Magichans Night 始動編


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1: ミラージュ (2001/08/21 21:46:00)[kagami at cablenet.ne.jp]

Magichans Night 始動編



「ゲァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」







死ぬんだな


死にたくないよ・・・


まだ生きていたいよ・・・


涙だろうか?それとももう意識が無くなりかけているのか?目が霞んできた


嘘吐き・・・・助けてくれるって約束したじゃない


ほんの少しだけ彼を恨んだ


それでも彼の顔を少しでも鮮明に思い出そうと夜空を見上げた





そこには


真っ赤な月と



「やれやれ・・・・・遅かったみたいね」




純白の外套を翼のように揺らし地に降り立つ金色の天使を見た





音もなく地に降り立ちさつきと男を見つめる



なんて綺麗なんだろう



じっと押し黙ったまま静かな佇まいで男へと向かって行く


「ったく・・・こんな騒ぎを大きくして・・・・こっちの手間も考えなさいよ」


そこで男はやっと金色の女性に気付いた


食事の余韻を怪我された男は怒りも露わに言い放つ


「・・・・誰だ貴様」


真紅の瞳で男を見据えその唇から言葉を紡ぐ


「殺し屋よ・・・あんた達みたいな化け物専門のね」


男が目を丸くする


まるで空飛ぶ車のような珍妙なモノでも見たかのように驚いた顔をして


そして




「ハッハッハッハッハッハハハハ!殺し屋!?殺し屋だと!?ハハハハハ!」





さつきは2人のやり取りを朦朧とする意識の中見つめていた






男が金色を薄笑いを浮かべながら睨み付ける




そしてさつきは見た




月に向かって掲げた右手が





血に塗れた指が





パチン・・・・・・・と、鳴らされるのを


「殺せ!」



死者の警官達が唸り声と共に一斉に金色に飛びかかっていく


一人、また一人と金色に多い重なっていく

もはや10人以上に組み敷かれているのだから人間に脱出は不可能だろう



凄まじい力で金色の手が、足がもぎ取られていく

もぎ取られた手に囓り付き骨を砕き血を啜っていく

肉を囓り尽くすと肉片の付いたそれを煉瓦の上に放り投げる

それはさつきの目の前に落ちてさつきの顔に血の飛沫を与えた



さつきは目を背ける



コートが剥ぎ取られ白い肌に牙が突き立てられる

その白い肌が死者の牙に耐えられるはずもなくザクリと肌は破れる

真っ赤な血飛沫が飛び臓腑が公園の煉瓦上にぶちまけられる

剥き出しになった肋骨をへし折り心臓を掴みだし歯で穴を穿つ






物の数分とかからずに金色はバラバラにされてしまった




聞こえるのは死者達の激しい唸り声と肉を咀嚼する音




「クッハッハッハッハッハ!もう終わりか殺し屋!」


さも楽しげに男が言い放つ


「クックックックあっけなかったなぁ?殺し屋というの・・・・・」



男がその言葉を言い終えようとした瞬間






細切れになった空気の断片が警官達を血の一滴も肉の欠片も残さず切り刻んだ




「な、な、なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」




「無駄よ」

声が聞こえたその時


               男は                               さつきは 



剥ぎ取られた外套はゆっくりと姿を変えていった



                              白い外套が             
「そんなものじゃ」

布の継ぎ目が消えていき人の形を作る




頭 胸 腰 腿 足首次々と外套は姿を変えていく






そして外套は金色の女性に完全に姿を変えた

                            金色になる様を見た



「私は死なない」







「馬鹿な・・・・・」



男は惚けたように呟く



「馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な!空想具現化だと!?」


狂ったように叫き続ける男



さつきには何が起こったのかいまだ理解できなかった



ただ漠然とあの女性が死んでなかったと言うことしか分からなかった


叫き続ける男、すでに冷静な判断力を失っているのは誰の目にも明らかだった


「なぜ真祖の姫がこんな所にいるのだ!?」





外套の乱れを直しながら金色は言う



「あなたには関係ない事よ・・・・・さあ」










「さっさと死になさい」


「おのれ!おのれぇぇぇぇぇぇぇ!」


男が拳を握りしめて牙を剥き出しにし金色に向かっていく



さつきには見えた




駆け抜けていく金色の女性が


風に散る木の葉よりもなお速く



それはまさしく疾風の如く




美しい白い手を祈りを捧げるように月に掲げ







