それは有り得たかもしれない物語 そのにじゅうよん


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1: 久遠 (2004/04/12 23:54:50)[kuon_kurotuki at passport.net]

  
 注意1:この作品の弓さんはアーチャーではないです。

 注意2:これはfateもしとは一切関わりがありません。

 注意3:これは電波による二次被害作品です。

     fateもしを書いていて本編で使用不可な電波がきたため別の作品として誕生しました。

 
 以上を踏まえた上で読んでやってもよいという奇特なかたは下へどうぞです。





    











 



 

        それは有り得たかもしれない物語 そのにじゅうよん


 side by エミヤ


 「ナイン――


 くっ! 弓による、しかも狂化でランクが一つ上がったナインライブズ。

 防ぎきれるか?
 
 オレは即座に最高の守りを展開しようとする。


 「ほう、我が来る前に余興を始めているとは躾けがなっていないな」


 ぬ、このタイミングで一体誰だ?

 その声に聞き覚えは無いのだが。

 
 「……一つ聞きます、何故貴女が現界しているのですアーチャー」


 セイバーの声が妙に響く。

 彼女がアーチャーと言うのだ、ならば相手はギルガメッシュに他ならない筈だ。


 ヘラクレスを相手に背を向けるのは本来有り得ない行為だが、

 ギルガメッシュが来ているのなら背に腹は変えられない。


 意を決し振り向くと、
 
 そこには瞳に狂気を含んだ慎二と、金の髪に赤い目の絶対者がいた。



 side by 凛


 何なのよコイツ。

 有り得ない筈の八人目のサーヴァント。

 セイバーの言葉通りなら二人目のアーチャー。
 
 絶対にヤバイ、ヘラクレスに会った時を越える絶望感。

 何よりもその瞳、私たちを人と思っていないソレ。

 
 「ん? 久しいなセイバー。

  それにしても相変わらず貧相な胸だな」


 その言葉にセイバーの額にピシリ、と血管が浮き上がる。

 
 「あれ? 何で衛宮と遠坂がこんなとこに居るんだよ。

  まあ、ちょうどいいか。

  男だけやっちゃってよアーチャー」


 コイツはー! 私が怒鳴りつけようとした時、

 
 パチン、っとソレが指を鳴らし。

 士郎とバトラーに無数の刃が迫る。

 が、無数の刃は同じ無数の刃によって払われる。


 「ほう、貴様偽物(フィイカー)か?」


 フェイカー? 一体何だって言うのよ。
 

 「その通りだ……英雄王ギルガメッシュ」


 またもや相手の真名を言うバトラー。


 「くくっ、貴様、中々に博識だな、褒めてやろう」


 それにしてもギルガメッシュですって? 

 古代メソポタミア神話に出てくる半神半人の英雄、ウルクの王。

 不老不死の探求者、この世の全てを治めたとされる暴君。

 ……セイバーの件があるからコイツがギルガメッシュと言われても信じられる。

 
 「執事、我がマスターを連れて逃げろ」

 
 急に口を挟むヘラクレス。
 

 「……良いのか?」


 「構わん、それに……私一人の方が戦いやすい」
 

 「そうか……。凛、引くぞ」


 「ええ、士郎、セイバー。とっとと逃げるわよ」


 「は? ちょっと待てよ遠坂!

  なんでそうなるんだ!?」


 「馬鹿ね! ヘラクレスが時間稼ぎをしてくれるって言ってるのよ!

  その間にイリヤスフィールを連れて逃げるの!」


 私もバトラーも余力はほとんど残っていない。

 やっぱり回復しきれてなかったのだろう、

 さっきの攻撃時に私の魔力を大分持っていかれた。


 「ちょっ! 離しなさいよバトラー!」


 その怒声に目を向ければイリヤスフィールをお姫様抱っこするバトラー。

 隣を走るセイバーから殺気が漏れる。

 
 「ヘラクレスを置いて行けるわけ無いじゃない!

