改訂版・百話物語 81〜90


メッセージ一覧

1: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:44:30)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(81)

アルクェイドの元気な姿を見れた。
最初はほっとした反動で怒ってしまったが・・・良かった。
華連ちゃんにはもう一度礼を言わないと・・・。

だから

ここで

死ぬ気は無い





砲弾が向けられ咄嗟に避けた時、俺達はバラバラにさせられた。
遠野の森。
屋敷の敷地内でありながらこの広さは凄いと今でも思う。
森の木々は俺の姿を隠してはくれるが・・・今は昼間だ。
俺にとっては不利かもしれない。
「・・・くそっ。」
思わず愚痴をこぼす。
はぐれた皆は無事なのか・・・時折聞こえる爆発音が俺の不安を煽る。
死神・・・吸血鬼なんてのが居るんだから居てもおかしくはないが、それでも納得出来ない。
死・・・それは虚無の象徴。
この忌まわしい瞳が宿す物。
「・・・なんだ・・・今更・・・。」
あいつらより、こんな眼を持っている俺の方こそ・・・死神だ。

メガネを・・・外した視界に・・・死・・・が広がる





「・・・。」
「・・・。」
対峙するのはあの男。
ほとんど喋らなかった死神。
短い黒髪に茶色に統一された服。
美形の部類に入るのだろうが・・・獲物を見る細めた瞳はそんな考えを吹き飛ばす。
戦う理由なんて無いはずだ。
今は閻魔武忌とか言う奴と戦わなければならないのに・・・。
「・・・私の名は閻魔荒乱。」
「え?。」
いきなり名乗られた。
「閻魔武忌、華連とは同じ一族。武忌は我ら閻魔家が出した異端。故に我らの手で仕留めたい。」
「・・・だから、俺の魔眼が欲しいのか?。」
奴の・・・荒乱の死が視える。
「・・・勝手な話だが、それだけで戦う理由はある・・・こちらには。そしてそちらは反抗する権利もある。反抗しなければ待つのは死。そちらにも戦う理由は出来た。」
そう言うと荒乱の右手から刃物が出て来る。
テレビの時代劇で武士がよく持っている脇差と言う奴だ。
「だから・・・くっ!。」
高速の死が目の前にあった。





キンッ・・・高い金属音が響く。
「くっ。」
七夜の短刀で弾くが、互いに似た様な獲物で戦闘スタイルも似ている。
キンッ・・・速い。
キンッ・・・強い。
キンッ・・・鋭い。
キンッキンッキンッキンッキンッ!!!、そこから繰り出される激しい連撃。
俺は先手を取られ防戦の一方だ。
だが・・・連撃はお前だけの専売特許じゃない!。
「しっ!。」
「ハッ!。」
ガキガキィキガキッガキキィガガキガキガキィィッッ!!!・・・何時しか数の打ち合いになった。
一歩でも引けばその先は死だ。
互いの距離は一歩分近くしかない。
だが・・・この状況は俺にとって不利だ。
背も、体格も同じだが・・・俺はそれほど頑丈じゃない。
このままでは押し負ける。
だが、向こうも修羅場を括ってきたであろう死神。
隙なんて簡単に生まれない。
(どうする?)
<線>を引く事も、<点>を突く事も出来ないこの状況。

キンッ

キンッ

キンッ

ガキィィン

「「!。」」
互いの連撃のバランスが崩れた。
向こうの脇差が僅かにこちらの七夜の短刀に跳ねられた。
(・・・隙?・・・罠?・・・)
僅かな思考。
だが・・・ここしかない!!!。
半歩踏み込む。
胸を走る<線>が見える。
(仕留めた!)
だが、その一閃は脇差に阻まれた。
(!!!、左手!!!。)
今まで右手の脇差だけ見ていたが、コイツは二刀流だったらしい。
こんな単純な手にかかるなんて・・・。
「ぐっ!」
ザクッ、荒乱の右手の脇差が左肩に突き刺さる。
瞬時に動かなければ首に刺さっていた。
「がぁぁっ。」
何とか後退しようとするが、荒乱も詰めて来る。
ググ・・・左肩から刃物が侵入する音。
これで左腕はほとんど使い物にならなくなった。
「ぎっ、があああ。」
「むっ!。」
こうなれば後先構っていられない。
無理矢理体を捻って腰を下ろす。
「くっ!!!。」
俺の意図に気がついて咄嗟に跳んだ荒乱。
その下を俺の蹴りが通過する。
その時間で俺は寝そべった態勢になり、荒乱は空中に僅かだが浮いた事になる。
蹴った勢いで俺は地面を転がる。
そのすぐ先には木が有った。
その木の・・・<線>を引く。
「ぐぅっ。」
荒乱は追撃しようとしたが、一端引く。
荒乱の程の速さなら木なんて関係無しに出来たんだろうが、僅かにそれではバランスを崩していただろう。
木の落下中に勢いで起き上がる。
血が流れ出る左腕は僅かしか動かない。
正直、痛いが・・・今はそんな事に構っていられない。
(どうするか・・・)
少し離れた場所に立つ荒乱。
ギシギシズドンッッッ!、やっと木が地面に倒れた。
思考はほんの僅かな時間だった。
すぐさま荒乱の追撃が来る。
(やってみるか!)
それに合わせて、俺も荒乱に向かって跳ぶ。





「!。」
七夜の短刀が高速で飛ぶ。
それは荒乱にとって死神の鎌だった。
前方に進んだ瞬間に起きた出来事。
この態勢では・・・避けられない・・・ならば弾くのみ。
「!。」
だが、更なる衝撃。
投げた本人が宙を飛んでいる。
逆さの・・・逆立ちした態勢・・・常人ではありえない態勢で跳んでいる。
二連続の死神の魔の手。
(愚かな!)
だが、冷静に対処する。
両手に持った脇差。
右手で投降された短刀を防ぐ。
バランスは崩れるが、左手にも脇差はある。
しかし・・・。
「!。」
それはもう一つの投降だった。
斜め上からもう一つ何かが跳んで来る。
(何時の間に投げたんだ?!)
その僅かな動揺が僅かに対応を遅らせた。
その・・・僅かこそ・・・この戦いの境界線。
「!!!っ。」
間に合わないと思ったのだが・・・荒乱にとってその時間はゆっくりとした物だった。
右手の脇差が短刀を弾く。
左手の脇差が斜め上からも物を弾く。
(これは・・・メガネ!)
二回目の攻撃はメガネだった。
余りに早かったのと動揺したせいで弾くまで気がつかなかった。
(・・・もう遅いがな)
この一連の流れで最も禍々しい死神の手が目の前にあった。
ふと、その双方の蒼い瞳と目が合う。
(蒼い)
虚無と死を司る蒼の瞳。
これは・・・この者は・・・。
(なるほどな・・・この者は・・・)

そう、それは自分らと同じ・・・

否・・・まったく違う

所詮自分らは名乗っているだけだ

本来この称号はこの者の様な者にこそ相応しい

死神

この者は・・・



(蒼き死神)





ゴキンッ、と容赦無く首を圧し折った。
グルリと勢いで投げ飛ばす。
ドンッ、木に当たって荒乱は地面に堕ちた。
「・・・。」
ピクリとも動かない。
「・・・。」
だが・・・視えた。
確かに死の線は増えているが・・・。
(凄いな・・・生きてるよ)
俺の魔眼はそう判断した。
流石は死神、首を圧し折っただけでは死なないのだろう。
だが、当分は動けないだろう。
ピチャ。
「あ・・・血。」
今の一瞬だけ動いてくれた左腕はもう動きそうに無かった。
「ま・・・いっか。」
結論から言えば目の前の閻魔荒乱と言う人物は悪人ではなさそうだった。
このままほっておいても問題はないだろう。
むむ、七夜の血が・・・あんまり騒がないな。
人外だけど・・・死神は入らないのか?。
「ふー・・・メガネは・・・無事・・・七ッ夜も・・無事か。」
メガネは一かバチだったが、本当に誤魔化されるとは・・・やってみる物だ。
それにしてもメガネには傷は愚か曲がった様子も無かった。
「また・・・助けられましたよ、先生。」
そう嘆きながら、俺は爆発音のする方角に向かう。





2: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:44:49)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(82)

世の中不思議な物である。
不思議・・・偶然・・・運命・・・宿命・・・因果律。
全ての理には繋がりがある。

でもさーー・・・。


「これは無いんじゃないかな〜・・・一閣〜。」
「ぐ・・・。」
僕・・・閻魔武忌は目の前で地面に人型の形の大穴を開けた男・・・死神<絶円一閣>と話していた。
まあ話と言っても僕はしゃがんで、一閣は穴の中から見上げる感じで一方的だけど・・・。
「一閣君、ここは公園だよ〜?、こんな大穴開けたらここで遊ぶかもしれない子供達に危険だよ?。開けるんなら別の場所にしなさい。」
「お、お主に言われたくない!!!。大体お主が人の子供の心配するなど虫唾が走る!!!。」
むむ、確かに僕はこの大穴より危険な存在だな・・・うん。
「確かにね〜〜〜。」
「・・・。」
しばし沈黙。
「・・・。」
「・・・。」
沈黙。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一応・・・・僕達は敵だったね・・・。」
「・・・・・・・・そうだな。」
一閣は穴から出ようとしない。
覚悟を決めているのだろうか?。
「ま、それはそれとして・・・誰にやられたんだい?。あれ?・・・・・・・君が居ると言う事は・・・。」
「・・・。」
「三バカ勢ぞろい?。」
「三バカ言うなっっっっっ!!!!!。」

三バカ・・・<絶円一閣><朱 妖輝><皇魔斬技>を指す。(武忌が勝手にそう呼んでいる)

「その様子じゃあ保護者同伴か・・・まあ今の君達四人の実力なら14位の処刑帝ぐらいの封印は任されそうだね〜。」

保護者・・・<閻魔荒乱>を指す。(三人の面倒をよく見るため、武忌がそう呼んだ)

「くっ・・・どれだけ成長したかも知らないくせに・・・。」
「わかるよ〜。君の見た目の実力を考えれば他がどれだけ成長したか見なくてもね。・・・で、誰にやられた?。」
一閣はその質問に答えなかった。
家のプライドが有るのだろう。
<絶円><朱><皇魔>はそれぞれ長い歴史がある家柄だったが<閻魔>の勢力に屈服した。
本来僕の親戚筋の荒乱も閻魔家だったが、彼は根が優しく、三人もそんな彼に惹かれていき、何時の間にか四人で行動する様になった。
荒乱本人はあまり喋らないのだが・・・。
「飛んで来たのはあっちだね〜・・・遠野家かーーー・・・人(死神だけど)一人をここまで飛ばすなんて・・・真祖だけだね。」
「・・・。」
この沈黙は肯定だろう。
やれやれ、真祖の姫がもう動けるようになったとは・・・しかも昼間だ。
昨日彼女を真っ二つにしてしまったけど・・・心配なさそうだな。
「ま、あの家は君達に負けるレベルじゃないし、心配する必要は無いか。」
「!!!。」





首を刎ねられた屍が消えていく。
これは死神の特性だ。
もし死神が現世で肉体的に死ねばその肉体は強制的に冥府に送られる。
もちろん魂もだ。
もっとも・・・魂を喰らう邪皇相手では意味が無い。
「う〜〜〜ん、穴は開いたままかーーー・・・まいっか。」
武忌はそう言って立ち上がった。
「さてと・・・驚いたね・・・何時からそこに?。」
武忌の目線の先には男が居た。
和服を着てはいるが上半身は黒い素肌が晒されて半裸の状態だった。
「カッカッカッ、今じゃ。ちょっとした小細工での。」
「ククク、それはそれは・・・貴方らしくも無い戯れですね。」
武忌は自分の周りへの気配の配り方が問題ない事を知って少し安心した。
「カッカッカッ、しかし生きていたとはのお<死剣帝>閻魔武忌。」
「ええお蔭様で、死なずに生きてますよ。」
「カッカッカッ、<元死神だから>と言う理由だけで四(死)番を取った男がそう簡単に死んでもらっては困るわい。」
邪皇14帝 第4位 <死剣帝>閻魔武忌。
これが武忌の通り名である。
「魔王様・・・いえ魔帝様に褒めていただけるとは・・・感激ですよ。」
男の笑い声が響く。
「カッカッカッカッカッ、お世辞など我らの間には不用であろう?。」
「いえいえ、皇帝故に礼儀は必要ですよ・・・ましてやそれが・・・。」
武忌は言った。


