ことっ。
すぐ横で音がした。
それは完全に落ちていた私の意識を、まどろみの域まで引き戻す。

「………んっ、起こしちまったか?」
「――――――――」

誰だろう。
誰か。
見覚えのある誰かが目の前に居る。

完全に覚醒してない意識は、その場の実像を歪ませて、そこに虚の具現として
形作る。

居るはずの無い、有り得ないはずの意識の虚像。
記憶の歪曲。
願望の消散。
結ばれる過去と未来。

「――――――――」
「おい、大丈夫か?」

声が聞こえる。
その誰かが私の名前を呼んでいる。
居て欲しい。
傍に………私の隣に。
私だけの、隣に。

「ふむ、まだ本調子じゃないみたいだな。お茶でよければ煎れてやろう」
「――――――アー、チャ―……?」

有り得ない名を呼ぶ。
一瞬目の前のその顔が曇って、首をかしげるような表情を見せる。
困ったような、呆れたような。
そんな、いつもの………何も変わらない顔。

「んっ……? お〜〜い、起きてるか〜〜?」

分からないわよそんなの。
起きてるの?
まだ私は起きていないの?
目の前で手を振るその誰かの顔を、もっとよく見るために、そっとその手を伸
ばして―――――

「………………ちょっ、おい、何やってんだよ」

その声で我に返った。
いや、声というより、その感触。
近づいた吐息、伝わる熱も、視界に掛かる靄を振り払っていく。
意識が元に戻った。
虚像が、消えた。
残っているのは、残ったのは。

「………………ぁ」
「…………………」

何をしているのだろう私は。
らしくも無く風邪を引き、こいつが見舞いに来てくれた事が少し嬉しくて、
そして何故かそいつの両頬に手を当てている。

在りえない者を見て、彼と彼を重ねて。
悪い事をした………はぁ、何やってるんだろう私、本当に………らしくない。

彼と”彼”は全くの別の存在。
それを分かっていて。
それを全て理解した上で、士郎を好きになっているはずなのに。
本当に風邪みたいね。
と、何か今更のように納得してしまった。

「と、遠坂…………?」

士郎の声。
それに連れてまた熱が伝わり、それが増していくのが分かる。
うん、わかる。
士郎がいる。
私のためだけに、ここにいてくれる。

あ、顔が赤い。

「……………えへっ、さわっちゃった」
「っっっ」

あ、もっと赤くなってく。
これ以上やったら顔でお湯沸かせるんじゃないか、ってぐらい赤くなってる。
手のひらが暖かい。

「あはっ、顔赤くなってる」

いや、多分私の顔も赤い。
でもそれよりももっと、彼の熱は強くて。
私もどんどん熱くなってく。

「う、うるさいっ、い、いきなり、お前がそんなことするからっ……」

指摘。
返ってくるのは。
うん、いつもの反応。
ちょっとからかってあげるとすぐに顔を赤くしてくれる。

そんな反応が楽しく、でやっぱり嬉しかったり。
それが、私には必要だと、不可欠だと、やっぱり再認識するわけで。
ゆっくりと。
彼の両頬に触れている手に力をこめる。

彼を、ゆっくりと。
優しく、引き寄せて。

「士郎………」
「ぇ?――――ん」

重ねる唇。
暖かい。
いや、やっぱりこれは私の熱かも。

まぁ、そんな事はどうでもいい。

重ねた部分。
触れ合っている部分は確かに熱を帯びて。

引き寄せられた彼も、初めの一瞬。
本当に一瞬だけ戸惑った様子を見せたが、すぐに無駄な力を抜いて、私に任せ
てくれる。

傍に、居て欲しい。
だから、欲しいから、求める。
欲しいなら、求める。
彼は、受け入れてくれる。
士郎は、ちゃんと受け止めてくれる。
不器用だけど。
頼りない時もあるけど。
それでも、ちゃんと、いつも傍に、居てくれる。

