(71)
「ふむ、実に愉快だ。」
「ええ、楽しみね・・・。」
「やっと会えるのだな・・・ふふっ、思えばあれからどれくらいかな?。」
「クスクス・・・まあ落ち着きましょう。時間はまだ有るのだから・・・。」
「そうだな・・・切牙。」
「そうね・・・切牙。」
人が本格的に動き出す朝の日差しの中、彼らは思案の中に埋もれていた。
そこは普通の二階建ての家。
ずっと見ていればカバンを背負った小学生が元気に飛び出してきそうな家。
その家の両隣にも二階建ての家が有る。
だがその家ら全てからその様な平和な光景は見れないのだ。
この連なる・・・いやこの両隣だけでなく周り近所のほとんどの家が無人だ。
もちろん近所全てではなく、今も住んでいる者はいる。
しかし住宅街でありながらこれほど人が住んでいない空き家の数は異常だ。
どうしてそうなったのか?。
それを知る者は少ない。
「さて、どうする?。」
時矢の声が響く。
「うう・・・と、取り合えず・・・秋葉さん達の誤解を・・・。」
「無駄だ。」
キッパリと言い放つ時矢。
「な、何でだよ。」
「聞くと思うか?。偽者は有る程度普通に会話出来たんだ。お前が何を言おうが信じてもらえる訳が無いだろう。・・・わかってるだろうそれぐらい。」
そう・・・わかっている。
どんなに話しても信じてはもらえない。
大体あれが俺じゃないと証明するのに無理がある。
それでは俺がその間何をしていたか、という事になる。
・・・寝てた、何て絶対信じてもらえない。
だからと言ってこのままにも出来ない。
「じゃあどうするんだよ・・。」
「ふむ・・・もしかしたら偽者は狩人の仕掛けかもな。」
「え?、何で・・・。」
「奴らの事だ、あの町のことぐらいすでに調べているはずだ。何が居て、何が起きたか。奴らに知られずに調べる事ぐらい狩人には簡単だ。」
奴ら・・・遠野家の事だろう。
いや、もしかしたらアルクェイドさん達も入っているかもしれない。
何気に人外だし。まあどれくらい強いか知らないけど。
「あの・・・その狩人という人達を調べるんですか?。」
弓塚が言った。
「そうだな、奴らが何をしているか非常に気になるし・・・厄介な事になるのは避けたい。」
それは俺も同意見。
「だったら尚更遠野家と連絡をとった方が・・・。」
「そんな時間が有ったら狩人に回した方が良い。例え解けたとしても、どれくらいかかるかわからないからな。」
確かにその狩人とやらの動きが手遅れになるのは避けたい。
「でも一体何やってるんだろうな、こんな所で。」
「・・・ふむ、心当たりはあるが・・・違うだろうな。」
「え?、心当たり有るのか?。」
「ここに来た理由はな。だがさっきも言った通り今の奴らはそんな事をしている余裕はない。恐らくするべき事を変更ただろう。それが・・・何なのか・・・。」
そればかりは時矢でもわからない様だ。
「じゃあ・・・その狩人とやらのアジトでも探せば良いのか?。」
「そうだ、もう分身は放ったがな。」
さすが動きが早い。
・・・って結局最初の「さて、どうする?。」は何だったんだよ。
「気にするな。」
何か・・・一瞬だけ殺意が沸いたような・・・そうじゃないような。
「結局ここで待機ですか?。」
「そうなるな。」
何だよそれ・・・。
何かもっと他にやる事があるだろう。
やる事・・・そうやる事・・・あっ。
「時矢、これっ。」
「うん?、ああそうだな。」
懐から出したデジタルカメラを時矢に渡す。
「しかし警察署長が怪しい取引とはな。日本もこれまでか?。」
「終わってるよ・・・こいつは。」
冷たく言い放つ。
あの人、冷たくなっていくあの人の声が・・・思いが・・・まだ頭に・・・体に・・・こびり付いている。
「・・・なる程な、隆一が本気で切れるとはな・・・しかし妙だな。」
時矢がデジタルカメラを見ながら言った。
「薬がらみの取引が何故ここで?。」
「え?、どこでも有るだろうそれぐらい。」
「そうじゃない。普通署長クラスなら逆に押収した物を取引し、そう言った組関係が流すだろう?。それが逆だ。署長自ら撒く?。そんな事出来るわけないだろう。誰か別に居る?。それなら署長程の立場の人間が出ずにそこに直接繋げばいいだろう。自分でこれらを使う?。まさか、それにしては量も規模もでかい。そう言った何故?が多いんだよ。」
確かに冷静になって考えれば幾つか疑問が生まれる。
「う〜ん・・・でも署長の様な奴じゃないと会えないような奴が・・・。」
「そうだな・・・それが普通だ。ではそれが・・・狩人の可能性も否定できないだろう?。」
「あ・・・。」
「そう言う事だな。まあかなり憶測が強過ぎる。奴らがこんな薬に・・・薬・・・待てよ。」
時矢が喋らなくなった。
「時矢?。」
「・・・まさかな・・・<あれ>は出来るはずが無い。考案者及びデータはすでに消去したからな。・・・ああ、気にするな。何でもない。」
「「・・・。」」
いまいち会話に入って来れない弓塚と目が合う。
「・・・時矢・・・言ってくれ。」
「何?。」
「そういう<まかさ>が実は有ったりするんだよ。漫画とかで。」
「・・・それは漫画の読みすぎでは?。」
「この世界はそんな感じだろう?。色々信じられない事が多いし。」
「先輩の言う通りです。私だってまだ「自分は夢でも見てるんじゃ」って思ってる部分があるんですから。普通に暮らしてたのにいつの間にか信じられない事の連続。ただ・・・復讐したかっただけなのに。」
その最期の声だけ、弓塚は冷たかった。
「弓塚?・・・。」
「時矢さん、言ってください。」
「あ・・・ああ、そうだな。」
弓塚に聞きたい事が有ったがそれは後回しになった。
その頃。
「えーと・・・これは反応出来れば・・・完成だな。」
そこは何かの研究室の様だ。
怪しい色の液体が入ったビ−カーやら試験管やらがガラス瓶やらが勢ぞろいだ。
ギィィィィ、突然その部屋のドア開く音。
「あ・・・姉様・・・驚かさないでください。」
「・・・貴方ね・・・一体いつまで待たせる気?。もう時間は迫ってるのよ?。」
かなりイライラしている様だ。
「まあまあ落ち着いてください。今日中には・・・。」
「本当ね?。」
「はい。まあこれも組織からのデータを無理矢理転送させたからですね。」
「・・・。」
彼女は何も言わない。
非常時だったとは言え、勝手に持ち出した事に少し悩んでいるのだろう。
「まあまあ、姉様はドンと・・・。」
「構えてるわよ・・・ずっと・・・。」
「これは失礼。まああいつ等が馬鹿な真似をしなければ何事も無く計画は成功するでしょう。」
「だと・・・良いわね。」
女は部屋を立ち去ろうとする。
「姉様?、貴女がそんな弱気では・・・。」
「・・・貴方が甘く見過ぎなのよ。」
バタンッ、ドアが閉まる。
「・・・やれやれ・・・さてと・・・これを反応・・・。」
と、言う訳で隆一の漫画からの経験は以外と的を得ていたりする。
そしてさらに別の場所では・・・。
「う・・・。」
どうやら目覚た様だ。
「・・・あれ・・・?。」
時計を見れば信じられない様な早い時間。
コソコソ、取り合えず何時も通りメガネを探すが・・・見つからない。
(志貴。)
ふと横に少女が居た。
その手には大事な自分のメガネ。
「あ、ありがとうレン。」
人型のレンの頭を撫でながらメガネをかける。
これで視界がちゃんとなった。
「・・・。」
何か・・・とんでもない事を忘れてる気がする。
少しの沈黙。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アル・・・・・・・アルクェイド・・・・???。」
全てを思い出した。
昨日の・・・弓塚の妹と死神・・・公園・・・混沌・・・そして血塗れの・・・・。
「志貴さま!!!。」
「!。」
その声に思考が我に帰る。
「ひ・・・翡翠・・・。」
「はい・・・そうです志貴さま、お早うございます。」
何時もの様に翡翠はベットの横に立っていた。
そして律儀に何時も通りのお辞儀をされる。
「あ、ああお早う翡翠・・・じゃなくてアルクェイド・・・翡翠、アルクェイドは???。」
大声を出しながら翡翠腕を掴む。
「い、痛いです。し、志貴さま、落ち着いてください。」
「あ、そうか・・・すまない。」
慌てて腕を放す。
「アルクェイドさまは別室でお休みになられています。」
その言葉に心の底から安堵した。
もしアルクェイドが死んだら・・・俺は・・・。
「・・・。」
「?・・・翡翠?。」
何も喋らなくなる翡翠。・・・何か睨まれてるような・・・。
「志貴さま、もっとご自身のお体を大事にしてください。」
「え・・・あ、はい。」
その通りなので何も言えない。
「・・・それでは皆様に志貴さまがお目覚めになられた事を伝えて来ます。」
「ああわかった。」
翡翠はドアに向かった。
「あ、翡翠。」
「はい?。」
翡翠がこちらを向く。
「ありがとう、一晩中一緒に居てくれて。」
「・・・い、いえ、それが私の仕事ですから。」
顔を赤くしながら翡翠は部屋を後にした。
置いてあった着替えを着る。
「・・・。」
思えば最近色々有った。
隆一の反転から始まり、弓塚の妹が現れ、死神なんてのが出て来て、混沌が復活して・・・一体どうなってるんだろうか。
「行くか・・・おいでレン。」
何時の間にかネコモードになったレンを腕に抱えながら部屋を出た・・・。
(72)
「アル・・・クェイ・・・ド?。」
気配でこの部屋を割り出した。
部屋を開けるとそこには確かにベットの上にアルクェイドが居た。
「あっ、志貴・・・・わーい志貴だーーーーー・・・ととと。」
アルクェイドの体は真っ二つになっていた。
「おいっ、どうしたんだよ!!!。あの時はこんなケガしてなかっただろう!!!?。」
慌てて駆け寄る。
「えへー、ちょっと油断しちゃった。大丈夫だよ志貴。今日中には治るから。」
ベットの上に寝ながらアルクェイドはいつもの無邪気な笑顔を見せていた。
「・・・ゴメン。」
「え?。」
アルクェイドはキョトンとした顔をする。
「俺が・・・もっとしっかりしていれば・・・俺が・・・。」
「違うよ志貴。志貴は悪くない。私が勝手にケガしただけなんだから。」
優しい笑みを浮かべるアルクェイド。
「でも!!!・・・。」
「そのぐらいにしてもらおうか?。」
「「!!!。」」
振り向くとそこには昨日の死神の少女が居た。
「君は・・・。」
「志貴・・・だったな?。」
「あ、ああ。」
事情が掴めないままコクンッ、と頷く。
「その眼・・・ふむ・・・やはり昨日のあれは間違いでなかったか。・・・まあいい、姫君の治療をしたいから席を外してもらえないか?。」
「で、出来るのか?。」
「・・・いや、姫君の後押しが出来る程度だ。でもそれで十分だろう。さあ居間で待ってろ。他の連中も探しているぞ?。それと・・・。」
少女が目線を横に外す。
そこには・・・。
「そこの完全無視状態にされた使い魔にも構ってやるのだな。機嫌が悪そうだ。」
「あ・・・。」
見ればネコモードのレンの目がものすごく冷たかった。