「邪皇14帝 第6位 <第六天魔帝> 織田弾正忠信長様ともなれば・・・ね。」





場所が変わってここは南社木市。
だが、正確な場所はわからない・・・はずだったが。
「多分・・・地下だな。」
黒いコートの少年はそう自分の中に告げた。
「地下?。」
「そうだ、恐らく署長室からそのまま地下に移動しただけだろう。」
「随分自信が有るな、時矢?。」
「伊達にソイツは居ない。」
「あ、先輩この子ですよー。」
「へ?・・・・・・。」
隆一の目線の先には・・・。
「プープープーーーー。」
と言うネズミをでかくしたような奴がいた。
「・・・何・・・それ?。」
「先輩・・・四大精霊の一つ<土のノーム>ですよ・・・。」
絵理は呆れ気味に言った。
彼女は悪魔の知識からその存在を知っていた。
「なるほど、地下はノームの領域な訳か・・・何と無く反則の様な能力だな。」
RPGをやる奴ならほとんどが知っている存在、ノーム。
だがシルフ同様決して最強の召喚獣になれない悲しき存在でもある。
「自然精霊に反則も何も無いだろうが・・・。」
「まあな・・・で、さあ・・・どうする訳?。」
時矢(ネロ・カオス)の体は丸く青い球体の中に閉じ込められていた。
かなりの大きさだ。
直径が5メートルは有る。
「心配するな、俺自身始めて見る訳ではない。」
かつてプライミッツ・マーダーを助けた時(黒姫祭投稿作品<漆黒の月>参照)彼・・・彼らは同じ物を目にしていた。
「グルル・・・。」
「プー・・・。」
その言葉に二つの声が反応した。
「サラマンダー?、ノーム?・・・どうしたんだ?。」
隆一が黒い空間から見える二つの影に問いかけるが、言葉は返ってこなかった。
二体から凄まじい憎悪の気配を感じる。
「隆一、それ以上は聞くな。」
「・・・わかった。」
隆一には何と無くわかった。
この二体はこの球体を知っている・・・そして憎悪しているのなら・・・答えは。


「クスクスクス、ではよろしいかしら?。」
「あ。」
「え?。」
「かまわない、やれ。」
球体の目の前には矛を持った美しい女性だった。
当然一目で人間で無い事はわかる。
素肌が黒く、矛も黒く、唯一目だけが吸血鬼の様に赤かった。
「僕も居るよ。」
それはシルフだった。
二人は何故か球体の外に居た。
「さすがだな。群れの特権か、時矢?。」
皮肉にも聞こえる隆一の声に、時矢は笑みを浮かべるだけだった。





さらに場所が変わって遠野家の目の前にある坂。
そこには三つの影が有った。
「始めましてシオン・エルトナム・アトラシア。私は神無月千鶴と言います。」
少女の言葉にシオンは無表情のまま返した。
「なるほど、迂闊でしたね。協会の処理部隊がこの町に居るなんて・・・。」
「???。」
少女の横に居る少年は訳がわからず戸惑っていたが・・・直感で関わってはいけない世界と判断し聞かなかった事にした。
「賢明です。」
「それで良いです。」
「う・・・。」
美女と美少女に心を見透かされた少年は「何故わかる???」と言う疑問も無理矢理消去した。
・・・彼はきっと長生き出来るだろう。
「なるほど・・・大体はそこの少年を通してわかりました。ここに来たのは結界が張られたのを感じたからですか?。」
シオン自身は遠野家に急ぎたかったが、半吸血鬼状態の彼女が昼間戦うのは不利であった。
相手がどんな敵かもわからず、少しでも戦力が欲しかったために彼女を引き込みたかった。
「さすがエーテライト。ここへ来たのも代行者の結界を感じたからです。もっとも他の結界も感じますけど。」
邪皇がまた一人増えた。
そこで代行者の協力も要請したい。
なるほど・・・とシオンは理解した。
「ではしばらく同盟を結びましょう。そこの彼の事情も説明すれば解決できるはずです。」
誰に説明するかはあえて言わない。
「ええ、わかりました。壇上君?。」
「な、何ですか?。」
千鶴は笑みを浮かべながら壇上に近づいた。
だが壇上は確信した。
こえは悪魔の微笑と・・・。
「寝てください。」
「はい。」


彼は・・・きっと・・・長生きするだろう。




3: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:45:07)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(83)

例えるならそこはRPGでも重要な敵が居そうな城の廊下。
蛍光灯が取り付けられてはいるが、どんなに明るくしようともこの空気は変わらない。
床に敷かれた赤い絨毯(じゅうたん)。
どこかの普通の王族が使いそうな城なら廊下に絵や置物が有るはずだが、ここには何も無い。
まさにRPGの悪役が使いそうな場所だ。
さて、そんな廊下を歩く影が一つ。
グレーのコートに黒いズボンとあまりセンスは良くなさそうだった。
顔はヤクザのようにギラついた目をしたおじさん・・・と言った感じだ。
左頬に刃物で付けられたと思われる切り傷がその人物の怖さをさらに出していると言えるだろう。
「うん?。」
ふと、男は歩くのを止めた。
「・・・何だ?。」
背後を振り返り、辺りの気配を探る。
「・・・まさか。」
男は走り出した。
彼に目指す先は先程捕らえた魔の存在が居た。
その圧倒的な存在感は下手すれば27祖や14帝クラスではあったが、彼の真なる主から得た物で完全に封印したはずだった。
だがそれでも不安だったので見張りを配置しておいたのだが・・・。


ドオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンッッッッッッッッッッッッ


「!!!くっ!。」
その廊下だけでなく建物全てが揺れる地震の様な震動が来る。
揺れは一瞬だった。
地下なのだからあまり揺れると問題が有る。
「地下でここまで揺れるだと!!!。くそっ、やはり捕獲すべきではなかったか???。」
彼の中ではこの事態があの魔であると決定されていた。
警察の署長室に入ってきた銀髪の少年を見た瞬間を思い出す。
下準備をしていなければ瞬殺されていたであろう。
冷や汗を流しながら捕獲に成功したが、「こんな簡単か?」、と言う違和感があった。
やはりその違和感をもっと優先して考えるべきだった。
「どうやってあの球体を・・・いや今はどうやって生き抜くか・・・。」
焦り、不安、悲観、恐怖、絶望・・・不吉な言葉が頭の上を駆け巡る。
その時だった。
「山木!!!、何が起きたのっっっ!!!???。」
一人の女性が背後から走ってやってくる。
赤い服に赤いミニスカート、さらに黒いハイヒールと言う目立つ格好だった。
とても戦闘向きとは言えない格好だった。
「知るか!!!。」
咄嗟に嘘を付く。
やはり自分のミスとは思われたくないのだ。
「何を言っているの!!!、この大事な時期にこんな出来事・・・まさか主様の敵が???。」
「そうかもな。」
そう言いながら彼はそれを否定していた。
仮に先程の魔がこの一件に関わっていなくても、宿敵が来る可能性は皆無だった。
隣の街に居るあの混血の家柄遠野家。
そこから排出される我ら主の降臨を幾度と無く食い止めた存在・・・有限転生者。
だが・・・それは有り得なかった。
「そ、それじゃあ、あの家柄の誰に転生したと言うの?。」
「さあな・・・嫡男は違うだろう。」
そう、嫡男<遠野四季>には無限転生者ロアが転生していた。
これでは転生できない。
直系のみに転生し、かつ転生体は男に限られ、年齢も大体十代に限られる有限転生者。
遠野志貴は該当しない。
遠野秋葉も該当しない。
分家にでも転生したのか?。
否、もしそうなら・・・。
「分家の軋間は・・・あの男以外は確認されていない。」
本家を超える色濃さを持つ男・・・軋間紅摩。
だが、あの男は生まれた時代が違いすぎる。
有限転生者の十代には当てはまらない。
子供が居る・・・と言う情報も無い。
他の分家の十代も皆調べた。
「そうよね・・・だったら誰に転生・・・。」
「まだ宿敵かさえわからないだろうが?、とにかく一端奥に引いて・・・。」
そう山木が言いかけた時だった。


ドオオオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンッッッッッッッッッッッッ


「「!!!。」」
再びの揺れ。
「ちっ、妨害用のシャッターが一気に破られた・・・と言った所かよっ。」
山木は来た道を引き返した。
「ま、待って、待ちなさいっっっ!。」
女は怒鳴り声をあげながら廊下を走った。





「へえー、やるなー。」
隆一は素直な感想を述べた。
彼は外に出ていた。
「まあな。」
少し誇らしそうにする時矢。
そして彼女も外に出ていた。
「本当に・・・すごいですねえ。」
絵理も素直にもの凄くぶ厚そうなシャッターに大穴を開けた怪物を見る。
怪物・・・という単語しか出てこない<それ>は巨大な手を持っていた。
体の半分は時矢(ネロ・カオス)のコートの中だが、凄まじい力を持っていた。
「で、どうする?。」
大破したシャッターの先は十字路になっており、来た道を数えなければ通るべき場所は三本になる。
「ハイハ〜イ、先輩!、丁度三人ですから分散が良いと思いま〜す。」
ピョンピョンとジャンプしながら茶髪のツインテールを揺らす絵理。
「まあ・・・普通はそうなんだがな・・・私達を使えば一瞬で片付くぞ?。」
「一体何匹居るんだ?。」
「ふっ・・・・・・666だ。」
さも誇らしげに言いながら怪物を仕舞う時矢。
「「・・・。」」
細かいなー・・・と思いながら沈黙する隆一と絵理。
「むっ、その「細かいなー」視線はよせ。数字には意味があってなあ・・・。」
「はいはい、それは後日改めて。」
「・・・ちっ・・・まあそうだな・・・出ろ。」
時矢が黒いコートを片手で上げるとそこから色々な奴らが出て来た。
虎、犬、ワニ、鮫・・・その他訳のわからん生き物達。
そして・・・。
「ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノーム。」
時矢がそう嘆くと、その四体も出て来た。
さすがに全部黒い。
・・・て、オイオイ。
「と、時矢???。」
「ううう・・・。」
「む?・・・何か問題が有るか?。」
「その格好は大有りだ!!!。」
今の時矢は顔の右半分が無かった。
いや顔の右半分右腕右胴体の一部が欠けていた。
見ていて気持ち悪い。
「仕方ないだろ?。100体も出せばこうなる。」
「だからってな・・・。」
と言いかけて止めた。
時矢も・・・いやネロ・カオスの皆も必死なのだろう。
「まあいい、報告を待て。ククク、さあ狩ってやろう・・・狩人!。」

(狩ってやるよ狩人!!!)

「え?。」
ふと、頭にそんな言葉が浮かんだ。

(狩られる奴らの気持ちを思い知れ!)