嬉しい。
嬉しくないはずなんて無い。
だから、彼は、私の、私だけの物なんだから。
それを証明するように。
無理やり押し付けるように。

引き寄せ。
かき集め。
求めて。
受け入れる。
貪って。
彼と一つになっていく。

交わっているのは舌だけ。
それでも伝わる感情・感覚は無限にその威力を影響を大きくしていく。

重なっているのはわずかな部分。
感じているのは唯一無二の欲望。
しかしだからこそ、そこから伝達される感触は無限大。

すると、不意に。

「ぁ―――――――ん」

彼、士郎との距離が埋まった。

分かってる………と。

決して強くなく。
決して乱暴ではなく。
決して無理矢理ではなく。
決して、嫌ではなく、自然に、抱きしめられた。

次に、心配するな………と、言われた気がした。

はぁっ、と交わり編み上げられていく互いの吐息。
重なるからだ。
更に増していく熱。
はたから見ればどうだろうか、はしたなく見えるだろうか?
構わない。
それでも。

「ちゅ……ん、む………ぁ」

絡まる。
近い。
触れ合い、同化するかのように、彼の舌が入ってくる。
共有し、奪い、与える。
入ってくるのか、招き入れているのか。
それとも私の舌が入っているのか。

「ゃん……ゅ……んむ………ちゅろ……ぁん」

彼に包まれながら、執拗に彼の口内を貪る。
吸い上げる唾液は、ただ甘く。
その感触は彼にとっても同じようで。

「ぁ…、と…ぉ、さ……かぁ………」
「っし……………ろ、ぉぅ……」

おぼろげながらに交わされる互いの名前。
目を閉じていても分かる。
この声。
この感触。
この体。
この空気。

ざらざらとした質感。
感じる。
一番近く。
私だけの場所で、蠢く彼を、士郎を。

「ひゃ、ん……っっ、ぁ………はぁぁ……む」

少し、交わり合う速度を落とす。

閉じていた目を開いて。
収まる事の無い衝動を胸に秘めたまま、一番近い距離で彼の目を自らの眼球に
投影する。

あは、やっぱり赤くなってる。

申し合わせたかのように、彼もその動きを止め、こちらを見つめて。
少しだけ開いた互いの距離。

「と、ぉさ……っっ!」
「んん――――――!」

今度は乱暴に。
それも私の方から、彼の体を引き寄せた。
熱が伝わる………体の芯に届く。

胸に顔を埋めて、そっと。

「傍に……居て………」

そう、小さく呟いた。
彼の顔は見えない。
でも、鼓動は聞こえる。
一瞬だけ、そのリズムが早まった気がした。
でも、その一瞬のあと。

「……………ああ」

私は、自分の鼓動の音で、彼の鼓動を打ち消していた。
つけ込まれてもいい。
それでも、彼はきっと笑って私の傍にいてくれるだろうから。

抱きしめ返される。
暖かい。
どんな毛布や布団なんかよりも、彼の両腕は私を優しく、暖かく包んでくれて
いた。

そもそも、昨日はついててあげたんだから、今日傍に居て貰うのは当たり前よ
ね。
問い掛けるように視線を合わせて。
そうして、また。
目が、合う。

もう、鼓動も聞こえない。

ただ、感じるだけ。
ただ見えるだけ。

彼の吐息を。
彼の視線を。
彼の気持ちを。
そして、私の、気持ちを。

「………………」
「……(こくん)」

視線に、頷きだけで答えた。

ゆっくり、上体が押し倒されて、もう一度唇を重ねられる。

「ぁ……は、……んっ、……」

甘い。
二人分の唾液が、私の口からこぼれ、頬を伝って流れていく。
彼はそれを一筋ずつ舐め上げながら、また私の唇を味わいに戻ってくる。
何度も、何度も。
もう既に秘部で交わっているかのように、互いの口からは淫音が弾け出す。

