Sword Strike 1


メッセージ一覧

1: NAO (2004/04/13 21:50:01)[isis.ocn.ne.jp]



監視者1





「さて、どうしたものかな」

「なによ、爺さんたら珍しく悩んじゃって」

目の前の老人が珍しく物思いに耽っている

まぁ、殆ど会っていなかったのだから当然と言えば当然だけど

「いや、そろそろ”あの男”にも変化が現れてくる頃だと思ってな」

なるほど、それが私を呼んだ理由だったと。そう言うわけか



「で、変化ってなんなの?」

「それは、最後に話す。後でのお楽しみという事でな」

ニヤリと笑うその様は少年のような無邪気さが会った

トントンとドアが叩かれる

「ああ、もう一人も来た様ね」

「うむ、これで本題に入れるな」


それでは、私はお茶を入れなおすことにしよう






遠野 1


「志貴様、お目覚めですか?」

目を覚ますと翡翠が声をかけてきた

「ああ、おはよう翡翠」

眼鏡をかけて、大きく背伸びをする

それにしても、久しぶりに良く眠れた



季節は冬、後数日もすれば新年を祝う事になる

つまり、今は冬休みでヌクヌクとしていられるって訳だ



誰かの小言も

誰かと誰かの乱闘も

誰かさんの陰謀も

昨日に限って言えばまったく無かった

俺としては、普段からこうしてくれると凄く嬉しかったりするんだが・・・・・・



「それじゃ、着替えて行くから先に居間に行っていてくれ」

「わかりました。それでは失礼します」

翡翠はお辞儀をして、部屋を立ち去る



「それにしても、今日は雨が降らなきゃ良いけどな。」

いや、振るとしたら槍かな

だって、こんなに平和な朝が迎えられた事なんて無かったんだから


「おはよう」

「「おはようございます」」

顔を洗って、秋葉たちのいる居間に入る

「志貴さん、今紅茶を入れますね」

琥珀さんがカップに紅茶を注ぐ

「ああ、ありがとう」

その間に俺はソファーに座る

「秋葉、今年は何処に行くのか決まったのか?」

そう、俺が戻ってきてからは年末から年始にかけて旅行に行くのが定番となっていた

その例年の出発日は今日。十二月二十六日

アルクェイドが一人ぼっちで誕生日を迎えないように、と言う事で渋々秋葉たちには譲歩してもらってる

そんなわけで、未定のままだった旅行の行き先が決まっているはずなので聞いてみた


「当然です、昨日シオンとも話をしましたが冬木町で年越しして、その後は日光辺りで温泉に浸かる予定です」

確かに、年末年始の温泉は悪くない



「ところで、何で冬木町なんてところに行かなくちゃならないんだ?」

秋葉は少し考えた後、渋々と口を開く

「その、紗那さんが年末を一緒に過ごしたいと言う連絡がありましたから。」

なんだ、そう言うことか


去年の夏に紗那さん達のところに言ってからは、秋葉の奴はチョクチョク連絡を取っていた

ああ、因みに翡翠も誠さんと手紙でやり取りしてるとか聞いたな

「べつにそれなら良いけど」

「私としては、シオンはともかく他のイラナイ人たちは連れて行きたくなかったのですが」

なんて、毒舌振りを発揮してる

まぁ、毎年連れて行かないと言っても着いてくるような人たちだからなぁ

「そんなわけで、午後には出発しますから何処かに行方不明にならないでくださいね」

ジトーっと俺の方をみて、秋葉が小言を一つ付け加えた



伽藍の洞1


「おはようございます」

式と二人で事務所のドアを開けて、中に入る



「おはようございます、兄さん」

「二人揃って一緒とは、昨日辺り式はそっちに泊まったのか?」

鮮花、いきなり刺すような目線で俺を見ないでくれ



「べつに、泊まったけど何かあるのか?」

式も式で気にした様子も無く堂々と答える

「ほら黒桐、お前もそんな態度だからからかわれるんだぞ」

トンとわき腹に肘が軽く当てられる



「ところで、ですね。全員をこんな時間に集合させるなんて何かあったんですか?」

それとなく話題を変える

「ああ、昨日の夜遅くに”マチルダ”から連絡があってな」

マチルダ・・橙子さんがよく使ってる情報屋の名前だったな



「なんでも、冬木の町を独自に調査して欲しいって事だ」

そういえば、冬辺りに騒ぎがあったはずだ

表ざたにはならなかったけど、生憎こっちは封印指定の魔術師のいる完全にあっち側の世界だし

そういった情報は結構入ってくる



「で、何を調査するんですか?」

「・・・・・・・とりあえず、その土地を根城にしてる魔術師。

それとその土地にある”寺”の調査だ」



・・・・・・寺?

