改訂版・百話物語 1〜10


メッセージ一覧

1: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:10:52)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(1)

魔と退魔。
両者は時に、不思議な眼を持つ。
だが、
例え似た能力でも、その根源はまるで違う。
魔は生きるため。
退魔は殺すため。

廊下に二人の男がいる。
一人は死から死を見る眼を。
一人は死から命を見る眼を。

戦いの決着は死を見る眼を持つ者が勝った。
しかし、本当に優れた眼はどちらなのか。

もし、再び命を見る眼を持つ者が現れたら。
もし、それが戦いを挑んだら。

答えが出るのだろうか。




2: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:11:28)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(2)

今日は特別な日。俺の誕生日なのである。家族全員で祝ってくれることに、
なって・・・ドゲシッ・・・。

俺は死んだ。

「なわけあるかーーー! なにしやがる!!!」

ブンッ

咄嗟にエルボーを返す。
「はっ」
そいつは俺の攻撃を見事に止めてみせた。
「ふん。もう放課後なのにニヤツいて教室に一人でいる変態ヤローの攻撃なぞ」
辺りを見ると確かに俺達しかいない。
「チュンチュン」
ああ。小鳥の鳴き声がよく聞こえるほどしずかな・・・じゃなくて。
「殴るこたーないだろ!!!」
「いや、蹴った」
即答しやがった。
反省度ゼロ。
まあ、こうゆう奴だし・・・。
「はっ! 不味い。早く帰らないと」
大急ぎでカバンを持つ。
「そうそう。かわいいカワイイ長い髪の妹ちゃんが、鬼の眼になるまえにとっとと帰れ」
「ああ、わかったよ。目覚ましありがとうございました」
扉の方に駆けていく俺。
「ああ、それと今のが誕生日プレゼントね」
足が止まる。
「ちょいまち」
奴の所に戻る。
「蹴りがか?」
「それ以外に何かあった?」
「ヴァーーーンナックルッッッ!!!」
今度はあたる。
「ごふっ・・・おのれー!!!」
「くたばれッ!」
「おまえがなッ!」
(オモイダスナ)
二人の戦い
(ヤメロ)
は続く。
(ヤメローーーーーーーーー)





舞台が変わる。

ここは自分の家。
みんないる。
いや、ひとり多い。
ケンカノアトノキオクガナイ。
みんな(ヤメロ)寝てる。
俺もだ。
お腹が、穴が、開いて、血、ミンナ。
(ウザイ)
死ぬのかな。
いや、死なない。
「生きろ」そう言われた。
(ダレニ?)
生きるために一人、せっかく、コロシタンダカラ。
(モウイイダロ、コレハ<カコ>ダ)
人が入ってきた。
「そんな・・・バカな」
この人知ってる。
オカアサンノ・・・兄。
「生きてるのか? 隆一」
名前は確か・・・・・・・・・・。
(槙久だろ)

俺は目を覚ました。
心地良い光が射し込んできた。


3: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:11:54)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(3)

今、俺はベットの上。
まただ。
また夢を見た。
封印されたはずの俺の記憶。
母の兄である<槙久様>の手によって・・・。
「ウザイ」
目覚まし時計をみる。
俺はまた眠る。
理由は、まだ、朝の五時だからだ。
べットにもぐる。
不思議と、すぐ眠くなった。
「今更・・・終わった事を何で見るんだろうなあ・・・」
(・・・起きてしまった事を見てもね)
(ホントウニソウカ?)
(いいんだ)
(モットハヤクカエッテイレバ)
(うるさいよ、遠野隆一)
(ワカッタヨ、今宮隆一)
俺は寝る。
俺であり、俺でない者と。
いや、やはりこれもオレナンダ。


夢を見る。
あれは、いつのコトダッタケ。
大きな庭、いや森で、遊んだこと。
着物の「シキさん」
長い髪の「アキハさん」
青い目の「ヒスイさん」
「まってくださいーーー。」
「遅いぜ、もっと速く走れ。」
「「がんばれー、隆一」」
「はは、皆さん早すぎ」
森がざわめく。
目を覚ませと。