びちゅ。
ちゅぶ。

混ざる吐息はまさに音の媚薬。

は――――――ぁ。

彼の吐息が荒くなる。
私の吐息も、連れて熱く。

自分の喘ぎで興奮するなんて、どこかおかしくなってしまったのだろうか?
いや、私は正常だ。
興奮するのは当然、感情が高まるのも当然。

だって、今私は彼とこんなに深く絡まっているのだから。
私は彼と、同じ時を共有し、同じ快楽に沈むのだから。
もっと、深く、深く……唇だけじゃ………足りない。

つぅ――――と、混ざり合った液が落ちて千切れる。
契りて、千切れて、契れて堕ちる。

上……下、二枚の唇の間を獣のように動き回る士郎。
もはやどちらが求めてどちらが受け入れているのかも分からない。
ただ快楽に身を任せて。
ゆっくりと、その瞳の奥へ。

士郎の舌が、唇からゆっくりと下へ。
首筋から、パジャマの一番上のボタン……口で……器用に外された。
外気に触れる部分が少しだけ増える。
そして、二つ目。

「ぁ……………っは……」

三つ……四つ……五つ………程なくして、全てのくくりが開放された。
胸の真ん中だけが、空気に触れて少し冷たい。
まぁ、彼に包まれているのだから、そんな感覚無いに等しいのだけど。

両腕は私を包んだまま。
彼の舌が再びゆっくり、今度は上に道を逆に戻ってくる。
臍の周りから両の乳房の間……首筋、そして最後に唇。

まだ触ってくれない。
まだボタンを外しただけ。
もう簡単に触れられるというのに、指は動かず、舌はただ濃厚にキスを交わし
続けるだけ。
それでもいいけど……徐々に、私の中の熱が……。
我慢が、出来なくなっていく。

それを見透かしたかのように、深く舌を侵入させてくる彼。
気持ちいい。
確かにこれはこれで心地よい。
でも、まだ………まだ…………

「はむ……ん、はっ、ん……しろ、ぅ………」

クス、と笑い声が聞こえたような気がした。

動きが止まる。
キスが途切れる。

目が合って、全部見透かされて、それでも。
やっぱり私は、士郎に触れて欲しい。
士郎だけに、士郎だから、触れて欲しい。
もっと、もっとたくさん。

「もぅ……ばかぁ………」
「ふふ………可愛いな」

普段ならはっ倒してるかもしれないような台詞。
でも今だけは、本当に自分が可愛い女の子なのではないかと思えてくる。

幻想?願望?事実?虚構?

「嘘じゃ、無いからな」

釘を刺すように、私の幼稚な不安を打ち消して。
彼は笑みを浮かべながらそう言って、抱きしめていた両腕を離す。
私をベッドに横たわらせ、優しく、ごく優しく胸の先端に触れてきた。

微妙な感覚。
ボタンは外れているとはいえ、まだ布一枚隔てての愛撫。
快楽こそ伝わってくるが、それは私を焦らす手段以外の何物でもない。

だというのに、そんな軽い触れ合いだというのに。

「あっ……っ―――――ゃん……」

体は明確に反応していた。
小さくも存在を主張する私の二つの突起。
小さいけど、くりくりとしたその変化が、また士郎を興奮させて。
パジャマ越しに映る起伏を、彼もまたパジャマ越しに舐め上げていく。
あんっ、もぅ。

ちゅる。
ちゅぱ。

乳首の周りを舌で弄繰り回しながら、突起を指で弄ぶ。
時に歯で甘噛みして、時に吸い上げる。

まだ足りないのに、まだ足りないはずなのに。
このままで、これだけで昇天してしまいそうに、熱が上がる。
やはり、風邪を引いている所為だろうか。
もっと、たくさん……。