レンを連れて居間に行く。
案の定・・・。
「遠野君!!!。」
「兄さん!!!。」
「志貴さん!!!。」
と、三姉妹が襲い掛かって来た。
「・・・。」
そして「どこ行ってやがった?」の様な目線の翡翠。
ああ神様、俺何か悪い事しました?。
三人を何とか落ち着かせる事が出来た。
しかし琥珀さんまであんなに動揺するとは・・・心配かけちゃったな。
取り合えずテーブルに置かれた紅茶を飲む。
ふー、これで本当に落ち着けた。
「「「「「・・・。」」」」」
沈黙。
沈黙。
沈黙。
ああ空気が重い。
まあ当たり前だろう。
色々有りすぎた。
それに・・・。
「待たせたな。」
皆がその声に振り向く。
少女は軽く、それでいて隙の無い足取りで居間に入って来た。
「どうぞこちらに。」
「ありがとう。」
翡翠の案内でソファーに座る。
「何かお飲みになられますか?。」
琥珀さんがグラスの用意をしている。
「いえ結構・・・早く話すべきだろうからな。」
秋葉の略奪の様な赤い髪をした少女は真っ直ぐこちらも見た。
「だがその前に・・・お主・・・志貴の眼が見たい。」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?。」」」」」
「何で?。」
訳がわからない・・・いや恐らくこの眼に気がついているから聞くのかもしれないが・・・一応聞く。
「簡単だ。気になるからだ。」
「・・・。」
ま、わかりやすくていいが・・・。
メガネを外す。
・・・部屋中に広がる<線>と<点>。
少女にも幾つか見える。
死神にも死が有るらしい。
「・・・蒼い・・・眼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違うな。」
「?、何が?。」
首を傾げる。
「いや何でもない。ありがとう、もう魔眼封じを付けて構わない。・・・ではまずは・・・私がここに来た理由を語ろう。」
「自己紹介がまだだったな。私の名は<閻魔華連>。知っての通り死神だ。」
その言葉に秋葉が反応する。
「それでその死神・・・華連さんとお呼びしますね?、どうしてこの三咲町に来たのですか?。」
秋葉としてはこれ以上の揉め事は避けたいのだろう。
隆一の一件も有るのだから。
「そう言わないでもらいたい。私は鬼を狩りに来ただけだ。」
鬼を狩りに・・・その言葉に秋葉が敵意を現す。
「・・・私が言う鬼は人間味の無い完全な鬼だ。いや、鬼に完全というのはおかしいが・・・とにかく遠野家は混血で有っても所詮は人間。対象ではない。」
その言葉に納得したのか秋葉は敵意を少し抑えた。
まあそれでも不快な事に変わりはないのだろうが・・・。
「その鬼が・・・昨日の邪皇ですか・・・。」
今の先輩はカソックを着たままだ。
顔も任務の顔をしている。
「そうだ。あれが私の標的の・・・<閻魔武忌>。私の兄だ。」
「「「「えっ。」」」」
その言葉に俺達は思わず声をあげた。
「・・・。」
先輩だけは知っていたかの様に何も言わない。
華連ちゃんの言った事を要約すると・・・。
1、武忌という死神から鬼になった奴がこの町にいる。
2、それを滅ぼすために華連ちゃんはここに来た。
という事だ。
何かわかりやすい・・・。
「それでどうして私達にそんな事を話したんですか?。」
秋葉が当然の疑問を言う。
死神という物は俺らの居る現世とは極力関わらないようにしているらしい。
だからこの子が説明した理由がわからないのだ。
「簡単だ。武忌は昨日この遠野家に向かっていた。つまり奴の標的はここに居る誰かか・・・全員という事だ。知っておく必要が有るだろう?。私は負けてしまったし。」
「「「「「・・・。」」」」」
確かにそうなんだけど・・・。
「どうして私達がそんな見ず知らずの人に狙われなければならないんですか!!!?。」
秋葉の怒鳴り声が響く。
「おい、この子にあんまり強く当た・・・。」
ギロリッ。
「何でも有りません。」
勝てなかった。
「遠野四季。」
その言葉に全員が反応する。
「私は死神だ。この家の出来事は知っている。遠野四季が反転したのは転生者の蛇が入ったからだ。まあ一つの肉体に鬼と吸血鬼と人格が一編に集まればおかしくなるなと言う方が無理だ。まあそれは良いとして、問題は・・・蛇と武忌が知り合ったと言う事だ。」
ロアと武忌という奴が?。
「そこで何があったか詳しくは知らないがその後すぐに武忌は堕ちた。どうやら<完全な不老不死>とやら求めているらしい。死徒でないというのに・・・。」
不老不死・・・今まで有って来たネロ、ロア、ワラキヤの夜が求めていた物・・・。
「つまり・・・武忌は俺達に復讐に来た訳か?。」
「違う。奴に敵討ちなどという考えは無い。あるのは快楽を求める事。」
「<完全な不老不死>じゃないのか?。」
「奴はどちらも求めている。それが奴。そして奴は力ある者を求めている。」
何と無くわかった気がする。
ワラキヤも何だかんだ言って人の血を飲む事を楽しんでいた。
それに似たような物なのだろう。
「でもいまいちわからないな。どうしてその武忌って奴はここを選らんだんだ?。」
すると華連ちゃんはソファーにもたれかかった。
「選んだ訳ではない。まあそれは後で話すが、とにかく奴は快楽を求めながも<完全な不老不死>を求めている。どうやら色々試したらしい。そんな時武忌は転生術を求めた様だ。そこで蛇を探した。その頃にはもう蛇は遠野家に転生していた。わかるか?。奴は蛇を探すために一度この家を調べたんだ。・・・当然獲物も探しながらな。」
すると・・・最初から目をつけていたのか・・・。
「が、武忌には遠野家の血筋のどれかしかわからなかった。そして何故か知らないが<遠野四季>を見つけられなかった。まあ、その頃遠野四季がどうしていたかは聞かないが・・・。」
華連ちゃんの目線に秋葉と琥珀さんは目線をずらした。
「とにかく武忌は徹底的に分家を調べた。そして・・・<とある精神病院に居た男の子>に目をつけた。」
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?。」」」」」
皆同時に声をあげた。
「その頃私もその武忌の動きを知ってな、奴を狩り行った。・・・独断だったが・・・。とにかくだ、その・・・色々有ってだな・・・とにかく!、その男の子と協力して武忌を倒したのだ。」
何か誤魔化しがあった様な気がするが・・・それよりその男の子って・・・まさか・・・。
「ちなみに少年の名は・・・貴方達もよくご存知のはず。」
「隆一・・・か?。」
コクンッ、と頷く華連ちゃん。
「さて話を戻す。今武忌がこの三咲町に居るのは・・・どうやら隆一にとり付いていたらしい。これは油断した私のミスだ。」
「それじゃあ・・・隆一が反転したのは・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?。」
華連ちゃんは首を傾げた。
「貴女のせいで・・・隆一は反転したのよ!!!。」
秋葉がまた怒鳴った。
「・・・何を言っている?。あの隆一が反転するわけがないだろう?。」
華連ちゃんは俺達を不思議そうに見ている。
「あのすさまじい生きる執念を持ちながら、良心の呵責で他人を助けるために平気で命を投げ出すような奴が反転する訳がないだろう?。」
「・・・。」
その時、俺の中で何かが繋がった気がした。
「そうか・・・秋葉そうかもしれない。」
「え?、何ですか兄さん。」
「なるほど・・・鬼なら化けたのかもしれませんね。」
先輩も納得した様だ。
「化けた???。」
「そうだ、秋葉達を襲ったのは・・・隆一の姿をした武忌って奴だった。」
それなら・・・希望が見えてきた。
「少し違う。」
「「「「「え?。」」」」」
華連ちゃんは俺達の考えを否定した。
「これは奴自身が言っていたのだ。記憶を忘れて隆一に成り切っていたと・・・。鬼の肉体は魂によって違う。人型なら人型。虫や動物ならその姿。もちろん他の姿に変えられなくはないが・・・それでは肉体性能が堕ちる。」
なるほど、様は覚えている姿になる訳か。
「で、でもそうなると本当の隆一さまは・・・。」
翡翠が震える声で言った。
「・・・武忌は歩道橋から落としたと言っていた。」
「なっ!!!。」
それは・・・殺したのか・・・?。
「さあな。まあ、隆一が死ぬとも思えない。その内何とかなるだろう。さて以上が私の情報だ。これから貴方方はどうするのかな?。」
ああ、素晴らしい人生。
「何てね。」
話題の中心人物にして何気にここら一帯で起きている事全てを知っている男・・・閻魔武忌だった。
「ふむふむ・・・なるほどこんな技か・・・どうしようかな?。」
「・・・。」
「いや・・・待てよ・・・むむ。」
「・・・ちょっと。」
「なるほどね・・・実戦で・・・。」
「お客さん。」
「これが・・・こう?。」
「お客さん!!!!!!。」
「うるさいな・・・なんだい?。」
ガタッ、武忌は手に持っていた雑誌を乱暴に棚に置いた。
「困るんだよ朝っぱらからの立ち読みは!!!。」
「・・・。」
武忌にとっては不快な一言だった。
「・・・何だ?、やろうってのか!!!。」
店員は大声をあげる。
「・・・。」
「このお、図体がでかいからって調子に乗るなよ!!!。」
どうやら短気な男らしい。
「・・・へえー・・・あっそ。」
「えーと・・・ふむふむふむ・・・」
ニメートル以上は有る長身にシルクハットの帽子がさらに彼の背を高く見せていた。
そんな奴が立ち読みをしていれば・・・目立つのは当たり前だった。
「昔から人間の雑誌はおもしろいな。発想が良い。暇な時はこれが一番だな。」
そして武忌の後には数人の男が立っていた。
皆、目に生気が無かった。
「♪〜〜♪〜♪♪♪〜〜〜〜〜〜〜♪〜♪。」
今このコンビニで人間と呼べる者は存在していなかった。
(73)
「少しよろしいですか?。」
琥珀さんが言った。
「何か?。」
「華連さん以外の死神さんは助けに来ないのですか?。」
「無理だ。」
キッパリと華連ちゃんは言った。
「そ・・・それはまたはっきりと・・・。」
「現在死神のほとんどは他の14帝狩りを行っている。確かに武忌も一応14帝・・・元が付くかもしれないが、その席は現在も空席だから実質属している事になるな。まあとにかく余裕はない。」
14帝・・・聞きなれない言葉だ。
「ああそうか言ってなかったな。ふむ・・・死徒27祖は知っているかな?。」
「ああ、それなら先輩やアルクェイドに聞いた事が有る。吸血鬼の中でも一番強い奴らの事だろう?。」
実際俺はネロやワラキヤに会っている。
「そうだ。<死徒27祖>の他に<8魔道星><邪皇14帝>という集団がある。これらは<魔の三大勢力>と呼ばれている。27祖は死徒・・・吸血鬼の頂点であり、8星はその名の通り魔道集団。そして14帝は今言った鬼の集団だ。わかりやすいだろう?。」
「ま、まだそんなやばそうな奴らが居るのか?。」
これ以上は勘弁してほしい。