俺・・・こんな事言ったか?。
「狩人を狩る・・・皮肉ですか?、時矢さん。」
「まあな。」
そんな二人の会話が聞こえる・・・弓塚よ、さっきまで時矢の姿を気味悪がっていなかったか?。





「だあああああああ、何でこうなるんだ???。あと少しで準備が終わると言うのに・・・くっ。」
研究所の部屋に有る周りの物を投げ散らかしながら、対策を考える男。
研究員らしく白衣を着ている。
バンッッッ。
「邪魔するぞ!!!。」
「ノックしろ!!!。」
入ってきた男は山木だった。
「そんな事言ってる場合か!!!???。」
「あれはお前が捕らえたんだろうが!!!。」
「ち、やっぱりか・・・。」
舌打ちしながら山木は腕を組む。
「後、あの悪魔の小娘も居る!!!。」
「な、なんですってええええ!!!。」
新たに女性が入ってきた。
「姉様!!!、あの魔喰いの力を何とか暴走させられませんか?。」
白衣の男は姉に暴走させ自滅させる手段が有るか聞いた。
「えーと・・・使い魔達をああして・・・・・・・近づけば何とかなるけど。」
姉の言い方に対策を立てる白衣の男。
「そうですか・・・それならああして・・・ああなって・・・良し、これを使うしかない。」
白衣の男は先程まで作っていた物を手に取った。
「紫煙(しえん)?、それは・・・まさか・・・。」
「いえまだ未完成ですが・・・このレベルの規模なら可能です。」
ニヤリと笑みを浮かべる白衣の男・・・紫煙。
「おい、何とかなるのか?。」
「まあね、君にも働いてもらうよ山木。」
紫煙の自信満々な発言に女は優しく、甘い声を出す。
「さすがは紫煙。私の可愛い頼りになる弟・・・。」
「ああ、姉様・・・姉様にそう言っていただけるなんて・・・。」
(このブラコン&シスコン姉弟が・・・)
山木はこの二人の関係にウンザリしていた。
「おい、早くその作戦を言え!!!。」
急かす山木に姉弟は同時に睨むが、正論なので止めた。

4: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:45:29)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(84)

ドドドドドドドドドド・・・・・・・、黒い姿の獣達が廊下を埋め尽くして行く。
それなりの広さではあるが、これだけ数が居るとどうしても詰まり気味に成る。
カラスなどは別だが・・・。
「ガルッ?。」
「ゴゴ?。」
何体かが突如違和感を感じた。
当然その思考は本体である時矢(ネロ・カオス)に届く。
(止まれ)
本体からの直接の指示に全ての獣達がその場に止まる。
一体どれだけ長いのだろうか?、と思わせるくらいこの廊下は長かった。





「ふむ。」
時矢は残った左手を欠けた頭の顎に当て、考えるポーズをとった。
人間だった頃からの癖かもしれない。
「何か有ったのか?。」
「どうしたんですか?。」
俺と弓塚の質問に時矢は少し間を置いて返した。
「真正面のルートから獣達が違和感を感じたんだ。他の二方向からは特に無くてな・・・と言うか部屋が有って行き止まりだな。中は・・・誰も居ない。」
俺等の居る場所は十字路になっている。
一箇所は俺達が来た方向なので残りは三方向。
時矢は三方向全てに分身軍団?・・・みたいなものを結成させて向かわせた。
それぞれに四大精霊が居る。
右の通路に水のウンディーネ、左の通路に土のノーム、真正面の通路に火のサラマンダー。
ちなみに風のシルフはここに残り、すぐに動けるようにしていた。
・・・考えてみると・・・精霊を従えているのって本当に凄いな・・・。
で、それに慣れてる俺達も・・・いや、考えるのは止めよう。
「それじゃあ、真正面の道に行けばいいんですね?。」
「ふむ・・・そうなるが・・・この違和感は・・・。」
このまま行くか、様子を見るか・・・。
「違和感があるならもう少し様子を見たほうが良いと思うぞ?。」
「う〜ん・・・たしかに隆一の言う通りだな。下手に・・・ガアアッッッ!!!。」
突然時矢の体が揺れ、体を折る感じでしゃがむ。
「時矢!。」
「時矢さん!。」
時矢の異変に慌てて駆け寄ろうとするが・・・。
「来ちゃダメ!!!。」
シルフが割ってはいる。
「お、おいシルフどうしたんだ?。」
「ぐっ・・・と、とにかく近づいちゃダメ。の、残りの皆に食べられちゃうかもしれないから・・・ぐ。」
シルフは背中の羽を使いながら何とか浮かんでいるが、ふら付きながらなのでかなり不安定だ。
「せ、先輩っ・・・ど、どうしたら・・・。」
弓塚が不安そうにこちら向く。
時矢はしゃがんだ体勢のまま動かない。
どうするか・・・どうするか・・・。
「・・・スーーーフーーー・・・・・・。大丈夫だ、時矢はこんな所で死なない。」
大きく息を吸って自分を落ち着かせ、弓塚に言った。
「は、はい。」
俺の言葉に安心したのか、弓塚も少し落ち着いて冷静に周りの状態の観察をしている。
・・・はて?、心なしか顔が赤いような・・・熱でもあるのかな?。
(・・・ボクネンジン)
(へ?、何?)
(ベツニ、ナンデモナイ)
(?)
遠野隆一が何か言ったが、よく聞こえなかった。
う〜ん、しかし<俺>と<オレ>って微妙に二重人格っぽいんだけど・・・違うんだよなこれ。





「お前が伝えたかったのはこの腕力か?。」
「イヤ、ソレダケジャナイ」
「じゃあ他は?。」
「・・・ワカラナイ・・・。」
「はあ〜?。」

「なんだよそれ。」
「ツマリ、オレハオマエダ。オマエノホンノウ。コレガオレ。ダカラオレノチカラシカシラナイ。」
「・・・なるほど。」
納得がいった。
<俺とオレ>とわかりにくいがつまり俺は理性、オレは本能、と違いがあるが、それ以外は全て同じ。
記憶も体も。
「ソウイウコトダ。コレハショセン<キオクノチガイ>カラキタ<ヒトリシバイ>。キオクガモドレバ、オレハタダノホンノウニナル。」
ようは記憶が戻ればいいらしい。
「ソウダナ、ナノルナラ・・・リュウイチノホンノウ<遠野隆一>ダ。」
「遠野?。」
「ソウダ。」
なるほど、確かに<血の本能>は遠野家からきている。
「じゃあよろしくな遠野隆一。」
「ヨロシク今宮隆一。」





と、昔会話したんだけど(記事番号192 最強の魔眼 参照)・・・消えてないんだよな・・・。
槙久様に掛けられた偽りの暗示はもう解けている。
なのに消えない<血の本能>・・・<オレ>。
う〜ん・・・まだ何か忘れているのか?。
「・・・ぱい・・・先輩?。」
「うん?・・・ああゴメン、何?。」
むむ、イカンイカン、つい話が逸れてしまった。
「もうー・・・、時矢さんが起きましたよ?。」
「そう言う事だ。」
時矢がジロリ(右目無し)と非難するようにこちらを見る。
「悪い悪い、お前がそう簡単に死ぬとは思えなくてな。つい別の事を考えてたよ。」
「そう簡単に死んでたまるか。ま、隆一もそう簡単に死ぬとは思えないがな。」
「確かな。お互い長生きしそうだ。」
互いに笑みを浮かべあう。
「・・・良いなあ。」
と弓塚が小声で言った。
「弓塚?。」
「いえ・・・お互いが信じられてるんですね・・・。私なんてオロオロしちゃって・・・。」
弓塚の顔が下に向く。
「あ・・・その・・・大丈夫だって、もう少し付き合いえば時矢が長生きしそうな理由を感じられるだろうから。」
何とか励ます俺。
「・・・。」
沈黙する時矢。
時矢は何と無く感じていた。
(弓塚絵理・・・う〜ん・・・何か演技っぽくないか?これ?・・・隆一は全然気がついてないな)
その時、時矢と弓塚は目が合った。
ジロリ。
下を向きながらの目線なので・・・微妙に怖い。
どうやら時矢の思考に気がついた模様。
(・・・好きな男は策を張って落とすタイプ・・・だな)
水面下のなか、隆一の理解できない戦いが始まった。





廊下を時矢を先頭にし、弓塚と肩を並べながらその後を歩く。
廊下の広さは大体人が三人広がって歩く、ぐらいの広さだろう。(丁度三人で都合がいいな)
時矢は何もなかった二方向の分身を戻して元の姿に戻っている。
真正面に向かわせた分身軍団?・・・だけでは時矢の体を欠けさせるには至らなかったらしい。
で、何が起きたかを要約すると、真正面の分身軍団?・・・が皆操られているらしい。(しかもサラマンダーまでもが)
何故そうなったかは判らないが、とにかくその操られる力の影響を時矢が受けたらしく、回線を切ったりするのにああなってしまったらしい。
それにしても混沌が操られる・・・あの混沌が?・・・う〜ん。
「謎は深まるばかりか・・・。」
「「・・・。」」
俺の発言に二人は沈黙した。
まあ確かに弓塚は敵地だと自覚して緊張しており、時矢は自分が奪われた様なものなのだから怒るのも無理はないだろう。
(でもリラックスさせた方が良さそうだけどなー・・・ま、しょうがないか)


お気づきの方も居るかもしれないが、実際の二人はお互いに牽制し合っているだけだったりする。
弓塚絵理は隆一の対しかなり強めの恋心を持っており、出来れば隆一と二人で力を合わせて敵を・・・なんて言うシチュエーションがしたくなってきたのだ。
対して蛇神時矢は弓塚絵理の「愛する者の為ならどこまでも堕ちて行きそうな一面」が隆一に悪影響を及ぼすと判断し、何とか・・・したかった。
まあ確かに姉もそっちの気があったのだが。
だが、この二人は完全に勘違いしている事がある。
今宮隆一は遠野志貴にとてもよく似ている一面が有る。
それは相手(特に異性)の考えが読めないと言う一面だった。
ぶっちゃけて言えばこんな敵地のど真ん中で弓塚絵理がどんなアプローチをしようが、「好きです」の一言が無ければまったく通じないのだ。
だからこんな所で争っても意味はないのだ。


(それにしても何処まで歩くんだろうなー)
やっぱり自覚は無い模様。
彼が志貴二号と呼ばれる日は近いかもしれない。





「む?。」
時矢の歩みが止まる。
「どうし・・・あ、これは。」
「結界・・・ですね。」
一見まだ廊下が続く様に見えるが・・・その先は結界が張ってある。
「ふむ・・・通れないものではなく景色を変えているだけのようだな。」
時矢が右手を何もなさそうな場所に近づけるとその右手が消えて行く。
「どうする?。」
俺の問いに時矢は少し考えた後言った。
「これは壊すのも難しそうだな。行くしかないだろう。だが結界に入った瞬間分断される可能性があるからな、三人同時に入ろう。」
「よし、それで行こう。」
「はい、先輩。」
「・・・。」
この時、もう一度隆一と絵理を混沌に入れて安全を確保する・・・と言う物もあったのだが、先の件で何と無く時矢は弓塚絵理と言う人物を入れたくなかったのだ。
付け加えておくと、隆一の魔眼もあったのだが・・・本人がすっかり忘れていた。
真ん中に時矢、左右に隆一と絵理となる。
「それじゃ、3、2、1、ハイ!。」
タイミングよく三人は結界内に侵入した。





パカッ





「「え?。」」
俺と弓塚入った瞬間時矢の姿が無かった。
「弓塚?、時矢を知らないか?。」
「さ、さあ?。」
キョロキョロと辺りを見回すと・・・俺と弓塚の間に四角い穴があった。
「「落とし穴!!!???。」」
何と言う・・・何と言う古典的な呆れる方法・・・。
「あーーーえーーー・・・オーーーーーイ、と・き・やーーーーーー無事かーーーーーーーーーーーーー???。」
「時矢さーーーん???。」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
「返事・・・無いな。」
「ど、どうしましょうか?。」
俺にどうしろと?・・・と言いたかったが止める。
「う〜ん・・・俺達も一緒に落ちるなん・・・・・・出来ないみたいだな。」
「誰?。」
互いに振り向く先には一つの影が見えた。
「まさかこんな古典的な方法にあの魔がかかるとはな・・・。」
「ええ、俺も驚きましたよ。」
一応大人なので敬語を使う。
その筋の人のようだ。
「先輩・・・。」
少し震えた様な弓塚の声。
「大丈夫だって、何とかなる。」
「フン、姫を守るナイト気分か?・・・今宮隆一。」
「!・・・へえー・・・俺ってそんなに有名ですか?。」
向こうはこちらを知っているのは意外だった。
そんな目立つような事はしていなかったのに・・・。
「ああ、我等狩人は調べたからな・・・お前等遠野家をな。」
「へえー。」
「・・・。」
狩人と遠野家は何か関係があるのか?。
「さて貴様が本当に有限転生者か調べねばなるまい。」
「有限転生者?。」
何を言っているんだコイツは?。
「山木、そんな必要はないんじゃない?。」
「「あっ。」」
男の背後から女性がゆっくりと歩いてくる。
その姿・・その物腰・・その声は・・・。





