いつもの事ながら、思う。
視線の先にいるのは、ひたすらに剣の鍛錬に打ち込む士郎の姿。
声をかけることすらためらうほど真剣な姿を見て、いつもいつも思うのだ。
何かが足りない。
隠し味を入れ忘れたお味噌汁のような。
ひとつの信念に向かってまっすぐに歩くその姿に、いつも感じる不満足感。
それが何なのかいまいち分からずに、ギルガメッシュは今日も小首を傾げるのだった。
「くだらんな」
三年生に進学して、恐らくは一番最初であろうイベント、体育祭。
その内容について士郎から説明を受けたギルガメッシュの第一声は、なんとも冷めたものだった。
「そのような実にくだらん行事が祭りだと? 我を愚弄しているのか?」
「そう言うけどな、結構楽しいぞ? 皆で盛り上がって何かやるっているのは」
「それは分かる。だがそのタイイクサイとやらでそこまで盛り上がれるものなのか?」
「うーん、結構俺は楽しかったけどな。去年とか」
一年前を思い出す。
確かあの時はマラソンやら忍耐やらそういう体力勝負で単純に辛いものに誰も立候補しなかったので、それら全てを一人でやり遂げたものだ。
普通に死ぬかと思ったが、あれはあれで楽しかったような。
「どうせ御前のことだ。皆がやらない競技を全て引き受けたのだろう?」
「よくわかるな」
「それくらい誰でも想像がつくわ」
大げさにため息をついて頭を振る。
ギルガメッシュは相当なお祭り好きだ。正しくは楽しいことが大好きなだけなのだが。
毎日遊んで暮らしている彼にとっては退屈は天敵らしく、常に楽しそうなことを探して回っている。
士郎が学校からもらった行事予定表をなんとなしに見て、そこに書いてあった二つの『祭』の文字に激しく興奮。詳細を士郎に聞き出したというわけなのだが。
「タイイクサイとやらがそれだ。ブンカサイとやらも、さして期待は出来なさそうだな」
「まぁ体育祭のほうが人気もあるし、俺も体育祭のほうが楽しいと思うな。文化祭って言ったって結構できる事限られてるし」
「全く、何が文化の祭りだ。何ひとつ楽しめないで何が文化か」
「いいじゃないか。それに、どうせギルガメッシュにはあんまり関係のない話だろ。この年になって体育祭やら見に来る保護者なんて殆どいないぞ」
「それはそうなのだが」
納得がいかん。祭りを一体どのように考えているのか。
不完全燃焼。
ギルガメッシュはどうにもやりきれない思いを噛み砕くように、紅茶を一気に飲み干した。
「んぅ!」
熱かった。
最近、またまたギルガメッシュの様子がおかしい。
こういうときはいつもいつもよからぬことを考えているのだが、今回は様子がおかしい期間、すなわち『よからぬ計略作製期間』が妙に長いのだ。
よほど規模の大きな事を考えているのか。
とにかく、ギルガメッシュが何の行動も起こさずにただ沈黙を貫いた数日間。衛宮家の面々は気が気でなかった。
そしてついに。
ギルガメッシュは動いた。
それは日本が少し春から抜け出ようとしていたころである。
「いきなりあれだが、転校生を紹介する」
三年生になり、藤ねぇに変わって士郎の担任となった男性、十河先生は突然そんなことを言い出した。
一切聞かされていない話に士郎のクラスはざわめいた。
何々転校生?男子かな?いや女子に決まっている!何おにゃのこだとよしついに俺の時代到来か馬鹿言え彼女は俺のものだなんだとやるかいい度胸だかかってこいや!