「そうだな・・・何とかしたいが・・・色々邪魔があってな。とにかくここに居る者達で何とかするしかない。どうも世界中の勢力図がおかしくなって来ている。最近三大勢力の者達が立て続けに倒れているし、修正を行わなければならないのが現状だ。」
倒れている・・・いくつか俺も関係してるな。
と言うか凄い事になってるのか?。
先輩を見てみると、目線が合った。
スッ、でも先輩はすぐに目を逸らした。
「さて、他にはないのかな?。」
「・・・昨日の・・・あの子については?。」
ピクッ、あの子と俺が言った瞬間他の全員が反応した。
俺はどうしても聞きたかった、あの子・・・弓塚の妹の事を。
「・・・逃がした。」
その言葉に俺はほっと一息を付いた。
「兄さん・・・あの子とは?。」
何か秋葉が・・・すごい形相で睨んでいる気がする。
始めてシオンと会わせた時並に・・・。
「あ、そ、それはだな・・・。」
「言わない方が良いぞ、志貴。」
華連ちゃんが止める。
他の皆が華連ちゃんの方を向く。
気のせいか・・・何か皆の見る目が・・・。
「な、何で?。」
「・・・代行者、遠野家当主、退魔の家系・・・まあ志貴もそうだが、とにかくその件はここで話すべきじゃない。いや、私もそれに当たるな。」
「それは・・・どう言う意味だ。」
無意識の内に声が冷たくなる。
皆は俺の急に変わった声に少し畏怖の念の入った目線を向ける。
「そのままの意味だ。あえて<アレ>という表現を取るが、<アレ>は全ての者を敵に廻しかねない。例えその人物がどうであれ、<アレ>には敵が多い。特にそこの代行者は任務として<アレ>を野放しにはしない。」
先輩は<アレ>とは何ですか、という目線を向けて来ている。
「・・・じゃあどうしたら良いんだ。」
「私も<アレ>を狩る者の一人だ。一番良いのは志貴自身で、一人で会うことだな。良い忘れたが真祖の姫君も見逃しはしないと思うぞ。」
・・・悪魔を喰らった存在・・・魔喰い。
全てに忌み嫌われる者。
全てを敵に廻す者。
俺は・・・弓塚絵理という少女をそこまで追い詰めていたのか・・・。
「志貴、わかっているとは思うが、大切なのは今何をするかだ・・・家族を守るか、自身と決着をつけるか、どちらかにしろ。」
・・・華連ちゃんの言う通りだ。
今は武忌って奴の事を何とかしないと・・・。
秋葉達を守るためにも・・・。
「・・・武忌について他には?。」
「・・・やはりか・・・。」
「え?。」
華連ちゃんは少し背をソファーに傾けた。
「自身では無く他人の事を優先してるのだな・・・と思ってな。他人を大事にするのはわかるが・・・あまり過ぎるとその他人は不安がるぞ。「私は守られてばかり」とな。もう少し自身を優先したらどうだ?。」
「・・・いやこれは俺にも関わるが有るだろう?。俺だって狙われてるんだし・・・。」
だが華連ちゃんはじっとこちらを見ている。
「全ての者を許せる・・・そして全ての者を平等の考えるか・・・。何と優しく、残酷で心だ。・・・あいつと同じかもな・・・。」
「あいつ?。」
「ああそうだ、他人事なのに腹を立て、良心の呵責で動きながら・・・自身がそうしたかったからが理由の・・・死んで欲しくないのに、本人も死ぬ気がないのに・・・最も死ぬ危険性を持ったあいつとな・・・。」
それは・・・もしかして・・・。
「妙な物だな。私がこの様な下らない感傷を持つとは・・・やはり狂わされたな・・・。」
そうは言いながら華連ちゃんは少しだけ笑っていた気がした。
「はっ!。」
狭い路地裏に少女の声が響き渡る。
「ガァァァ・・・。」
何かが燃える音と声がした後、その場には少女だけになった。
「・・・何故兵鬼がこの町に・・・邪皇が居るなんて情報は入ってないのに・・・。」
少女はどうするか迷っていた。
協会に伝えても良いが、いつ来るかわからない。
現在協会は狩人の一件で動けない状態だ。
世界情勢が一日ごとに劇的な変化を遂げている。
その反動で少女・・・神無月千鶴はこの町を任されたのだ。
だからこそ、この一件でもしかしたら見習い扱いから抜け出せるかもしれない。
それが神無月の生き残りの勤め・・・死んだ両親や親族への弔いになると思っているから・・・。
「でも・・・報告しないのは不味いな・・・。」
そう、自らの出世のために何の罪も無い一般人を巻き込む訳にもいかない。
となればやはり報告しかない。
「仕方無いよね・・・。」
千鶴はコートから何かを取り出した。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
何か用意している。
「ガーガー・・・なんだい千鶴っち〜。」
「・・・貴方ですか・・・。」
出たのは何か気の抜ける声・・・一応千鶴は知っているらしいが・・・苦手の様だ。
「報告、現在三咲町にて兵鬼と接触しました。どうやら邪皇が居るもよう、救援をお願いしたい。」
「あーメデーメデー・・・了解・・・したいんだけど・・・当分無理かも。」
「・・・・・・でしょうね。」
予測は出来た事だ。
「でも大丈夫アルヨ〜。」
「・・・ふざけてます?。」
「そうふざけてるアル〜。こんなんじゃあ協会も終わりかもしれないアルヨ〜。」
「・・・。」
「あーもしもし、ウソウソ気にしないで〜。」
「・・・。」
「ああもう・・・えーとその町には真祖の姫君と弓が居るでしょう?。」
「居ますが・・・助勢してくれるかは・・・。」
「実はねその町にあのシオンが向かってるの〜。」
「・・・え、あのアトラスの・・・。」
シオン・エルトナム・アトラシア、かつて協会に追われる身であったが、真祖の姫君の接触やそれまでの研究の成果によって今でも公認で研究を続けている特例人物。
これはもう特例中の特例の処置だ。
協会で知らない奴を探す方が難しいくらいの有名人だ。
「ではシオン・エルトナム・アトラシアの協力を仰げと?。」
「そうそう、だから頑張って〜。それじゃあ今かなり忙しい・・・ていうかヤバイから〜。」
「は?。」
「だからー・・・「敵!、つっ、通過し・・・ぎゃああああああああ」。」
何か今とても聞きたくない声を聞いた様な・・・。
「あっヤバ〜イ・・・。」
「え?、ちょっ・・・。」
「行けーーーーーーーーーー!!!。」
ドゴッ、バンッ、ガギンッ・・・何か凄い事になっている。
「じゃあね〜。」
「あ、そ・・・。」
ブチッ、通信を切られた。
「・・・何なの・・・一体・・・。」
それが明かされる事は無かった。
「いや・・・だから勘弁してくださいよ。」
電話口で彼は言った。
「夜はもう嫌なんですって・・・言ったでしょう?。お願いしますよ・・・。」
さらに向こうは何か言っている様だ。
「わかりましたよ・・・行きますよ・・・はい・・・それじゃあ・・・。」
ガチャンッ、と彼は電話を切った。
「クソッ・・・ちきしょう・・・。」
彼は目の前に有ったゴミをゴミ箱に投げつけた。
彼は恐怖していた。
外を・・・特に夜歩く事を・・・。
あの赤い生気の無い目の男に会った事がまだ頭から離れない。
「何で・・・あのヤロウは大丈夫だったんだ・・・ちっ、関係無い!!!。」
彼は自分の机のひきだしから何かを取り出した。
「自分の身は・・・自分で守る・・・。」
その手にはナイフが握られていた。
「・・・腹減ったな・・・何か買って来るか。」
彼は外出する事にした。
ナイフを持ったまま・・・。
「おや?・・・誰だろう?・・・う〜ん。」
武忌は持っていた雑誌を元に戻した。
「誰だろう今のは・・・どっかで・・・。」
消された自らの兵鬼から流れて来た少女の情報が、何と無く引っかかかった様だ。
「やっぱり隆一君関係かな?。どうも記憶が時々途切れるな・・・やっぱり蛇みたいに上手く転生出来てないな・・・難しいね。」
どうやら神無月家の事を忘れている訳では無い様だ。
「まあ良いかー、その内僕の気配に引かれてやってくるだろう。」
武忌はまた他の雑誌を手に取った。
(74)
黒いコートを着た少年が一人、朝日の当たる街中を歩いていた。
時期はまだ残暑の残る9月。
だが彼には関係は無かった。
そんな彼に話しかける存在が居た。
が、その場には少年しか居ない。
「なあ時矢、この剣は何だ?。」
「ああ代行者が投げてきた黒鍵という物だ。我ら死徒などに対して使う武器。まあ鬼にどれほど効果があるかは知らないがな。」
「シエルさん・・・か、まさかあの人が教会ってやつに関わってたとな・・・まあただ者じゃなさそうだったけど・・・。」
「先輩、これ何でしょう?。」
「ああそれは時矢の刀だ。妖刀だぞ。あんまり触らない方が良い。」
「は〜い。それにしても色々有りますね。」
「確かに・・・本当に四次元ポケット状態だな。」
「・・・・・・・・・・言うな、一番気にしている事だ。」
無表情だった時矢の顔の眉毛が少し動いた。
「でも便利ですね。この中。」
「ああ・・・周りに睨んで来る奴もいるがな・・・。」
「まあまあ気にしないでください。僕達は本体と同じ存在なんですから。」
「しかしシルフとこうして話しているのも変な感じだな。」
「・・・私と先輩とシルフ・・・まるで夫婦・・・。」
「・・・お前等人の中で変な会話をするな・・・取り込むぞ・・・。」
やや怒気を籠めた声が響く。
「おおそれは怖いな。時矢が怒るとどうなるか想像がつかない。」
「・・・。」
どうやらかなり切れてる様だ。
自重しよう。
「そろそろ・・・着くぞ。」
「「・・・。」」
その言葉に俺達は黙り込んだ。
近くのコンビニに向かって歩く。
あそこは中々品揃えが良い。
だからよく使う。
「今日は何食うかな・・・。」
と言いながら俺は財布を見た。
紙が一枚と小銭が少々。
ちなみに紙に描かれた人物は夏目漱石である。
まあこれだけでもマシな物は買える。
通りを歩くと目当てのコンビニが見えてきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?。」
ピタリ、と歩くのをやめる。
そこに有るのは普通のコンビニ。
しかし何故か判らないが・・・いや勘というやつだろうが・・・それがあそこに行くな、と命令を出している。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうすっかな。」
路地裏で襲われたこの間一件を思い出す。
あの時は財布を開いた時に小金を落としてしまい、それを追っていたら路地裏の入り口に来たのだ。
で、何か居たので好奇心で近づいたらいきなりヤバイ目で見られて、逃げようとした矢先に隆一とぶつかったのだ。
そのあと隆一を生贄にして逃げたんだけど・・・アイツ次の日にはピンピンしてたよな。
何でだ?。まあ死なれたら後味悪かったけど・・・。
「何で・・・今それを思い出すんだ・・・。」
とにかく行きたくない・・・という思考で埋め尽くされた。
だが、他に行くとなると・・・今来た道で有るコンビニは15分以上は歩く。
通り過ぎるれば・・・まあ7分ぐらいで違うコンビニが有る。
目の前のにいけばすぐ済むはずだ。
