そこは『元々』住宅街だった。
そこには人が居て
そこには活気が溢れて
そこには幸せがあり
そこには笑顔があった。
しかし『今』は戦場。
ここには死体が転がっていて
ここには赤い紅い炎が踊り
ここには死があらゆる場所に充満し
ここには絶望以外存在しない。
ある人は叫び狂い
ある人は炎から逃げるように走り
ある人はその場から動かず
ある人は天を見上げていた。
まるで『煉獄』
その中で戦う4つの影。
一人は衛宮 切嗣<エミヤ キリツグ>
魔術協会から『切り札』<ヒットマン>と呼ばれた最強の魔術『使い』<メイガス>。
一人はセイバー<アルトリア>
切嗣に召還された騎士道を重んじる伝説の『剣の王』<騎士王>。
一人は言峰 綺礼<コトミネ キレイ>
聖堂教会から参加した『人の感情』でしか快楽を得る事が出来ない『代行者』<エクスキューター>。
一人はアーチャー<ギルガメッシュ>
言峰に召還された傲慢なる人類最古の『英雄』<英雄王>。
彼らから放たれるは殺気。
平凡が喰らったならば尻餅を着く程の威圧感。
己の『生』を賭けた『戦争』<賭博場>
彼らの横にはかつて『征服王』<イスカンダル>と呼ばれた男とそのマスターの死体が二つ
彼らの戦いは人類の人智を超え
それでいながら華麗に舞うかのようにぶつかり合う。
そして、
彼らの横で
静かに
感情の無い凍った目で
『聖杯』 <願望機>
が見下ろしていた。
ある世界に居る男 第一部 "part7"
1-1、『第4回聖杯戦争最後の夜」
あれから半日ほど経っただろうか?
時刻は丁度九時を回ったころ。
僕達は今はホテルに居る。
『あの』あと僕達は少しばかり煎餅を食べた後、いつ『家の主』帰ってくるか分からないと言うことでキリツグの家を出ることにした。・・・・・少しだけ煎餅貰っていったけど。
今僕達は『対策』を練っている。今まで僕達は何とか生きてこれた。が、今度は違う。今度は僕達から行かなければ確実に狙われる。だから僕達の力量で勝てないのならやる事は唯一つ。相手に勝てる『作戦』を考えるしかない。
だが、
「ねぇ、何か良い案出た?」
ヒカリはベッドでゴロ寝しながら聞いてくる。
・・・・やる気はあるのだろうか?ホントにこれが日本の忍者なのだろうか?問い詰めたくなってくる。
「いやぁ、全然」
僕は頭を掻きながらテーブルに向かって答える。
そう、良い作戦が全然思いつかないのだ。
作戦事態は色々思いつくのだが、どれもこれもリスクが高すぎて実行することが不可能に近い。
実際に昼に奇襲するやら何やらあったのだがそんな事したら世間に知らてしまう可能性が高い。結界にも限度があるため不可能。
・・・・・何か眠たくなってきた・・・・
「はぁ・・・・・結局良い案で無いじゃないの」
ヒカリはそう言ってベッドに潜る。
もしや、
「お前・・・・寝る気か?」「うん」
うんってあんた・・・・・・・
「やる気あ「無い」」
そう言って彼女は寝息を立てながら意識の底に潜っていく。
使い魔って寝なくてもいい筈なんだが・・・・・
・・・・・はぁ。
ココロの中でため息を着く。
実際にため息したい所だがそんな暇は無い。
もしかしたら今この瞬間に襲われる可能性だってある。
敵の残りは後5人
剣士<セイバー>
弓兵<アーチャー>
騎兵<ライダー>
術師<キャスター>
狂器<バーサーカー>
今まで会ったサーヴァント達は4人
かなりの実力を持った金髪の少女。彼女は確かキリツグがセイバーと呼んでいた。
その少女と戦っていた時に乱入してきた金色の男<ギルガメッシュ>。あの男は数々の武具を召還して飛ばしてきた。多分キャスターかアーチャー。
満月の夜に会った変な男<イスカンダル>。あの男は兵を召還していた。キャスターか?
そして今日キリツグの家で戦った<ジャン>。彼は確実にバーサーカーのはず。
この中で会ってないのは、
<ライダー>だけと言うことになる。
まぁこれは推測なのだが。
ヒカリはすうすうとかわいらしい寝息が聞こえる。
落書きしたろか?
そんな事を考えていると僕も眠くなってきているのに分かる。
今は対策を考えるより眠気対策かな?
部屋を見回る。
冷蔵庫の中には・・・・・煎餅しかないか。
ならコーヒーを買いに・・・・・どこに?