女子は教室上部に速やかに避難。男子は何故かきっぱり二つに分かれて掴み合いの喧嘩を始めようとしたところで。
「あー、お前ら」
十河が投げやりに頭をかきながら、
「転校生は男だぞ?」
………
痛々しいほどの沈黙。
しばらく呆然と立ち尽くしていた男子たちは、しかしすぐに自分の席に戻ると何事もなかったかのように雑談を再会した。それを白い目で睨みながら、今度は女子がきゃいきゃいと盛り上がり始めた。
「なんだか、最近みんなテンション高いよな」
「受験勉強しなきゃならないから、少しでも楽しそうなことで楽しんでおきたいんだろ」
「賑やかなのは構わんが、喧しいとなると困ったものだ」
先ほどの騒ぎに参加しなかった三人は、それぞれ自分の意見を述べた。
しかし、この時期に転校生と言うのは珍しい。普通なら期の境や長期休み明けなんかに来るものだと思うが。
それに、転校生と言うのはそれだけで物珍しさがあるものだ。
そんなこんなでいつもよりテンションが高くなりつつある教室を一瞥して、十河はため息をひとつ。
その情熱を勉強にも向けてくれお前ら。
「とりあえず、ほら入ってこい」
十河は廊下に手招きをし、つられて一人の男子生徒が入ってきた。
まず目に付くのは、その金髪。
傍目から見ても一発で分かる。あれは外国人さんだ。間違いない。
外国人さんが壇上に上がる。こちらに振り向く。
その顔を見て男子は忌々しげに舌打ち、女子は胸を打ちぬかれたかのように静寂。
そして士郎は、呆けたように口をぽかんと開けてその男の顔を凝視した。
男が士郎の視線に気付いて、口元に偉そうな笑みを浮かべた。なんとも似合うその笑みが、女子のざわめきを作り出していく。
「ほら転校生、とりあえず自己紹介だ」
十河に促され、その男は口を開いた。
「我が名はギル。ギル・ディスカルだ。しばしの間、世話になってやるぞ」
なんとも偉そうに話すその男は見間違えようもない。衛宮家に君臨する『二足歩行型自動貯蓄能力完備財布』ギルガメッシュだった。
「どうした衛宮。あの傲慢な男、知り合いか?」
「・・・・・・いや、ちょっと色々あって」
慎二に声をかけられるが、それどころではない。
あいつ、何か考えてると思ったら・・・・・・!
士郎は机に頭を押し付けたまま、とにかくギルガメッシュと視線を合わせないよう心がけた。
朝のHRが終って、士郎はすぐさま教室を飛び出した。ギルガメッシュはクラスメイト──主に女子──に囲まれていたので、とりあえず放っておこう。
それより、この事態をみんなに伝えるのが先決だ。
そういうことで廊下を走っていると、階段に差し掛かったあたりで遠坂、桜と出くわした。
何故か二人とも走ってきたようだった。
「二人とも、丁度よかった!」
「士郎、丁度よかった!」
「先輩、丁度よかった!」
はもる。
「うちのクラスに転校生が来て!」
「うちのクラスに転校生が来て!」
「うちのクラスに転校生が来て!」
今度は台詞まで同じ。
「その転校生がギルガメッシュなんだよ!」
「その転校生がライダーなのよ!」
「その転校生がセイバーなんですよ!」
そこまで叫んで、三人が三人とも口を閉ざした。
沈黙。凝視。整頓。理解。
間をおいて、士郎が重々しく口を開いた。
「……どういうことだ?」
「それはこっちの台詞。一体何がどうなってるのよ」
「そういえば、ライダーやセイバーも最近少し様子がおかしかったですよね」
揃ってため息。
いつもいつも何かと『遊び』たがるギルガメッシュだが、まさかあのセイバーとライダーすら丸め込んでくるとは。
しかも断固反対するだろうこんなこと、よく説得したものだと呆れながら感心した。
「何を急いでどこへ行くのだ、全く。我はここの勝手がまだよくわかっていないというに」
悠然と我が道を歩いてくるギルガメッシュ。集まる人の波が彼の歩く先だけ二つに分かれ、それはまさにモーゼが大魔神でえんやこらだった。
「待ってください、サクラ。ちょ、違います、離してください!」