また夢を見た。
「ほんと、よく見るよな。特にこの二つの夢」
ベットから起きる。
言い忘れたけど、ここは・・・。



4: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:12:13)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(4)

ここは病院、いや施設だ。
四方を森で囲まれた静かな場所。
精神に異常をきたした人を専門に扱っている。
ここは本当にいい所で、空気がきれいで四季の変わるごとに森はいろいろな変化を見せてくれる。
まあ不満があるとすれば、ここが遠野グループの息がかかった所で、常に監視されている事だろう。
あの日、いやその前に俺の立場を説明しよう。

俺の名前は今宮隆一。
父の名前は春牙(おうが)。
母の名前は楓(かえで)。
妹の名前は柚良(ゆら)。
もっとも俺以外は皆死んだ。
異端者同士の戦いに巻き込まれて。
母は遠野家直系の人間で、父は今宮という遠野の分家の人間だった。
まあ、簡単に言うと二人は駆け落ちした。
本家と分家の結婚というのに一族全部が反対したらしい。
まあその後、俺と柚良が生まれて少ししたら兄であり、当主の槙久様が、「屋敷じゃなくてもいいから、すぐ会える所に来てほしい」と頼みこんできたので、事実上和解ということになった。
母曰く「遠野の男は妹に弱い」だそうだ。
話がそれたが、俺は幸せだった。
そのときはこれがあたりまえだと思っていた。
遠野家はいろいろな意味で危なかった。他の一族を滅ぼし、懐柔し、全てを略奪することがよくある家だった。
だから恨まれる事がよくあった。
歴代の当主は復讐されないよう徹底的に敵を潰してきた。
だが、それも無理があった。


<蛇神>という一族がいた。
大昔、魔の<蛇>と契約した一族で、遠野家と激戦の末、敗北、衰退していった。
だが、血の筋は残り、復讐の機会を窺っていた。


俺が小学校三年の時、自分のクラスに転校生が来た。
そいつの名前は・・・
「蛇神時矢です。よろしくーー」

俺達は気が合い、なかよくなった。
喧嘩もした。
そして、お互いの家についてよく語りあった。
彼は兄と二人暮しで両親は死んだらしい。
だから母に頼んで二人を何度か招待した。
でも、気が付いた。
何か隠している事に。

ある日学校の屋上へ呼ばれた。
行ってみると、時矢が暗い顔をしていた。
そして全てを語ってくれた。
そして最後に・・・。
「じゃあな」
と言って消えた・・・・・・はずだった。
「くらいーー、やがれーーー」
ドコッ、と音がして時矢が吹っ飛んだ。
ちょっと鬼の力を使ったが蛇の血があるから問題ない。
付け加えておくが、このころ<K.O.F>という格闘ゲームがはやっていた。
「・・・・・・・泣け、叫べ、そして死ねーーーーーー!!!」
蛇のような執念の時矢の攻撃がはじまり、喧嘩が始まった。

ようするに、「血なんて関係ない」という攻撃がよーーーく伝わったということだ。
結局、俺達は親友兼ライバルという関係は続いた。





俺の誕生日が来る日まで・・・。


5: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:12:35)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(5)

人、いや存在する物全てに終わりがある。
多くの人はその事実知っている。
しかし、<終わりを体験>した人はどのくらいいるのだろうか。
戦争、紛争、病気、復讐、通り魔など死ぬ原因は世の中にたくさんある。
彼もその一人にすぎない。

体験したが故に、特殊な中でもさらに特殊な眼を手に入れたのは・・・。



暗い部屋、いや見えない事はない。
だから分かる。
部屋中紅いペンキが(コレハ血ダロウ)塗られて(ワカッテルダロウ)いる。
父さんと母さんと柚良が寝ている(テーブルノウエニナニカアル)みたいだ。
あの丸い(・・・ナマクビ・・・)のはなんだろう。
みんなからの(イヤ、ヤツカラノ)プレゼント(タンジョウビイワイダ)かな?。
なにか楽しみ(シッテイル。オマエモリカイシタダロウ)だ。
・・・ああ・・・現実逃避・・・はもウイイダロウ・・・ヤつガいル・・・うシろニ・・・。
「俺からのプレゼントだよ。隆一」
奴が笑っている。
「クックックッ・・・俺の<毒眼>を受けて生きられる奴がいるとはな。さすがは鬼の血、往生際の悪さに敬意を表するよ」
笑っている。
わらっている。
ワラッテイル。
「ああ、誕生日祝いをしてなっかたな。ハッピーバースデイ、隆一。フム、まあ最後まで生かしたのは俺からのプレゼントなんだが・・・」