シャワーを・・・・・・浴びたら眠くなるかも。
・・・・・・・どうしよう?
と、カーテンの閉まった窓が目に入る。
そうだな、
「景色でもみるか」
立ち上がって窓に向かう。
シャーとカーテンを開ける。外はぽつぽつと町が輝いている。
光
そこには人が居て、
そこには文明があって
そこには様々な感情が入り混じる場所。
外は綺麗にとまで言わないが、十分美しさはあると思う。
窓を開ける。風がさらさらと僕の頬を撫でていく。気持ち良い。ん〜と精一杯背中を伸ばして体の全てで風を受け入れる。これだけでも目が覚めていく。
感傷に浸るってのも悪くないなぁ。
ドクン
え?
橋を見る。その先で光が見える。
オカシイ
その光は何かとてつもない『魔力』のぶつかり遭い。
戦闘か?
目を<超特化>させる。
よく見ると、そこには小さな少女と剣を交える『帝國軍兵士』。それを見守るいかにも魔術師っぽい服を着た男と『征服王』。
そして、
「キリツグ・・・・・?」
キリツグの手には一人の白い肌をした雪のような幼女。
「あれが『聖杯』ね」
「ドワァ?!」
いつの間にヒカリが後ろに立っていた。
心臓に悪いよホント。ホントに、
「何驚いてるのよ?行くわよ。準備して」
彼女がドアに向かって歩く。
準備って・・・・・・なっ?!もしかして?!
「お前あそこに「行く気よ?」!!!」
ヒカリがドアを開けたまま足を止めてこちらを向く。
その目には何も映っていない。
「そこに聖杯があるなら手に入れなきゃいけない。そりゃぁまだサーヴァントもあまり死んだわけじゃないから発動するわけじゃないけどね。それに一気に二体倒すチャンスなのよ?それで聖杯も手に入れれるのよ?一石二鳥ってもんじゃない」
と言って、
バタン
とドアを閉める。
その後ろ姿は悲しさも嬉しさも感じられた。
「そうかそうだったね」
ヒカリも『聖杯』<願望機>を求めるものの一人だったということを忘れていた。
そうなんだもんなぁ・・・・・・
ゾクッ
何だ?
ものすごい『魔力』の重圧。空気中の魔力が騒いでる。まるで何か危険を知らせるかのように。
そして、
怒轟大大大
爆発音。間違いない今のは・・・・・・
「バース!」
ヒカリがバン!とドア吹き飛ばす。
「わかってる。今のは『宝具』だ。たぶんキリツグ達だな・・・・・急ぐぞ」
そう言って僕は窓から飛び降りた。
1-2、
『彼ら』が『其処』に向かっている頃。
『其処』は全てが消えていた。
「大丈夫ですか?キリツグ」
一人の少女<セイバー>が己のマスターに手を差し伸べる。
「あぁ大丈夫。それより相手はどうした?」
彼は自分の腕で眠っている幼女を抱きしめながら問う。
彼にとって自分とその幼女、どちらが大切なんだろうか?とセイバーは考えながら答える。
「『今』ので消滅したでしょう。私の宝具で「それはどうかな?」?!!!」
セイバーは声をした方に身構える。
そこには大量の重装兵が盾を持って『主』を守っている。
「さすがに驚きましたよ。あなたがあの『剣の王』<アーサー王>だったとわ。これは失礼した。今までの『無礼』、許してくれないだろうか?」
男は楽しそうに笑みを上げながら頭を下げる。
そんな・・・・・ありえない・・・・・ありえない!!!