でも行きたくない。
でも面倒くさい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし、決めた。」
通り過ぎよう。
あそこは行きたくない。
が、中の様子も気になる。
取り合えず中を見て、やばそうだった速攻で走ろう。
俺は普通の速さの足取りでコンビニの様子を見ながら歩いた。
世の中には雑誌が沢山有る。
僕は基本的に小説や漫画系の物をよく読むが、旅行雑誌系も目を通す。
地理は知っていて損はない。
獲物探しにも使えるからだ。
そんな風に読みふけっていると、何か気配を感じた。
「・・・へー、人間、しかも一般人にしては勘が良さそうな奴だな。」
恐らく何かを感じて警戒しているのだろう、歩みが止まっている。
「どうするかな?。」
僕は笑みを浮かべながら、雑誌を読む。
暇つぶしには丁度良い。
「あ、来た。」
その気配がこちらに近づいて来る。
と、思ったが入り口には入らずに通り過ぎて行く。
「ハハ、良い勘してるな・・・ククク。」
顔を上げると、その人物と目が合った。
「「・・・。」」
向こうは歩みをやめ、こちらを見入っている。
「ククク・・・。」
僕は片手を振って挨拶をして見せた。
ビクッ、そんな風に震え上がった後。
「あああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
と、大声をあげて逃げた。
「・・・ハハハハハハハ・・・失礼だね〜〜〜、教育がいるかな?。うん、それが必要だ。良し、たまには人と人の触れ合いを教えてあげるか。」
武忌はそう言うと読んだ雑誌をちゃんと棚に置き、後に控えていた奴らを連れコンビニを後にしようとした。
「あ、忘れてた。」
クルリ、と向きを変えると武忌は何時の間にか持っていた長刀を振るった。
フッ・・・ガシャンッッ。
監視カメラが真っ二つになって落ちる。
「兵鬼の顔と数は奴らにばれないようにしないとね〜。まあ気配で判るかな?。」
そんな事を嘆きながら武忌は彼を追った。
私が見たとき、その少年は必死に走っていた。
もう脇目も振らず、という感じだった。
それだけならあまり関心をもたないのだが・・・。
「兵鬼?。」
少年を囲む様に兵鬼が出現し始めた。
少年はその兵鬼達を見るとさらに顔面蒼白になり逃げる。
「・・・あ。」
その少年が私の居るビルの下の路地裏に逃げる。
朝日が昇りながらも人通りはほとんど無い。
が、人以外の物の通りはあった。
その数、ざっと20。
「仕方ありません。」
私は8本の棒を両手の指に挟んだ。
まず一振り。
8体の兵鬼に刺さる。
そして爆発する。
もう一度投げる。
また爆発した。
だが当たったのは5体。
残りの7体が路地裏に入る。
「・・・。」
私は腕を振りながら無言で下に降りた。
少年は路地裏の一番奥の壁にもたれ掛かりながら、恐怖に満ちた顔でこちらを見ていた。
一方兵鬼達は生気の無い目でこちらを見ている。
私はこの二つの丁度真ん中に降りた。
「・・・可哀想に・・・すぐに楽にしてあげます。」
その声を合図に兵鬼達は雪崩れ込んできた。
「雨。」
だが、その兵鬼達が私の居る場所まで押し寄せる事は無かった。
全て私の棒が刺さって爆発したからだ。
辺りに肉片が飛び散る。
が、すでに人でないそれらの肉片は塵になって消えていった。
「あ、お、お前。」
よく見れば少年は私と同じくらいだった。
「貴方はこのまま真っ直ぐに家に帰ります。」
「・・・俺は・・・真っ直ぐに・・・家に帰る。」
少年が言葉を反芻する。
「貴方は何も見ていません。」
「おれは・・・。」
「いや、君は目撃者だよ。」
「「!。」」
その声は兵鬼達が居た辺りからだった。
「な・・・。」
「時間差の投降術を施したのか・・・でも僕の存在に気づけないようじゃまだまだ甘いね・・・。」
全身黒づくめで、黒いシルクハットをつけたそれは・・・。
「君を直接見てやっと思い出したよ・・・神無月。」
まるで全てを見透かしたかのような蒼い瞳が私を見ていた。
「閻魔・・・武忌・・・。」
(75)
目の前にある二つの亡骸。
私はそれらに見覚えがあった。
ここに来るまでにもあった亡骸も知っていた。
枯れたはずの涙が溢れ出す。
「これで、<神無月>は終わりだな。」
私の後でそんな事を嘆いた人が居た。
でも私は二つの亡骸を揺すり続けていてそれどころではなかった。
「生き残りか・・・ハハハ・・・素質はありそうだね〜〜〜。」
その人は私の頭を掴んで強引に自分の方に向けた。
「あー・・・・・・うー・・・・・・・。」
「皆を殺したのは僕だ。皆中々強かったよ。退魔の旧四家に引けを取らないね。君にも素質はちゃんとある。・・・僕は何時でも君の相手をするよ。」
その男、閻魔武忌は高らかに笑った。
「ククク・・・会えるとはね・・・でも果実の狩り時には早いな〜。」
武忌は帽子の柄を触りながら言った。
「く・・・。」
武忌が何故ここに居るか何て今はどうでも良い。
一般人も居るのだ。
今は逃げることに集中しないと。
「う〜ん、そこの失礼な少年に礼儀でも教えてあげようと思っていたんだけどね・・・どうしようかな〜?。」
駄目だ、逃げる隙が無い。
狭い路地裏、後には一般人、そして・・・私の力不足。
「暇だしな〜・・・でも勿体無いな〜〜〜・・・ハッハッハッ、迷うね〜。」
冷静に成れば成る程、狂いたくなる。
勝てない、逃げられない、そこにあるのは絶対的な死。
「あ、君の目の前でそいつを兵鬼にするのも悪くないな〜。」
「・・・。」
私は動いた。
私はもう見たくない。
何の罪も無い人が無慈悲に、理不尽に殺されていくのに・・・。
そのために・・・今だ協会に属しているのに・・・。
だから・・・投げた・・・決して勝てない・・・敵に・・・。
キンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッ、金属音が鳴り響く。
私の投げた棒は武忌の右手に持った長刀に全て弾かれた。
狭い路地裏だと言うのに、平然と長刀を振る姿は正に私の死神と言えるだろう。
「はっ!。」
私はもう一度投降する。
キンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッキンッ、同じように弾かれる。
だが武忌は弾いた後、後に跳んだ。
「危ないね〜、凍らすなんて何考えてるんだい?。」
武忌の能天気な声が響く。
そう、私が投げた棒は爆発ではなく冷気を具現化させ瞬時に辺りを凍らせる物だ。
もっともこれでどうにかなるとは思っていない。
「うん?・・・・・・・おおおっ。」
「雨。」
武忌の移動下先を中心として空から棒が降り注ぐ。
先程念のため残しておいた物だ。
狭い路地裏に入るので、一応用意しておいて良かった。
「よっ、とっ、ととととと・・・。」
武忌は的確にその棒を弾く。
確かに隙は出来た。
だから投降する。
「うわー、大ピンチ〜。」
武忌の能天気で耳障りな声が響く。
上と前からの攻撃を前に武忌が倒れる・・・何て甘い考えは持てない。
「とっ、やっ、とっととと・・・。」
武忌は上は右手で持った長刀で弾き、残った左手・・・素手で棒を払いのけた。
「ハハハ、残念〜。次はなんだい?。」
武忌は右手で持った長刀を肩に乗せながら言った。
「は〜やくしないと喰っちゃうよ〜、な〜んてね〜。」
だから・・・もうすでに行っている。
「・・・・・・・おやまあ動けない・・・。」
その発言の前にすでに私は後ろの少年を抱えていた。
「影縛りか・・・。」
恐怖で狂いそうだった少年を抱えながら私は跳んだ。
「・・・あら解け無いね。」
そうだからそこで・・・・・・・・・・え?。
思わず壁を蹴り間違えそうだったが、踏みとどまりビルの上にでた。
「さすが神無月の影縛り・・・強力だね〜。」
武忌の声が路地裏に響く。
「う〜ん、隆一君もやられたみたいだから・・・正確には二度目かな?。」
武忌は腕組みをした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何をしている。」
「え?、影縛りで動けないんだけど?。」
そう言いながら武忌は腕組みを外し、自らの帽子を手に取った。
「ふざけているのか・・・。」
「どっちが、だい?・・・時雨。」
その言葉に一つの影が路地裏の奥から現れた。
「汝と会うのは二度目だな。・・・生きていたとは驚いた。」
「君もね。よく生きていたね。」
「むっ。」
時雨、と呼ばれた者はちゃんとした人型だった。
が、耳が鋭く尖っており。眼もギラついていた。
「どういう意味だ・・・。」
「そのままだよ。死神達を相手によく生き残れたね・・・。」
今の武忌には先程の能天気さなど微塵もなかった。
「汝・・・我を何と心得る。」
「邪皇14帝、第14位、処刑帝・時雨様と心得ますが?。」
時雨の眉がつり上がる。
「そうだ、我は誇り高き14帝が一人時雨!、汝、我を何故愚弄する?。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・腹が立つから。」
「な・・・に・・・。」
武忌の発言に時雨は思わず言い返した。
「何が腹が立つだ!、汝は・・・。」
「神無月は僕が眼をつけていた・・・僕は自分の舞台を汚す奴が嫌いでね。まあ君の神経も気に入らないけど。」
武忌は長刀を右手に持った。
「汝・・・何を。」
「どうせ死神共が怖くて<アレ>のおこぼれでも貰いに来たんだろう?。・・・腹が立つね・・・ムカツクね・・・皇が・・・14帝が・・・そんな事を考えるなんて・・・。」
武忌は怒気を籠めた視線を・・・いや死線を送った。
蒼き二つの瞳を前に時雨は思わず震えた。
「な、汝、わ、我ら、は・・・。」
「27祖は白翼公派や黒の姫君派・・・まあORTみたいな単独もいるけど・・・僕ら14帝はそれぞれが皇、支配者、独裁者、統率者だ。その神経・・・帝の名に相応しくないね。」
武忌は前に向かって一歩進んだ。
「ま、待て。」
「それに僕がここに留まらなければ君はあの二人がビルの隙間からでた瞬間喰らったんだろう?。それだけでも気に入らない。」
武忌はさらに歩く。
「だ、だが・・・汝は知らないだろう?、今死神は全総力で我らを掃討・・・。」
時雨の震え上がる声が響く。
「それぐらい皇帝なら何とかするべきだろう?。」
武忌と時雨の距離がいよいよ短くなる。
「お、おのれーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
時雨が飛び掛る。
武忌と違い時雨は素手だった。
鋭い爪が武忌に向かって伸びた。
「・・・。」
無言で武忌は時雨に長刀を振るった。
「あ、が、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿め。」
左右真っ二つなったはずの時雨はそう嘆いた。
「そうか・・・。」
そう嘆いた時、武忌は路地裏の先に吹き飛ばされた。