まとわりつく生徒をどうにか振り切りながら、どうにかサクラを追いかけようとしているセイバー。まとわりつく生徒に性別の隔たりはなく、女子からは「お人形みたいでかわいー」といった理由で大人気だった。
男子は言うまでもないだろう。
というか、下手するとセクハラだぞお前ら。
「リン、何処へ行くのですか。先ほどからなにやら注目されているような気がしてならない」
二人と同じく生徒に囲まれて登場するライダー。ただ、彼女も生徒にまとわりつかれることはなく、どちらかと言うと高嶺の花を遠くから見守る視線にさらされていた。
簡潔に述べれば『お姉さま』だ。
三者三様で登場した各々、というよりギルガメッシュに、士郎はくってかかった。
「ギル、これはどういうことだ。どうせお前の差し金だろ?」
「差し金とはまた随分と酷い言いようだな」
「当然でしょ。今度は一体何を考えてるのよ」
「そうです。それにライダーやセイバーまで巻き込んで」
「まて、それではまるで我一人が悪事を働いたかのように聞こえるではないか」
「実際その通りでしょ」
遠坂はふふん、と鼻を鳴らす。だがまだまだ不満は残っているようだ。
「セイバーにライダーもギルガメッシュなんかにそそのかされちゃって。何か弱みでも握られたの?」
「いえ、別にそういうわけでは……」
「まぁ、一応自分たちの意志でここに来たということになりますね」
遠坂は歯切れの悪い二人にますます表情を悪くする。
どうやら完全に非はギルにあり、と思っているようだ。
「ギル、一体何のつもりなのか話してくれないか?」
「ふーむ、別に話すほどのことではないのだがな。あぁ待てリン。話すからとりあえずその光り輝く左腕をしまってもらえんか平和とは素晴らしいものであって御前もこの注目の中魔術を使うわけにもいくまい」
そう言われ、遠坂はギルガメッシュに向けていた──と言うより完全にその喉元を引っつかんでいた──左腕をしぶしぶ長袖にしまいこんだ。
「さて、何のつもりかといったな。理由は単純だ。セイバーやライダーも、家で何もせずいるよりはこういうことがあったほうが幾分ましかと思ってな」
随分とまともな理由を挙げる。が、これはいつものことだ。
「とか言って、どうせお前が暇だからとか言う理由なんだろ、本音は」
「随分と愚弄してくれるな。我は同じ英霊として身を案じてだな……あぁ、もうこんな時間か。話の続きは昼ということでいいな」
じゃ、と片手を上げて颯爽と立ち去るギルガメッシュ。それに呼応するように、一時間目の予鈴が校内に鳴り響いた。
「……逃げたわね、あいつ」
「そうですね」
悔しげに唸る姉妹二人。それを少し困った笑みを浮かべながら見守る英霊二人。
そんな彼女らを横目に、士郎は自分も教室へと急いだ。
「士郎、昼休みに教室に行くからね!」
「分かった!」
背中にかけられた声に背中越しに答えた。
答えながら思った。今度はどんなことをやらかしてくれるのだろうか。
口元に笑みが浮かぶのを、隠し切れなかった。
毒されてるな、俺。
そんな自分も悪くないと思った。
「衛宮、何であいつがこんなところに?」
「いや、それは俺が訊きたいって言うか……」
教室に戻って授業開始。先生が黒板になにやら難解な方程式を書き上げながら理解不可能な呪詛を唱えている最中。後ろの席である慎二が士郎に問いかけた。
その慎二の後ろの席では、金髪赤眼の男子生徒が机に足を乗っけてさも偉そうな態度で座っている。
先生はそれに気付いているのかいないのか、とにかく徹底無視する構えのようだった。
それはともかく。
慎二は聖杯戦争中、いろいろとあってギルガメッシュの事は知っていた。一成はまだ一度も顔をあわせていないので知りはしないのだが。
後でなんとか裏口合わせる必要があるだろう。
「昼休みになったら遠坂たちが来るらしいから。そのときに問いただすつもり」
「ふーん。ま、僕はどうでもいいんだけどね」
