たぶん平和な冬木市の親子の事情(傾:ギャグ)


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1: takya (2004/04/16 06:48:25)[takya27 at yahoo.co.jp]

前回までのあらすじ
・この度開催を予定しておりました第五回聖杯戦争ですが、諸般の事情により開催日が延期されることになりました。なお現在、開催日は未定です。開催を楽しみにしていたマスター及びサーヴァントの皆様には深くお詫び申し上げます。開催日が確定次第すぐにご案内いたしますので、どうかいましばらくお待ちください。
・冬木市は今日も平和です。



 昼下がりの冬木市の町中を、足音一つ立てずに歩む影があった。
 全身を包む黒衣。顔に付けた髑髏の仮面。
 人に見られたら通報間違いなしの格好で歩く影。
 しかし、すれ違う人々は何も言わない。何故なら彼には気配がないのだ。
 視界に入れてなお強く意識しなければ認識できない程の隠形。まさに究極の域。誰も彼を気に留めない。

「あら。ハサンさんじゃないの。どうしたのよこんな所で」
「む。これは後藤殿。私ですか? これより少々頼まれ事を果たしにいく所です」
「へえ。臓硯さんは?」
「主殿は家に。今日は日差しが強いですから」

 ……
 ……誰も彼を気に留めない。何故ならそれが日常。

 彼は真アサシンのハサン君。何も知らない一般人には怖くて見なかったことにされるけど、近所の奥様方にはわりと気に入られている実直で礼儀正しいサーヴァントでしたとさ。




    たぶん平和な冬木市の親子の事情




「ふむ?」

 目的地が見えてきた所で、ハサンはふと足を止めた。視線の先。何やら尋常でない気配の持ち主がいる。

「……セイバー?」

 思わず声に出た。ばっ! という勢いで振り向く騎士のサーヴァント、セイバー。

「む。……中の人?」
「その呼び方やめい」
「ハサンか。貴方こそどうしました。よりにもよって柳洞寺で」

 そう、ここは柳洞寺。修行僧たちの暮らす、山のお寺の門前である。ついでにキャスターさんとかも住んでます。
 ここをハサンが訪ねる事はまずない。何故なら。

「今日は何故かアサシンが見当たらないようですが、早く立ち去ったほうがいいと思いますが」

 アサシン。真の名は佐々木小次郎(仮)。かっことじる、までが名前。
 それは、ここの山門を守るために(主に美人の女性が寺に入らないように)キャスターが召還したイケメンのサーヴァントである。
 そして何を隠そうハサン君は、彼が腹を痛めて生んだ息子であった。性別とかは気にするな。
 だが、親子仲はすこぶる悪い。ハサンをジュニア呼ばわりしたキャスターにアサシンが反逆を起こしかけるくらい悪い。
 ちなみにセイバーはアサシンの中の人、外の人、という区別が妙に気に入っていた。発案が言峰さんちのギルガメッシュというのは気に食わないが。
 皆は普通にハサンと呼ぶ。
 いちいち真名で呼ぶのはサーヴァントとしてよろしくないのでは、真アサシンでいいじゃん。という意見も出たのだが、こっちの方が言い易い、という民主主義的決定と、何よりそういう呼び方をするとアサシン(佐々木小次郎カッコ仮)が無言で刀をちらつかせるので、文句は言えなかった。

 ちなみにハサンが初見でアサシンに「母者」と呼びかけたところ、斬り殺されかけた。
 呼び方が悪いという皆の意見に従い、勉強する事にした。そもそも生まれたばかりで碌な教養も身についておらず、アサシンに教科書なんてなかったので、忍者のバイブルで勉強した。忍者バッサリ君コミック版。
 そして、知識を身につけ、万感の想いを込めてアサシンを呼んだ。

「ママ上殿」
 燕返しは死ぬかと思った。

 そんなこんなで、親子の対立関係はもはや修復不能。顔を合わすのも厭う仲なのだ。
 セイバーの懸念ももっともである。
 だが、問われたハサンはふ、と唇を歪めた。髑髏の仮面だからわからないが。