「クケケケ・・・汝が我を殺せる訳がない。」
時雨の真っ二つになった体が元に戻る。
その横には一匹の動物がいた。
それは巨大な口を持った犬だった。
「これは我の口なり。我は汝如きに不覚はとらない。」
路地裏の入り口で寝そべっていた武忌が起き上がる。
「今ので何故喰わなかったんだい?。」
「それは簡単すぎる。我を愚弄した罪は重い。じっくりと味あわせて・・・。」
ザシュッ、何かが地面に突き刺さる。
それは武忌の長刀だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?。」
時雨がその長刀を見た時・・・決着がついた。
路地裏に響き渡る叫び声。
その場に居る影は一つだけになった。
「どこまでも愚かだね・・・処刑帝。」
武忌嘆きが時雨に届く事は無かった。
何故なら彼はもう存在しないからだ。
「地面に移る影が本体だった事ぐらい魔眼でわかる。・・・力を過信した報いだよ。」
武忌が腕を振ると、長刀が手に向かって跳んだ。
「敵は初撃で、反撃の機会を与えずに倒すもの・・・隆一君に教えられた事だよ・・・まあ僕は遊んでいたけどね。」
武忌は向きを変え路地裏を出る。
「やっぱり思った通りだね。この分じゃ後二人は来るね・・・時雨達は<アレ>の動きに敏感だから・・・。」
武忌はそう嘆いたが・・・それは誰も聞いていなかった。
「さて、着いたぞ。」
時矢の声が混沌に響く。
「いよいよ・・・戦いか・・・。」
「気が早いぞ隆一。ここはまだ狩人の情報集めの一環だぞ。」
「でも・・・本当にここが?。」
「少なくとも・・・もう一発殴らないと気がすまない。」
「まあ良い・・・入るぞ。狩人なら俺達がここに入る事ぐらいわかる。だが・・・。」
「混沌内の俺達には気がつかない。」
「ふっ・・・行くぞ。」
そこは南社木警察署の前。
時矢はゆっくりとその敷地に入った。
(76)
「馬鹿な・・・あれが今の武忌の実力だというのか・・・。」
とあるビルの屋上で驚愕の声が響き渡る。
「影が・・・処刑帝は影だぞ!。影故にどこにも現れ、そして滅びぬはず!。故に我らでさえ封印以外の方法が・・・。」
「直死の魔眼・・・。」
その言葉に男は振り向く。
「・・・華連の報告は間違いなかった訳か・・・。」
また別の声。今度は女性である。
「我ら死神でさえあれを手に入れたのは片指の数しか居ないというのに・・・。」
そう嘆いた後、男は背後をに向く。
「<荒乱>!!!、お主と同じ閻魔家の者は何処にで何をしている!!!。」
「・・・知らん。」
彼・・・閻魔荒乱は一言しか言わなかった。
「お、お主は・・・。」
「落ち着きなさい、<一閣>。<絶円家>の名が泣くわよ。」
女が止めにはいる。
「止めるな<妖輝>!!!、この・・・。」
「見つけた。」
その言葉に三人は声のする方を向いた。
「どうした<斬技>!。」
「閻魔華連は遠野家に居る。」
「何だと!。」
一閣の声が響く。
「確かだ。<皇魔家>の名に賭けても良い。」
斬技と呼ばれた男の声が響く。
「・・・絶円、朱、皇魔・・・行くぞ。」
荒乱はそう言うとビルから飛び降りた。
「ま、待て・・・おのれいつも勝手な事を・・・。」
「置いて行くわよ。」
「行くよ。」
「あ、ま、待て。」
「話は変わるんですが。」
琥珀さんの声が居間に響く。
・・・何故だろう、いつもの様な子悪魔のような雰囲気が・・・。
「何か?。」
それに平然と答える華連ちゃん。
知らないからな・・・何も。
「華連さんは隆一君をどう思っているのですか?。」
「!!!!!!!!!!!!っ。」
その言葉で、華連ちゃんは固まった。
顔が真っ赤になって行く。
「な、に、を、では、なく、その・・・。」
そこまで行けば俺でも良くわかった。
華連ちゃんは隆一の事が・・・。
「あはー、恋する乙女ちゃんなんですねー。」
「い、否、だ、断じて違う!!!。」
立ち上がって必死に手を振っている。
うわ、凄く動揺している。
「あはー、そうですか違うのですかー。じゃあ嫌いなのですねー。」
「い、や、そそそ・・・そう言う訳でも・・・その、た、助けてもらった事もあ、ある・・・から・・・で、でも別にその様な対象では・・・。」
そう言いながらも華連ちゃんの声が小さくなっていく。
「あはー、恋人じゃないんですか?。」
「な、何故そうなる!!!。」
何か琥珀さん楽しんでいるな・・・。
「そうですかー、違うんですか・・・それじゃ私が貰っちゃっても良いんですね?。」
「!!!!!!!!!!!!!!!!っ。」
琥珀さん・・・とんでもない事を言ってくれるな。
もちろんその場にいるほとんどが琥珀さんが冗談を言っていると知っている。
が、こっちの事情をまるで知らない華連ちゃんにして見れば・・・。
「お、お前は・・・りゅ、隆一と、ど、どういう関係だ・・・。」
震える声で華連ちゃんは言った。
ちなみに他の皆は華連ちゃんの様子が面白くて黙っている。
翡翠は少しやめた方が良い、何て目線をしながらも気になっているようだ。
秋葉は興味津々らしい。
先輩も同じく、少し笑みを浮かべている。
レンは・・・観察している様だ。
で、俺はそろそろ止めようかなー、何て思っている。
「あはー、主とそれに仕える召使ですよー・・・同じ屋根の下ですけど。」
「そ・・・れ・・・は・・・どう言う、意味だ?。」
ふむ、良い加減止めた方が良いかも・・・。
「琥珀さん、そろそろ・・・・・・・・・・・・え?。」
「そんな、隆一には・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むっ。」
俺と華連ちゃんは同時に窓の方を振り向いた。
そして、ほとんど同時に駆け出していた。
「はあ、はあ、ここまでくれば・・・。」
とある廃ビルの中で私は一息をついた。
横には先程の少年が眠っている。
「・・・。」
私は周囲に以上が無い事を確認すると、息を整えに入る。
そして思案する。
(何故武忌は追って来なかったのか?)
そう、あの程度の技など武忌には解くのが簡単だったはず。
そのために対抗手段として<これ>を使うつもりだったのだが・・・一体。
(・・・考えても仕方ない・・・か)
あんな奴の不可解な行動など私にわかるはずがない。
しかし、何故奴は生きているのか?。
協会の情報網で死神に討伐されたとあった。
目撃者の隆一君とも接触出来た。
偶然だったけど・・・。
あれが嘘?・・・そんな事は考えたくない。
この広い世界で・・・それこそ砂漠の中から米の一粒を探すような確率であえた・・・あの時間が・・・。
「確率?・・・まさか。錬金術師じゃないし・・・。」
錬金術師と言えばシオン・エルトナム・アトラシアと接触しなければならない。
いや・・・その前に・・・。
「彼をどうし・・・・・・・・・・・・・え?。」
背中に何か手応えを感じた。
「はあ、はあ、はあ。」
息が聞こえる。
スッ、何かを引き抜く音。
「はあ、はあ、はあ。」
私は振り向いた。
ピチャ、ぴちゃ、ピチャ、ぴちゃ。
はあ、はあ、はあ。
ぴちゃ、ピチャ、ぴちゃ、ピチャ。
はあ、はあ、はあ。
少年の手にしていたナイフは私の背中を刺していた・・・。
「ヒ、ヒヒヒヒヒヒヒィィィィィィィィィ。」
刺した、刺した、人を殺しちまった。
ドサッ、あの女が倒れる。
ここは何処だ?、知らない、あの女は誰だ?、知らない、俺は誰だ・・・知らない。
「は、は、は・・・ひ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふえっ?。」
ふと手をやると俺の両手は血まみれだった。
赤い。
赤い・・・トマトみたいな・・・赤い・・・液体・・・。
「あれ・・・俺???????????。」
ふと、改めて周りを見回す。
そこは汚いビルの中。
廃ビルかもしれない。
そして、目の前には・・・俺と同じくらいの女の死体・・・。
「し、死、死んだ・・・死体・・・あ、あ、お、俺、俺・・・。」
「・・・・・・・く、あ。」
「あ、ひ・・・。」
いや、死体じゃない、ちゃんと生きている。
怖い、嫌だ、刑務所なんて行きたくない。
ピチャ、またナイフから血が流れた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ。」
このナイフは去年・・・調度あの通り魔事件のあった夜に見つけたものだ。
そうだ、あの時も腹減って・・・少しぐらいならとコンビニに行って、その帰り道に近くの高校の通った時、道路脇に刺さっていたんだ。
儲け、と思って持って帰ったんだ。
「あ、う、あう・・・。」
震える、腕が震える。
そうだ・・・捕まったら・・・それこそ・・・だったらコイツをここで・・・。
殺せばいい
「フン、餓鬼が。」
ドサリ、と崩れ落ちるそれ。
その場には男が一人だけ立っていた。
「この程度でこのワシを殺せるだと?、フン、死神も随分と偉くなったな。」
まさに豪快、豪傑、と言った感じの男がその場に居た。
「まあよい、<アレ>が来るまでの時間はまだ少しあるからな。」
男はニヤリと笑みを浮かべた。
「カッカッカッ、そうだ<アレ>が来れば奴も来る。<有限の転生者>がな・・・。見つけよ、<アレ>が来れば来るはずだ。探せ。」
男が手を振ると、その手から幾つ物鳥が出てくる。
カラスのような奴らだ。
「見つけよ。」
その命令にカラスの様な奴らは飛んで行った。
「カッカッカッ、そうだ、ワシの獲物どもめ、逃がさんぞ。待っておれ。ワシが再び覇王となる生贄にしてやろう。」
男はそうしてこの場を立ち去った。
その下では、死神が最後の力を振り絞って伝えていた事に気づかないで・・・。
「任務失敗。標的は三咲町に移動。向かえる者を全て三咲町に集結させるべし。」
後書き
場面が変わりすぎてもうしわけありませんでした。
解説として<ナイフ>はロアが校庭でアルクェイドに殺された時に吹き飛んだものです。(シエルルート)
その辺は<青子先生の特別補習>の方で・・・。
それでは。
(77)
とあるビルの屋上。
朝日が当たり、彼女の姿は克明に映し出されていた。
髪は赤と黒が混ざったような長髪。
服は薄ピンク色に赤い花柄の付いたマントを羽織っている。
座り込む彼女の腕の中には赤ん坊が居た。
彼女にとっては大事な物の一つだった。
「は〜い、綺麗ですね〜。」
「〜〜〜〜〜。」
赤ん坊は何か動く動作をした。
しかしその動きはぎこちないというか違和感が有る。
「お日様お日様〜、今日も人は歩くんですよ〜。」
女性の声に赤ん坊も頷く。
「・・・何をしている・・・。」
「今日は何か良い事がありそうですね〜。」
別の声が聞こえたが完全に無視していた。
「・・・貴様・・・殺されたいか?。」
「ああんもう、そんな物騒な事言わないでください。赤ちゃんが泣いちゃうじゃないですか。」
「オーギャ・・・オーギャ・・・。」
確かに泣いてはいた。
だが、明らかに声がおかしい。
「そんな兵鬼を持って満足なのかな・・・<空間女帝>・・・。」