「そ、……な――――胸、ばっか、りぃ………」

そんな私の言葉を聞いてか否か、掛かっていたパジャマの前を開いて、完全に
上半身を露にさせる彼。
少し恥ずかしく。
少し、寒い。
少しだけ、外気に体が震えた。

「ぁ――――――」

不意に、動きが止む。

「ぇ………?」
「寒いんじゃ、ないのか?」

思い出したように。
少し罪悪感が募ったような表情で、そっとはだけたパジャマを直そうとしてく
れる。
でも、今はそんなことより。

「止めないで……」
「ぇ……っっ!?」
「寒いから………あっためて……士郎ので……あっためて……」

両腕を彼の首に回し、私の目だけを見つめさせた。
少しだけ迷ったような顔を見せたが、彼も、ああ、と頷く。

何よりも愛しい事を証明するためか。
何にも変え難い感情を表現するためか。
それとも。
ただ彼の熱を感じたいだけなのか。
ただこの気持ちが嘘では無い事を伝えるためか。

また影は一つになる。

今度は毛布の中に潜って、熱をこもらせながら、互いの四肢を絡める。

来て、と。

耳元で伝える。
心に囁く。

下半身のパジャマを、彼が指でなぞり、そっと取り払っていく。
羽毛の中で、露になる私。
もう一度キスを交わして、彼が、士郎の舌が、ゆっくりと降りていく。
徐々に増えていく快楽の波。
段々と高まっていく私。
恥ずかしい……でも、今はそれさえも気持ち良さに繋がって。

彼の頭が胸を越えて……臍……太ももを少し、そして最後に。

「はっ、ぁ―――――んっっ……ぅん」

じゅる。
ちゅるる。

吸い上げる音が聞こえる。
自分の一番敏感な部分を、士郎が舐めている。
それだけでも興奮するというのに、音まで。
留まる所を知らない。

「ゃ……そんな、っ音………」
「たくさん……濡れてる」

反射的に腰が逃げようとするが、彼の腕はそれを許してくれない。
陰核を吸い上げながら、私の花弁をゆっくりと愛撫していく。
指で。
舌で。
そして鼻や、歯でも。
私の敏感な部分を全部知っていて、そこだけをなぞる様に、執拗に。

じゅるる、ちゅぶ。
くちゅ、はむ。
じゅぶ。

「ああっ―――は………んっ、ん…ふぁっ」

舌が、入ってくる。
だらしなく溢れているであろう蜜をきれいにするかのように。
優しく、激しく。
指も、陰核を弄り続けたまま、止まらない。

じゅ。
ちゅぶ。
るじゅ……くちゅ。

ぐちゅぐちゅになっているのに更に掻き回され、だんだんと意識が白くなって
いく。
唇で挟んで………舌で穿って。
舌を潜り込ませて………軽くキスをくれる。

「やっ、だめ、んっ……ぁ、そんな、っにしたら―――しっ、ろうぅ、だめ、
私……もぅ、う」

言葉が淫音にかき消されていく。
快楽に意識が流されていく。

士郎に。

掻き回され、吸い上げられ、甘噛みされ。

士郎に、私。

「ひゃっ……ぁっ、っあ……あ、あ、あ、っっあ……イっちゃ……も、もう…
…はあっっ!!!!」

―――――――イかされちゃった。

気が付くと私は、彼の頭を自分の秘部に押し付けたまま、昇天の快楽に浸って
いた。
体が言うことを聞かない……でも、それが何よりも気持ちよくて。
そうしている間にも、彼の吐息が蕾にかかる。
それだけでもう、再びイってしまいそうになる。