「ふん。アサシンの奴は今頃森の奥で悲鳴を上げてる頃だろうよ」
「?」

 訝しげなセイバー。クク、と笑うハサン。髑髏の仮面ですが。

「……つい先日な、心優しき魔術師殿がここより動けぬ哀れなアサシンめに贈り物をくれてやったのよ」
「はあ……?」

 魔術師殿、とは、間桐さんちの臓硯じいさんである。彼は齢五百を数える大年寄りというかもうミイラの域に達している年寄りじいさんで、聖杯を手に入れるために己の体を不死にして生き続けている魔術師である。ただし防腐処理を忘れたのでお肌は曲がり角どころではない。ぶっちゃけ腐ってる。
 そんな臓硯じいさんであるが、念願としていた聖杯戦争延期の報に、まるで楽しみにしていた遠足を中止にされた子供の如くショックを受け、老人ボケが随分進んでしまったのだ。
 そして、ひょんな事からハサン君と出逢いマスターとなり、彼の介護を受けてなんとか平和に暮らしている。
 孫との仲は悪い。放っておくと孫にプレゼントをやるおじいちゃんの如く周りの者に見境なしに持ち物をくれてしまうので、あまり高価なものは持たせられないのだ。
 アサシンへのプレゼントもそのクチだろう。

「それがいわゆるゲームという奴でな。アサシンの奴すっかりハマってしまったらしい」
「……」
「何でも侍魂に目覚めたとかでな、真の燕返しを会得するとかなんとかで山篭りを始めよって」
「……真の燕返し?」

 馬鹿らしくなって話半分に聞いていたセイバーも流石に反応した。燕返し。多重次元屈折現象などというただでさえデタラメな技に、更に上が?

「なんでも空中より剣先から火の鳥を飛ばすとか」
「……」

 火の鳥。何故に? カイザーフェニックスの親戚だろうか。セイバーは悩んだ。

「……というか、空中? 滞空していないといけないのですか? 不便なのでは?」 
「うむ。……まあ私が言うのもなんだが燕返しとまるで関係ない気がするがな。ともあれ、その技を身に付けると意気込んで山に篭ったアサシンの奴、山を燃やしよった」
「は?」
「燃やしたのだよ。会得したのか単なる失態か、山の一角を焼き払ったのだ」

 柳洞寺も大騒ぎの山火事は、なんとかキャスターが消し止めたらしい。一つの事に集中する余り周りが見えなくなるのはアサシンの悪い癖だった。
 そしてアサシンは、罰として燃えた一角の植林作業を与えられたのだった。
 事実を聞かされ頭を抱えるセイバー。愉快そうにククと笑うハサン。微妙な空気の二人の間を、にゃー、と猫が通り過ぎていった。

「――まあ、アサシンがいない訳はわかりました。が、貴方は何故ここに?」
「私か? キャスターの講師として招かれておる。まあ暫く前からここに通ってはいたのだよ。あの男に逢うのは好かんがな」
「は?」
「ふむ……お前は、Tの惨劇を知っているか?」
 
 はて、と首を傾げるセイバーだが、すぐに思い当たった。三ヶ月ほど前にシロウ達が話していましたね。
 Tの惨劇。調理実習で作られたご飯とみそ汁を、女生徒の一人が教師である葛木宗一郎先生にあげたのが悲劇の始まり。他意はなかったのかもしれないが、何処からかそれを知った彼のサーヴァントであるキャスターが私もみそ汁くらい、と奮起。柳洞寺の厨房を爆砕させた事件の事である。流石アサシンの召還者、熱くなると周りが見えない。
 ちなみに何故そんな事件をセイバーが良く憶えてるかというと、人事でなかったからだ。前にギルガメッシュに執拗に言い寄られ、仕方なく料理をしてキッチンを殲滅させ、なんとか出来た料理で屍の山を築くというダブルコンボをかましたのは割と記憶に新しい。
 