なんか、そういった事に詳しそうな人がいたような気がする

そうそう、何でも退魔師の首領だとか何とか言ってた人だ

調査なんかよりもその人に聞いた方が早いんじゃないだろうか


「黒桐」

「はい」

「悪いが、お前の頭に浮かんでる奴は今回邪魔者だ」

・・・・・・

「つまり、あちらが動き出す前に此方で調査しなければならん」

んー、あんまりそう言う事をしたくないんだけど・・・まぁ、橙子さんは良い始めたら撤回しないし



「わかりました、出来るだけ穏便に進めます」

とりあえず、僕と式だけで十分だと思うし

「進めます、じゃない。進めましょう、だろ」

それは、つまり橙子さんも一緒に来ると。

ついでに鮮花も来るのは間違いないだろうな



「わかりました、とにかく騒動を起さないでくださいね」

無駄だと思うけど、念のために釘を刺して置く事にした

「それじゃ、着替えとかを用意してこようぜ。集合は十時辺りで良いよな?」

橙子さんが頷く



「それじゃ、行くぞ」

式は俺の腕を引いて外に行こうとする


「まって。私も一緒に行きます!」

当然、鮮花も一緒に行く事になった







衛宮 1


「すまんな、せっかくの休みだと言うのに着き合わせてしまって」

隣を歩く一成がボソリと口を開く



「良いよ、今日は大事なお客さんが来るんだろ?」

そのための大荷物だ

急な話だったため一成が買出しを頼まれたが物を運ぶ手が足りずに俺に連絡してきた

「うむ、まぁ、どちらかと言えば親父殿の客なのだがな」

つまらなそうに答えてくる


「で、どんな人なんだ?」

ムッと珍しく一成の眉に皺がよる

あまり答えたくなさそうな感じがする



「いや、無理には聞こうと思わないけど・・・・」

「ああ、気にするな。そうだな聡明で、雅で、それでいて立場を考えた言動をする方だ

男子たるもの、あのような方を娶れたならば本懐を遂げたと言っても良いかもしれん」

顔を赤くして、一成が話す


あー、つまり、一成の理想の女性と。そう言うわけか。

「へぇ、珍しいな。一成がそんな事を言うなんて。

セイバー以来じゃないか?」



・・・・・・

何気なく言葉に出てしまった

もう、アレから一年は経っている

遠坂や桜からは・・・・その・・・・付き合わないか?と、そういわれた事もあるけど

俺はまだ、その言葉に頷く事が出来なかった

消えてしまった彼女、その彼女をまだ思い出には出来そうに無い。

明日にでもなればひょっこりと現れそうな、そんな気がしてる



「衛宮。そう悲観する事も無いぞ」

物思いに耽る俺に一成が話しかけてくる

「なんで?」

「セイバーさん、彼女は元の国に帰って居場所さえわからんと言っていたが・・・」

それは、怪しまれないように遠坂が教えてくれた言訳。

本当は、もういない



「今日、暇があれば聞いてみよう」

「聞いてみるって何を?」

ウム、と胸を張る一成

「うちに来るお客なのだが、占い・・・と言うよりも予言が出来る」

別に、お前がするんじゃないんだからそんなに威張られても困る

「彼女の居場所、もしくは再会する方法がわかり次第連絡しよう」

そんな、占いとか予言みたいな曖昧なものに縋るのは・・・・・・

でも。もしもそれが本当となるなら・・・・・




「わかった。ありがとう一成」

「いや、俺と衛宮の仲だ気にするな

さしあたっては、目の前の困難を気にしてくれ」

一成が目を向けると、とてつもなく長い石段が・・・・・

確かに、この荷物を持ってこの石段を登るのはとてつもない困難だ・・・・・・





















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