振り下ろす瞬間を







男の両手をすり抜けるように剪断し左肩から右の腿にかけて真っ二つに切り裂いた

血が吹き出る間もなく今度は腹を薙いで

邪魔だとでも言うように右足で男の下半身を蹴り飛ばし

男の左胸に突きをいれた

そして左足だけで飛び上がりまるで宙返りをするように上半身を蹴り飛ばす

蹴り飛ばされた男は金色から離れたところに吹き飛ばされ

男の欠片達から一斉に血飛沫が上がった


月明かりの下、純白の外套には一滴の血潮も触れていない




木の葉が、かさりと落ちた




月を見つめ金色の女性は囁く



「これが何だか解るかしら?」


その右手には赤く脈打つ心臓


右の脇腹から上と首だけの男はもはや息も絶え絶えだ


「そ・・・・・・・は・・・お・の・・・・しん・・・・・ぞ・・・・う」


「か・・・・せ!お・・・の・・・しん・うを・・・・・かえ・・・・せ」

「イヤよ」



そして



あの男の心臓は










あっけなく握り潰された



「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

男の肉片達から激しく炎が噴き上がる

剪断された右手から左手から下半身から左の脇腹からそして首が

目から、耳から、鼻から、体中のありとあらゆる穴から炎を吹き出していくのを見た





そうしてしばらく夜空を赤い炎が照らし出し




男は灰となって風に掻き消された




夜空は深い闇に姿を戻した


さつきは男が呆然と燃え上がるのを見届けた



よかった・・・もうあの男はいないんだ





安心した瞬間首が思い出したように激しく痛んだ


「うあっ!!」


「さ〜てと、仕事も終わったし早く戻って紅茶でも飲もうかな〜ってあれ?」


金色の女性と目が合った


さっきまでは暗くてよく見えなかったけど今はどうゆう訳だかハッキリ見える


同性でもドキッとするほど綺麗な顔立ちだ



一分間ほど見つめ合っていたが首の痛みに耐えかねて助けを求めようとした


だが痛みのせいで声が上手く出ない


目に涙を溜めて精一杯助けを求めようとしたとき


金色の女性は突然声をかけてきた


「ねぇ・・・・あなた死にたくないの?」



死にたくないか?当たり前だ、好きこのんで死にたいヤツなんていない


精一杯の力で頷いた


「そう、でもあなたはあいつに噛まれたからもう人間ではないの」


なに?今なんて言ってたのこのひと?



「もう人間ではない?」



女性はなおも言葉を続けた


「あなたはこのままではもう人間として生きていくことは不可能よ

まあそうでなくてもあなたは人間でないから私あなたを殺さなきゃならないけど」


ちょっと待ってよ!?死にたくないかって聞いて置いて殺すってどういう事よ!


「もしあなたが死にたくないならば死なないで済む方法がたった一つだけあるわ」


純白の吸血鬼は微笑む。



「どうする?死にたくないんでしょう?」









夜はもう終わりを告げ朝の光が見え始めていた
















「おーい!もどってきましたよ〜!」

署内のデスクではブルーはインスタントコーヒーにケチを付けながら飲んでいた



「まあ出発から考えれば大分早かったほうか」



カップを手に持った女性が歩いてきた


警察署前は警官達でざわめいていた


「チョットどいてどいて!・・・おーいアルクウェイド〜!」


カップを持った女性がこちらに歩いてくる、この人も美人だなぁ・・・


「あ、ブルー!任務完了だよ〜」


外套を脱ぎ去り脳天気な笑顔を返す金色の女性アルクウェイド


うっすらと笑いながら返事を返すブルーと呼ばれた女性


「うむ、アパート生存者が0って報告されたが生存者がいるじゃなか上々だ上々」


「あ〜う〜ん違うよ生存者は0だよ」


アルクウェイドさんはちょっと困った顔をする


ブルーさんは怪訝そうな顔をする


「は?だって生存者0ってだったらその子はいったい何よ?」


アルクウェイドさんが目配せしてくる・・・ううやだなぁ

「あのね〜・・・」


合図と共に歯をむき出す

「この子吸血鬼になっちゃった!」

剥き出しになった私の口には鋭い牙が4本生えていた
















「「「「「「「「「「「「「「「なにぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
火がついたように怒りだすブルーさん


他の警官達はみんな散り散りになって逃げだして行く


アルクウェイドさんはちょっと困った顔をして笑っている

「+−0じゃないのよこのあーぱー!!!」
「だってなっちゃったもんはなっちゃったんだもんしょーがないじゃない」
「あんたが出だしからボーっとしてるからよ!」
「うわーそんな事言うの!?仕事帰りの私に〜ブルー横暴〜!」
「やかましいよ!まともにやりもしないでなにが仕事よ!」
「私のせいです〜ごめんなさいごめんなさい〜〜〜〜!!!!!!」


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