「あの痛ましい事件がどうかしたのですか?」
「うむ。その一件で料理に興味を持ったキャスターをどうすればいいかと葛木殿と柳洞殿が相談していた所を聞いていた衛宮殿が自ら料理の講師を申し出ようとした所を聞き付けた桜殿が何故か慌てて止めて出した提案により私に御鉢が回ってきた。という事だ」

 凄い。世界は繋がっている。セイバーは感嘆した。ついでに一息に全部言うと解り難いですよハサンと突っ込んだ。ハサンはまだ日本語が少々不自由なのだ。
 ちなみに柳洞殿とは、ここの寺の一人息子。衛宮殿はその友人でありセイバーのマスター。ついでに桜は臓硯じいさんの孫である。戸籍上は。
 ともかく。ハサンの得意分野は専ら精進料理の類いなのだが、葛木には合うだろうと言う事で決定。今日も今日とて、キャスターに料理指導する為にここに来たのだ。

「まあ、キャスターも最近は随分腕を上げてきたし、意気込みはあるからな。教えるのは吝かでないし、何より桜殿には逆らえんしな」
「……そう、だったのですか。大変ですね」
「いやいや」

 今、間桐家の財布の紐を握っているのは長女である間桐桜だった。それには、いかにサーヴァントたるハサンだろうと従うしかないのだ。
 下手に逆らうと魔術師殿の小遣いか三ケタにまで減らされかねん。
 そんな事になれば魔術師殿はおしまいである。好物のおはぎさえ食べられなくなる。

「――といけないいけない。すっかり話し込んでしまいした」

 はっと我に返るセイバー。料理の話題が出た所為で空腹を思い出したのは伏せつつ、再び周囲に気を配る。

「そう言えば、セイバーは一体何をしているのだ?」
「――猫を……探しているのです」
「猫?」
「ええ。油断のならない、狡猾な。必ず捕まえて報いを与えねば」
「はあ……」

 よくわからなかったが、セイバーの思いつめた表情を前にハサンは頷いた。
 ……あれ、猫?
 
「そう言えば、先ほど話をしている最中、我等の間を黒猫が向こうへ歩いて行ったが、それは違うのか?」

「――早く言いなさい、中の人っ!」
「無茶言うな。あと中の人言うな」

 律儀なセイバーは駆け出そうとしている足を止めた。
 
「……それでは、さようなら、破産」
「微妙に納得いかんのだが……」

 私は質素な暮らしを好むだけで、別に貧乏ではないのだが、と言いたげなハサンをきっぱりと無視して、セイバーは駆け出した。



 それを見送って。
 ハサンはゆっくりと山門に至る石段を登り始めた。
 
「セイバーの奴め。随分と落ち着きがなかったな」 

 まさかマスターからの食糧供給でも断たれたのだろうか。
(違うか)
 もしそんな事になれば、冬木市全土にセイバー警報が発令してる筈である。

「マスター、か」

 間桐桜のサーヴァントであるライダーに昼食の用意を頼んだから大丈夫だとは思うが、家で大人しくしているだろうか。
 ハサンは、マスターである臓硯の事を思った。
 浮かぶのはあの出逢いの日。


 そもそもの事の起こりはハサン生誕より一月ほど経ったころ。
 アサシンと些細なことで喧嘩した。元々良好な親子仲などではなかったが。
 朝はニュース番組、を主張するハサンと、普通に連続テレビ小説を見ようとするアサシンの十五分を巡る熾烈な争いは、ハサンの家出というカタチで決着した。
 その後。
 一人で生きていく決心をしたハサンは、自らの性質と技能を理解したうえで、執事の仕事を選んだ。が、容姿で門前払い。仕方なく、ボディガードに転向。
 が、雇い主すら気配に気付かないという欠点のせいで失業ばかり。浮気現場まで着いていったのが悪かったのか。この平和な冬木市に、自分の居場所などなかった。私には人権など無いと言うのか。
 失意に落ちるハサン。
 そんな時、ギルガメッシュにカツ丼を奢ってもらった。

