Fate/Casterとnightその4 M:キャスター・独自キャラ 傾:ギャグ・壊れ


メッセージ一覧

1: 黒の衝撃 (2004/04/12 19:05:05)[dzeden at ybb.ne.jp]




冬木市立病院。
新都にある市立の総合病院である。
白く真新しい壁といつも輝く窓。
広大な面積を誇る敷地に最新医療設備。
世界の最先端の技術をもつ専門医師たち。
冬木、という地方都市にあるのが惜しいぐらいの病院である。








黒い噂がなければ








曰く、
入院したおじいちゃんがサイボーグ化して戻ってきた。
看護婦さんたちが実は百戦錬磨の元傭兵である。
手術の麻酔はハンマーである。
内部は巨大なダンジョンになっている。
医師たちはみなSである。
病院内は治外法権でありこの場所で起こった殺人、強盗、恐喝、暴行は泣き寝入りである。
市から流れ出るあまりに多額すぎる予算を糾弾した市議が行方不明になり
最後の目撃証言は多数の白衣を着た女たちに病院内に連れ込まれる姿だった
割烹着姿の少女が注射器を片手に病院内を闊歩している。
などなど


そんなさまざまな黒い噂の立つ病院前に
アーチャーのマスター遠坂 凛
セイバーのマスター衛宮 士郎
そしてアーチャーの3人は来ていた。

ちなみにセイバーは藤村 大河から病院の噂を聴き

「シロウ。私はシロウがいない間に他のサーヴァントに拠点を攻められるには困るのでここに残ります。ええ、拠点防衛は戦いの基本です。ですからシロウ。何があっても令呪を使わないように。令呪使用の際はシロウ、くれぐれも注意するように。戦場での誤殺なんてもう日常茶飯事ですから」

と、一気にまくし立ててシロウを放り出した。しかも内側から玄関に鍵をかけて。

3人の顔には絶対に来たくなかった、という表情が張り付いていた。士郎に至っては影が差している。マスターを見捨てたサーヴァントと行きたくないと泣いて電柱にしがみついた自分に笑顔で

「衛宮君。どうしても行きたくないというのなら入院するほどの怪我、負ってみる?」

そんなことになったら衛宮 士郎は生きて病院内から出て来られない。見舞い客もない病院内にあると噂される地下の座敷牢でその生涯を終えるとこになるに違いない。彼の運命はよくも悪くも赤い悪魔によって握られている。さようなら平和の日々。



「さぁ、いくわよ。さっさと用事をすませて帰りましょう」

凛が出来ることなら引き返したい。というような声をだして一行はのろのろと病院内に入っていた。














「ここが綺礼の病室ね」

413号室。冬木教会のうんこ神父、言峰 綺礼が入院している病室だった。ドアにべっとりと血のりがついているのは冗談だと思いたい。

「アーチャー、ドアを開けて。偵察はあなたの任務よ」

「・・・了解した。地獄に落ちろマスター」

人を本気で呪い殺せそうな目で凛を見てアーチャーはドアを開ける。
と、ドアを開けたアーチャーの額に押し付けられる金属の感触。














「私の名を言ってみろ」






















そこには黒いスーツ姿の女。その左手には火のついたタバコを持ち、右手にはショットガンが握られていた。その銃口はアーチャーの額に押し付けられている。

「・・・はっ?」

「私の名を言ってみろといったんだ」

「いや、私と君は初対面だと思うが」

「バゼット・フラガ・マクレミッツだろうがッ!!!」

叫んで引かれる引き金。頭から血を噴出し吹っ飛ぶアーチャー。
それを待っていたかのように現れる数人の看護婦たち。

「いや、いやだ――――――――――ッ!!!私はサーヴァントだ人間の治療法など効きはしない止めろ!!止めてくれ―――――――ッ!!凛ッ!!り――――――――――んッ!!!!」