「あら、私の趣味ですの・・・切牙。」
一瞬で辺りが凍りついたかの様に冷たくなった。
「あらあら、会わないうちに随分変な趣味を持つ様になったのね。」
「貴方と貴女程おかしくは無いわ。」
そう言うと空間女帝と呼ばれた女性は赤ん坊に頬擦りをした。
「子供は良いわ。人間の中で一番純粋で、可能性が広くて、そして残忍なんだもの。」
笑みを浮かべる空間女帝。
「・・・ふん、腑抜けてはいないか。奴らを倒しただけはあるな・・・。」
「あの死神達?。下手な結界なんて張って私の流れを奪い取ったつもりだったのかしら?。所詮三流ね。もう少し部下を鍛えたら?。」
「ああそうだな。最近質が落ちている。機会があれば大王に進言しよう。」
お互いに観察し合う目線。
「まったく貴方も貴女も久しぶりに会ったのに・・・もう少し旧交を深めようとはしないのかしら?。」
「貴女の様な邪皇とそんな関係を持つ気は無いわ。・・・ま、430年と3日ぶりなのは認めるけど。」
口調が変わる事に何の違和感も無しに答える空間女帝。
「あら、3日ずれてたの?。残念。」
とても残念そうな顔をしていない空間女帝。
「なに私が細かいだけだよ。人間の暦で私達が会ったのは1571年9月12日だ。大した物だ、記録とは。」
切牙もまた笑みを浮かべている。
「そう、五人の帝と貴方と貴女が集まってからそんなに経つの・・・。」
何かを思い出すかの様に空間女帝は空を見上げた。
「繰り返される歴史の墓標から来た亡霊達・・・それが時期にこの地にて現れる。お互いそれが目的ね。」
「ああそうだな。」
「ええ、その通りよ。」
二つの声が始めて重なった。
「でも譲らないわ。あの子は私が貰うの。その魂の全てまで。それと・・・。」
空間女帝はじっと切牙を見つめる。
「私には<乱花>と言う本名がある事をお忘れなく。」
「忘れてなどいない。空間女帝の名の方が通っているからな。まあ良い。貴様の子供好きに付き合う気は無い。が、お互い補える部分は有ると思うが?。」
切牙の問いに乱花はすぐに答えた。
「ええそうね。なら協同戦線と行きましょう。有限の転生者に会うまで。今回は譲れないでしょうから・・・。」
「その通りね。有限故に・・・今回が最後かもしれないわ。」
朝だと言うのに俺達に安息は無かった。
屋敷の外の森に出る。
人外の、それもかなり強力な気配が近づいて来る。
「志貴、お前は屋敷に戻れ。」
華連ちゃんが言った。
「それは出来ない。君一人に・・・。」
「あれは同僚だ。」
華連ちゃんの言葉に俺は驚いた。
「同僚って・・・死神の?。」
「そうだ・・・しかし何故あの四人が・・・。」
その時後から遅れて影が近づいて来た。
「遠野君!。」
「兄さん!。」
「あ・・・皆何で・・・。」
しまった、急な事でつい皆を止めるのを忘れた。
「遠野君!、貴方は健全な一般市民なんですよ?。無茶しないでください!。」
「琥珀達はともかく私は戦えますっ!。」
「馬鹿、先輩はともかく秋葉は・・・。」
その時空から一つの影が降りてきた。
「やっほー、お待たせー。」
「ア、アルクェイド!!!。」
ちゃんとした体をしたアルクェイドが目の前に居た。
「うん?、どうしたの志貴?。」
「ど・・・この馬鹿女ーーーーーーーーーー。」
俺の言葉にアルクェイドは少し驚いた。
「な、何よ失・・・。」
「どれだけ心配したと思ってる!。勝手にネロの所に行きやがって!。本当に、本当に、心配したんだからな!。」
今まで溜まっていた物を一気に吐き出した気分だった。
頬に少しだけ暖かい水が流れた気がした。
「し・・・き・・・。」
「・・・貴様ら無駄話があるなら屋敷でしろ!。」
華連ちゃんの言葉に俺達は顔が真っ赤になった。
「いや・・・でも・・・。」
「あれは私の同僚だ。だから貴様らが居ると余計ややこしくなるんだ。だから・・・。」
「にしては殺気が強い気がするけど?。」
アルクェイドの言葉に華連ちゃんは黙り込んだ。
そして四つの影は姿を現した。
ぴちゃり、血が流れる。
油断した、そうこの少年は普通のはず。
普通の少年があの様な状況に陥って壊れないはずはない。
「はーはーはー。」
自分の体に治療術を施す。
急所は外れていた。問題は少年をどうするか。
彼はまだそこで固まっている。もしかしたら私を殺すかもしれない。
有り得る。だが・・・少しだけ人を信じたかった。
何と言う笑い話だろう。
こんな私が出世など望んでいるのだ。
私は本当に愚か者だ。
「はーはーはー。」
カツンカツン、足音が近づいて来る。
どうやら決めた様だ。
なら、私も動こう。
まず彼のナイフを取り上げて・・・。
「おい、しっかりしてくれよ・・・。」
・・・今の声は・・・。
カランッ、何か落ちる金属音が響く。
「頼むよ・・・頼むよ・・・。」
私の血で染まった両手で私を揺する。
どうやら・・・私と違って彼は戻れる様だ。
(78)
爆発音が響いた。
近隣にはすでに結界を張ってあるので問題は無い。
さあ、戦いの始まりだ。
四人のうちの一人・・・一閣と言っただろうか?・・・が何かをこちらに向けて撃って来た。
何か?・・・としか言えないが、突然彼の右腕が大砲の様な物になり撃って来たのだ。
華連と言う死神は心具と言っていたからそれの一種だろう。
とにかく、あの攻撃で皆バラバラになった。
いや、皆ではない。
「くっ。」
私は何とか攻撃を避けた。
辺りには煙が立ち込めている。
(兄さん・・・)
兄さんがあの攻撃を受けるとは思えないが・・・姿が見えないのは心配だった。
また・・・置いて行かれた様な気分になる。
「秋葉さん!!!。」
「!。」
その掛け声に私は横に跳んだ。
ビュッ、私の居た場所に先程と同じ緑色の玉が通った。
「く・・・。」
今は自分の事にしか専念出来そうに無い。
煙が消えて行く。
ダンッ、体勢を立て直す私の横にシエル先輩が立った。
「やる気がないなら下がってくれませんか?。」
「失礼な言い方ですね。引く気は有りません。」
確かに言われた通り私は兄さんの事を考えて隙を見せてしまった。
だが、同じ間違いはもうしない。
「やれやれ・・・仲は良くないけど認めているか。」
煙が消えていく変わりにあの男が姿を現した。
黒い短髪にグレーのロングコートは羽織った男。
「ここは遠野家の敷地内です。勝手な行動は慎んで欲しいですね。」
私は敵を睨みつけた。
「対した戦闘経験も無いのにその威勢は立派。さすがはあの遠野家の当主。うーん、能力も魅力的・・・さすがはあの鬼種と契約した一族。」
「!。」
契約した???・・・私達が・・・私達自身でさえ知らない先祖を知っている?。
「さすがは死神ですね。あの玉と言い・・・情報収集能力はかなり有るようですね。」
シエル先輩は無表情で言った。
「それはどうも・・・エレイシアさん・・・かな?。」
「!!!。」
瞬間シエル先輩は背後を向き一本の黒鍵を投降した。
思った通りあの玉があった。
だが当たらず主人の元へ戻る。
「やってくれますね。」
「世界修正が消えた・・・か。ならば問題無し。いでよ我の作りし球体。」
瞬間男の周りに幾つ物緑色の玉が姿を現した。
「「・・・。」」
ヒュッヒュッヒュッヒュッ・・・そして男を守るかの様に男の周囲を時計周りに回る球体。
「この47に及ぶ球体を避けられるかな?。」
不適な笑みを浮かべる男。
「成る程・・・しかし47とは随分半端ですね。」
私の嫌味に男は満面の笑みを浮かべた。
「何故47だと思う?、当主。」
「さあ、貴方の様な輩の考えなんてわかりません。」
「フッフッフ・・・これだから人間は駄目だ。それでは死ぬ前に教えよう・・・私は・・・。」
「忠臣蔵がと言う人間達の話が大好きなのだ!!!!!!!!!。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
時が止まった・・・例えだけど・・・本当にそんな感じだ。
「あの主君に対する忠義の熱い男達の生き様・・・まさに何度人間の<てれび>で放映されても・・・舞台化されても見応えがある!!!。」
空に向かってガッツポーズをする男。
「・・・だから・・・47・・・と?。」
私の質問に男は高らかに続ける。
「その通り!!!。これこそ四十七人視覚(刺客)!!!。我が視球はまさに芸術!!!。」
凄く力が抜けた。
戦闘では絶対やってはいけない事だが・・・抜けた。
横のシエル先輩も呆れ気味と言うか軽蔑した目線だ。
そして同時に腹が立った。
こんな奴と戦わなければならないのと・・・こんなのが死神なんて・・・。
「あ、そうそう、一応名乗っておこう。私は皇魔斬技。君達を断罪する者だ。冥土の土産だと思ってくれ。」
そして今度こそ始まった。
私はすぐに終わらせるために使った。
髪が真紅になるのがわかる。
そして略奪する・・・はずだった。
「くっ・・・。」
玉が一斉に襲ってきた。
その速さは兄さんの七夜の力を発した時並だ。
さらに私の視界以外から・・・すなわち背後に周った玉もあった。
昼間なら私の略奪は認識した瞬間奪えるはずだが・・・認識させないつもりの様だ。
ならば・・・邪魔なこの玉の熱を奪う!!!。
「秋葉さん、とにかく認識出来るだけ潰してください!!!。」
言われなくてももうやっている。
ジュー、ジュー、・・・心具と言うらしいが熱が奪われた途端消えていった。
キンキンキンキン、そして私の認識出来ない物はシエル先輩がなんとかしてくれる。
(これなら・・・)
だが・・・実際はそう上手くいかなかった。
まず、私はこれで終わるとは思えなかった。
秋葉さんの略奪で確かに消失してはいるが、これだけなら彼が14帝狩りの実行者になれるとはとても思えなかった。
死徒27祖と同格にして魔の三大勢力の一つ邪皇14帝。
その一角を倒そうとしているのだ。
こんな簡単な訳が無い。
皇魔斬技の居た場所を見ると、彼の姿は無い。
一体どこに消えたのか?。
秋葉さんの能力を調べた様だからそう簡単に姿を現す様な事はしないだろう。
一体・・・。
「!!!。」
それは一瞬の閃きだった。
いや、気が付かない方がどうかしていた。
「しまった。」
そう・・・彼・・・彼らの狙いは・・・遠野君。
すぐに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違う。
もし遠野君の場所に行けば私達も合流して・・・不完全だ。
なら・・・まだこの近くから???。
いや・・・攻撃が大した事が無い・・・この・・・緑色の玉・・・視球・・・。
・・・・・・・・・・・・・そうだ遠野君を調べたなら弱点を知っているはず。
弱点???・・・例え有っても私達が駆けつければ・・・。
「先輩!!!。」
「!!!、わかってます。」
両手に一本ずつ持った黒鍵。
この玉に投降は無意味。
だから二刀流の要領で玉を弾く・・・が一つだけ侵入を許してしまった様だ。
「ハッ。」
姿勢をずらしそれを避ける・・・が。
スパッ、距離はほとんど無いが、玉に触れていないはずだった。
が、着ていた法衣の袖が切れた。