「我も立場的には貴様と同じ員数外だからな。それに、戦争が始まるまでは勝手に消えられてもつまらぬ」
「……すまない、ギルガメッシュ」
「ふん」

 人情が身に沁みた。生きなければ、と強く思った。
 そしてついに、禁じ手である宝具を使う決心をした。

 その名も妄想心音<ザバーニーヤ>

 相手の心音を頼りに、胸ポケットに入っているものを手で触れずに遠距離から奪う裏技宝具である。金目のものが入ってなければ意味ないのが玉に瑕。
 痛む良心を押し殺し、この身はもはや外道よとばかりに獲物を狙い、なんとか食い繋いでいた。
 そんなある日、たまたま狙った間桐臓硯爺さん。
 あっけないほど楽だった。そもそも普通に近付いて財布を奪っても気付かないんじゃないかというくらい、お爺ちゃんは隙だらけでにへらにへら歩いていた。
 そして行動。財布がスれたとき、思わずガッツポーズした。胸ポケットに財布を入れている御仁はとても少ないのだ。だが。

 ――総額、81円。

 二ケタかよ! ハサンは驚愕した。
 ありえない。何なんだこの財布は。しかも他はテレカと商店街のスタンプカードによれよれの図書券二枚。キャッシュカードもない。バカな。
 盗人に堕ちても質素な暮らしを心がけ、小銭だけ抜き取ったら財布を返し、必要以上の金銭を持とうとしないハサンでさえ慄いた。
 流石にこれは全部返そう、とスリらしからぬ良心を発露させたハサンは、気配を消して老人の後を追い――そして再び驚愕した。

「いやあ、爺さん。お金ないんでしょ? だーめだって」
「いんや、金なら持って来ておるぞ。朝確かめたんじゃ。間違いない」 
「でも今ないんだろう? ほら爺さん、一旦帰ってもう一度確認してきな」
「しかしなあ。うーむ」

 おはぎ買おうとしてる!
 ハサンはその光景を前に立ち竦んだ。
 イライラしている店員と、おかしいのう、とか言いながら財布を捜す老人。
 足りないのに。財布あっても足りないのに!
 
 そして。
 気付くと、ハサンは自ら二人の前に歩み寄っていた。
「ご老人。……御代は、私に払わせて下さい」

 それが、出逢い。

 今でも運命であったと思っている。スリで生まれる運命と言うのも随分とアレだが。
 招かれた間桐邸にて、世話をするのも億劫なボケ老人の扱いを受けていた臓硯を見るに見兼ねて彼のサーヴァントとなった。ついでに間桐家の使用人として雇われることになり、三食寝床付の職場も手にいれた。

 仕事は大変だ。何せ意味もなく広い家である。同じサーヴァントであるライダーは無愛想だし、我侭息子の慎二は論外。唯一家事スキルを保有する桜は、想い人の家の家事手伝いに夢中である。
 だけど、愚痴ばかり言ってはいられない。臓硯の為にも、今日の仕事を頑張らなくては。
 ハサンは歩く。

 ――魔術師殿は、この私の主に相応しい。よかろう。人として扱われなかったモノ同士、共に頑張って生きてゆこうではないか――

 そんな、ささやかな誓いを胸に石段を登る。
 

 途中。
 近く、何かが崩れ落ちる音が響いた。
「――む?」
 足を止め、耳を澄ます。音は止まらない。折り重なるように、続く。
 それが誰によって生まれる音か、ハサンはすぐに察した。 
 このまま素通りして柳洞寺に向かう。それが賢い選択。
 ――だが。
 ハサンは、ちょっとした好奇心から、気配を消してその音のする方へと向かった。
 
 木々の間を抜けたところに、その光景はあった。

 刀が木々を断ち斬る。
 
 あまりの長さ故に持つのも苦心するように見える刀は、しかし何の不都合もないとばかりに振るわれる。
 流れるような斬撃。焼け跡に残る木炭を斬り飛ばし、その勢いのまま隣の黒ずんた樹を斬り倒す。舞のように優雅に淀みなく、けれど何よりも力強い疾風。まさに剣舞。

