「ねえ、『めそ』ってなによ?」
「……まだ気にしてるのか?」
あれからもう一週間は経ったとゆーのに。
意外に根に持つんだな遠坂。……意外でもないか。
「ったりまえじゃない!あの場面であんなコト言われて気にならないほうがおかしいわ
よ!いい?仮によ?Fateルートのラストでアンタがセイバーと別れる時に『シロウあ
なたを……めそ……』なんて言われてみなさいよ。台無しよ?気になるわよ、すっご
く!!」
いや、遠坂その発言はマズイ。ルートとかゆーな。
聖杯戦争。
あらゆる願いを叶えるとされる万能の釜『聖杯』を巡る、七人の魔術師とそれに従うサーヴァント達の非常識極まる殺し合い。馬鹿げた椅子取りゲーム。
何の因果か、へっぽこ三流魔術師(あかいあくま曰く)の俺はそのふざけた戦争に巻き込まれ――結果、こうしてなんとか生き残ることが出来ている。
悪夢のような2週間。なにがあったかなんて思い出したくもない。
とにかく終わったのだ。終わらせたのだ。終わったに決まっている。むしろ終わってください。
「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレも、これから……めそ……っツ、ゲフッツゲフン――いや、なんでもないデスじょ?」
「ちょ――ちょっと!待ちなさい!!こら、消えるな!!!『めそ』ってなによーーーーーー!!!!」
吼えるついんてーる黒ニーソのあかいあくま。
「シロウ、聖杯を破壊したのでお腹が空きました。早急に朝ご飯を所望します」
どうですか?えらいですか?私は王様ですよ?ってな感じで胸を張る闘将ハングリーハート。
なんかもういろんな意味で台無し
◆Fate/はっぴーワールド〜突撃となりの朝ごはん発動編〜
日本人の朝は和食だと思う。
百歩譲って洋食でもいいだろう。
でもな、朝から中華。しかもマーボーってのはどーよ?
赤い。これでもかってぐらいに赤い、赤すぎてむしろ黒い。……ホントにマーボーかコレ?
煮立ってますよ。煮えたぎってますよ?アレですか?アンリマ油ですか?
額に浮かぶ嫌な汗をぬぐい視線を目の前のマ■ボーから横へ。
あ、なんか思考にノイズ?
とにかくマー■ーから眼を逸らし皆の反応を確かめよう。
現在、衛宮家の食卓を囲むのは順に俺、遠坂、セイバー、藤ねえ、ライダー、そして桜。
ハーレムルート?ちがいますよ?
「? どうかしたんですか、先輩?」
目が合った。
にっこりと、見るもの全てを癒してくれるであろう程に母性あふれる微笑を浮かべる衛宮士郎の日常の象徴であった(過去形なのはまあ、過去形だから。知らないことが幸せなことってあるんだなー)少女――間桐桜。
「?」
そうして、蓮華を口に咥えたまま(アレを食べたんディスカー!?)こちらを上目遣いで見つめてくる。
ヤバイ。そのあどけない仕草はヤバイですよ桜さん!
って胸が腕に当たって摺り寄せられてやわらかい感触があったかくてぷよんぷよんなナゼにこちらにシナダレカカッテクルノデショウカ!?
「ふむ。朝っぱらから欲情しているのか。ケダモノだな衛宮士郎。それでこそ切嗣の息子――ブぐうぉ!」
「お黙りやがれこのクサレエセ神父」