ザシュッ

あっ、腹を刺された。
・・・ちっ、刀なンテモッテヤガル。
「不服か。しかたない。もう一つ何か・・・おおそうだ。どうして、君が動けないか教えよう。」
別ニどウでモいイ・・・。
「俺の名前は蛇神烈矢。蛇の血を引く者。時矢から説明を受けただろう。まあ、そのあたりはいいだろう。要するに君が動けないのは俺の<毒眼>という俺の魔眼のせいだ。この眼で相手と目線を合わせると相手の体内に毒を発生させて場合によっては死に至らしめる事ができる。まあ、普通の人間は即死なんだけど・・・どうやら異端者の中には麻痺ですむ奴がいるらしね。ここの家族全員麻痺でわざわざ殺さないといけなかったんだ」
ナンダと・・・。
「でもおもしろかったよ。特に柚良ちゃんを殺る時のあの二人の顔・・・」
こい・・・つ・・・は・・・。
「本当は君もまとめてのつもりだったんだけど、どうやらまた時矢と喧嘩したみたいだね」
コ・・・イ・・・ツダ・・・ケハ・・・。
「まあ、これはこれで、楽しめ・・・」
こいつだけはゼッタイ・・・。
「ウン?・・・ムッ・・・」
俺が・・・殺す・・・。
そう思ったとき窓ガラスが高い音を立てて割れた。

ジャキン、キン、キン、ガキン

二つの刀がこの狭いリビングで火花を散らす。
「フン、やるじゃないか。おまえの肉体改造能力<伸縮>をうまく使った妖刀<逆鱗(げきりん)>とのコンビネーション」
「なんでだ烈兄さん。なんで。」
どうやら<伸縮>という能力は腕や足を自在に伸ばせるらしく、蛇のような攻撃が烈矢を追い詰める。
「<北羅(ほくら)>がないから、来てみれば・・・クソッ」
烈矢が壁際に追い詰められた。
「クッ、何故だ、何故わからん。これは、一族の復讐・・・。」
「復讐なんて何の意味があるんですか!!! それに、なんでこの人達を・・・」
(アレッ?)
「作戦だ」
「作戦?」
「さっき電話で槙久を呼んだ。今日はお祝いだからな」
「呼び出して殺す・・・。」
時矢の攻撃が止まる。そして震える声で言った。
「でも・・・殺す必要は」
「フッ、奴が入って来た時これを見たらどうするかな・・・」
「・・・唖然として、止まる」
「その隙に」
「ふざけるなーーーーーーーーー!!!」
(なんだ?これ。だんだん・・・)
「そんなの上手く・・・なっ」
時矢が動かなくなった。
伸びた腕がそのままに・・・。
「その通り。それはついでだ。本当はただこの幸せな家を地獄に仕様としただけ。今のは全部嘘だよ」
毒で動けない時矢に近ずき、縦に刀を振るう。
「ガッ」
倒れた。
「槙久が来るのは本当だ。これを見せたくてな・・・さて」
こちらに向かってきた。
そして目の前でしゃがみ込む。
「・・・いい眼だ。だが動けまい。毒は俺自身が解除するかおれが死ぬしかない。さて、急がないと、槙久の相手は今度だな」
(右腕が動く・・・タメシテミルカ)
「あばよ」
奴が刀突いてきた。
右腕を使って急所をずらした。
そして・・・。
「往生際が悪・・・ぶああっがががげええええーーーーーー」
右腕で<点>を貫いてみた。
自分の腕力に驚いた。
そして片腕で何度も・・・・・・。