 ハサンは、それを呆と眺めていた。
 見とれていたわけではない。彼とてサーヴァント。己の技能に誇りを持っている。
 セイバーの力、ランサーの速さ、そのどれが一番強いというものではない。どれも最強たりうる技能。故にサーヴァント。
 自分はちょっと真正面からの戦闘が不得意なだけなのだから。悔しくないったらない。

 ともかく、アサシンが目を離せずにいる理由は、ただ一つだった。
(アサシンが……真面目に働いている)

 ただの罰則で、本来の労働とは違うのかもしれない。しかし、あのアサシンが、山門から離れられないのをいいことにナンパに明け暮れ、人の事を黒子呼ばわりしたあのアサシンが額に薄っすらと汗さえ浮かべているというのはかなりの衝撃だった。
 言うなれば、普段ぐうたらな父親が、父兄参観にビシっとしたスーツ姿でキメてきたのを見た子供の心境である。

 おとーさん、やれば出来るんだ、みたいな。


 一方アサシンは、鋭い斬撃を幾度も繰り返しながら、ぶつぶつと呟いていた。

「全く――女狐め。よりにもよってNE○GE○を壊そうとするなどと。アレにどれ程の価値があるかもわからぬくせに。つくづく感情に流されやすい女というものは御し難い」

 ただの愚痴だった。
 作業が終わるまでゲームを封印されたことが余程腹に据えかねているらしい。

 やがて辺りの木々を殆ど切り倒した後、アサシンは動きを止め、一際大きな大木の前に立った。
 懐からリンゴを取り出す。何故?
 疑問に思う間もなく、アサシンはそれを前方に放った。
 放物線を描き、大木にぶつかるリンゴ。その、直前か直後かの刹那。

「――ふっ!」

 斬斬斬斬斬。
 目にも留まらぬ斬撃が、リンゴごと背後の大木を粉微塵に吹き飛ばした。
 後に残るのは、構えを解いたアサシンただ一人。
 アサシンは、満足そうに一つ頷くと、ゆっくりと――項垂れた。

「しまった。私の昼食が」

 がくりと膝をつくアサシン。
 食べ物として支給されたのはあれだけだったのに。ついうっかり斬ってしまった。
 作業はまだ終わらない。今日中に焼けた木々の撤去はどうにかなりそうだが、その後には整地、植林をせねばならない。 
 陽が暮れるまで作業は続けろという命令を受けているので、補給は望めそうもない。

「腹が……減ったな」

 呟き、作業を再開するアサシン。その背中は、どことなく落ち込んでいるように見えた。
 

 そんなアサシンを視界から外し、ハサンはくるりと振り返った。
 歩き出す。足早に、けれど気配もなく。
(――あの、アホゥ、め)
 ハサンはもはや振り返らない。気分が悪い、台無しだ、と思った。 
 まるで折角格好よくキメてきた父親が、寝癖爆発だったかのような心境だった。
 ふいに目の奥が熱くなる。

「あれ……私は……泣いているのか?」

 涙がこぼれる。無性に情けなくて悔しかった。なんだか知らないけど虚しかった。

「……ええい。何を泣いている。この様では、料理の講師ができんではないか」

 ハサンは、伝う涙をぐい、と拭って歩き出した。
 まだ日は高い。枕を濡らすのは後でもいいじゃないか。
 さあ、寺に行こう。キャスターに見つかるよりも先に、顔を洗わなければ。

 ハサンは足早に、その場を後にした。 


 アサシンとハサン。親子の溝が埋まる日は、遠い――


END


後書き

 燕返しといえば侍魂、というのは自分の絶対認識なんですよね。それしか知らなかった。コジローはムサシ□ード。あれ?
 それにしても今回は微妙。まあいつもそう思うんですが、特に。ギャグなのかこれという気がすごく。
 弾けるようなギャグというのも一度は書いてみたいものです。


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