未だ僅かに痙攣を繰り返している手をぎこちなく離し……彼を解放した。
潜っていた体が、もぞもぞと這い上がって。
また同じ視線。

「ごめん……私だけ……」
「いいって……」
「風邪、引いてるのに……士郎に………」
「俺の風邪だろ? なら、もう俺はかからないよ」

うん、と短く頷いて。
またキス。
このまま体全部キスで埋めてもらっても良いくらい、その味は甘い。
でも、それより。

「だから…今度は………ね?」

今度はそれほど深いものではなく、一瞬だけの口付け。
もう何度目かも忘れたが、士郎も飽きずに私に答えてくれる。
やっぱり、それが何よりも嬉しい。

彼が薄く笑って。
私も多分笑ってる。
少しだけ見つめ合ってから、もう一度。

来て、と。

耳元に吐息を吹きかけた。

それが合図になったのか、私がスイッチを入れたのか。
彼からの熱が、一気に増した。
絡んでいる四肢も、鼓動の速さも。
彼自身も。

秘部に、何か硬いものがあてがわれる感覚。
何か。
いや分かってる。
待ってる。
私は期待してる。

ず、ずず……ずぷ。
ぐじゅ……じゅぽ。

入ってくる。
肉襞の壁を掻き分けて、士郎が、私の膣内へ。

「とぉ、さか……!!!」
「ぁ――――っあっんっっ!!」

軽く昇天しながら、彼を受け入れる。
熱い。
包んでいる私の方が、暖かくなっている。
彼の肉棒で私が高まっていく。

「はぁ……ぁっ……」

息の荒さを感じたのか。
まだどこか心配そうな表情で私を見下ろしている彼。
でも、すぐにその顔は。

「動くからな……無理、するなよ?」
「うん……来て、士郎……………ぁあっ」

言葉が終わる前に、彼は始めていた。
屹立した自分の分身を、暴れさせて……前へ、後ろへ……奥へ、更に奥へと。

もう初めての頃のような痛みは無い。
実にスムーズに、彼は私の中を行き来している。
あ、私、ちゃんと……士郎に。

ずっ……ずん。

「は――――――ぁん、ぃ……」

溺れる。
本当に、快楽に溺れていく。
でも、この両腕に抱きしめられているなら、どこへでも沈んでいけそうな気が
する。
きっと大丈夫と思える。

「もっと、士郎………もっと強くても……いいから………」
「はっ、はっ……ああ、遠坂の膣内……すごい、気持ち、いい………」
「好きに動いて……いいから……」
「遠坂………」

あは、顔が熱い。
あは、顔が赤い。

彼も、私も。
照れてる。
恥ずかしい。
でも。

「士郎……?」
「ん?」
「私の事………」
「………大好きだ」
「……………うん」

嬉しい。
互いに浮かべる笑みは至福の証明。
一番近くにいて、同じ時、同じ快楽を共有する。

彼は私を貫いて、私は彼を受け入れる。
ぐちゅぐちゅっていって私のあそこ。
ぐちょぐちょになってる彼のあそこ。

抱きしめて。
舐め合って。
絡み合って。

もう自分が何してるのかもよく分からない。
風邪の所為だろうか。
彼と交わっている所為か。
どっちでもいい。
今はそれ以上の気持ちよさが、私を包んでくれているから。

「んんっ、んあんっ、ぁ、ぁ――――っん………は、あ――」

「やっ、ぁ…………ん、ん、にゅむ……」

「も、っと……来て………士郎ので……もっ、とぉ……」

擦れる私。
削り取られていく私。
何か今日は士郎に求めてばっかりだな、とうつろな頭で思ってみたり。
でも、それ以上の物を与えてもらってるから。
私もあげてるんだから、それくらいは当然だけど。

彼の匂いがする。
今は、どんなハーブよりも、彼の匂いで癒される。
本当の匂いではなく、ただそこにいると言う実感が、それを裏付けてくれる。
匂いだけじゃダメ……ちゃんと離さないでいてくれないと、駄目。

気づけば自分でも腰を動かしていた。
一番気持ちいい所を探して、どこも一番である事に気づく。
どんどん動きが激しくなる。
自分の意思ではなく、いや、無意識のうちにといったほうがいいかもしれない。

ごつ、ごつと。
奥に当たる感触。
一番深い所まで彼が来ている感触。
でも、もっと、もっと奥まで。

抱き起こされる。
抱きしめられて、今度は下から突き上げられる格好になる。
赤ちゃんみたいに、抱っこされて。
腰を振りながら、こんなにえっちな赤ちゃんはいないなって、自分で笑ってし
まった。