「ごめん。ごめん」
時矢が泣いている。
「おまえのせいじゃない。槙久様が来るから行け・・・」
「ごめん」
その言うと時矢は消えた。
<生きろ>
「えっ」
声がした。
みんな死んでいル、ハズナノニ・・・。




6: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:13:03)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(6)

その後俺は病院に担ぎ込まれ一命を取り留めたが、どうやら気がおかしくなってしまったらしくこの施設に送られたらしい。
<らしい>というのは、俺の記憶が時矢がいなくなった時点であやふやなためだ。
それとどうやら槙久様が俺に暗示をかけたらしく、少し前まで家族はトラックにはねられて死んだと思っていた。
ああ、それと気がおかしくはなったけど、この施設に来て一ヶ月ほどしたらもう落ち着いていた。
記憶は違ったけど・・・。





ダンッ、木の枝をはねた足音が聞こえる。
「いたぞーーー」
「網だー。捕獲部隊なにしてるーーー」
当然だった。
「木だ<A1>ポイントに部隊を集めろーーー」
「逃がすなーーー」
「この時のために部隊を作ったんだ。つかまえろーーー」
森に声が響く。
当然だった。
「うわーーー。誰かつかまえてくれーーー」
監視されていて当然だった。
俺は脱走の常習犯。
今森を、鬼の力は使ってはいないが走っている。
そもそも異端者の一人ではあるが、気の狂いは直っている。
なのに、いつまでも施設にいれられたままでは、またおかしくなりそうだ。
だから、一週間にニ、三回外に出る。もちろん夜にはもどる。
でも、ここは精神異常者の施設。
保護者がいないのに外出なんて認められない。
あの日以来槙久様は一度見に来てくれたけれど、その後は誰も来ない。
まあここなら来なくても俺の様子は伝えられているだろう。
「待ってくれーーー。首が、首が、左遷、ああああ・・・妻よ・・・娘よ・・・ダメな父親をゆるしてくれーーー」
「園長。しっかりしてください」
だいじょぶだって。
ここ以外に飛ばされる所なんてあるわけないよ。
こんな森しかない施設の園長なんて。
・・・と思いながら俺は包囲網を抜けた。
ちなみに<部隊>とは俺専用に作られたものだ。





深い森の中、俺はある木の下で俺は休んだ。
「ここで思い出したんだよなーーー。全部」
俺は木の下を掘り返した。
そうココで・・・。





夕日で照らされた森を男の子が走っている。
だれかは言う必要がないだろう。
彼は記憶に違和感があるに気が付いた。
そんなはずはない。
と思いながら日が経つにつれ疑惑はどんどん膨らんだ。
所詮、暗示は偽り。
不安だった。
不安だった。
施設に心を開いて話せる人がいなかった。
先生達は言ってもおかしくなったと思うだけだ。
患者は皆イカレテル。
ハナセルひトなテいない。
「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
俺は悲鳴ヲあげタ。
まただ。
まただ。
また違う奴と声がカさナっタ。
キヅケオレトオマエハオナジナン・・・。
「うるさい。うるさい。うるさーーーーーーーーーーーーーい」
(・・・マタ・・・クル・・・オレハ、オレヲクルシメタクナイ・・・)
「くるな。来るな。二度とクルなーーーーーーーーーーーーーーー」
俺は大きく叫んだ。夕日がとてもきれいなのに俺は気づかなっかた。





ここに来てもう一年くらい経つ。
槙久様が来た以来だれも来ない。
俺はいらない存在なのだろうか。
いつの間にか夜だった。
時計がないから時間はわからない。
声が聞こえ始めたのは昼食のあと。
単純に考えてそれからずっと森にいた事になる。
「皆探してるだろうなーーー」
草の上に寝こるがった。もう方角もわからない。
ここで餓死するか野犬に食われても、もうどうでもよくなってきた。
その時だった。

ドスッ

音がした。
体を起こして音のした方をみる。
人が一人いた。
いや、人じゃない。
人型の生き物。
背は170cmはある。
来た。
きた。
キタ。
そして覆いかぶってきた。
口をあけた。後は・・・。
「ヒッ」
俺の眼を見た奴が恐怖して悲鳴ヲアゲタ。
俺自身どんな眼をしているか知らないが奴は止まった。
そのまま・・・。