セイバーは頭の中は混乱が支配していた。
彼女にとって『それ』は最強の一撃。『それ』で破けないモノは無かった。『それ』が負けるはずがなかった。
『さっきまで』、だが。
セイバーの顔が歪んでいく。
なんで、なんで―――――
『それ』を見ながら男は『面白そう』に笑う。
「私の『兵』が100人も消滅させる程の実力。正に『剣の王』の名に相応しい実力だ。では―――――」
男は天を見上げ、右腕を天に捧げる。
「私の『とっておき』を見せてあげようじゃないか」
そして、
「出でよ――――――」
男は目をつぶる
「『偽・天を貫く混乱の塔』<バベルタワー>――――』
瞬間、
男の後ろ巨大な『影』。
「なっ?!<バベルの塔>?!」
「・・・・・・・・アレキサンダー大王か」
キリツグはぼそっと呟く。
「ほぉ・・・私の正体が分かったのか。平凡にしては物覚えがいいねぇ」
男<イスカンダル>はキリツグに向かって手をかざす。
その手にちょうど持ち上がるかのようにそびえ立つ<バベルの塔>
「でわ、お礼としてお見せしようじゃないか・・・・・私の『とっておき』を」
<バベルの塔>が天に浮かんでいく。
月明かりを隠し、『其処』を全て影で覆う。
「私のは贋作でね。本物よりは小さいのだが、まぁ贋作だからこそ付けられた『物』があるのだよ。それの『名』は―――――」
<バベルの塔>から四つの光が浮かび出る。
「『雷帝の怒り』<インドラ >」
<バベルの塔>から光が落ちる。
その光は街中を包む
街は真昼のように明るくなっていく。
「キリツ!!!――――」
音が消えていく。
全てを飲み込む<インドラ>。
その時、
「『天地開闢剣』<エヌマ・エリシュ>」
全てが伐られる。
全てを飲み込む<インドラ>が、
『それ』に伐られた。
1-3、
「なぁティア。俺達は行かなくていいのか?」
金髪の男<ジャン>は『其処』を見ながら問う。
其処ではちょうど剣の王が宝具を放った頃。
「いいのよ。私達が行った所で何も変わらないわ。私達にはもう戦えるほどの力が残ってないんだもの」
金髪の男の隣に居る魔女<ティア>は答える。
彼女は天を見ながら言う。
「私達のやる事は『聖杯』<願望機>とはどんな物なのかの確認と、
彼女は立ち上がって『其処』を見る。
『彼ら』は何か喋っている
それが危険なもの、もしくは人の手に渡ってはいけない物だったら封印もしくは破壊する事」
「なら尚更そうじゃねぇか?如何見たって『あれ』は危険だぜ?」
彼は『あれ』を見ながら言う。
確かにあれは確実に危険。あれは『世界』さえも変えてしまうモノ。彼ら<アーカム>にとっては確実に封印物。
「そうね。でも・・・・・『私』の勘じゃ『あれ』は大丈夫よ」
彼女は笑顔で答える。
その目は自身が溢れた率直な目。
「どこでどう考えたらそうなるんだよ?」
彼は明らかに不満そうな顔で問う。
「さぁ、わからないわ。唯、私は自分の直感は信じてるほうよ」
そう言って彼女は笑う。
男はまだ不満があるが、説得不可能と思ったのかブスッとしたまま座る。
「まぁ、何か遭ったら『彼』が飛んで助けに来てくれるわよ」
まだ笑いながら彼女は言う。
「へっ、『あんな奴』の手助けなんかいらうかっての!」
彼はあからさま不機嫌な顔で言う。
それを見て彼女はまた笑う。
まだつづく
あとがき
ども。ん?です。
読んでくれた皆様ありがとうです。
あぁとうとう次で第一部完ですよ。
今見ると主人公何も特徴無いな。うん(汗
まぁ第3部にも出る予定だからその時にちゃんと活躍させてやればいいよな(滝汗
分かる人は分かるかも知れないけどイスカンダルの出した<バベルタワー>ってモデルが『ラ●ュタ』何ですよね。以外に有名だと思ってるんだけど・・・・・。
そういえばこれ書いて時ギル殿の『エヌマ・エリシュ』の漢字の『天地■離す開闢の星』の■が全然分かりませんでしたのですよ。良かったらこれ読んでくれた人で読める人は教えてください。お願いします。
それでは、次も期待しないで待っててください。
後もう少しで第2部突入と言うことでちょっと宣伝。
その物語の主役は『衛宮 士郎』<エミヤ シロウ>。その少年は『正義の味方』を目指す。
彼には数々の運命<Fate>が待っている
一つは金色の髪を持つ少女を愛し、己の『正義の味方』を貫いた物語。
一つは名門の少し性格の捻れた美少女を愛し、己の目指す『正義の味方』の結末と剣を遭わせ、その先を見た物語。
一つは自分のために尽くす悲しき運命を背負いし少女を愛し、その少女のために『正義の味方』を捨て、『一人の為の正義』と言う新しい道をを歩いていく物語。
その他にも数々の結末があり、その選択肢によってその少年は幸も不幸にもなれる。
しかし、
この物語は根本的に主人公は『正義の味方』では無い
その少年が教えられるは『生きるための術』
その少年が教えられるは『いかに人の冷静さを無くさせ、いかに自分が冷静にいられるか』の経験
その少年が教えられるは『戦術・戦略』
その少年が教えられるは『必要な知識・情報の仕入れ方』
その少年が教えられるは『勝つ為ではなく、人を殺す為の技術』
そう、その少年の名『衛宮 士郎』<エミヤ シロウ>
人からは<兵師>人外からは<兵身>と呼ばれた少年の物語。