「このーーーーーーーーー。」
秋葉さんがそれを略奪する。
その体勢が崩れた瞬間を残った玉が狙う。
そのコンマ何秒で・・・屋敷が目に入った。
そして・・・理解した。
まずこの玉。
視る玉と言うぐらいだから使い手にも情報が伝わるのだろう。
そして法衣が切れた・・・斬れた事から外見からは判断出来ない刃物の様な特性。
名前が斬技だけの事は有る。
次にあの男が何処に居るかだが・・・おそらく・・・。
だがその前にこの玉を何とかしないといけない。
黒鍵を地面に突き刺した。
鉄甲作用。
本来は対象に触れて発動するのだが・・・これはちょっとした応用だ。
体勢が崩れてはいるが、一方方向は秋葉さんが略奪している。
だからもう一方方向に集中出来る。
さらに忌まわしいロアの記憶の魔術を上乗せした。
ドォッッン、そんな音。
地面の爆発に魔術が加わった鉄のような土が玉を蹴散らす。
そして玉は消滅した。
「はあ、はあ。」
秋葉さんが息を切らし始めた。
「限界ですか。」
「何を・・・まだまだよ。」
妙な対抗意識があるのか・・・まあ今はそれがプラスになっている。
「では屋敷内に急ぎます。」
「?・・・・・・・・・・あいつは屋敷に・・・なんで・・・・・・・・・まさか。」
それには答えずに屋敷に向かって跳んだ。
「失礼。」
「「!!!。」」」
瞬間二人の・・・双子と思われる少女は動かなくなった。
自分の好みのかなりの美人だ。
「と、そんな事は言ってられない。さーて行こうね。君達の男の方の主人がお待ちかねだ。」
付け足しておくとここは地下室である。
さすがは異端のエリ−ト遠野家。
何か色々ツッコミ所があるが今は仕事優先。
彼女達を操るのに抵抗は・・・無い事も無いがこれも世界のため。
遠野志貴の魔眼は是非入手したい。
「急がないとあの二人が来るな・・・もう来てるか。」
47の玉はあっさり負けたが・・・私の計画には狂いは無い。
それに・・・別に47個しか出せないとは一言も言ってないし・・・。
「・・・あら、出口は一つだけ?・・・ヤバイ来た。」
監視用の玉が二人を確認した。
「しょうがない・・・いでよ我の作りし球体、出口に集中・・・。」
「ピーガー・・・シンニュウシャヲハッケンシマシタ。」
「「「「「シマシタ。」」」」」
「え?。」
思えば、ちゃんと調べなかったのが敗因で・・・命取りになった。
私達が地下に入った時、そこには・・・。
「くうううーーーーーーーーーーー。」
ドドドドド・・・ビー・・・・・・・バチバチバチバチバチバチ。
「「・・・。」」
また・・・力が抜けた。
いや、どっと疲れた。
「あ、秋葉さん、は、早く二人を・・・回収します。」
「わ、わかってます。」
「ぐわ、これがデンキ!!!。」
地下室に溢れ変える程いそうだが・・・この地下室は広いので何とかなる。
メカ翡翠軍団。
説明する必要も無いだろう。
しかし・・・意外な戦力だ。
騒ぎの中、琥珀さんと翡翠さんはただ呆然と立っていた。
催眠術でもかけられたのであろう。
「やってくれますね。」
いくら遠野君・・・いや私達を含めた全員が一瞬でも彼女達を確認すれば隙が生まれる。
汚い手口だが・・・良い方法だ。
認めよう。
私でもそうしたかもしれない。
「・・・すぐは無理ですか・・・仕方ありません・・・秋葉さん、二人を連れて一端出ます。」
「わかりました。・・・え・・・・・あ、レン!。」
秋葉さんの言葉でやっと気がついた。
微動だにせず、直立不動の二人を賢明に揺らすネコ型のレン。
彼女も戦っていたのだ。
「レンさん、行きますよ。」
レンはこちらを向くと・・・コクンと頷いた。
「さ、させない!!!。」
斬技の玉が襲う。
「「「「「サセマセン。」」」」」
が、忠実なメカ達の小型ミサイルが複数飛び、結局玉全部に命中。
「この・・・だが、入り口は一つ!!!。」
私達の入ってきた場所に玉が集結。
入り口付近が一面緑に染まる。
「結界発動・・・これで入り口は閉じられた!!!。」
「「・・・。」」
秋葉さんと目が合う。
確かに、入り口は閉じられた・・・が。
「残念ですが貴方はここで終わりです。」
「な、なに?。」
少し震えている。
予想外の事が多すぎて混乱しているのだろう。
「すぐにわかります。」
瞬間、私は琥珀さんと翡翠さんを両腕に、レンを頭に乗せ、跳んだ。
上の天井目掛けて。
「な、何だ???。」
一見何も無い天上。
そこの熱が奪われ崩れる。
下に留まった秋葉さんが奪ったのだ。
そこに四角い上までの通路・・・落とし穴が出てくる。
シエル先輩が穴の中に入って行く。
仮にも埋葬機関の代行者なら落とし穴の壁をつたって上に出るだろう。
ガラガラガラガラ、天上が崩れれ落ちた音。
私はもう一度、斬技と言う死神を見た。
メカ達の攻撃で服はボロボロ、体は焦げ、先程の余裕な笑みは微塵も無かった。
が、それでも何とか立っている。
「おのれおのれ・・・こうなったらお前・・・ギャーーーーーーーーーー。」
倒れこんで転げ周る。
そう、私に見られては・・・視られてはいけない。
「よくもあの子達に手を出してくれましたね。・・・覚悟しなさい。」
それと同時にメカ達が斬技の周りを円状になって囲んだ。
どうやら私を主として見てくれている様だ。
「う、嘘だ。・・・死神の・・・皇魔の一族の私が・・・こんなギャグみたいなやられ方・・・。」
「全てを奪いつくして差し上げますわ。」
断末魔声が響く。
それに合わせたかの様なメカ翡翠のミサイル及び火炎放射。
決着はついた。
後書き
メカ翡翠大活躍・・・失礼しました。(滝汗)
斬技が弱いと思われる方・・・実際四人の中で一番弱いです。
情報収集と後方支援が彼の本来の役目です。
まあ戦闘が始まっているのに自分の好みを話している時点でよくわかるはずです。
後、メカ翡翠が沢山いるのはメルブラの三ゲージ技だったからです。(笑)
次のバトルに彼女?らは出ません。(←当たり前だ!!!)
それではー。
(79)
私は何故戦うのだろうか?。
考えてみれば遠野志貴と言う人物に特別な思い入れが有る訳でもない。
確かに魅力はある。
あの優しさに惹かれているのも認めよう。
そして、あの危険な雰囲気も志貴の特徴と割り切れば良い。
だが、姫君の様に恋をしてる訳ではない。
私は・・・・・・・・・・・止そう。
人の中の・・・異端者の家柄の奴と結ばれる事など有り得ない。
志貴と姫君の様に想えば想うほど・・・辛くなる。
では、私は何故戦うのだろうか?。
認めよう、アイツに惹かれている事を。
だが結ばれない以上、意味が無い。
死神の行いが間違っているから?。
否、私はその地位さえ捨てる覚悟であの男を・・・武忌を殺しにきた。
私は何故戦うのだろうか?。
この御方と・・・。
<絶円一閣>殿の心具<放砲>。
腕に装着し砲弾を出すと言う単純な物だが、玉は爆発するだけではない。
時にこの様な目晦ましも有る。
私は森に向かって避けていた。
辺りは煙でわからない。
「・・・分断されたか・・・。」
団体ではなく個人戦と言う戦略。
なるほど、警戒はする訳か。
あの四人と同じ死神の私が居るのだから。
「そして・・・私の相手は貴女ですか。」
見上げると先程と同じ様にこちらを見下す影。
辺りの煙が消えていく。
「その様ね。・・・閻魔・・・華連。」
私と同じ赤い・・・朱い腰まで届く長髪を持つ女性。
着ている物も朱いロングコート。
私も赤い着物を着ている。
お互いこの色が好きだ。
あえて<赤>と<朱>と表現するが・・・。
「<朱 妖輝>殿・・・まさかこの様な事になるとは・・・。」
私は刀を出して右手に持った。
「華連・・・今からでも遅くないと思うけど?。」
そう言いながら妖輝殿は大鎌を出した。
大鎌・・・人間が死神の持っている武器で最も思いつく物。
先端に朱色に輝く髑髏(ドクロ)が付いている。
これが妖輝殿の心具だ。
自らの体と同じ長さを持つ大鎌を妖輝殿は片手で持っている。
「本当にそう御思いですか?、妖輝殿。」
「いいえ・・・貴女はそんな人では・・・・・ない!!!。」
瞬間妖輝殿はこちらに向かって跳んだ。
通常、跳ぶと言う行為は威力はあるが危険な手段だ。
空中では一方向にしか動けない。
着地する瞬間も隙が生まれる。
が、それはあくまで基本的な事。
例えば距離がそれ程離れていなかったら。
例えば跳んだ者の速さが異常だったら。
例えば持っている大鎌が回転し、人間の道具で言う<せんぷうき>の様に回転していたら。
例えばその大鎌の動きで刃の回転の周辺から周囲の風まで回る様だったら。
そして・・・例えば・・・今述べた事が全て起きていたら・・・。
技が出た時点で避けるのはすでに不可能だ。
となれば・・・。
「ハッ。」
私は刀を両手で水平に持ちを突きの体勢でその回転の中心を狙う。
が、その突きが届く前に妖輝殿は動く。
回転が止まった。
否・・・止まったのではない。
その勢いの付いた大鎌を上に振り上げたのだ。
その回転した力が私の体を狙う。
「甘いっ!!!。」
私は刀をすぐに引き戻し、その大鎌の刃の内側と棒の部分の接触部分に刀を当てる。
キンッ、辺りに甲高い金属音が響く。
「確かに・・・腕は上がっているわ。でもね・・・。」
「!。」
パキンッ、それは大鎌の刀との接触部分が切断された音。
正確には私の刀が大鎌を斬ったのだ。
だが・・・これに気が付くのが遅かった。
ザッッッッ、私の背中を大鎌の刃が貫いた。
「がっ・・・。」
ピチャ・・・ピチャ、死神にも血がある。
人間と同じ赤色だ。
自分の胸を見ると、そこから大鎌の刃の先端が出ていた。
「貴女は心具の特性を活かしきれていない。それが敗因。」
赤い着物が赤く染まる。
ああそうだ。心具とは死神の心・・・意思の具現化。
概念武装と同系列と考えればわかりやすい。
それが折れても・・・壊れても・・・心が有るのなら元に戻せる。
逆に、自ら割ったり壊す事で機転も図れる。
今のが良い手本だ。
私の刀に斬られて刃が通った瞬間元の形状・・・要するに斬った部分が復元しただけ。
ズブッ、背中を貫かれた大鎌の刃が抜かれる。
ドサリ、と私は倒れた。
「・・・残念ね。固有結界さえ使えずに負けるなんて。本当に馬鹿。武忌を倒す?、殺す?・・・ふざけないで。貴女じゃなにも出来ない。」
武・・・・・忌・・・・・・?。
「何故貴女の大王はそんな事を・・・はっ、死神最強の閻魔家も落ちたわね。」
ぶき、ブキ・・・・・武忌・・・あの男・・・は・・・。
「貴女は。」
「君は・・・。」
「貴女は・・・。」
「君は・・・弱い、それがわからないようじゃあ・・・。」
「一生、僕には勝てない。」
負ける・・・負ける?・・・また?。
弱い?・・・私が?・・・そうだ私は弱い。
武忌を倒せたのも隆一が居たから。
あんな姿になって・・・。
左腕を切断され・・・下半身を切断されて・・・私が何もしなければ死んでいた隆一が居たから勝てた。
私は・・・何をしている?。
胸を貫かれただけで死ぬのか?。
否、私は死神。
妖輝殿が強いから死ぬのか?