「田坂・・・先生。」
「・・・やっぱり貴女が関わっていたんですね。」





後書き
 田坂?・・・誰それ?・・・えーと隆一のクラスの担任です。
覚えている人は・・・居ないだろうなー(滝汗)。
混沌が落とし穴に落ちる。
このネタ、メルブラでネロが余裕でジャンプしたりしてるのを見て思いつきましたー。(滝汗)

それではー。


5: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:45:45)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(85)

学校とはまさに俺にとって日常だった。
遠野と言う鬼の力が流れる俺が日常を求めるのはおかしいと思われるかもしれないが、俺はそれを求めた。
だが・・・その考えも・・・。





目の前に居るのは女性は赤い服に赤いミニスカート、黒いハイヒールと言う戦闘向きとは言えない格好だった。
だが・・・その人と俺は面識があった。
「・・・何で・・・何で田坂先生がっっっ!!!。」
「もうわかっているでしょう?、今宮隆一君。」
「・・・。」
弓塚は何も言わない・・・・・・そう言えばさっき「やっぱり」って言ってなかったか?。
「弓塚・・・お前・・・。」
「はい、先輩の思ったとおり、私は田坂先生の裏の顔を知っています。」
「と言ってもあの魔書を貸しただけだけどね。」
俺から見ても美人だと思われるその顔が笑みを浮かべていた。
だが、こんな状況では憎たらしさしか沸かない。
「それに私は貴女が<魔喰い>になるんて思ってなかったの。悪魔と契約して、力を手に入れた貴女が復讐を果たすだけだとね。」
「そうです。でも悪魔は意外と・・・いえ意外でも有りませんね、とにかく裏切るのがとても早かった。でも、私は勝ちました。」
「・・・田坂先生?・・・弓塚?。」
わからない・・・何で弓塚は・・・。
「成る程な。」
田坂先生の横で今まで喋らなかった男が言った。
「偽者の嫡男に姉を殺された小娘の話は本当だったか。」
姉を・・・殺された?。
「ふん、まあいい。ところで<仕舞>、そのガキは本当に有限転生者じゃないのか?。」
「ええ、普通の・・・少し色濃いけど普通の異端者よ。もしそうだったら私の気配を感じて反応していたはずだもの。」
仕舞・・・それが先生の本当の名なのだろうか?。
いや、そんな事より<有限転生者>って?。
「当てになるのか?、それは。」
「そんな事言っていたら一族全て調べなおす事になるわ。」
「ふん、面倒な話だ。まあいい、とっととこいつ等を始末するか。」
「田坂先生・・・さっきから何々ですか・・・有限転生者や魔書やら・・・どうして・・・。」
俺の目線に田坂先生は少し目を逸らした。
「そうね・・・確かに短い間だったけど貴方は良い生徒だったわ。・・・そうね少し教えてあげる。貴方の中に流れる遠野の血が私達をどれだけ苦しめたかを。」
「おい、そんな時間・・・。」
「冥土の土産ぐらいは良いじゃない。」
・・・説明は嬉しいが・・・この人戦いをわかっていない気がする。





「・・・。」
青白い光が室内を照らしていた。
「ハハハハハハ・・・、まさか落とし穴なんかにかかるなんてな!!!。」
俺の目の前に立つ白衣の男は自らの勝利に確信を持って喜んでいる。
目の前、と言っても俺は例によって青い球体の中だ。
狩人の特別性らしい。
まあ、プライミッツ・マーダーを閉じ込めた代物だからかなりの物なのは認めよう。(黒姫祭投稿作品 漆黒の月 参照)
「ハハハ・・・しかし・・・お前は何者だ?。お前が我等の本部を襲撃した張本人なのはわかっているぞ?。」
「・・・。」
「ハッ、まあ言いたくてもそちらの声は全然聞こえないんだよな。」
・・・じゃあ聞くな。
「ふーむ・・・だが気になるな。」
そう言いながら<金属を纏っている右手>を顎につけ考えるポーズをとる白衣の男。
さて・・・そろそろこの男の特徴を説明しよう。
右目・・・まあこれは普通の人間の目だ。
問題は左目・・・と言うか顔の左上全体が金属になっている。
目はとある週間雑誌マガ○ン連載中の奪○屋に出てくる、負け回数数多の○一族が目玉につけてるスコープみたいなやつだ。
(ひ○兄弟、○三兄弟、○5、土○・・・など)
首筋は見た目は普通の人間の肌だ。
次に両腕、これは白衣の下なのでよく見えないが、少なくとも両手は金属だ。
それに体全体の動き方から見て・・・。
(ほとんどが金属に取り替えられている・・・サイボーグというやつかもな)
ある意味、まだ死徒の方が人間らしいかもしれない。
それにしても・・・。
「ハハハハ・・・。」
(えらく腹が立つ笑い方だな・・・)
こういう奴は一回ぶん殴らないと気がすまない。(大抵一発であの世だが)
「ハハ・・・おお、そうだ君の見せたい物が合ったんだ。皆おいでー。」
(?)
白衣の男が呼びかけた方角からなにやら集団がやって来た。
それは・・・。
「サラマンダー!!!。それに・・・。」
「へー、さすがにこのサラマンダーには反応したか。黒いサラマンダーなんて始めて見たよ。どうやったんだ?。」
サラマンダー率いる数十匹の黒い獣達は白衣の男の周りにしゃがみ込む。
まるで絶対忠誠を誓うかのように。
「・・・。」
自らの体内を構成する者達が騒ぎ出す。
「不思議だろ?、何でコイツらがこんな事するか?。ハハハハ、ジャ〜〜ン!!!。」
「・・・。」
白衣の男の手には黒い粉が入っている小さなビニール袋が有った。
「覚醒剤、大麻、ヘロイン、古いものならアヘンまでー・・・プラスちょこっとだけ魔術を。決して協会にもこの国の退魔機関にも悟られないようなぐらいの魔術をブレンドした特注品。この・・・この・・・私が作ったのだ!!!。」
「・・・。」
白衣の男は続ける。
「ハハハハハ、これで操ったのが信じられないかい?。ハハ、コイツらが君を構成してようとこれの基本は肉体の有る生物だ。基本は変わらない。。」
「・・・。」
「ところでさ・・・これをもし、街中でばら撒いたらどうなると思う?。」
「・・・。」
「数分であら不思議、街中の全員が我等の支配下〜〜〜、これで我等が主様の最も好む物の一つ、人間を沢山捧げられる。」
「・・・。」
「まさに楽して狩りする、だ。歴代狩人でもここまでの成果はないだろう!!!。そしてあの御方は降臨なされる!!!。我等が悲願、理想郷のためにっっっ!!!。」
「ふーーーん、成る程ね。」
「!!!なっ。」
白衣の男が振り向く、その瞬間。
ガキンッ・・・金属音が響いた。
「ぐわああああああああああああああ。」
横に跳んで追撃をかわす白衣の男。
「・・・一撃で仕留められないとな・・・筋が甘いぞウンディーネ。」
ガシャアアッッッンンンン、白衣の男の右腕が床に落ちた。
「失礼を本体。」
全身が・・・それこそ髪までもが黒いウンディーネの禍々しさがさらに増していた。
唯一目だけは赤いが・・・。
「う・・・ウンディーネ???、な、なぜ???。」
消えた右腕を押さえながら白衣の男は言った。
「他にも居るよ〜。」
「ププ。」
背後からシルフとノームが現れる。
当然全身黒。
「サラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノーム・・・・・・・・・・まさか・・・。」
白衣の男の顔にさらなる焦りが生まれ始める。
「ええ、そうよ。」
「君達狩人に捕らえられて散々イジメられた・・・。」
「プ〜〜〜プ〜〜〜〜。」
「「四大精霊だ!!!。」」
ウンデイーネとシルフが互いに手をかざすとそこから水と風がスクリューの要領で混ざり合い、白衣の男に攻撃する。
「グギャーーーーーーー。」
部屋の壁に叩きつけられる白衣の男。
「さあ、本体・・・。」
「頼む。」
「が・・・へ・・・・・・・・さ・さ・さ、サ、サラマンダーどもーーーーーー!!!。」
白衣の男の掛け声で未だに操られているサラマンダー達がウンディーネに飛びかかる。


ガブッ


グシュ


ゴリッ


ザクッ


グシャ


部屋の響き渡る肉をむさぼる音。
混沌の分身達が集まったその場所は黒い塊の様に重なり、しだいに動かなくなっていく。
「ハ、ハハ・・・驚かせてくれる。」
白衣の男は自分の勝利を確信し、右腕の無くなった場所を押さえながら時矢の元へ向かう。
「これでお前の仲間は終わりだ・・・まったく、一体何体で出来てるんだか・・・普通は30体ぐらいなのに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何で?。」
白衣の男はそこである事に気がついた。
「何でだ?、普通これだけ出たら体が構成できなくなって・・・なんで人型で居られるんだ???。」
「教えて欲しいか?。」
「へ?。」
バリンッッッッッッッ!!!、青色の球体が真っ二つになった。
「バ、馬鹿な!!!!!!!!!。」
「この球体、たしかに捕獲されたら中から破壊するのは難しい。・・・だが、その分外部攻撃が弱い。まったく、大事な所が欠けてるな・・・。」
時矢は溜息をつくかのように言った。
「何だ・・・何々だ・・・お前何者なんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!。」
ヒステリック気味に叫ぶ白衣の男。
その後ろで、重なっていた黒い獣や精霊達がいつかの公園の時の様に巨大な大蛇になっていたとも知らずに・・・。
「我が名はネロ・カオス。閉じた楽園に666の命を宿す者。さあ・・・。」


「今生の別れだ。貴様の居た世界、貴様が無念を残す世界を、よく見届けておくがいい」

6: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:46:01)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(86)

始まりは何時からなのだろうか?

気の遠くなるほど昔?

気の遠くならないほどの昔?

知っているのは当の本人達だけで・・・

私達は何も知らない

私達は忠実な駒

私達は忠実な人形

私達は忠実な兵

私達は忠実な捧げる者達

古より空に居る主の下へ

生贄を探し

生贄を縛り

生贄を捧げ

ひたすら生贄を求めた

何時からか、人はこう言った

奴らこそ生粋の「狩人」と






「私達の崇める主は生贄を欲したの。」
田坂先生・・・本名は仕舞と言うらしいが・・・の静かな声が廊下に響く。
「我等が主様はこの世に降り立つための肉体が・・・いえ肉体と言うよりも<存在する>という行為を止められているの。」
「存在?。」
「そう。確かにあの御方は私達を常に見ていて下さる。でも存在しない。思念と言えば判りやすわね。でも幽霊の様な物とも違うわ。あれらも一応はその場に留まれるから<許されているの>。でも決して居ない訳じゃないわ。我等が主様は確かに居る。でも世界が認めない。その存在を。」
存在するけど存在できない・・・何と無く判るような・・・そうじゃないような・・・。
「教会の第七位と同系列の出来事なんだけど、まあその話は良いわ。私達<狩人>はね、主様を復活させるために力を捧げる者達なの。世界に認められないのなら、力ずくで存在を認めさせるために。私達はそのためにありとあらゆる種に手を出したわ。鬼、吸血鬼、悪魔や世界が生み出す精霊達。もちろん普通の動物達もね。そして・・・。」
「・・・人間。」
俺の言葉に田坂先生は微笑を浮かべて頷いた。
できの良い生徒を見る先生の顔だ。
「そう、人と言う種ほど驚くべきであり、同時に失望もする種ね。隆一君の様に先祖が異端と交わる事もあれば、絵理ちゃんの様に魔を喰らう才能を持つ者も居る。そしてそう言った者達に対を成す退魔も人。捕食されるのも人。人は限界があるはずなのに、時には堕ちる所まで堕ちてもさらに堕ちる事が出来る。逆に行けるとこまで行っても、さらなる先にまで行ける。でも、やっぱり限界を超えられない者の方が遥かに多いけど。とにかく、人程の餌はそうは無いわ。」


