俺の名前は衛宮士郎。冬木の町に住む探偵だ。
………嘘。本当は魔術師見習い。むしろこっちのほうがどうかとおもうが、まぁ事実だししょうがない。
聖杯戦争という戦いをしていたんだが、ちょっぴり前に負けちまった。相手はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。聖杯戦争の勝者にして聖杯そのもの。とても可愛らしい幼女だ。
だが、可愛いだけではなかったのだ、彼女は。実は18歳以上という曖昧かつ凄まじく疑わしい年齢で、しかも、俺を捕まえたあげくに、俺が欲しいとか言ってきた。
俺は時間稼ぎのためにその誘いに乗った。………決して俺は妙な期待をしていたわけではないぞ、信じれ。
ところで、だ。俺は今動けない。なぜかというとだな……………いや、言いたくない。こんなのは信じたくない。
でも、言わないと話が進まんので言うことにする。
現在―――俺の体は、かの電気ねずみのぬいぐるみで出来ていたのだー!!
イリヤ様のお人形
第一話 世界的電気ねずみ
ところでだな、諸君も気になってるとは思うが、聖杯にはアンリマユとかあったり、そもそもイリヤが聖杯じゃあ命が………とかいう話は問題ない。
何せこの話はパロディだからだー!!
え? 何で俺がこんなにはっちゃけてるかって? ………そんなことは決まっているさ、何で俺が………ふつうなら身体は剣で出来ているとか言うときに、身体は綿で出来ているとかいわにゃならんのだ!? そりゃ荒むぞ!!
話がずれた。現在の俺の身体だが…………ぶっちゃけた話ピ○チュウだ。あのお子様に大人気の、本当にねずみなのか疑いたくなるようなフォルムの、あのピ○チュウだ。
しかもイリヤのメイドさん、リーズリットの話によると、100万ボルトの電撃が出せるらしい。魔術師としては凄い進歩だ。
何せ俺は、今まで強化しか出来なかったし、それがいきなり詠唱なし(喋れないから)で電撃の魔術が使えるわけだ。俺は遂に魔術の領域に本格的に脚を踏み出したといえよう…………なんか悲しくなってきたな。
「おにいちゃーん」
おっと、イリヤが部屋に戻ってきた。お帰りイリヤ、できれば元の身体に戻してくれるととても感謝するんだけど。
「え? 無理だよ、だって…………」
ちらと、イリヤがついてきたリーズリットのほうを見る。
「士郎のからだ。捨てた。この間の生ゴミの日」
まあ、だいたいそんなところだろうとは思ってたが………………ニュースが見たくなったぞ、今の発言。ゴミ回収業者さんに手を合わせる。なむー。動けないけど。
ちなみに、ここは冬木のアインツベルン城だ。イリヤは実家に帰らずにここで暮らすことにしたらしい。なぜかって? それは大人の事情って奴さ。
「大人は大変だもんね、おにいちゃん」
うん、そのとおり。3月生まれの人間なんて、年金の学生免除の申し込みに3月に行っても、すぐに4月に申し込みなおさなきゃならないんだぜ。まったく、どうかしてる。
「お兄ちゃんさすがに年金はまだでしょ。なんか乗り移った?」
………ハッ。いけないいけない。どうやら破滅の足音が聞こえたようだ。
「あぶなかったね、おにいちゃん」
うん、あぶなかった。そもそも俺は3月まれではない。
ところでだなイリヤ、俺としては、この姿でおにいちゃんと呼ばれるのは、かなり苦しいぞ。なんせ電気ねずみだ。イリヤも電気ねずみが兄なんていやだろう?
「そんなことないよ? かわいいし」
可愛ければいいのか。アバウトな。
…………ところでだな、イリヤ。
「何?」
この身体は凄まじく不便だ。動けないし。
「かわいいのに?」
可愛くても動けないぞ。
「大丈夫、電気、出る」
オウリーズリット、現在俺の声はイリヤにしか聞こえない(設定)だったはずだが。
「愛と勇気」
無理。絶対無理。というか愛と勇気でどうにかなるんなら俺はこんなことになってない。多分。
それに今の俺は電気ねずみだ。断じて脳ミソの代わりにアンコが詰まった怪生物ではない。………電気ねずみも十分怪生物だが。
…………まてよ、電気? 電気が出せるなら、体中に電気を通して動かしたりとか出来ないか?
「ひらめきだね」
おうよイリヤ。人間やっぱりひらめきが大事だね。
「でもいまはネズミ」
しくしくしく。
…………で、第一回、電気駆動実験(おおげさ)の結果だが、動けた。動けたことは動けたが………
「お兄ちゃん凄い!!早い早い!!」
部屋の中を高速で乱舞し、あちこちにぶつかりまくるぬいぐるみ。っていうか俺。
身体を磁化させて、目標に吸着しての移動を試してみたがこれはイリヤに好評だった。
というわけで今、俺はイリヤの部屋の中を縦横無尽に飛びまくっている。傍から見ればポルターガイスト現象にしか見えまい。………怖いぞ。
幸い痛覚もないので痛くはないのだが、だんだんあちこちがほつれ始めてきた。………あ〜、あとでセラさんに繕ってもらわないとなぁ…………ん?
いかんいかん、危うくぬいぐるみとして人生(?)を歩むことを享受しそうになっていたぜ。
とりあえず俺は、飛行をやめて元の位置に戻る。俺が身体を手放した椅子へ。
「……………? どうしたの?」
イリヤ、聞いてくれ。
「うん、いいよ」
素直に頷くイリヤ。ああ、何て可愛いんだ。これで俺をピ○チュウに何てしなければ完璧な妹だ。
まぁ、それは諦めた(達観)。とりあえずだな、イリヤ。
「うん」
この身体は、ダメだ。そのうちボールの中に捕獲されてしまう。せめて人間にしてくれ。後、動ける奴。
「えー」
たのむ、ピ○チュウはだめなんだ。ピ○チュウ、あれは正義の味方じゃない。ただの殺人的愛玩動物だ。もっとこう、正義の味方っぽい奴を!!
「………………わかった! お兄ちゃんの頼みだもの。叶えてあげるね」
おうマイシスター、ありがとう。いっちょかっこいいのを頼むぜ!!……………あれ?何か間違ってる…………まぁいいか。
「じゃあ、しばらく寝ててね」
イリヤの声と共に、俺の意識は闇に沈んだ――――――
う〜んサトシ、無理。ポ○モンは一度にそんなに多くの技を覚えてらんないから。あんまり無茶言わないで。いちいち技マシン使ってお小遣いを浪費する僕の身にもなってよ…………
「おにいちゃん?できたよー」
…………はっ。
意識が覚醒する。しっかりとした手足の感覚。―――――――全システム異常なし。…………む?
とりあえず目を開ける。次に声を出してみる。
「イリヤ?」
「うん、今度は喋れるでしょ」
「ああ。ありがとう。これでようやく俺も………」
ふと、鏡が目に入る。そこに映った俺の姿。………いや、確かに時代設定的には問題ない。正義の味方だし、一応。でも…………でもこれは………
「ん。正義の味方。ナイス」
「これで百万馬力だね、お兄ちゃん」
「な、なんでさーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
―――俺の体は、鉄腕ア○ムでできていた。
続くのか?
あとがき
はい、思い付きです、またしても。副題、士郎いじり。
遠坂とかセイバーとかアーチャーがどうなったのかは秘密。むしろ考えてない。
因みに聖杯ですが、イリヤの生命維持に使われています。独断で。あと、士郎の魂移すのに使ったり。
ピ○チュウ………つかいにくいなぁ………