亀並、いやクジラ並なのだから。

「なんだそりゃ……って、まあいいか」
「今日は………ありがとね」
「……気にするなって、俺が好きでやってることだ」
「誰かの世話をすること?」
「違うよ。遠坂の傍に居ること」

少し。
いや。
いや違う。
これは。
これはかなり。
これはかなり嬉しい。

私は一瞬だけ士郎を上目遣いに見つめた後。


「えへっ、士郎あったか〜〜い」


そう言って、彼の胸にもう一度飛び込んだ。
でもう一度、なんだよそりゃ。
そう聞こえた。
そう呆れたような声が聞こえた。

でも、温もりはそのまま。
ずっと、ずっと傍に居てくれる。

言葉なんて、吐いてしまえば後は消えるだけ。
何の証拠も残さず、虚空へと去ってしまう。

真実の理を語るには、あまりにつたない手段。
形に残るものこそ真実。
虚無こそが消え去る。
それがあいまいならなおさら。

と、そんな堅苦しい事考えても仕方ない。
今私は嬉しいのだ。
それを正直に表せばいい。
それだけのことだ。

今日は…………ありがとね、士郎。

最後に本当に小声で、そう告げた。
でも、やっぱりこの朴念仁には聞こえていないはず。
聞こえていても聞こえていなくても、まぁどちらでもかまわない訳だけど。
どっちでもね。

今暖かいし。
今嬉しいし。
今幸せだし。
今、ちょっと眠いし。

うつらうつらとしてきた瞼を閉じる直前。

ああ、と。

誰かの声が聞こえた気がした。
誰だったろうか。
ぼぉっとして思い出せない。
あはは、本当にらしくないわ。


――――――まあ、それでも。


寝ている間ずっと抱きしめていてくれた、その誰かの温もりは…………やっぱ
り本物なわけで。


もう一度。
最後に彼の顔を瞼に焼き付けて。

夢でも会えるように。
たとえ虚構の世界であっても、彼と共にいられるように。
そう願って。


私は安らかな闇へと、やっぱり彼の腕の中で、安らかに落ちていった。


                        <fin>








〜〜あとがき〜〜

まぁつまり。
こんな感じで。(爆

末丸的凛様企画第一弾。
まぁ、凛様視点ですので、所々穴が………あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
(逃

指摘・感想・ダメ出しなどは掲示板の方でお願いいたしまする。

凛様がこんな台詞言ってくれたら嬉しいなぁって感じで書きましたので。
………やっぱりさいこ〜っす。
と、書き上げてから改めて思ってみたり。にゃは。
凛様をもう少し強気にしてもよかったかも。あはあはは。
完璧なバカップルですなぁ。

しかし………季節は夏なのに話は冬。
ああっ!!季節外れっ!!

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
お目汚し失礼。

では、また修行の放浪へと。

末丸。