春 −貴方の傍にー   M;桜  傾;シリアス


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1: XYZ (2004/04/25 20:40:43)[tensyo0304 at hotmail.com]

春になった。



先生は穏やかに笑う。
強欲ばーさんとはちょっと違う笑い方
でも、似ている。
先生は穏やかに笑う。

遠い思い出を話す時、先生は少し寂しそうに笑う。
でも、穏やかに笑う。

花を育てている時、先生は慈しむように笑う。
でも、穏やかに笑う。

料理をしている時、先生は楽しそうに笑う。
そして、隣の誰かををみて思い出すように笑う。
でも、穏やかに笑う。



春 −貴方の傍にー


今年も綺麗に咲きました。
ひとつづつ増える花
贖いの花
この頃、体がうまく動きません。
でも、私は待ちましょう。

今年は桜がいつも以上に綺麗に咲きました。





interlude in


体は剣で出来ている。
この体は無限の剣。

意識が途切れ、途切れ
今、眠っているのか、起きているのか
もう分からない

この体は爆弾だ。
構造はいたって簡単だ。
難しい設計図などいらない。
難しい配線などいらない。
少しだけ、足を、腕を、指を動かせばこの体など簡単に吹き飛ぶだろう。

生きたかった。
死にたくなかった。
今までなんでもなかった事が
今では、あの星のように
自分を守ると、誓ってくれた彼女のように
自分が守ると、誓った彼女のように
届かないものとなって・・・

とても恋しい。

割れる。
自分がとても空虚なものとなる。
自分を無くしたくなかった。
指を噛む。
少しでも、自分を保つために。

記憶が消える。
それでも、憶えている。
その笑顔を
柔らかい手の温もりを
その約束を
憶えている。

ー花を・・・

それはきっと楽しいだろう。
桜はきっと隣で微笑んでいるだろう。
もしかしたら■■も来るかもしれない。
■■■■もいるかもしれない。
きっと■■■はもくもくとお弁当を食べているのだろう。

■■■■にとってそれはなんでもない日常で
なぜだか分からないけれども
涙が出た。




もうなにも分からない。
自分がなぜ動いているのか
痛みとはなんだ
生きるとはなんだ

「投影ー
     


           開始ー」



なにか大切な約束があったはずだった。

interlude out



私はいつものように椅子に座り
庭を眺める。
桜は今日もきれいに咲いている。
いつも通りの一日のはずだった。
でも、今日私は終わるのだろう。
だって
坂の上にはあの時のあの人が立っている。




眼が覚める。
眼に映るのは、光。
降り注ぐ暖かな光。
そうして、俺は動き出した。
商店街を抜ける。
なんども通った道を抜け、坂まできた。
桜が咲いている。
綺麗な桜だ。
自分が見てきた中で、一番かもしれない。
そうして、坂の上に立ったのだ。


目の前にはあの時の先輩がいる。
    −目の前にはあの時の桜がいるー

きっとこれは俺達の魂の形なのだろう。
そして、魂の邂逅なのだろう。

「悪い、桜遅くなった。」
自然に言葉が出ていた。

「遅いです。先輩。
 待ちくたびれちゃうところでしたよ。」
そういって桜は笑っていた。

「ホントに待ちくたびれちゃうところでしたよ・・・」
いやだな、声が震えちゃう
先輩と会う時は笑顔で会おうって決めていたのに

桜が泣いている。
自分が守ると誓った人が泣いている。

「俺は桜の正義の味方にもなれなかった。
 桜の悲しい時、辛い時に傍で支えることができなかった・・・」
出てくるのは、後悔の念だけだった。

「そんな事ありません」
泣いていたはずの彼女は言った。

「私が罪から逃げようとした時に、助けてくれたのは先輩でした。
 先輩は絶対に帰ってくるから、生きようと思いました。
 何度も挫けそうな時、先輩を思い出しました。
 先輩はいつも私を助けてくれました。」

「先輩、私は罪を・・・責任を取ることができたでしょうか?」
分からなかった
どうすれば、私は罪を償うことができるのか

「桜」
と、先輩は優しく私を呼んだ。

「罪を償うということは、逃げずに生きるということだ。
 その罪がどんなに重くても、生き続けるということだ。」
そう言って先輩は私を抱きしめた。

「よくがんばったな、桜」
その一言が聞きたかった。
私はその一言で救われる気がした。

ー俺達は互いに助け合っていたー

「さて、桜約束を憶えているか?」
そういって先輩は私に手を伸ばした。



ーいつか冬が過ぎて、春になったら



「はい」
といって私はその手を取った。

「じゃあ、お弁当作らなきゃいけませんね。
 先輩はちょっと待っててください。」
そういって台所に向かおうとした。

「ム、ちょっと待て桜。俺がやろう。」
先輩も立ち上がった。
しかし、そうもいかない

「先輩、私、先輩と同じくらいお味噌汁を上手につくれるようになりましたよ。」
桜はちょっと悲しそうにそう言った。

「じゃあ、二人で作ろう。
 きっとおいしい物が作れる。」
そいったら桜は今度はうれしそうに笑った。

そうして二人でお弁当を作って外に駆けていく。

日差しは暖かく
庭には色とりどりの花が咲いている。

居間には二人分の食器
鍋には少し冷め気味の味噌汁

日はどこまでも高かった


花を見にいこうー


「せんせーい、今日もきたよー」

先生は穏やかに笑う。
強欲ばーさんとはちょっと違う笑い方
でも、似ている。
先生は穏やかに笑う。

遠い思い出を話す時、先生は少し寂しそうに笑う。
でも、穏やかに笑う。

花を育てている時、先生は慈しむように笑う。
でも、穏やかに笑う。

料理をしている時、先生は楽しそうに笑う。
そして、隣の誰かををみて思い出すように笑う。
でも、穏やかに笑う。

先生は椅子に座って寝ている。
静かに寝ている。
先生は穏やかに笑う。


先生はうれしそうに笑っていた。



春になった。



end

thank you for reading
see you agein next work



ここまでお付き合いいただいた方ありがとうございました。
もう少し短く収めるつもりだったのですが・・・
補足を少々
これは、「櫻の夢」のご都合主義endですね。
桜、士郎、桜の弟子が一応登場人物です。
間桐のじーさんが500年生きたのは、魂だけで肉体を変えていたから
なんて事を言っていたので、魂の邂逅という感じになりました。

感想などありましたら、掲示板に書いてくださると
とても、うれしいです。
機会がありましたら、また別の作品で・・・


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