Fate/stay nigth 月と運命と・・・ (M:志貴 士郎 傾:クロスオーバー)


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1: 鬼神 (2004/04/17 18:18:20)[cna-1267 at red.sansan-net.jp]

「黙りなさい!! このアーパー吸血鬼!!」

「うるさいにゃ!! デカ尻エル!!」

目の前で叫びあう白の姫君と第七司祭を見ながら、遠野志貴は深くため息を吐いた。

何しろ目の前で展開されている光景は、少なくとも志貴にとっては【日常】の1つであり、同時に騒々しいながらも微笑ましい光景だと言えたからだ。

しかしながら、こう毎日同じ展開が繰り返されれば、それはそれで大変なのである。

それが、志貴にとっては少しだけため息を吐く原因だった。

「ん? もうこんな時間か」

すでに時間は8時を越えている。

そろそろ大学へ行かなければならない時間だ。

「アルクェイドに先輩、俺はそろそろ大学に行くんだけど」

「じゃ一緒に行こ志貴♪」

「黙りなさい! 遠野君は私と一緒に行くんです!」

「なんですって!!」

「なんですか!!」

そう言って結局、またにらみ合う2人。

そんな2人を見て、志貴はため息を吐いた。

そもそも、2人とも大学の関係者ではないのだから、大学に行けるわけないではないか。
もちろん、一般常識として考えた場合限定の話だが。

「お〜い、マジで俺、大学に行かなきゃならないんだけど・・・」

さり気なく言ってみる志貴だが、もちろん聞く耳を持たない2人。

そんな2人を見て、志貴はこみかめを抑えた。
マジで頭が痛くなってきたようだ。

「まだなのですか? 兄さん」

そう言って出てきたのは、現遠野家当主である志貴の義理の妹である遠野秋葉だ。

「・・・・・秋葉・・・どうして、髪が紅いんだ?」

「言わなければなりませんか? 兄さん」

「いえ、結構です」

大きな汗を掻きながら、なんとか断る志貴。
なぜだか、さらに頭が痛くなってきた。

「あは〜、大変ですねぇ〜」

「志貴様、そろそろ大学へ行かないと遅刻してしまいます」

今度は双子のメイドである琥珀と翡翠で出てきた。

全ての装飾を取り外したら、瓜二つの双子だ。
おそらく一卵性双生児なのだろう。

「行きたいのは山々なんだけどね」

そう言って志貴は三つ巴となって争うアルクェイドとシエルと秋葉に視線を向けた。

視線を向けた後、またため息をつく。

「なんで、こんなことになるんだろうね」

「志貴様が鬼畜なせいだと思います」

グサッ!! 

痛恨の一撃。

「あはぁ〜、志貴さん鬼畜ですねぇ〜」

グサッ!!