淡白な奴である。
そんなこんなでお昼休み。
授業という名の束縛から一時的に解放され自由の身が云々な生徒たちは、それぞれ優雅な昼食を開始していた。一部学食戦争を起こしている連中は除いて。
さて、士郎たちはというと。
「で、どういうことなのか説明してもらえるかしら?」
いつもの優等生モードの遠坂の前にいるのは、言うまでもなくギルガメッシュだ。
既にこの場には士郎、遠坂、桜、ギルガメッシュをはじめセイバー、ライダー、暇つぶしに慎二、一成が顔をそろえていた。
「ふむ、説明は構わんが先に昼食をとるとしないか? 下手に話が長引けば昼食を逃すことになりかねんしな」
何故かセイバーを見ながらそう提案するギルガメッシュ。遠坂も同じくセイバーを見て、小さくため息をひとつ。
「……まぁ、いいわ。それくらいの猶予は与えてあげる」
「……なにやら侮辱されたような気がするのですが、気のせいですか?」
「気のせいだ。忘れろ」
「なにやら納得がいきません」
「まぁまぁ二人とも。そうと決まったんだから、さっさと食べに行くとしないか?」
士郎が二人の間に割って入った。当然その意見に異議を申し立てるものはこの場にはいない。
「ふむ。ではさっさとガクショクとやらに行くとするか。何でも生徒はガクショクとやらで食事を取るものらしいからな」
「いや、俺たちは弁当があるだろ? そういう生徒は学食に行く必要がないんだ。だから屋上にでも行くつもりだったんだけど」
何処からそんな知識を仕入れたのかは知らないが、ともかく士郎はギルガメッシュを制した。
ギルガメッシュは動きを止め、数秒沈黙。
なにやら考えているようだ。
「……それは弁当がある場合であろう? 生憎、我はそのようなものを持ち合わせてはおらん」
「あれ? 今朝ちゃんとみんなの分の昼食を作ったと思うんだけど。あれはどうしたんだ?」
「あぁ、あれならセイバーが腹が減ったといって我等の分全てを平らげてしまってな」
「あー、成る程」
「私は食べてなどいません! シロウも何故そこで納得するのですか!」
「いや、だって…」
セイバーだし。
その場にいた、若干二名を除く全員が、そう言いたげな目でセイバーを見た。
そんな視線にさらされて、頬を膨らせて唸るセイバーは、それはそれは可愛かった。
ギルガメッシュが笑う。
「冗談だ。我等の分は我が預かっている」
「なんだ、それなら問題ないか」
「そうだな。屋上へと向かうか」
屋上。
実際あがれるところがあるのかは定かではないが、少なくともこの学校では生徒が自由にあがれるようになっている。
冬場などは人気もないものだが、春先やら夏にもなってくると、昼休みにちらほら食事をするものを見かけることも増えてくる。
「ふむ、なかなか悪くない景色ではないか」
ギルガメッシュを筆頭に屋上へと上った面々は、それぞれ自分の食事の準備を始めた。
とはいっても皆揃ってお弁当。用意をするといってもそれほど大げさなことではない。
大げさなことではないのだが。
「あれ、ギルは?」
いつの間にか、ギルガメッシュが姿を消していた。さっきまでギルガメッシュがたっていた場所には、かわりに三段ほど重ねられた弁当がおかれていた。一段はライダーの、残りはセイバー用に士郎が今朝用意したものだ。
士郎はあたりを見渡す。と、そこで給水塔によじ登っている金髪を見つけた。
「な、何やってるんだあいつ」
「……さぁ」
分かるわけがない。
ギルガメッシュはそのやり取りが聞こえていたのか、よじ登りながら答えた。
「いや何。王たる我はやはり少しでも高いところに行って飯を食すべきかと思ってな」
わけの分からない答えに思わず沈黙する一同。
「馬鹿と何とかは高い所好きっていうものね……」
「何か言ったか、リン」
「別に。って、ちょっと士郎。なんであんたまで登ってるのよ」
「いや、たまにはいいかなと思ってさ」
どこかうきうきした表情でそう答える士郎。ギルガメッシュに続いて登りきると、なんとも少年らしい笑みを浮かべながらその隣に座った。