「鬼が人間を喰らう理由は二つ。生きるためと力を得るため。人間はどれもすばらしい力を秘めていてそして殺しやすい。正に最高の獲物の一つさ。」


・・・確かに、前にも似たような事を言われたよ。
「弱く、意地汚いのに、時には強く、綺麗な者が居る。それは認めるわ。でもね、弱い奴らがその恩恵を受けるのは我慢なら無い。一部の者達のためにありとあらゆる物を踏み潰す人と言う種を・・・私は自分の事なのに嫌悪するわ・・・。」
田坂先生の言葉に怒りが含まれてきた。
「・・・話が逸れたわね。とにかく、私達の主はこの世界に降臨されるのには力が、生贄が必要なの。主様さえいればこの世は理想郷になる。」
「ストップ。」
「え?。」
いきなりの俺の止める声に先生は驚いたようだ。
「田坂先生、よーーーーーーーーーーく、わかりました。要するに・・・。」

「人の世の中に絶望や失望、或いは憎悪した。」

「自分を救ってく力、或いは御方が現れた。」

「それには生贄などの用意する物が必要。」

「それさえあれば世は平和になり、汚く、醜い物は浄化され、理想郷が出来る。」

「これは世界を救うためなのだ。」

「・・・・・・で、さっき先生達が言っていた<有限転生者>って言うのは狩人を邪魔する奴なんですね?。遠野家にそんな秘密があったのか。まあ、そんな所ですか・・・田坂先生。」
俺は呆れ気味に、そして投げやりな口調で言った。
「な、なななななな〜〜〜〜〜〜〜〜。」
「・・・このガキ。」
今まで全然入ってこなかった横に居る男も顔を赤くしている。
「先輩・・・いくらなんでも・・・言いすぎじゃ?。」
弓塚も俺の言い方にさすがに向こうが哀れになったのか、止めてきた。
「はあ〜・・・そうは言うけど・・・この悪役のネタは最近どこでも使われているぞ。その辺の週刊誌及びRPGで。」
「・・・確かに。」
「あ、貴方達、私達の理想を、夢を馬鹿にする気!!!???。」
「・・・田坂先生、先生のしてること滅茶苦茶ですよ。」
俺はあからさまに醒めた口調で続けた。
「一部の者達のためにありとあらゆる物を踏み潰す?・・・そんなの狩人だって生贄の名目で同じですよ?。」
「それは認めるわっっっ!!!。でもそれは・・・。」
「正義のための犠牲・・・ですか?。どこかの国が戦争をしかけるのに使いそうな言葉ですね。テロ組織も当てはまるかな?。理想?、夢?・・・そんなのは自分で叶える者です。先生達のしてる事はまさに他力本願。ぶっちゃけ、今の他人頼りな田坂先生にそんな事を言う資格はありません。」
「なにを・・・。」
田坂先生が言い返そうするが、続ける。
「自分に力が無い?。そんなのは自分でどうにかする物です。妬んでそれが悪だなんだ言う奴は最低です。力が無いのに高望みするのも気に喰わないです。他人に押し付けっぱなしの人生じゃあ、夢なんて叶いません。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!。」
ふむ・・・次の反論は・・・。
「次は生まれた家柄の違いですか?。そうですね、高貴な出の人は実力が無いのに上にいけます。でも実力が無ければ結局どこかで堕ちます。逆にちゃんと実力が有れば世の中何とかなります。確かに運はあります。でも結局掴み損ねたその本人が悪いんですよ。それで死ぬような事があれば、それがその人の結果なだけ。世界の全てを妬むのは筋が違います。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっ!!!!!。」
言おうとした事を真っ先に否定され、さらに赤みが増す二人。
「パクリなんですけど「所詮世の中弱肉強食」なんてセリフ、良かったなー。結局世の中力がある者が有利だし。」
「「「・・・。」」」
他の三人とも震えている。
そう言えば、弓塚にも何かあったのかもしれないな。
「でも・・・結局人は一人じゃダメなわけで・・・。」
俺は着物の袖に入れておいた短刀を取り出した。
「群れる生き物。だからこそ時には弱い物も守る。自分達が生き残るために。だから微妙にこのセリフ、微妙に俺と考えが違うんですよね。そうでしょう?、お二人さん。」
「わ・・・判ったような口を・・・。」
「ギリッ。」
ま、確かに俺みたいな14歳の子供に諭されてたら普通は怒る。
「あ、悪役のネタがもう一つあったな。世界に失望した、に似てるけど・・・弱い物ばかりが虐げられるこの世界に何の意味がある?・・・とか。・・・さあ、意味なんてわかりません。結論なんて千差万別、人それぞれ。でも・・・・。」
とてつもない矛盾理想主義者二人を睨みながら言う。
「結局生きている。生きている以上死は避ける。それが生者のすべき事。必死に生きて生きて生き抜いてみせる!!!。狩人が俺の生き方を邪魔するならする事は一つ。倒す!!!。」
「先輩の言う通りですね。」
弓塚の手の爪が鋭くなる。
「私も、生きます。それがお姉ちゃんとの約束だから。」
向こうもようやく戦闘態勢に入った。
「ふ・・・ん、いいわ、何かをするには何かしらの犠牲や反発が付き物。絵理ちゃんは私が相手してあげるわ!。山木、貴方は隆一君をお願いね。」
「ガキ・・・お前は苦しみながら死ね。邪魔な遠野家の血を引くんだ。これぐらいは当然だ!!!。」
山木が一気に間合いを詰めてきた。


ダッ


俺は取り合えず後ろに跳ぶ。
狭い通路で弓塚と仲良く肩を並べるのはさすがに不味い。
逆に弓塚は田坂先生に向かって跳ぶ。
取り合えずこれで一対一同士。
さて、時矢がどうなったかも気になるし・・・。



「ハッ!!!。」





7: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:46:22)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(87)

さて、今宮隆一という人物について述べてみよう。

彼の血筋は遠野家本家にとても近い。
三代前の当主の兄弟が作った家柄の今宮家。(正確には婿養子で、名字もそれほど珍しくない)
その初代当主息子<今宮春牙>。
これが隆一の父親である。
そして遠野家本家前当主<遠野槙久>の妹<遠野楓>。
彼女が春牙の妻にして、隆一の母親である。
それと第二子、すなわち隆一の妹として<今宮柚良>が居た。
小学校三年の時、遠野家に滅ぼされた蛇神家の末裔<蛇神烈矢>により三人は殺害される。
しかし列矢の弟にして隆一の親友<蛇神時矢>と、血と魔眼に目覚めた隆一により烈矢は返り討ちにあう。

その後、隆一の力に不安を抱いた遠野家本家前当主<遠野槙久>は彼を森に囲まれた施設に隔離する。
だが、そこで隆一は魔の三大勢力の一つ<邪皇14帝>に属する、第4位<死剣帝>(別名・堕ちた漆黒の死神)閻魔武忌とその妹閻魔華連と会う。
華連との共闘(実際はバラバラ)により武忌を倒すが、武忌は隆一に密かに転生(と言うか寄生状態)し、今現在復活し活動している。(隆一はまだ知らない)
その後、外出癖がついた隆一を有る程度抑えるために<久我峰家>が隆一を引き取る。(反転の疑いのため、それなりの家柄の必要が有った)
名門私立鳳凰中学校に通い始め、今度こそ平和な日常・・・を願ったのだが、運命は彼を逃がさなかった。

中学一年の冬、すっかり施設で森好きなった隆一は一人で山登りに向う。(監視をすり抜け)
そこで今度は邪皇の一人<無者>と協会の討伐員<日神>と<神無月千鶴>と出会う。
数々の妨害があったが、見事隆一は無者を追い詰める。
しかし止めを刺したのは隆一の親友の時矢だった。
時矢は無者により体を修復不可能な状態にされ、死に掛けた。
そこに同じ魔にひかれたのか、<遠野志貴>に滅ぼされた<混沌>の生き残りが時矢と融合したのだ。
死にかけた隆一だったが、時矢(ネロ・カオス)の混沌により、生き延びる。
その後、学校で暴力行為(校長を殴り飛ばした)事により、今度は遠野家本家が預かる事になった。

そんな、高い山あり、深い谷あり、の人生を過ごしてきた隆一だったが、彼にはパートナーのような者が居た。
同じ存在にして、別個の存在<遠野隆一>である。
遠野隆一は自身を本能と呼んだ。
そして、忘れている事を思い出せば同じになれると・・・。
それが何なのかはまだ判らない。
判る事は、彼と彼がいくつもの修羅場を持ち前の実力と機転と悪運で生き延びてきたという事だ。

さて、結局何が言いたいのかと言うと・・・。





「グォッッッ!。」
男・・・山木と言うらしいが・・・が床を倒れる。
「・・・。」
俺自身特別な事はしていない。
説明すると・・・。

1、前に居た山木が刀のような物を出した。
2、その刀の刃が獣のようなものに変化した。
3、取り合えず刀の目の前に跳んでその獣の点を右手で持った短刀で突いた。
4、動かなくなった刀を左手で弾き(折れなかった)全然動かない山木に回転の反動で回し蹴りを腹に喰らわせた。
5、真横の壁に激突・・・で今に至る。

「・・・えーと。」
何度も言うが、俺の魔眼は物の命を視る。
最近では(前からだが)生物の命に限らず、結界や壁などに対しても<視える>。
まあ、物にも寿命って言う表現があるから納得がいくが・・・。
「・・・終わり?。」
何かどんどん山木の点や線が消えていく。
が、全部が消えるわけではなかった。
「・・・。」
戦闘終了。
所用時間3秒。





一方、少し離れた廊下では・・・。
「や、山木???。」
田坂先生こと<仕舞>が隆一VS山木の結果に唖然としている。
山木が先程からしていた腹が立つ自信は何処にいったんだろう?。
「ハッ!。」
「あっ。」
悪魔を喰らった者、<魔喰い>の弓塚絵理の爪が仕舞に迫る。
だが、

グニュ

「このーーーー!!!。」

グニュグニュグニュ

スライム状の物体が二人を遮断して弓塚は先にいけなかった。
「あ、あはは、弓塚絵理さん、貴女ではこの子は倒せないわね。」
皮肉げにフルネームで呼ぶ仕舞。
(落ち着きなさい、隆一君が遠野家の者だと言う事はよーーーく理解したけど、この使い魔が居れば攻撃を受けるなんてありえない。)
仕舞が冷静に事態を分析する。
(取り合えず、コイツで絵理ちゃんの悪魔の力を暴走させて、一緒に隆一君をなんとかすれば・・・。)
彼女の指に付けた指輪が怪しく光る。
これは人間に対して<のみ>強烈な睡眠効果を与える使い魔が封印してあった。
魔喰いは言ってしまえば人の力で無理矢理悪魔の力を抑えているだけであり、人の部分が消えれば悪魔の人格が表面化するはずだった。
「さあ、可愛い私の使い魔、彼女を眠らせなさい。」
そう言って、仕舞は指輪をスライムと格闘中の弓塚に向けた。
「あっ。」
ピカッ、それに気づいた弓塚だったが、指輪からの淡い赤い光を全身に受けてしまった。
「さあ、悪魔よ目覚めよーーーーー。」


「え?、何だったの今の光?。」


「・・・。」
「・・・。」
効果無し。
「な、何で?・・・人間に対して絶対に効くはずでしょう???。」
仕舞が指輪を見るが、おかしな部分は無かった。
「・・・田坂先生、そう言う事なら効きませんよ。」
弓塚は呆れ気味の視線をスライムごしの仕舞に向けた。
「なっ。」
「・・・私、先輩のおかげで完璧に支配したちゃったんです。この力。」
それは今宮家で暴走した弓塚を隆一が仕方なく点を突いたことに始まった。
確かに生命力を奪われたが、それは悪魔の方も同じだった。
むしろ、悪魔の方がかなり奪われた。
言わば、弓塚の盾になった、と言った方が良い。
僅かに極点は避けられていたため、意識がハッキリしていた人間部分の弓塚はその隙にちゃっかり悪魔の力を完全に手中に収めていたりする。
失った力も有ったが、暴走を恐れて加減した時より数段よくなった。
「ば、馬鹿な・・・。それじゃあ貴女は・・・。」
「ハ〜イ、悪魔そのものでーーーす。・・・とは言い切れなくてやっぱり<半人間半悪魔>てやつですけど。」
要は、半人間が眠っても、半悪魔起きていて、しかも半悪魔も弓塚そのものなので結局睡眠効果は無いのだ。
「それと田坂先生、私閃きました。・・・凍れ。」
ピキン、瞬間スライム状の物体が凍った。
「な、ななななななな・・・。」
「ハッ!。」
バキンッッッッッッ!!!、と氷漬けになったスライム状の生き物は粉々になった。
「ひっ・・・。」
「貴女のした事はとても許せません。でも、一発殴るだけですませます。」
「な、殴るって・・・悪魔の力・・・いやーーーーーーーーー。」
再び何やら色々な使い魔が弓塚を襲うが・・・。
「決めセリフ・・・チェックメイトォォォ!!!。」