  私はヘラクレスのマスターなのよ!」


 そんな彼女の言葉を我が執事は無視する。


 「ヘラクレス、再戦を楽しみにしているぞ」

 
 そう言ってバトラーは一足早くロビーから消える。

 
 「ふん、舐められたものだ。我がこの程度の輩に負けるとでも言うのか」


 その声と同時に背後で無数の金属音が聞こえてくる。

 私たちは振り返らずにバトラーを追いかけて走る。


 
 side by 金ピカ


 忌々しい。 

 今我の前にはでかいだけの的が居る。

 宝物庫から取り出した無数の宝具が的に迫る。

 それを奴は全て弾き、回避し、防ぎきる。

 腐っても半神と言うわけか。

 
 「なら、倍でどうだ?」


 そう言い先程を倍する宝具を奴に放つ。

 だが、ソレすらも奴はやり過ごす。

 あの巨体でちょこまかと、正直うざい。


 「お、おい! ギルガメッシュ!

  全然攻撃が効いてないじゃないか!

  どうするんだよ!?」


 ぬ、五月蝿いなコイツ。

 言峰が余興だと言うから仮初のマスターとしてやったが……消すか?

 その間にも宝具を無数に展開してヘラクレスに対して攻撃し続ける。

 
 「ナインライブズ!」

 
 奴が剣によって弓の真名を発する。

 
 スッ――


 我の顔を何かが掠める、

 左手を上げ頬を触れば赤い粘着質の液体。

 
 「貴様! 王である我の顔に傷を負わせるとは何事か!」

 
 もう少し遊んでやろうと思ったが止めだ。


 「――――天の鎖よ(エルキドゥ)――――!」


 我の言葉と共に鎖がヘラクレスを拘束する。


 「ぬ! これは一体!?」


 「無駄だヘラクレス。その鎖は神を律する。

  故に神性の高い貴様にとってソレは天敵とも言えるだろうな」


 嘗て我の国を荒らした"天の牡牛"すら捕縛した鎖、

 いかにヘラクレスといえどもどうにもならんだろう。


 「さて、懺悔は済ましたか? なに、我は慈悲深い。

  直にでも貴様のマスターもあの世に送ってやる。

  まあ、聖杯の中にいく貴様には関係の無いことだがな」


 我は宝物庫からエアを抜きながらそう言ってやる。


 「疾く逝くがいい!――天地乖離す(エヌマ)――」


 「うおぉーーー!!!」

 
 なっ! 馬鹿な!? 天の鎖を無理矢理引き千切っただと!?

 この馬鹿力め!

 そして奴はすぐさま自身の最強の弓を構える。


 「射殺す(ナイン)――」 


 いいだろう、こうなったらどちらの宝具が強大か力比べだ!


 「――開闘の星(エリシュ)――!!」


 「――百頭(ライブズ)――!!」


 空間の断層が九つの射を飲み込みヘラクレスに迫らんとする。

 我が当然の如き勝利を確信したその時、

 一筋の閃光が断層の隙間を縫うように飛来する。

 
 「がっ!」


 く、左腕を持っていかれたか……。

 前方を見れば城ごと奴は消し飛んだようだ。

 ちっ!

 まさかこれ程の痛手を負うことになるとは……奴を過小評価しすぎたか。


 「おい! さんざんデカイ口叩いておいて何こんなに手間取ってるんだよ!」


 そう叫び我に触れようとしてくる下郎。


 「我に触るなと言った筈だが?」


 下郎の喉元に剣を突きつけてて忠告してやる。


 「くっ! わ、解ったよ! でも次はないからな!」


 そのまま踵を返し森の出口に向かっていく。

 一旦教会に戻るとするか。
 
 左腕も深手な上に、服も着替えないとならんしな。
 
 そう思いながら、仮初のマスターの後につづく。

 しかし、前を行く奴は出口までの道順をしっかりと記憶しているのか?
 

 そして森を歩きながらふと先程のフェイカーのことを思い出す。

 我の真名を一見で看破し我の宝具を防いで見せた……真に面白い。

 アレを我のものとするのも一興か。
 
 大して気の乗らなかった聖杯戦争に多少面白味が加わったようだ。
 


 ふぃん




 あとがき

 どうも久遠です。

 最強っぽいクラス重複ヘラクレスさんがあっさり逝ってしましました。

 まあこれはギルッチが規格外ということでご容赦を。
 
 どうか笑って、もしくは見なかったことにして見逃してくれると助かりますです。


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