服が紅くなってしまった。
「俺は洗濯できるかなー」と思いながら不思議な気持ちで夜の森を歩く。
満月のおかげで少しは視界がヒラケテイル。
「お前が伝えたかったのはこの腕力か?」
「イヤ、ソレダケジャナイ」「じゃあ他は?」
「・・・ワカラナイ・・・」
「はあ〜?」
俺は歩くのをとめた。
「なんだよそれ」
「ツマリ、オレハオマエダ。オマエノホンノウ。コレガオレ。ダカラオレノチカラシカシラナイ」
「・・・なるほど。」
納得がいった。
<俺とオレ>とわかりにくいがつまり俺は理性、オレは本能、と違いがあるが、それ以外は全て同じ。
記憶も体も。
「ソウイウコトダ。コレハショセン<キオクノチガイ>カラキタ<ヒトリシバイ>。キオクガモドレバ、オレハタダノホンノウニナル」
ようは記憶が戻ればいいらしい。
「ソウダナ、ナノルナラ・・・リュウイチノホンノウ<遠野隆一>ダ」
「遠野?」
「ソウダ」
なるほど、確かに<血の本能>は遠野家からきている。
「じゃあよろしくな遠野隆一」
「ヨロシク今宮隆一」
俺はまた歩くことにした。
一応施設に戻らないといけないと思ったからだ。





「ほう」
いきなり声がした。驚いて振り向く。
そこには女の子が一人いる。
俺と同じぐらいの年と背だ。
・・・・・・・でも・・・・・人じゃない。
右手に刀を持っている。
「先刻逃がした<兵鬼(へいき)>と同じ匂い。イヤ少し違う。フム。兵鬼の親玉か・・・まあよい。死ね」
「なっ、おい。・・・クッ」
とても速い刀が俺を・・・。






7: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:13:23)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(7)

俺は思う。
人生とは山あり谷あり楽あり苦ありだと。
でも俺のように、そう、例えば・・・。
こんな深い森のしかも真夜中に刀持った女の子に追われた事のある奴はいるのだろうか。

さて現実放棄はこれくらいにしよう。





「ふーーー」
一本の木にもたれかかり俺はやっと溜息をつけた。
でも気を抜いたわけではない。
ただ、疲れただけだ。
最初攻撃は本当にやばかった。
近くにいたが実際は10mは距離があったはずだ。
なのにあいつは1回飛ぶだけで目のまえにいた。
とっさに後ろに飛んで直撃は避けたが腹の肉を少し斬られた。
おかげで服が斬れさらに俺の血で汚れた。
まあこれは患者用に支給されたやつで白に赤がついてちょっとおしゃれ気分でいれば・・・
「じゃなくて!!!」
自分の命がある事を幸運に思わないといけない。どうやらまだ混乱してるらしい。
「しかしよく逃げられたよなーーー」
そう、斬られたあと俺は遠野の力を使って・・・いや<スイッチが切り替わった>と言ったほうがいい。
とにかく逃げた。
戦う事も考えたがどうやら向こうが勘違いしてるらしいので真剣勝負が馬鹿らしかったからだ。
傷をつけられたが、たいして深くもないしこんな時間にうろついていた俺にも非がある。
まあ天罰だと思う事にしよう。
それに向こうもすぐに追わなくなっていた。
おそらく最初の俺の動きで<兵鬼>とやらじゃないとわかったのかもしれない。
ちなみに俺から見てあいつはかなり可愛い顔していた。
肩まで届く髪がよく似合っていた。
もしかしたら意外といいやつかもしれない。
まったく殺されかけたのに俺自身馬鹿だと思う。
それにしても・・・。
「<兵鬼>ってあれだよな。<鬼>の親戚かな?」
あの子の正体よりこっちが気になる。
彼女が俺を<兵鬼>と間違えたのはさっき殺した奴の血と匂いのためだろう。
それと俺の匂いが混ざり<親玉>に思われたのだろう。
でもあれはいったい・・・?。
「教えよう」
まただ。
また気が付かないうちに接近を許した。
今度は男の声、かなりトーンが高い。
俺は声のしたほうを振り向いた。
「誰だ!!!」
「鬼〜〜」
即答した。
前にも似たような事があった気がする・・・。







