チ、チチチ・・・・・・
どこからか小鳥の囀りが聞こえてくる。
覚醒しきらない頭でそれを認識する。
「ん・・・・・・、朝か・・・・・・?」
いつの間に寝てしまったのだろう?
いや、というよりも昨日のことが霞みがかったようにはっきりとしない。
なんだかふわふわと脳みそがクラゲになったような感覚。
えーと、おれのなまえはえみやしろう。
せいぎのみかたをめざすまじゅつしみならい。
ん、OK。だんだん頭もはっきりしてきた。
何時かはわからないけど、目も覚めてきたのでそろそろ起きるとしよう。
確か今日は休みだし、ゆっくりと少し凝った朝食を作るのも悪くないだろう。
またいつもの日常が幕を開ける――――――
「目が覚めたのですか?シロウ。」
―――――はずだった。
なぜだろう・・・・・・すぐ近くから女性の声がする。
それも透き通るような綺麗な声だ。
しかし、聞き覚えがない。
桜でも藤ねえでもない。
桜はもっと可愛らしいと言うか、悪く言えばもっと子供っぽい感じの声だし。
藤ねえは・・・・・・、
俺を起こすのに声をかけるだけなんて穏便な方法はとらないだろう。
大体、虎の咆哮はこんな綺麗な声じゃない。
ん、きっと空耳だ。
なんだか体もだるいような感じがするし疲れが抜けていないんだろう。
しかし参ったな、昨日そんなに疲れるようなことをしたっけ?
などと自分を言い聞かせている中、
「どうしたのです?目が覚めたのではないのですか?シロウ」
自己催眠を打ち砕く声が響いた。
空耳じゃない?でもじゃあいったい誰?
必死に再度脳内検索をかける。
該当者、無し。
ど、どーなってるんだ?と戸惑いつつ目を開けると、
そこには、女神がいた。
らいだーさんといっしょ
「あ、やはり起きていたのですねシロウ。体の調子はいかがですか?
昨夜はその、少し無茶をしてしまいましたから・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「でも昨夜のシロウ、とても可愛かったですよ。必死になって・・・・・・、
シロウ?どうしたのです?魂の抜けたような顔をして。」
めのまえにめがねをかけたおんなのひとがいる。
それもこのよのものとはおもえないくらいびじんの。
きぬのようなながいむらさきいろのかみ。
はくじのようにしろいはだ。
さくらいろのくちびる。
でももっとおどろくべきことは・・・・・・、
はだかだった。かのじょだけでなくじぶんまで。
「あ、うあぁ?」
声が言葉になってでてこない。
だ、だって目の前にいる美人さん(仮)は裸なのだ。
それがこれまた裸の俺とひとつの布団で向かい合って寝ている。
これは夢?それとも幻?その割にはなんとゆーか生々しいし・・・・・・。
布団の上からでもわかるくらいスタイルがいい。
あ、掛け布団のすそから胸の谷間が見えてる・・・・・・。
は、鼻血でそう・・・・・・。
「いやですシロウ、そんなに見ないでください。
それとも、ふふ、またしたくなってしまいました?」
美人さん(仮)は恥かしそうに頬を染めながらも胸元を隠そうともせず、
熱っぽい視線をこちらに向けてくる。
シ、シタクナルッテナニヲデスカ!?
い、色っぽい。なんとゆーか匂いたつような色気というか、
これが大人の女というものなのでしょーか?
スタイルだけなら桜も最近成長期のようだし匹敵するかもしれない。
藤ねえも年齢「だけ」なら近いかもしれない。
でも目の前の人は明らかに別物だ。
だって俺はあの二人に見つめられたからってドキドキすることはあっても、
緊張して動けなくなるなんてことはなかった。
いやまあ、この状況が異常だってのもあるけれど。
とはいえこのまま黙っていても仕方がない。
なるべく彼女の肢体を見ないように視線をはずし、
何とか心を落ち着けて言葉をつむぎだす。
「え、えっと、ど、どちら様でしょうか?」
美人さん(仮)の顔が驚愕の色を帯びる。
「え?わ、私の事がわからないのですか?」
そういいながら美人さん(仮)は勢いよく上半身を起こす。
それにつられて俺も軽く半身を起き上がらせる。
うあ、勢いよく起き上がったせいで掛け布団がずれて豊かな胸がほとんどあらわに・・・・。
たわわに実るなんていうけどまさにそんな感じかも。
もし俺が布団をずらしたりしたら先端のところまで全部・・・・・・。
はっ!?俺はなに考えてるんだ!?そ、そんなことできるわけないだろ!
い、いやでもちょっと魅力的な案件かも。
だってあんなきれいなんだし、きっと全部見えたらもっと・・・・・・。
「シロウ。シロウ?本当にどうしてしまったのですか?」
美人さん(仮)が少しあわてたようにして俺の肩を揺さぶってくる。
と、まずいまずい、トリップしてる場合じゃなかった。
「ご、ごめん、なんだか頭がぼんやりしてて・・・・・・。」
「もう、困りましたね。・・・・・・昨夜精気を吸い取りすぎたのでしょうか。」
「え?」
「いえ、こちらの話です。お気になさらずに。」
彼女は何かうつむいてつぶやいていたが、
一転してこちらに向き直るとにこやかに笑った。
なんだろう。今彼女が微妙に黒かったような。気のせいかな?
と、彼女は仕切りなおすように大きく息をつくと再び口を開いた。
「仕方がありませんね。では改めまして。
私はライダー。此度の聖杯戦争においてエミヤシロウに、
すなわちあなたに召喚されたサーヴァントです。」
ライダー、聖杯戦争、サーヴァント
―――――ズギン
―――――何か鋭い痛みのようなものが心臓を貫く
―――――赤と青の二人の男
―――――穴を穿たれた俺の心臓
―――――そして光の中から現れた黒い女
さまざまな光景が俺の頭にフラッシュバックしてくる。
ああ、そうだ
俺は昨日――――――