動きの幅こそ少ないが、重なり、絡む部分は最も広い。
士郎の背中に手を回して、招き入れている彼の分身を締め上げる。
私の体じゃないくらいに濡れた花弁は、彼を包みながら水音を弾けさせ続けて
いる。
ああ、これじゃ私が士郎を犯してるみたい。
本当は私が犯されてるだけなのに。
今だって、いや最初からずっと、私は士郎に突き上げられて。
背に回されていた彼の両手は、いつの間にか私のお尻を包んで、掴んでいる。
ずん、ずんっ、って……あんっ、また奥に当たった。

それでも私は士郎に抱きついたまま、大切な宝物のように、胸の中で彼を確か
める。
そすいて、彼の肩にそっと頭を置いて。

「はあぅっ……ぅあ……はっ……」

耳元に。

「遠坂、俺……もぅ……」

耳たぶを舐められながら、小声を聞きうける。
そんなの、分かってる。
だって、さっきからずっと士郎のどんどん大きくなってるもの。
私だって、どんどん気持ちよくなってるんだから。

「だめ、だ……このまま、だと……中に………っん……」

キスで言葉を封じた。
関係ない。
今はこのまま。
今だけはこのままで。
その後の事なんて知らない。

「………いいのか?」
「――――――バカ」

心にも……まぁないこともないか。
でも意地悪な笑みでそう言ってあげる。
で、またキス。
ああ、もうキスばっかり。

また、彼が私の中で大きくなる。
刺激も。
淫音も。
また、大きくなって。
私、もうどろどろになっちゃってる。
もう、早く来て欲しい、なのに……言葉は素直にはなり切れなくて。
こんな時でも。

「……責任は、とってよね」
「当たり前だろ」

どこか強気な言葉になってしまう。
それでも。
返ってくるのは分かりきった返事。
でもだからこそ、だからこそ安心する答え。

絡ませる舌。
どちらの物とも知れない唾液が、際限なく流し込まれて。
どちらの物とも知れない愛液が、だらしなく結合部から漏れて。

「は、あんっ!……んぁ……は、っ、あっっ、っあん……」

あそこの音が聞こえる。

ぐちゅ。

士郎が私の胸を舐める音が聞こえる。

ちゅる。
ちゅぱ。

舌を絡ませる音が。

るちゅ。
ん……はぁ。

「ぃ……く、ぞ………」

突き上げ。
締め上げ。

前後に。
上下に。

震える。

心が、体が。

「来………私、……士郎、………!!」
「遠坂……、くっ!! 出、る――――――!!」

あ、熱い。

視界が染まる。
体が染まる。

熱で、吐息で。
白く、熱く。

「ああっ、くはっ―――士郎、もうっ……ふぁ、 あ、んあっ、あ、ああっ、
あああああああああ!!!!!!」

一番奥で、彼の脈動を受け止めたとき、私はもう快楽(やみ)に、意識の大半
を奪われていた。

「ふぁ―――ぁ、っぁ……、っ……」

体が痙攣を繰り返す。
ぼぉっとして、体の中が熱い。
びくっ、びくって……私の中で士郎が震えてる。
その都度白く満たされて、もう、何度達したかも忘れてしまうほどに、快楽の
波が押し寄せる。

「はぁ、はぁ………しろぅ」
「はっ、ぁ……ん?」

ぼやける視界。
でも、熱だけは存在を消すことなく、私の中にある。

「遠坂―――」
「っ………ん」

やっぱりキス。
優しく重ねた唇は、もう感触さえあいまいだったけど。
もう満たされちゃったから……私、士郎でいっぱいになってるから。
で、もう一度私から。

ちゅっ。

あ、すぅ〜〜っと体の力が抜けていく。
何か温めのお風呂につかってるみたいな感じ。
気持ち良い。
もう、気持ち良過ぎて。
ほぅ、と小さくため息をついた後、彼の腕の中で、闇にその身を任せた。


(To Be Continued....)