8: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:13:40)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(8)

そいつは・・・そう黒い存在で夜に溶け込んでいるようだった。
服は全部黒で統一され、サーカスの団長がつけるような黒いシルクハットをかぶっていた。
顔は肌色だがそれでも<黒>という印象しかない。
背は・・・2mはあるがスラリとした体型・・・いや細いと言ったほうがいい。
「へー、鬼ですか」
「そう鬼だよ〜〜〜」
軽そうな言葉だが、嘘じゃない。
なんとなくだがわかる。
(ヘタニニゲルノハトクサクジャナイ)
<遠野隆一>が言った。
(わかってる)
と心のなかで言い返した。
「じゃあ、教えてください」
そう言いながら逃げるタイミングを計る。
「OK、その方が逃げるタイミングを探せるしね。」
どうやらばれてるようだ。





「まず、お互いの自己紹介といこう。僕はね閻魔、閻魔武忌。武力の武に禁忌の忌だよ。君は?。」
「今宮隆一」
風が出てきた。
二人出会いを祝福するように・・・。
「へえ〜、隆一か。隆、勢いがある、もり上がる、高くする、一番。いい名前だね〜」
なにがおかしいのか武忌というやつはニヤツいている。
ふと、だれかに似ている気がした。
一体誰に?。
「じゃあ説明しよう。う〜ん、君は鬼の血をひいてるようだけど、君は鬼についてどれくらい知ってる?」
武忌の眼が少し細まる。
まるで獲物を見るように・・・。
「そうですね・・・角を生やしていて、雷パンツに金棒持ってるイメージがありますね」
負けずに睨み返す。
「うん、人間の間じゃそれが一般的だね。まあそういう奴もいなくはないし間違っているわけじゃない。
でも、最近の鬼は僕のようにファッションセンスがある奴が多いから合ってるとも言い切れないけど〜」
そいうと奴は両腕を夜空に上げた。
「<鬼>と言われる奴らは同族じゃない限り皆違う。翼のある奴、体を変化させる奴、妖術を使う奴、色々ね。でも共通する事がある。人間を<捕食>とすることがね。」
奴の両手が、満月を包むような形になる。
「まあそんな事だろうと思いましたよ」
目上なので一応敬語を使う。
「でもね、人間を食べるにも二つ方法がある。肉を喰らうか魂を喰らうか」
両腕を下げた。
「鬼が人間を喰らう理由は二つ。生きるためと力を得るため。人間はどれもすばらしい力を秘めていてそして殺しやすい。正に最高の獲物の一つさ。」
右腕を自分のむねに手を当てている。
「でも一番力を得やすいのは魂を喰らう方でね、肉は魂を喰う技術のない鬼が食べる。
そう、これこそ多種多様な鬼を区別する方法。簡単だろう?。」
「まあね」
俺は背をかけていた木から離れた。
「こう区別するんだ。肉を喰らう方は<邪鬼>、そして魂を喰らう上級の鬼を<邪皇(じゃこう)>とね。<邪皇>っていう名は<天皇>に対抗する意味からきてるらしい。まあ今はもうお互い関係なくなったけど」
じっと奴見た。
「へえー、じゃあ貴方はどちらなんですか?」
わかっているが一応聞いた。
「<邪皇>だよ〜〜」
そう言うと奴はニコリと笑った。
「でもね僕はただの<邪皇>じゃない。<邪皇>ってやつは以外といるんだ。中にはたいした力もないくせに魂を喰える奴もいる。
だからね<邪皇>には最強と言われる集団がいる。僕はまだ入って5、6年しかたたないけど一応ランクインされてる」
そういうと奴は殺気を込めた目線で見てきた。
「名前は?」
「ふふ、ある地方に<死徒27祖>っていう奴らがいてね、それに対抗してこう呼ばれてる」





<邪皇14帝>








9: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:14:02)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(9)