否、私はまだ何もしていない。
何も・・・何も・・・こんな・・・。
「こんな・・・。」
「え?。」
所で・・・こんな傷で・・・。
「こんな・・・傷で・・・。」
「・・・い、いくら死神でも・・・心臓を貫かれればただじゃ済まない筈???。」
心臓?・・・ああ貫かれたのか。
「だから・・・どうした。」
「・・・もう良いわ。貴女を反逆者として処刑します。」
大鎌を水平に引き、一気に振ってくる。
そのまま受ければ上半身と下半身は切断される。
だから・・・それがどうした?。
ザンッッッ、私の体が宙に浮く。
「・・・。」
不思議と・・・その時間は長く感じられた。
振った大鎌に勢いをつけて今度は私の体の上半身をバラバラに切断するつもりだろう。
だから・・・その動作が遅すぎる。
見えた・・・視えた・・・見え過ぎる。
「燃えろ。」
「!!!っっっ。」
辺り一面が一斉に赤く染まる。
私の固有結界<業火死海>。
私の指定した範囲内で行われる断罪の炎。
短所は無差別・・・私も狙われると言う事。
「しま・・・・ああああああアアアアアアアアアアアアアアア。」
妖輝殿は運が悪い。
無差別のため何処から炎が現れるか私にもわからない。
場所を指定してもそこ一面からではなく、無差別の地点から炎が現れ、一面に広がる。
その地点の一つが妖輝殿の真下だった。
「アツイあつい熱いイイイイイイイイィィィィイィィィィィ!!!。」
火達磨になりながら妖輝殿は跳んで出ようとするが・・・遅い。
何も、発火地点が地面とは限らない。
何も無い空中も・・・結界内だ。
「あああああアアアアアアアアアアァぁああああああぁぁあぁぁぁぁぁアアアァァァァアァアァアァァァアァッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!。」
断末魔の様な叫び。
いや、実際にそうなのかもしれない。
私の業火死海から逃げられると思ったのだろうか?。
「ふむ・・・世界干渉への問題は無しか。」
荒れ果てた荒野。
私の目の前には師が居た。
この御方は死神でも数少ない固有結界の使い手の一人だ。
武忌を倒すため、私は剣術を学ぶが・・・私にはわかった。
刀だけで武忌は倒せないと。
だから欲した。
14帝と同じ<魔の三大勢力>である<死徒27祖>のほとんどが多用する固有結界を・・・。
自分の世界が有れば・・・あるいは・・・。
「だが・・・ヤツを倒せるかはわからん。」
「はい、わかっています。」
「ふむ・・・確かに汝の結界から逃れるのは困難。だが・・・隙もある。」
「・・・。」
それは承知の上だ。
結界内一面からではなく、無差別の地点から炎が現れ、一面に広がる。
その一面に広がるまでの僅かな時間。
これが隙だ。
「わかっています。しかし不確定要素が必要です。奴を・・・武忌を倒すには・・・。」
そう、私に固有結界は不完全だ。
だから学ぶ時間も半分程だった。
無差別だが、逃げる隙が有り、一面ではなく、特異地点から、とにかく不完全。
どんなに学ぼうとも、完璧に発現しても・・・奴は倒せない。
「ふーむ・・・確かにな。武忌の討伐者は皆敗れた。欠陥など無かったのにな。」
愚かだと思う者も多いだろう。
完全がだめなら不完全と言う短絡的な思考。
だが・・・。
「はあ、はあ、はあ。」
息が・・・苦しい。
「はあ、はあ、はあ。」
体が熱い。
それはそうだ。
また上半身と下半身が切断されたのだから。
「はあ、はあ、はあ。」
だが生きている。
死神が生きる・・・と言うのもおかしな話だ。
辺りは一面焼け野原。
妖輝殿の姿は見えない。
生死不明と言ったところだ。
「はあ、はあ、はあ。」
一つ訂正しよう。
私の居る部分だけ草が残っている。
補足すると下半身は目の前だ。
ただいま再生中。
固有結界の小規模多数化。
読んで字の如く、一面に発現するのではなく小規模を複数起こす。
だから結界外・・・隙間を生む事が可能。
「・・・言うのは簡単だがな・・・。」
私の固有結界は通常と決定的に違う事がある。
指定した場所の発現・・・私がその場に居なくとも発現出来るのだ。
無差別なので当然である。
よって<結界外からの発現=複数可能>と言うさらに安易かつ単純な方法を思いついた。
と言うより私の結界の場合、意味が根本的に間違っている。
どう考えても私の世界ではない。
いや・・・今論ずるのはやめよう。
「ふー・・・手こずったな・・・弱いか・・・確かにな・・・。」
私は焼けた事で見えるようになった空を見上げた。
まだ朝なのだ。
「・・・また・・・休むしかないのか。」
私はただ動かずに回復を待つ事にした。
だが、彼女は気が付いていなかった。
四人の死神をいち早く倒したのは彼女であり、開始してからまだ10分程しかたっていない事に・・・。
(80)
志貴が出て行った後、死神の華連という少女は私の周りに魔術の様な物を施している。
「これって・・・。」
「私に治癒能力は無いが、世界干渉を強くするぐらいの事は出来る。」
世界からの供給が少しだけ増えた。
これなら思ったより早く再生出来そうだ。
「ありがとう。」
「え・・・あ・・・いや、大した事は・・・。」
少し口篭っている。
あまり人から感謝された事がないのかもしれない。
「・・・。」
「・・・。」
沈黙が場を支配した。
華連は目線を回しながら時折こちらと目が合う。
何か言いたそうだ。
「ねえ、何か言いたいの?。」
「う・・・その・・・・・・・・・・た・・・た・・・・。」
華連は俯きながら言った。
「助けて・・・くれて・・・ありがとう、姫君。」
「・・・。」
武忌という奴から救った事だろうか?。
でもあれはシエルが居たから成功したのだ。
それにあの男にはこの妹を殺す気は無かった様に思える。
私を・・・殺さなかった様に・・・。
「別に感謝される事は無いなー、だって貴女は志貴を助けてくれたじゃない。それに礼ならシエルに言ってよ。実際私もこれだし。」
もうだいぶ良くなったが完全ではない体に指を指しながら言った。
「すまない姫君・・・私にもっと力が有れば・・・死神失格だな。」
「うーんーと・・・まあ良いじゃない、誰だって失敗は有るだろうしー。・・・それより。」
私は真剣な声を出す。
「あの閻魔武忌って奴の事・・・詳しく教えてくれない?。」
「・・・。」
「驚いたなー・・・。」
彼女の一族や今までの生い立ち。
そしてそれに割って入ってきた隆一の事。
今宮隆一。
妹の分家らしいが、邪皇14帝と戦った事があるとは驚きだった。
「でも・・・あの子にそんな力が有るとは思えなかったなー・・・。」
「そうだ、まあその・・・あまり本人の能力を了解無く明かしたく無い。それは聞かないで欲しい。」
「うん、わかってる。」
私はどうやって隆一が一度閻魔武忌を倒したのか聞きたかったが深くは聞かない事にした。
この世界では当たり前の話だ。
ただ運が良かったらしく、少しでもタイミングがずれれば勝てなかったそうだ。
もうあの男にそれは通用しないのだろう。
「・・・。」
「・・・。」
また沈黙。
今度は向こうが切り出して来た。
「しかし・・・姫君がよりにもよってこの鬼種の一族に関わるとはな・・・皮肉な話だ。」
「え?、何の事?。」
「???。」
華連は「何を言っているんだ?」と言う顔をした。
「・・・・・・・・・ああそうか、姫君は27祖の知識しか持ち合わせていないのか。すまなかった。」
「当たり前でしょう?。私は死徒殺しが仕事なんだから。・・・でも皮肉って何?。」
私の問いに華連は一瞬迷った様だが語った。
「この一族が契約した鬼種と言うのがだ・・・その・・・転生者なのだ。」
「・・・この家が?。」
どう言う事だろう?。
ロアが転生したのはたしかにここの血筋だったが・・・。
「そうだ。正確にはこの遠野一族の開祖は鬼の力を得る代わりに契約として末代まで家の者の肉体を差し出すことになっているのだ。」
その差し出すと言うのが・・・。
「そう、転生体だ。まあ転生と言ってもこの一族の持っている鬼の力は元々その者の物だったのだから、差し出すと言うより返すと言った方が良いかもしれないがな。」
「そうだったんだ・・・それじゃあ今もまさか誰かに転生してるって事?。」
だが華連は「わからない」と言った感じで首を横に振るった。
「<あれ>はそもそもアカシャの蛇のように永遠を求めた訳ではない。<あれ>が求めた物は・・・戦いだ。」
「戦い?。」
戦い・・・自らの力を振るい続け戦いに明け暮れる者はこの世界では別に珍しくは無いが・・・。
「否、<あれ>が表に出て来る時は怨敵が世界に出る時だけだ。・・・何故あの帝を<あれ>が追い続けるのかは知らないが・・・そう言った意味ではかつての姫君と<あれ>は似ている。」
「・・・。」
ロアが動き出す度に私は奴を殺し続けた。
この一族に力を与えた者も同じ様に追い続けていると言うのだろうか?。
「そっか・・・あの帝を追う者か。それなら少しだけ知っているわ。邪皇14帝の中でも最古にして第一位、今だその姿は確認されず、その眷属が主を復活させようとすれば必ずくい止める鬼。そしてその者も14帝。その契約者・・・眷属がこの家だったんだ。」
去年の事件以来私はこの家に良く来るが、そんな事はまるで知らなかった。
「まあ眷属と言える程命令権があるとは思えないがな。<あれ>は常に単独らしい。」
「そのようね。皮肉・・・確かにね・・・。」
「そうだ。今の遠野家を作った有限転生者の血筋に無限転生者が転生したのだからな・・・。皮肉な話だ。」
死神の一人が放った砲撃で私達はバラバラにされた。
煙が濃い。
第二波も有りえるので私は森に入った。
「ハア、ハア、ハア・・・まだ不完全かな?。」
私は木にもたれながら言った。
傷は何とか塞いだが体力が戻っていない。
そして今は朝。
吸血鬼としては新月より厄介だ。
「見つけたぞ真祖!。」
「見たいね。」
すぐ傍の木の上に陰が一つ。
それは先程砲撃をした死神だった。
「ほう、威勢は良いな?、真祖の姫君?。しかし俺は運が良い。太陽が有るとは言え本調子の真祖なら駄目だが・・・それだけ力が弱ってればな!!!。」
ドッ、右腕に装着された砲筒が撃たれた。
「くっ。」
私は横に走る。
ドオオオォォォォォンンンン、横をかすめた玉らしき物が木々を破壊する。
小さなクレーターとも言うべき穴が出来た。
「・・・。」
「俺の心具<放砲>はそこらに死神の心具とは訳が違う。死神とは言え真祖を殺すのは可笑しな話だが・・・我らの邪魔をする者は断罪有るのみ!!!。」
「・・・。」
私はじっと死神・・・一閣と言っただろうか?、を見ていた。
何か・・・コイツは勘違いしている様な気がする。
「む、何だその眼?。震えて何も言えないのか?。・・・くたばれっっっ!!!。」
ドッッッ、私に向かって撃たれる砲撃。
ドオオオォォォォォンンンン、それは確かに私に当たった。
「それで?。」
「な・・・に?。」
私はすでに死神の目の前に跳んでいた。
「ぐうううっっっっっ。」
私の右腕の一撃を砲筒で防ぐ・・・が。
バリンッッッッ、砲筒は砕け散った。
「お、おのれ!!!。」
死神は後に跳んだ。
「逃がさない!!!。」
私も跳ぶ、がそれは途中でやめになった。
木が倒れてきたのだ。
「やるじゃないっっっ!!!。」
仕方なく私はその木を蹴って後退した。
俺は少し離れた木にもたれながら辺りの気配を探った。
「何故だ・・・何故俺の砲撃を受けて無事なんだ???。」
ガチガチガチ、右腕の砲筒を戻しながら俺は嘆いた。
左腕は小刀を持っている。
これは俺の心具ではなく、持ち物だ。
俺の心具は遠距離用なので接近戦には弱い。
だからこうして装備しているのだが・・・。
「何故・・・なぜ・・・???。」
真祖は確かに俺の砲撃を受けた。
だが・・・そのまま突進してきた。
いやその前に腕を振るった様にも・・・まさか。
「か、片腕で受けた?・・・ば、馬鹿な・・・。」
体力が落ちていたはず・・・今は昼間のはず・・・なのに・・・なのに・・・。
「じょ・・・冗談ではないぞ・・・・・・・や、ヤバイ・・・アイツは・・・。」
「気づくのが遅すぎなんじゃない?。」
「ひっ!!!。」
それは上からだった。
今度は俺が見下されている。
「その程度で私の志貴を奪おうなんて・・・良い根性ね。」
「お、おのれェェェェェェェェッッッッッッッッッ!!!。」
ドッドッドッドッドッドッ・・・、自らの敗北を否定したいがための砲撃だった。
敵は初撃で、反撃の機会を与えずに倒すもの。
これは私が言った言葉だ。
だが、こいつは殺すのも嫌になるくらい愚かだ。
撃ちながら必死に逃げる死神。
だが撃ちながらなので走るのが遅い。
だがあまり森を破壊すると妹に怒られてしまう。
だから。
「な、ひっ???。」
私は死神の背後に周った。
振り向くが・・・ドゴッ!!!!!!!!。
私のパンチ(シエルとクロスカウンターした時の)を腹に一発。
「が、は・・・。」
血反吐を吐く死神。
死神の血も赤い・・・が私達はその血は吸わない・・・吸えないのだ。
死徒が吸う理由は劣化する遺伝子を補うため。
真祖が吸うのはガイヤの意志が具現化されたため。
だか、興味などない。
「終わりね。」
私は死神の頭を鷲掴みした。
「あ、が・・・・。」
「飛んでけェェェェェェェェェッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!。」
空に向かってボールを投げる要領で投げた。
「あああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
周りを見ると木々がかなり倒れている。
後で妹に怒られそうだ。
「ま、いっか。早く志貴を探さないと・・・。」
私はその場を後にした。