痛恨の二撃目。

「痛いです、琥珀さん、翡翠さん・・・」

特に胸の部分が、と言う志貴。

なぜだが、胸の大きな古傷が痛み出したような気がしたが気のせいだろう。

うん、気のせいだ。

「志貴!!」

「遠野君!!」

「兄さん!!」

で、このあとの展開は、

「「「私と一緒に大学へ行くよね!?((ですよね!?))」」」

そう同時に言い、またしても皆が同時に睨む。

まぁ、秋葉は不思議ではない。
同じ大学に通っているのだから。

だが、アルクェイドとシエルは幾分か無茶がある。

そりゃ、アルクェイドの魅力の魔眼や、シエルの催眠術を使えば通えない事はない。

だが、志貴としては勘弁して欲しいのである。
何しろ、大学は静かに暮らせる数少ない場所なのだから。

「俺としては・・・」

そう言った瞬間、キッと3人が志貴を睨んだ。

その剣幕に、恐怖を抱きながら1歩、2歩と後退してしまう志貴。

そりゃまぁ、血走った目で「今から貴方を食います」みたいな視線なら、そりゃ恐怖を抱いても仕方がないだろう。

「お、俺としては、早く大学に行かないといけないと思うんだけど・・・・」

すでに時間は8時を当に過ぎている。

このままでは1限目に遅れてしまうかもしれない。

そのため、こんな馬鹿げた争いは早々に終わらしてもらいたいのである。

「ねぇ志貴ぃ〜、当然私と・・・・」

突然、アルクェイドの表情が変わった。

それは彼女が戦う時に見せる真剣な表情。

それと同じように、シエルもまた真剣な表情になっている。

「どうしんだ、2人とも」

「志貴、この気配、死徒よ」

「死徒!? こんな朝っぱらから!?」

「そうですね。でも、この気配は間違いありません」

そう言ってシエルは愛用の眼鏡を外し、黒鍵を取り出す。

黒鍵の刃には強力な『聖別刻印儀礼』が施されている。

「来るわ!!」

アルクェイドが叫んだとき、風が吹き荒れた。

同時にそこに現れたのは、

「や! 久しぶりじゃな」

爺だった。

だが、それを見た瞬間、志貴の中にある【退魔衝動】が叫び声を上げた。

―生カスナ―今スグ殺セ―息ヲサセルナ―一瞬デ陵辱シ、抹殺シロ―

―ソシテ殺セ―殺セ―殺セ―殺セ―殺セ―殺セ―殺セ―殺セ―殺セ―

―コロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ―

「あぐっ・・・」

志貴はその【退魔衝動】を奥底へ封じ込めた。

こんな所で【退魔衝動】を解放しようものなら、目の前にいる老人は愚かアルクェイドや秋葉まで殺そうとしてしまうだろう。

それをすることは、実質的に自分自身を殺す事に等しいのだから。

「あ! 爺や!」

アルクェイドがその姿を確認して叫ぶ。

「何をしに来たのですか? キシュア=ゼルレッチ=シュバインオーグ」

現存する死徒27祖第4位の魔法使いにしてアルクェイドの執事。

第5位のORTを抜けば、実質死徒27祖で最強の強さを誇る。

当然死徒なので、埋葬機関に所属するシエルが目の仇にするのは当然と言えた。

「そう敵意を剥き出しにするでない、第七司祭よ。何も争うために着たのではないのだから」

「信用できません」

「ふむ、まぁよいじゃろうに。それより、儂はそっちの小僧に用があるのじゃ」

そう言ってゼルレッチが志貴に視線を移す。

「なによ、爺やでも志貴を奪うんなら容赦はしないわよ」

そう言った瞬間、アルクェイドの紅の瞳が一瞬で金色に変化する。

その瞬間、空気は振動し『世界』は畏怖した。

絶対なる超越者に。

「姫様、何も取って喰おうと言うわけではありませぬ」

すでに秋葉や琥珀、翡翠は真っ青になっているのに、ゼルレッチは平然としている。

ちなみに、一度この気配を当てられた事が在る志貴は耐性あり。

シエルは仕事柄、何度も在るので同様に耐性があり。

「あ、そうなんだぁ〜。じゃいいや」

そう言ってのほほんとなるアルクェイド。

今の彼女を見て、誰がかつて冷徹な殺戮人形だったと信じられようか。

「うむ、では用件を言うぞ。小僧よ、実はお主に頼みたい事が在るのじゃ」

「俺に頼みたい事ですか? 言っておきますけど、俺には何の取り得もない唯の人間ですよ」

それを聞き、しばし呆然としたあとゼルレッチが盛大に笑った。

ちなみに、アルクェイドとシエルは呆れた視線で志貴を見ている。

なんとなく、居心地が悪い感じがする志貴。

「それで、俺に何のようですか?」

「おっとすまんな。お主があまりにも面白い事を言うので」

そう言ってゼルレッチは真面目な顔をして志貴を見据えた。

「お主は『冬木市』と言う場所を知っておるか?」

「『冬木市』・・・ですか?」

「そうじゃ」

その言葉が、全ての始まりだった。











あとがき

すいません。

前に書いていた「救世主の邂逅」は管理人様に叩かれたので・・・・

こっちは、まぁ、完結させるつもりで書きます。

本当にすいません。

ご迷惑をおかけします。


2: 鬼神 (2004/04/17 23:34:25)[cna-1267 at red.sansan-net.jp]

衛宮士郎は魔術師である。

しかし、魔術師としての覚悟を持ち合わせていないが故に、士郎はどちらかと言うと魔術使いに部類する。

「はぁ」

ため息が漏れた。

今も残る、あの時の、あの言葉。

―シロウ、貴方を愛している―

もう会うことも出来ない、しかし会いたい人の言葉。

「大丈夫」

士郎は自分に言い聞かせる。

そう大丈夫だ。

未練はある。

でも後悔はしていない。

だって、あれは間違いなく、あの時には最良の選択だったのだから。

結果として、彼女と別れることになったのだが、それもまら1つの結末だったのだろう。

だから、士郎は未練は残しても、決して後悔はしないのだ。

「しっろー!!!」

なにやら虎の叫び声が聞こえる。

おそらく餓えてしまったのだろう。

「やれやれ」

苦笑いをしながら、士郎は台所にへと向かった。

なぜか、一抹の不安が彼の心の中に残っていたが。







◆◆◆








遠坂凛は正真正銘の魔術師である。

それもかなりの才能に恵まれた。

「まったく」

自分の家で髪の毛を整えながら、凛はため息を吐く。

「にしても」

気になるのは、

「どうして今日に限って寝坊なんて」

遠坂家の遺伝。

それは『ここ一番でミスを犯す』である。

しかしながら、別に今はここ一番ではなかった。

だと言うのに、自分はミス。

「どういうことよ」

はぁ、とため息を吐きながら凛がため息を吐いた時、鏡に何か黒い影が映った。

「!!?」

慌てて後ろを振り向くものの、そこには何もいなかった。

「・・・いったい・・・なんなのよ」

忌々しげに爪を噛み、凛は呟く。

しばらく辺りをじっくり調べてみたが、やはり何も無い。
何の変哲もない、いつもの部屋。

「どういうこと?」

再び鏡を覗く。

そこには、自分と部屋以外ヘンな所はない。

「・・・それにしても、あの影・・・どこかで見たような気がするわね」

それは考えるような仕草。

それが、決定的な見落としで在ることに、彼女はまだ気付いていない。








◆◆◆









体が犯される。

侵される。

冒される

おかされる。

オカサレル。

それを彼女は嫌う。

体が、心が黒く、真っ黒に染まっていく。

体を這う、禍々しく気味の悪い蟲。

それらは体中に責め、同時に心を壊していく。

だが壊れない。

心は決して壊れない。

壊れたのなら、それは何と楽なことか。

だが、少女は壊れない。

壊れる事は許されない。

なぜならそれが、蟲の体を持つ老人の望みなのだから。

それは、何と浅ましい望みか。

少女は1人、悲しむ。

彼女の想い人が、自分を助けてくれる『正義の味方』であることを願う。

だが、願いは今だに叶わず。

少女は心を黒く染められていく。

悪い魔法使いの老人によって。

染められていく。

ただ染められていく。

ただ黒く。

ただ真っ黒に。






あとがき。

う〜ん、どの辺りで志貴たちを出そうか迷っております。

まぁ、近々出るでしょう!! 

では


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