「お疲れ弓塚。」
「は、はい、先輩、私達の愛の力の勝利ですね!。」
ドサッ、隆一が連れてきた山木と気絶した仕舞が廊下に隣りあわせで寝ている。
「愛ね、面白い事言うなー。」
「せ、先輩〜〜〜。」
弓塚は体全体を真っ赤にしているが、隆一は全然このアプローチに気がついていなかった。
(時矢は生きてるかな?・・・ってアイツが死んだら天地がひっくり返るな。)
・・・絶対コイツは遠野志貴並の朴念仁、唐変木、愚鈍である。
「よし、弓塚、あの穴に降りようか?。」
「えー、先輩、でもそんなーーー、えへへ、先輩が良いならーーー。」
トリップ中だった。
「弓塚?。」
「ふえ、は、はい何でしょうか?。」
「あ、ああ、時矢を追わないといけないだろう?。だから穴に降りようと思ってな。」
「・・・・・・。」
「どうした?。」
「い、いえ、そうですよね、助けないといけませんよね。」
(うう、先輩と二人っきりなのに・・・)
こっちはこっちで問題が有りすぎる。





だが、地下では・・・。
「アりえない・・・アリ・・・え・・・ナい。」
体中の皮膚が剥かれた紫煙が一方向を凝視していた。
「・・・ふん。」
時矢が詰まらなそうに言った。
紫煙の肉体は殆ど機械だった。
これでは喰えない。
時矢は上の二人と違って敵に容赦はしなかった。
「キキ・・・ガガガネエ様・・・」
「うん?。」
「姉サマ・・・姉様・・・ネエサマ・・・ネエ・・・サ・・・マ。」
あまりの異常さに紫煙はひたすら同じ言葉を嘆く。
そして・・・。
「プログラム解除・・・コードNO・7発動・・・ネエサマ・・・ネエサマ・・・。」
その瞬間、紫煙の体が光り出す。





倒した二人(仕舞と山木)をわざわざ連れて落とし穴の前にやってきた二人。
一応お互い殺人犯になる気は無かった。
(狩人について色々聞きたいしな・・・まあそれは時矢に脅させた方が怖いだろう。)
「よし、じゃあまずこの二人を落としてから行こう。」
「賛成。」
怖ろしい事をアッサリ抜かす隆一と賛同する弓塚。
下手したら死ぬ事に気がついていないのだろうか?。
ポイポイッ、ピューーーー。
「じゃあ、先に行くぞ。」
ヒュッ、隆一は穴に向って飛び降りた。



ドゴォォォオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!







―――――――――――暗い

「何処だ?。」

―――――――――――重い

「死んだ??・・・まさか・・・それにしては・・・。」

―――――――――――赤い

「あれ・・・炎?。」

―――――――――――朱い

「・・・こコは?。」

―――――――――――紅い

「・・・ココは?。」

―――――――――――オレハ、知っている

「・・・ココハ?。」

―――――――――――コこヲ・・・こノ時間ヲ・・・

「ドコ、イツ、ナゼ???。」

―――――――――――ココハは

「ココハ。」

―――――――――――こコこそハ






―――――――――――時は遡る






1571年

9月12日

比叡山

延暦寺



―――――――――――さア、語らレヌ歴史ヘ参ろウか







8: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:46:42)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(88)

<真月の時(戦国記・紅蓮の王)>



昼間だと言うのに、その森の中は夜のように暗かった。
ダッダッダッ、森の木々の枝を猿さえも追いつけない陰が移動する。
「ちっ。」
影は舌打ちしながら方向転換した。
ダダダダダダダ、クナイの様な飛び道具がその影を狙う。
「・・・上等だ。」
ダッ、ザザザザザッッッ・・・、影は森で僅かに開けた場所に下りた。
ようやく、その姿を確認出来た。
腰まで届くんじゃないか、と言わんばかりの赤い・・いや真紅の長髪。
来ている着物まで真っ赤だ。
背も長身で2メートルはある。
ランランと輝くその瞳もまた赤い。
一見すれば戦場で血塗れになった武将である。
「オイオイ、何時まで隠れてんだ?、アン?、それとも怖がりな連中しか居ないのか?、七夜にはよ。」
「「「「「・・・。」」」」」
返事は無い。
「ケッ、オレ自らが面(つら)を見てやろうとしてやってるのに・・・たく、だーーーからやなんだよなー、態度の悪い雑魚は。」
「「「「「・・・。」」」」」
ザッ、森の影から五人の影が現れた。
「遠野真紅(しんく)。汝、外れた故にその命、貰い受けに来た。」
リーダー格の男が言った。
「ケケケッ、外れた?・・・反転した?・・・ケケケッ、オレは正常だよ・・・この姿がな。」
「「「「「・・・。」」」」」
五人は何も言わずに真紅を囲む。
「ヒュー、斎木のオッサンが大将でー、他に遠野、軋間で・・・七夜が二人か。お?、七夜の一人は女かー、良い女じゃん。・・・でもよー・・・混血と退魔が仲良くしてんじゃ・・・ねえよーーーー!!!。」
「「「「「!!!。」」」」」
真紅は怖ろしい速さで斎木の者へ向かった。
「舐めるな!!!。」
斎木の者はその自慢の豪腕で真紅を仕留めようとしたが・・・。
「・・・なに?。」
突如、斎木の者の視界が反転した。
文字通り天地が逆さまになったのだ。
ザァァァァンッッッッッッッ!!!、遅れてその音が聞こえてきた。
(馬鹿な・・・たった十代の子倅に・・・わ・・・たし・が?。)
斎木の者の意識はそこで消えた。

「ぎゃあああああああーーーーーー。」
「がほ・・・。」
「あ・・・・・・・がへ・・・。」

遠野、軋間、そして七夜が一人、真紅の混血クラスでは有り得ないスピードに散っていった。
「ケッ、あーー弱っ。後残ったのは、良い女、お前だけだぞ?。」
「くっ。」
七夜の女はクナイを投げようとするが・・・。
ガシッ、と腕を掴まれて出来なくなった。
「お前、見れば見るほど良い女だなー、喰っちまおうかな?。」
「ぐっ。」
七夜の女は目を瞑った。
だが、女が死ぬ事は無かった。
ドンッッッ・・・バタン、鉄砲音の後、真紅は倒れた。
「はあ、はあ、はあ・・・。」
七夜の女は真紅の腕を引き剥がし、距離を取る。
「随分と手こずったな。」
「・・・感謝します。」
声は木の上からだった。
「さすがの混血も、浄弾を心臓に撃たれれば終わりか。」
「の、ようですね。」
二人は倒れた真紅を軽蔑するかのように見下した。
「しかし殆ど全滅か。長老達にどう報告するか?。」
七夜の女が木の上に目線を移す。
「ありのままを。」
「仕方あるま・・・・・・ごほっ。」
「なっ!!!。」
突如、木の上に居た男の胸から手が生えてきた。
「が、げ、ふぅぇ・・・。」
「て言うかとっとと死ね。」
強引にその手は上半身を移動した。
ブシャッッッ、上半身から上の肉片がその辺りに露散する。
男の後に居た者は真紅だった。
「な、なな。」
慌てて地面を見ると、そこに真紅の影は無かった。
「じゃーーーん。」
真紅の左手には、鉄砲の弾丸が握られていた。
「ヒャハハハッッッ、超高速で玉を取って見ましたー。」
「馬鹿な・・・馬鹿な・・・。」
七夜の女はその場に座り込んだ。
自分等は混血に負けないように鍛えていた。
なのにこの混血は自分らの努力を全て圧倒したのだ。
「奇襲第一の七夜が正面突破しかいない訳が無いだろうが?。ばれてるんだよ。ケケケッ。さーーーて。」
真紅は木から飛び降り、七夜の女の前に立った。
「くっ・・・。」
「オレさー、以外かもしないんだけど、基本的に女は殺さないんだよなー。反転してるからそんな物無いと思ってるだろう?。それが有るんだなー、オレだけには・・・。でもよ、そっちから殺しに来たら容赦する気はない。で、お前は二度もそんな事をしてくれた。」
真紅は七夜の女の服の襟を持ち上げた。
「ぐう・・・。」
殺さんばかりに睨むが、真紅は笑って受け流す。
「あそこで何もせずに逃がしてやる気だったが、お前はやった。さーて・・・オレの女の殺し方は決まってるわけ。判りやすいぞ?。」

「戦う、犯す、喰う。」





―――――――――――時は遡る


1571年

9月12日

比叡山

延暦寺



もうじき夕焼けにならんとする時間、天下布武の旗印が一つの山を覆っていく。
時の覇王<織田信長>は邪魔な一向宗を葬るために、この比叡山延暦寺を攻める事にした。
しかし、実際の目的はそんな物ではなかった。
「カッカッカッ、虫けら風情が頑張るのお、何時まで続くのかの?。」
比叡山の麓の本陣にて信長は笑いながら言った。
「う、う、う・・・ぐ・・・。」
信長が笑っている下では、麗しき美女が苦しそうに呻いていた。
服装は農民の姿であったらしいが、その服は強引に破かれ、完全に素肌を晒していた。
経った今まで、信長に犯されていた、一向宗の者だった。
「カッカッカッ、仲間の死ぬ声が聞こえるか?、それとも同じ様に犯される悲鳴が聞こえるか?・・・或いは、魂を奪われる絶望の声が聞こえるか?。」
「あ・・・あ・・ぎゃあああ・・・。」
甲高い悲鳴が響いたかと思うと、それっきり女は動かなくなった。
「カッカッカッ、つまらぬのー、猿や光秀の様にワシを楽しませる者は居らんのかの?。」
クイッ、と信長が指を動かすと、動かなくなった女が起き上がった。
「行け。」
「ギッ。」
女は裸のまま本陣を出た。
少しすると、声が聞こえた。

「おいおい、何だこの女?。」
「俺たちにしてほしいんじゃないのか?。」

「「ギャアアアアアーーーーーーーーーーーーーーー。」」

「カッカッカッ、ワシを喜ばせたければ、戦場に居なくてはのお。」
やがて、夕日にが沈む時間になる。
「カッカッカッ、さてさて、ワシも一暴れするかのお?。」






「大将、このままでは明日まで持つかも怪しいですぞ!!!。」
延暦寺の本殿の真下にある地下にて、男が詰め寄った。
「イカン、主様の降臨するための生贄はまだ足りていない。僅かの間の降臨は出来なくはない。だが、それでは意味が無いのだ。我らの求める世界にするにはな。」
「しかし、相手はあの鬼ですぞ!?。どうするおつもりか!!!???。」
「慌てるな。所詮上の奴らは農民共。いくら死んでも構わん。むしろ生贄になるからな。」
大将と呼ばれた男は不敵な笑みを浮かべた。
「では、我らが助かる道が?。」
「所詮信長も人。この比叡山の裏には気が付きまい。」
大将は信長の事を完全に舐めていた。






「・・・影が揺らぐ。」
比叡山から少し離れた麓にて、男は言った。
「汝が来るのならば、我は潔く尽くそう。汝の力を知る故に・・・。」
男の肌は真っ黒だった。
男はそのまま地面へと消えていく・・・。