「その<邪皇14帝>そんなにすごいわけ?」
もう敬語を使うのはやめていた。
「・・・本当に知らないのか?。・・・失礼だね。この裏世界じゃかなり有名なんだけど・・・。

自らを不老不死と詠う夜の眷属の王者、吸血鬼集団
      <死徒27祖>

英知と根源、そして全ての果てを目指す魔道集団
      <8魔道星>

破壊と殺戮の果てに生まれ、自らを<王>を超える<皇>と名のる鬼集団
      <邪皇14帝>

これこそこの世界に君臨する<魔の三大勢力>なんだけど本当に知らないのかい?」
不思議そうにしている。
ふざけてやがる。俺がそんなこと知るはずがない。
それより・・・
「・・・結局<兵鬼>何な訳?。」
まあ<魂を喰う>という時点で予測はついた。
「ああごめん。ようするに<兵鬼>は魂を喰われた人間なんだ。<邪皇>になるともう人間をいちいち食べるのはめんどくさい。でも、死体を放って置くのも勿体無い。だから魂を抜いた体に少し力を分けるんだ。するとそいつは忠実な<兵鬼>になるんだ。まあ<皇>を名乗ってるんだから兵隊ぐらいいないとね。当然僕にもいる。まあ20〜30ぐらいだけど。なんせ管理が面倒でね。定期的に人肉食わせないといけないんだ。ああ、今は少し後ろに下がらせてる。君とゆっくり話もしたかったし」
やっぱり俺はこいつが嫌いだ。
俺は木からはなれ奴と対峙した。
逃げるのも倒す・・・いや殺すのも無理だろう。
それでも一発殴りたい。
そろそろ話も終わりだがその前に・・・
「聞くけど、あんたらを狩る集団はあるのかい?。」
さっき会った女の子を思い浮かべた。
「・・・ああ、ある。フム、本当に知らないのか。まあいいところで・・・」
奴の目が大きく見開いた。
「君は君と同い年の同じくらいの背の女の子会ったのかい?。」
・・・驚いた。
こいつはあの子のことを・・・。
「そうか、会ったのか。彼女はね<死神>さ。聞いたことあるだろ。<鬼>と言っても君のように人間と溶け込んだ奴は違うけど、<鬼>と<死神>は昔から殺しあってきた。<死神>はね<冥府の代行者>であり全ての魂の管理をする。この世とあの世の<魂の循環>を守るのが仕事。そして<鬼>は魂を喰らう。<邪鬼>も放っておけば<邪皇>になる可能性がある。そういうことから二つの種族は争ってきた。・・・いい加減出てきなよ、たっぷりかわいい華連ちゃんのために時間をかけたんだ。早くしてくれよ。マイ・シスタ〜。」
そう奴が言った瞬間・・・。

10: グリフィンドール生 (2004/04/26 15:14:20)[t-masaru at lapis.plala.or.jp]http://deleted

(10)