それを見ていた慎二が。
「やれやれ、しょうがない。僕も付き合ってやるか」
これまた楽しそうな笑みを浮かべ、士郎の隣によじ登った。
「ふむ、あやつら……」
「全く、揃いも揃って馬鹿なんだから」
「そうだな。あの馬鹿どもがいらん事をせんか見張らねばな。一生徒会長として」
なんてとってつけた理由なのか。
一成も駆け足で給水塔まで寄ると、ギルの隣へと座った。
男四人が並んで座った。
みんな、馬鹿みたいに楽しそうだった。
「……揃いも揃って、ホントに馬鹿ばっかりね」
「同感です」
ため息をつく姉妹。だがその目には、どこか羨ましそうな色が浮かんでいた。
「男の人が考えることはよくわかりませんね」
「あれは男性と言うより、むしろ子供なのだと思いますが」
困ったような、それでも少し楽しそうに笑うセイバーとライダー。
四人が見上げる視線の先では、やはり楽しそうに騒ぐ馬鹿四人。
「……あたしたちも、登ろっか」
「そうですね」
遠坂たちも駆け出した。楽しそうに笑いながら。
「お、なんだ。結局みんな登ってくるのか」
「登るのは構わんが貴様等狭すぎだ! もっとこの我に場所を譲れ!」
「いいじゃない、ちょっとくらい」
「これの何処がちょっとだ女狐が! 後から来たのだから少しは遠慮というものをしたらどうだ!」
「まぁ落ち着きなよ一成。ほら、桜も登ってきたらどうだい? この手につかまって」
「あ、ありがとうございます兄さん。助かります」
「二人もほら、こっちに何とか座れそうにないこともないスペースがあるぞ」
「む……すみませんシロウ」
「士郎、先にこのお弁当を受け取っていただけますか? これを持っていては少々登りづらい」
「えぇい、貴様等狭過ぎると言っている! もうよい! 我は更なる高みを目指すぞ!」
「高みって、もう上に登れない……ってこら! 給水タンクによじ登るな!」
「止めるなシロウ! 我には王として引けぬときがあるのだ!」
「何わけわかんないこと言ってるのよ! 危ないからやめなさい!」
「学校の備品をこれ以上壊すな! ただでさえ衛宮に世話になりっぱなしなのだ!」
「うお、貴様等足をつかむな足を! ちょ、待、なにをするきさまらー!」
ギルガメッシュ、周囲を巻き込んで転倒。
周囲、さらに周囲を巻き込んで転倒。
結果、その場にいた全員が給水塔から転げ落ちた。
突然のことに反応できず、全員が全員身体をしたたかに打ち付けて呻いていた。
特に一番高いところから、頭から落下したギルガメッシュは「くぉぉぉ!」などとうめき声かどうかすら怪しい声を出しながら転げまわっていた。
そのギルガメッシュの顔面が派手に蹴飛ばされた。仁王立ちした遠坂がそこに立っていた。
「痛いわね! 何するのよ!」
「それはこちらの台詞だ! あの場で足を引っ張るなど愚考以外なにものでもないだろうが! ましてや男子の顔を足蹴にするとは貴様何様のつもりだ!」
「ま、まぁ二人とも落ち着けって」
「桜、怪我はないか?」
「あ、はい。大丈夫です兄さん」
「リンと士郎は……怪我はないようですね。イッセイ……でしたか、お怪我はありませんか?」
「む、これはこれは。俺は怪我などありません。それより、セイバーさんは大丈夫ですか?」
「はい、私も怪我はありません。それよりリンとギルガ……ギルを止めなくてもいいんでしょうか」
「ほっとけばいいんじゃないかな」
「うむ、俺もそう思う」
「だー、お前ら見てないで手伝えって! って遠坂左腕まくるなギルは宝物庫を持ち出すな!」
ぎゃーぎゃー騒いで、叫んで、角を突きつけあって。
距離がなくなって、みんなで肩を組み合って、零距離でお互いの顔をにらみ合って。
何故だか妙に楽しかった。
みんなが浮かべていた笑みは、とても楽しそうな笑みだった。
あとがき
長いプロローグ終了ー
次はメインとなる体育祭馬鹿です。ネタたまったら書きたいと思います