髪は赤と黒が混ざったような長髪。
服は薄ピンク色に赤い花柄の付いたマントを羽織っている。
そんな女が、比叡山の中腹に居た。
「ギャガ・・・ぐお。」
「へぐへへへ・・・ご・・・。」
周り居た一向宗は次々に倒れていく。
「あらー、この男も良い男ー、ああ、こっちもー・・・コレはいらないわね。」
グシャ、不合格だった男の体が潰れる。
「うん?。」
突如、戦う男達の声とは別の声が聞こえてきた。
「う、うわああああんん・・・。」
「ひぐひぐ、おかあさん・・・。」
「オーギャーアギャーー。」
「・・・。」
女は思った。
(何かゾクゾクする・・・。子供も良いかな?。)






「何と言う事だ。」
「でしょうね。」
空中に浮かぶ二つの影が比叡山を凝視していた。
「大王に援軍を頼みましょうか?。」
「間に合うわけがなかろう。オノレ・・・邪魔すれば儀式は失敗のはずだったのに、この乱戦では・・・。」
「信長・・・第六天魔帝。何か気がついているかもしれませんね。」
「だが、それでもせねばならんぞ・・・牙神。」
「ええ、判ってるわ・・・切神。」





人は知らず、刃を振るい・・・

魔は知り、牙を向け・・・

神は迷わず、力を割く・・・


比叡山は夜を迎える・・・。

9: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:47:06)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(89)

<真月の時(戦国記・紅蓮の王)>






比叡山延暦寺は夜を迎えようとしていた・・・。





ズグァ、ザシュ、ドサッ・・・

「カッカッカッ、所詮は人よのお。すぐ潰れるわい」
邪皇14帝第6位<第六天魔帝>(別名・第六天魔王)[織田弾正忠信長]はたった一人で山の頂上にある寺院の入り口に居た。
「ひ、ひいいいいいいいいい」
槍を構えていた男が逃げ出すが・・・。
「ぬん!」
信長は自身の持つ槍を、逃げる男に向けて・・・。

グゥィンッッッ

「が・・・へ」
ドサリ、と男は絶命した。
男の胴体には空洞が出来ていた。
槍の風圧だけで、弾丸のような攻撃をしたのだった。
「カッカッカッ、ワシから逃げるなぞ、愚かな事じゃ」
狙った獲物は絶対に逃がさない。
絶対の自信が、信長にはあった。
「カッカッカッ、そして、お主も例外ではないぞ? 小僧」
「あー、ようやく注目してくれたかー。魔帝さんよー、もう少し手っ取り早くやってくれよ」
煌びやかな寺院の屋根に、紅い男は居た。
「小僧、何者じゃ? ワシと似た気配がするがのお」
「ケケケッ、有名かどうか知らねがなー・・・<遠野真紅>って言うんだけどよ」
「ほう? 混血か・・・。にしては随分と禍々しいのお」

ザッ

屋根から下りた真紅、その紅い瞳で信長を見据えた。
「しかしまあ、よく暴れるなテメエも。さすがは邪皇様だな」
「カッカッカッ、威勢の良い小童だのお。よかろう、それに免じて我が技にて葬ってくれよう」

バッ

信長は槍を両手で持ち、構えた。(Fateのランサーの槍の部分の構えを水平にした感じ)
「あー、ウゼー」
「・・・何?」
信長は眉を潜めた。
「あいにく、オレは忙しくてな。片付いたら相手してやるよ」
「してやる?・・・小僧、ワシを舐めてるのか?」
信長の顔が怒りに満ちる。
「ヒャハハハッッッ、オッサン、怒ると頭の血管が切れて死ぬぜ?」
「小僧!!!」

ゴーーー

信長の持つ槍が、漆黒に輝く。
そして、信長自身の肌までもが漆黒に染まっていく。
「ヒュー、怒ったか? 嫌だねー、歳よりは怒りっぽくって」
「くわっ!!!」

ドガガガガガガガァァァァッッッッッッッッッッッンンンンンン!!!!!!





「馬鹿な・・・」
信長は驚愕の言葉を漏らした。
放った槍の衝撃で目の前の地面は寺院ごと抉られていた。
だが、一点だけ、直系一メートルぐらいの円の地面が無傷で残っていた。
そこには有るはずの影は無かった。
「・・・小僧がァァァァァァアアアアアアアア」

ギガガガガガァァァァッッッッッッッンンンン!!!

信長の怒気は周りの地面をクレーターのように盛り上がらせた。
信長が始めて、戯れでもなく、遊びでもなく、始めて獲物を逃した瞬間だった。





「あれんまあ、信長の怒気〜? 珍しいわね」
邪皇14帝第9位<空間女帝>(別名・無軌道の女皇)[馬 乱花]は山の頂上に作られていた隠し洞窟の中で、信長の気配を感じていた。
「殺せ!!! 何としてもソイツを・・・ギャアアアアアアア」
「ガンバ、ガンバ〜、皆頑張れ〜」
乱花の掛け声と共に、数十人の虚ろな目の老若男女が数人の兵達に喰らい尽く。
「馬鹿な、ば・・ゲヒャグ」
「ほらほら〜、頑張んないと死んじゃいますよ〜?」
乱花が右手を振るうと、そこから黒い穴が開き、十数人の人間が出てくる。
いや、この者たちは最早人間とは呼べない。
邪皇の乱花に魂を喰われた兵鬼である。
「・・・・・・・・・終わっちゃいましたね」
乱花はピンク色のマントは振るうように歩く。
「さ〜て、何が出るかな?」





「ば、馬鹿な! 邪皇だと!!!」
「ど、どう、し、したらよろしいのでしょうか大将!!!」
そこにはもう十人ほどの人間しか居なかった。
「ぐぐぐ・・・し、仕方あるまい。我らが主の復活の儀式を早急に行う!!!」
「「「「「ハッ!」」」」」
全員が円を作るように陣形を取った。
(え〜い、早すぎ、さらには生贄も少ないが仕方ない! おのれ鬼共・・・覚悟いたせ!!!)
大将と呼ばれた男が円の中心に移動する。
「皆者・・・ゆくぞ!!!」
「いや、オレはどこにも行かないぞ?」
「!!!???」
大将と呼ばれた男の人生は、真後ろから聞こえた声を聞いた瞬間、終わった。





ゴオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふえ?」
乱花がそこに入ったときは、全てが燃えていた。
灼熱と烈火と業火の世界のみがその空間にはあった。
例えるなら、キャンプファイヤーの数十倍でかいのが起きていたと言えば良いだろう。
「あう!?」
突如炎が自分等を襲う。
乱花は慌てて黒い穴を目の前に出し、炎を吸い込んだ。
が、変わりに周りに居た兵鬼が一人残らず焼失した。
「く〜〜・・・あー、酷いです! 私のコレクションが・・・」
「これくしょん?」
「むっ!・・・あ」
そこには2メートルはあろう長身に、真っ赤な着物に、真っ赤な長髪の乱花好みの美形の男がいた。
「良い男・・・」
「お? 惚れた?」
顎に手をやり、邪笑する真紅。
彼は女好きだった。
と言っても、愛など求めず、支配する体質だったが・・・。
そして、乱花もそう言ったタイプだった。
「ヒャハハハッッッ、お前も邪皇みたいだな、オレの女にしてやろうか?」
「貴方、私の男にしてあげようかしら?」
「「・・・」」
息もピッタリだった。
「おい、オレが<してやるんだぞ>?」
「私が<してあげる>のよ?」
「「・・・」」
沈黙、そして・・・。
「ちっ、あばよ」
真紅は乱花を無視して通り過ぎた。
「ま、待ちなさい! 貴方・・・良い根性ね。フフフ、貴方の体も魂も、全て私の物になるのよ!!!」
「ウザ」
真紅が左腕を振るった。

ゴオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「え・・・」
灼熱の炎が不意打ちで乱花を襲った。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア、ああああああ、アツイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
火達磨になりながら、乱花は黒い穴の中に消えた。
「ほー、空間女帝・・・無軌道の女皇ってわけか。ま、知らねっと」





「・・・なるほどな」
黒い影は、真紅の行った全てを見ていた。
彼こそ、邪皇14帝第14位<処刑帝>(別名・不死なる影)[鬼影 時雨]である。(現代で武忌に瞬殺された奴)
燃えている現場に時雨は地面の影から現れた。
「ふむ・・・血・・・赤い、紅い血を振るっていた・・・発火の能力か。さしずめ<発火血液>と言った所か」
時雨はそう分析すると、再び地面に沈んだ。
(紅・・・ふむ、狩人共を葬る存在・・・そして邪皇・・・やはり13位の有限転生者か。どうやら第1位の復活は、見送られる事になったようだな)
時雨の気配は完全に無くなった。





「な、何と言う力なのだ」
「・・・驚いたわね」
派遣された死神の切神と牙神は、空中から地底内で起きた力の波動を感じ取っていた。
「む、出てきたぞ!」
「へえー、あれが今代の転生体・・・」
二人の下には堂々と夜の森を歩く真紅の姿。
「さて、どうしたものか・・・」
「良い顔ね、私好み。色仕掛けでもしてみる?」
「無茶を言うな」
「判ってるわ。とにかく・・・」

ゴオオオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「な」
「え」
火炎放射は見事二人を包み込んだ。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」





「お、当たった」
真紅は意外そうに言った。
「一人位避けると思ったが・・・ま、いっか・・・げっ」

バッ

真紅が勢い良く跳んだ。

ドガガガガガガガァァァァッッッッッッッッッッッンンンンンン!!!!!!

真紅の居た場所に、強烈な弾丸風が直撃した。
「小僧ッッッ!!!」

ダンッ

信長だった。
「ケケケッ、よう、不意打ちとはやってくれるなオッサン」
「カッカッカッ、減らず口を。貴様の正体、見破ったぞ!」

グゥィンッッッ

槍の波動が真紅に迫る。
「ハッ! 舐めるな!!!」

ザンッッッ!!!

波動がが真っ二つにされた。
「ぬ・・・」
何時の間にか、真紅の手には紅い剣が握られていた。
刀ではない。
それは西洋の両刃のような剣。
だが、その刃の部分は陽炎の如く揺れていた。
「・・・炎の剣とはのお。カッカッカッ、お主はやはり13位か!!!」
信長は三度、あの構えをする。
「ヒャハハハッッッ、また同じ・・・・・・?・・・へー、威力が段違いみたいだな」
そう言うと、真紅は紅蓮の剣を持ちながら、上段の構えをした。
「カッカッカッ、<遠野家>で気づくべきだったのお。古き混血の一族、遠野家。開祖はある邪皇と契約した。そのものは力を与える変わりにこう言った」

『何代かに一度、一族から我に適した体を持つ者の肉体を貰い受ける』

「それがお主であろう? 邪皇14帝第13位<鬼紅帝>(別名・有限転生者)[遠野真紅]。カッカッカッ、もっとも名は転生体により変わるがのお」
「ケケケッ、御託は良いから早くしな」
「無論!!!」
二人は己の持つ得物を振るった・・・。





「牙神・・・生きているか?」
「切神こそ・・・大丈夫?」
地面に倒れている二人は黒焦げになりながら言った。
「この身も駄目だ・・・そっちは?」
「駄目ね・・・」
「おのれ・・・鬼紅帝・・・」
「切神・・・こうなれば、繋がるしかないわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本気か?」
切神は少し嫌そうな顔をした。
「私達双子だからできるのよ? さあ、早く・・・」
「・・・仕方あるまい」
(おのれ・・・鬼紅帝、許さんぞ!!!)
こうして、閻魔大王の腹心<切牙>は生まれた。





「ぐお・・・馬鹿な・・・」
信長は地面に仰向けにめり込んでいた。
周りは完全に黒焦げになっていた。
「このままでは・・・このままでは!!!」
だが、その後、力を大幅に失った信長は、<本能寺>にて死神に協力した<明智光秀>により、あえなく封印される事になる・・・。