<法を守る者、法を破る者>

ここは<生と死の狭間>。
死んで裁判を受ける者、新たに記憶を消され生をやり直す者などが必ず通る場所。
まあたまにここに来て引き返す奴もいるが・・・。

「・・・暇だ。」
僕は<死神>。
魂の管理者であり、乱す者を裁く事ができる。
と言っても裁けるのは<現世>のみ。
この辺りからは<冥府の裁判官>の仕事だ。
人間どもは<閻魔大王>や<冥界の裁判官アヌビス>なんていうのがやってるなんて思ってるらしいがこれは正しくない。
本当の裁く者の数は1000を超える。
彼らはその一部にすぎない。
どこからかしらないがこれが<現世>に漏れて定着してしまったらしいが。
僕も<閻魔>の名前を持っている。
この一族は<閻魔大王>以外は皆<死神>の仕事をしている。
これでもこの世界では最強と言われている。
しかし・・・。
「鬼狩りでもしたいな〜〜〜」
一族がすごくても僕のように若く位が低いのはこういう雑用が多い。
たまに若くても実力が有り、上と付き合いがうまい奴は昇進しやすい。
でも僕は力はともかく、上司との付き合いが下手で地道にやるしかない。
・・・ようは人間社会と変わらなかったりする。
ああ、それと「裁けないのになんで管理しているの?」と思うだろうが、この仕事は死んだ者の魂がこの<狭間>で迷わないように案内するのが仕事だからだ。
ここは以外と僕らでも間違いやすい。
裁く事はしない。
それにここまで来て引き返せる奴もいるので裁く訳にはいかないのだ。
だが、この仕事大変な時と暇な時の差が激しい。
実はこの仕事、魂を連れて行くのではなく、看板見たいに突っ立って待つだけなのだ。
他にも僕以外の奴がここの先にいる。
僕はこの道の一番最初にいる。
それでも方向を指さしているだけなので暇な時は本当に暇だ。
交代時間まで後10時間はある。
一応この世界は人間の時間を採用している。
さて今はえらく人通り・・・というか魂通りがない。
本当に暇だ。
「暇、ひま、ヒマ」
こんなに暇なのは一体いつ以来・・・あっ、久々に通る奴がいる。
まあ、死んだ事を喜ぶ事になるがそれでも・・・ってあれ?。
「変だな」
なんというかおかしい。
いや・・・そうか。
「転生者か・・・」
実際に見るのはこれが始めてだ。
しかもこいつは何度も転生しているようだ。
裁けない。
何故奴を裁けないのか、それは例え法則に背こうがこれは生前の努力の賜物だからだ。
それにこちらではこいつは死んでいない扱いになっている。
転生できるという時点で十分力が残っているからだ。
生きている扱いになる。
だが僕はそんな事より珍しい物を見れたという気持ちが強かった。
普通、記憶を持ったまま転生するにはものすごい裁判を受けなければならない。
詳しくは知らないがとにかくすごいらしい。
僕は思わず目を見開いていた。
すると、
「ほう、私を見て不快感を出さない<死神>は始めてだな。」
と言った。
「ええ、好奇心の方が強くて。」

それから何故かお互いの身の上話が始まった。
お互い暇だったからかもしれない。
時間が経つにつれ僕は彼にますます興味を持った。

「永遠の命題?」
「そうだ。私と盟友は不死と不老となりこの果てを目指す」
「<永遠>は果てがないから<永遠>だと思うけど・・・」
「確かに矛盾している。まあこの真理は他の者にはわからない」
「そうか。そういう世界もあるのか・・・」
「そうだ、君も探りたいならするがいい。もっとも強制はしない」
この出会いが僕を変えたのだ。これがなければ僕は・・・。

「時間だ。縁があればまた会おう」
「うん。じゃあね〜〜」
こうして短い出会いは終わった。
彼には感謝する。
何故なら・・・





血、血、ち、ち、チ、チ、赤、赤、朱、朱、紅、紅、一面、全て・・・
「何故だ・・・武忌・・・お前だけは・・・堕ちないと・・・」
最後の一人、僕のお父さん。
「バイバイ〜〜〜」
また服が染まる。ちなみに<死神>の血も赤だ。

<堕ちる>とは<死神>が魂を喰らう事をさす。
吸血鬼にも似た事がある。
<死神>は魂を喰らうと<鬼>の扱いになる。
まあそれはそれでいい。
家族を殺したのはこいつらの魂を喰らうため。
<死神>も魂を持ちこれがまたうまい。
でも、一族全部はさすがに無理だ。
もっと強くなってからにする。
「あああああああああああああああああああああああああっ・・・」
どうやら妹が泣き出した。まだ生まれて一ヶ月しか経ってない。
「大きくなれよ、華連」
そうして屋敷を後にした。
僕と同じにするか、それとも喰らうかはその時考えよう。
復讐されるのもおもしろい。
ちなみに子供作り方などはほとんど人間と同じだ。
まあ生まれた時から自我を持つ所や人の何十倍も長生きできる事を除けば。
それに・・・
「赤ちゃん連れてくのも面倒だからね」

僕の命題は<完全な不老不死>に決まった。
だれもが、そう彼でさえ<完全>ではない。全知全能という神さえも。
だから僕が最初の<完全>になる。

彼には感謝する。何故なら・・・

          僕は

              こんなにも

                      幸せ

                            だからだ。    
    




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