「あー、終わったー。信長は面白かったなー」
ボロボロの着物を着ながら、真紅は言った。
「おーーー、燃える燃える。さすがは寺」
目線の先には消え行く延暦寺。
だが、真紅にとっては狩人の邪魔をしに来ただけなので、人を助ける気は無かった。
「で、具合はどうだ? 七夜の女?」
「・・・」
服を一枚も着てない美女が真紅の目の前に居た。
女の目はすでに虚ろになっていた。
「さすが戦場の男とも、精力あるな。ケケケッ」
真紅は、延暦寺に行く前に、自身の命を狙ってきた彼女を裸にし、両腕を縛って、兵たちの居る場所に放り投げていたのだった。
彼女がどうなったかは、言うまでもない。
「本当は、戦う、犯す、喰う、をしたかったんだがなー、ま、死なないだけマシだったろ? ヒャハハハッッッ」
真紅はそう言うと、女には目もくれずに立ち去った。
女は、僅かに目を立ち去る真紅に向けた。
「お、に・・・」





「さーて、狩人も潰したし、何処に行くかな? ヒャハハハッッッ」






補足説明

<発火血液>
自身の血を発火させる能力。
小指一本分の血液でキャンプファイヤー並みの火力がある。
全身ガソリン人間といえば判りやすい。
四季の不死のように、時間差や遠隔操作で発火する事もでき、トラップとしても使える。


<紅蓮剣>
刀崎の技術を利用した骨刀(剣)を媒介に、<発火血液>を付属させた灼熱の剣。
剣なのは、刀の形にしても意味が無いため。(炎の固まりに、刀の特性は意味が無い)
魔術も流しているので、三つの力で合成された物といえる。(真紅の属性は火)
先祖故に発現した能力と言える。



10: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:47:27)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(90)

<真月の時(現記・闇夜の王)>







三咲町の隣にある南社木市。
そこの平和を司るべき一角の警察署の周りには、人が溢れかえっていた。
「おい! 大丈夫か!」
「しっかりしろ!」
突如起きた揺れに、所内から脱出した警察関係者達だった。
「・・・収まったみたいだな?」
誰かが言った。
「ああ・・・一回きりだったみたいだな」
「よし、生活安全課の皆は付近の住宅街をパトロールだ。他の皆は・・・」
どうやら、上は問題無い。
問題は、下だ。





ビキキキキ・・・ドバガンッ

地下の瓦礫が粉々になり、少年が姿を現した。
「・・・自爆するとはな、まさにサイボーグの鏡か?」
真っ暗な地下で時矢は静かに言った。
「フン、元よりこの身は混沌、仕留められるとでも思ったのか? まあいい、アレでは喰らう事も無理だったからな。・・・む?」
「ぐ・・・へ」
ピクリ、と男が呻いた。
瓦礫に埋まっているが、敵(狩人)である事は、その独特の雰囲気で判った。
(・・・・・・しかも、見るからに悪人面だな)
「丁度良い、私も俺も食事がいると判断した」
黒いコートが少し開かれる。
そこから巨大な腕が出て来た。
そして、餌を掴むとコートに戻った。
「ひ、ひぎぎぎぎェェェェェーーーーーーーーーー・・・・・」

バキ、ベキボキ、グキ、ガリガリ・・・ブチバチガキグレ・・・

「・・・良し。さて、隆一とあの魔喰い(弓塚)はどうなったかな?」
時矢は上を見上げ、出口を探した。
丁度、良い穴があった。
「あそこか・・・さーて、シルフにでも・・・ん?」
ふと、気配を感じて振り向くと、そこにはボロボロの服に血塗れの女が居た。
かなりの深手らしく、大量の血が辺りに流れている。
「・・・」
「・・・」
女は時矢を呆然と見上げていた。
「・・・命拾いをしたな、今は食事という気分ではない。もっとも、その傷では助かるまい。残された時間、己(おの)が生命を謳歌しろ」
そう言うと、時矢は興味を無くしたかのように歩き出した。
「ま、まって・・・」
女は混沌の存在感に圧倒されながらも、話しかけた。
「?」
時矢は律儀に振り返った。
彼にしては珍しい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・貴方、どうして私達を・・・」
「・・・この身には<四大精霊>が宿っている。貴様等狩人に捕獲され、今回生贄にされかけた者達だ。俺の一部になる変わりの条件が貴様等の殲滅だっただけの事だ」
「・・・ふ、ふふふ、そう、貴方が本部を・・・幹部の殆ど滅ぼした、黒いコートの少年。ははははは、私なんかじゃ、無理だったのね」
女は壊れたように笑い始めた。
「・・・・・・・・・・・・・・理想郷か。過去に何があったかは知らないが、逃げて縋るほどの存在か? あの第1位は。アレはただ自分をこの世に返したいだけの愚者だ」
「・・・・・・・ええ、判ってたわそんな事。でもね、私は・・・私達はそれに助けられた。主様こそ、救済者だった。それだけよ」
「・・・」
時矢は微動だにしない。
「理想郷か。何をもってそれとするか・・・か。フン、ならば楽園へと足を踏み入れるか?」
「・・・え?」
時矢が・・・ネロ・カオスが何故そのような発言をsたのかは、誰のも判らない。

「この身は閉じた楽園なり。屍のまま荒野に果てるか、群れとして楽園に棲むか、貴様の意志を尊重しよう」





変わってココは三咲町の遠野家。
屋敷の居間には、それはもう美しい女性と少女が溢れていた。
「でもまさか、シオンがいきなり来るとはね」
「志貴、そんな悠長な事を言っている場合ではないのですが?」
遠野志貴
アルクェイド・ブリュンスタッド
シエル
遠野秋葉
琥珀
翡翠
レン
シオン
と、ただでさえ女性密度が高いのだが・・・。
「フム、錬金術師まで居るとはな・・・呆れすぎて何も言えん」
「華連ちゃん・・・まあ、確かにそうだけど・・・」
閻魔華連
神無月千鶴
と言う少女達まで居る。
「で、そこの君が・・・」
「はい、協会からある魔の討伐で来た神無月千鶴です。こっちは拾った壇上君です」
「・・・えーと、ども」
壇上は震えながらも、美女美少女に目を奪われていた。
「じゃ、寝てください♪」
「ハイ、ワカリマシタ」

カクン

ソファーに寝た壇上君。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・コホン、えー、神無月さん?」
秋葉が仕切りなおして、千鶴ちゃんを見た。
「はい」
「あの退魔の名門よね。でも確か・・・」
「・・・はい、私以外の者は数年前に皆殺しにされました」
俺と、七夜と同じだと、言う事だった。
「・・・そう」
秋葉は悲痛そうな顔をした。
「勘違いしないで下さい。神無月家は混血ではなく、純粋な魔に敗れました。あの、忌々しい鬼に・・・」
ギリッ、と千鶴ちゃんは歯を食いしばった。
「・・・失礼しました。とにかく私とシオンさんは坂の下で情報交換は済ませています。この町で、何が起きているかも・・・。私は当初の目的を忘れ、そちらに専念しようと思っています」
「そう、ありがとう。でも千鶴ちゃん。俺は君みたいな・・・」
「駄目ですよ遠野君」
「え?」
シエル先輩が止めに入った。
「彼女の目は立派にこちら側の目です。その言葉はただの侮辱です」
「・・・・・・そう・・・か、ゴメンね、千鶴ちゃん」
「え、あ、いえ・・・その」
と、何故か千鶴ちゃんは顔を赤くした。
「?」
俺何かしただろうか?。
・・・・・・・・・・あの、何か背中が痛いんですけど・・・皆さん?。
「・・・済まない」
突如、華連ちゃんは千鶴ちゃんに頭を下げた。
「え・・・あの?」
「お主の一族を滅ぼしたのは、私の兄だ」

ピシリッ

空気が凍った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、も、もしかして・・・」
「?」
「貴方が<隆一君が言っていた>死神の華連さんですか!?」

ピキン

いや、あのさ、どうして隆一の名前がそこで・・・。





「あの馬鹿〜〜〜・・・<あの時>(死月談話 参照)そんな事を〜〜〜、ええいい!!! どうりで冥府に迷い込んで来るはずだ!!!」
「隆一の武勇伝その2」を聞かされた俺達。
う〜ん、あいつ本当に波乱万丈の人生なんだな。
「はあ、はあ、はあ・・・・・・・・・・・・・・済まない、つい感情的になった」
「い、いえ」
・・・華連ちゃんも怒る時は怒るんだなー。
「・・・」
「・・・あの、何か?」
華連ちゃんがじっと千鶴ちゃんを見ていた。
「一つ聞くが・・・それ以来会って居ないのだな?」
「え?」
「その・・・隆一と」
「は、はあ? そうです・・・!」
「そうかそうか、良かった。そうかー」
やけに喜ぶ華連ちゃん。
で、何か感じ取った千鶴ちゃん。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、隆一君の背中は暖かかったですよ」
何故か勝ち誇る千鶴ちゃん。
「ふ、ふん、そ、それが何だ。私は・・・その・・・りゅ、隆一と一晩暑い夜をだな・・・」
「・・・華連さんの炎は森を焼いたそうですね。それはもう跡形も無く」
「・・・」
「・・・」
(・・・隆一、お前帰ってきたら大変だぞ)
義兄弟になりかけるぐらいの友情を持った志貴だった。
「問題なのは」
突如、アルクェイドが真剣に切り出した。
「閻魔武忌が蘇生した事。それと隆一の行方ね」
「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」
全員の顔が引き締まった。
「真祖の言うとおりですが、もう一つあります。私はそれを伝えに着ました」
「シオン?」
「この町、いえ、正確にはこのあたり一体で大規模な儀式が行われます。その<今宮隆一>と言う人物がどう言う人物かは知りませんが、志貴同様「事件に巻き込まれやすい」タイプのようですね。とすれば・・・」
「・・・その儀式やらをしようとしている連中に、隆一が関わったと?」
俺の言い分に、シオンは頷いた。
「ところで真祖、月について気がついていますか?」
「・・・え?」
アルクェイドは首を傾けた。
「シオン? 月がどうかしたの?」
秋葉の質問に、シオンは言った。
「昨日の晩の月は半月でした。でも、実際の満ち欠けは三日月以下のはずなんです」





主降臨のために生贄を捧げる種族<狩人>。
彼らは突如眷属になるらしく、協会、教会ともに敵戦力の把握がしにくい組織らしい。
その主は何百年かの一度に生贄の力で現れようとするらしい。
「それを・・・この時代のこの町で行おうとしている・・・そう言う事かシオン!!!」
「そうです。この町はただでさえ、祖が三体も滅んでいます。彼らの力も多少は影響しているはずです。この地が召喚場所に選ばれたのは当然かもしれません」
「・・・それは、おかしいわ」
突如秋葉が言った。
「そうだな、ありえない」
華連ちゃんも続けた。
「そうね普通わね」
アルクェイドも続けた。
「秋葉? 死神と真祖まで・・・何故?」
「シオン、ここに遠野家があるからよ。知っているでしょう? その主召喚をことごとく邪魔した邪皇の話を・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか、遠野家が!!!」
シオンは得意の高速修理で計算した。
そして・・・。
「邪皇14帝第13位<鬼紅帝>(別名・有限転生者)が、遠野家の者から選出されていた・・・・・・・・・・・・・・・・いえ、だからそうなんですね!!!」
シオンは勝手に独りで納得した。
「シオン、ちゃんと説明を・・・」
「待ってください、少し・・・」

五分経過

「・・・転生体は大体が十代の男性と言う話です。しかも大体は直系のはず。ですが、遠野家で直系であり、なおかつ十代の男性はすでに死んでいます」
「四季!!!」
俺の言葉に、琥珀さんに翡翠、そして秋葉は僅かに暗い顔になった。
「ですが、遠野四季の肉体にはロアが関わりました。そう言った干渉があったために、鬼紅帝は転生出来なかった」
「なるほどな。第1位はそこにつけこんで、あえてこの地で・・・・・・鬼めぇ〜」
華連ちゃんは憎悪の声をあげる。
「あ、あのー」
琥珀さんが始めて喋った。
「どうしたの琥珀さん?」
「あのですねー、直系で十代の男性なんですよね?」
「・・・ちょっと琥珀、まさか・・・」
「姉さん・・・まさか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・隆一か?」
三代前から始まった<今宮家>。
父親は今宮家の直系 春牙。
母親は槙久の妹 楓。
まさに、隆一こそ・・・。
「隆一がかっっっ!!!」
「隆一君がぁぁぁぁぁ!!!」





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