泣き叫びながら引きずられていくアーチャー。
そして彼は闇に消えた。

















「はっはっは。アーチャーも実に悲惨な最期を遂げたな。彼女は本編で活躍できなくてイライラし・・・ベフッ!!」

笑顔でそう言った言峰は凛のパンチとバゼットの蹴りに顔がサンドイッチになる。これでまた少し入院期間が延びるに違いない。

「まだ、死んでないわよ。多分。それより私たちを呼び出すなんてどういうことかしら綺礼」

学校から帰ると留守電が点灯していた。件数27件。すべて言峰からである。

『ふ、師を敬わない愚弟子よ。おまえに伝えたいことがあるのだ。おまえは私の言葉を聞き感涙して自らの愚かな行為を私に詫びることになるのだ。今なら私も泰山のマーボー食べ放題ぐらいで勘弁してやらないこともない。さっさと冬木市立病院までこい』

以後同じような感じの神経を逆なでするようなセリフが11件続いたあと。

『もしもし、凛、か。頼む、早く来てくれ、私はもう駄目だ・・・さ、最後におまえに伝えたいことがあるのだ。いえ、ぜひ伝えさせてください。お願いします』

弱気な感じで9件続き

『ぐ、ぐすっ・・・り、りんさん・・・お、おねがいだ・・・(背後で上がる怒号)・・・グああああああああああッ!!!!・・・・(静寂)・・・プツ』

泣き言と懇願、悲鳴が混じったようなのが7件続いたのだった。こんな電話がこれ以上かかってきたら精神衛生上よろしくない。言峰のことだからきっと来るまでかけ続けるだろう。
そう考えた凛はアーチャーと士郎という下僕を引き連れて病院に来たのだった。
「逝くならおまえも道連れだッ」が現遠坂家の家訓である。迷惑極まりない。








「ふっ、電話でおまえに言ったが、凛よ。聖杯戦争のことでおまえに伝えたいことがあるのだ」

ベッドの上に座っている言峰は何故か囚人服を着ており、足首は鎖で巨大な鉄球に繋がれていた。
その姿は入院患者にはとても見えない。しかし、なぜかひどく似合っている、と凛、士郎ともに思う。出来ることならこのうんこ神父にはここで一生を終わってもらいたい。

「いいわ。聞こうじゃない。ところでそこの女性は? マスターじゃないみたいだけど」

「彼女はバゼット・フラガ・マクレミッツ。協会の魔術師でランサーの元々のマスターだ」

「よろしく」

片手を挙げて凛を興味なさそうに見るバゼット。その手にはアーチャーを撃ったショットガンが握られている。そんなものを持ってどうして病院に入ることが許されるのか。病院内は治外法権、という噂は本当だったんだ。士郎はそう思いここから生きて帰れるのだろうか、とバゼットから視線を逸らした。窓から見える外は目の薄い鉄格子によって酷く遠い。

「元々、と言うのはどういうこと。サーヴァントを譲り渡したというの?」

凛の言葉に

「ああ、確かに私はランサーのマスターとして今回の聖杯戦争に参加するはずだった。が、ランサー召喚直後に協会から最優先の捕縛指令を受けて、な。ここにいる言峰にランサーを譲った」

あっさりと応えるバゼット。

「なっ、綺礼。あんた監督役でありながらマスターをしていたというの!?」

「何も問題はあるまい。監督役がサーヴァントのマスターを兼ねてはいけない。などということはない。私が監督役でありマスターでも別に問題はなかろう。それにな、凛。私はもうランサーのマスターではないのだ」

「・・・それって」

「ああ、ランサーは敗北した」

言峰はそう宣言した。


2: 黒の衝撃 (2004/04/12 23:19:04)[dzeden at ybb.ne.jp]





「私の教会が別のマスターに襲われて全壊したというのは知っているだろう、凛よ」

何かを堪えるような顔で言峰は言う。彼は教会と同時に全ての財産を失った。吹き飛ばされた財産も多かったがなけなしの蓄えは火事場泥棒・遠坂 凛の懐の中である。彼女は教会崩壊後、崩れた教会の中から金目のものは全て運び出していた。無事だった通帳と印鑑も没収。冬木地銀には言峰の名前で数千万円の借り入れが昨日行われていた。名目は教会復興だったがその金の流れは赤い悪魔のみ知る。

「だから私がそのマスターに復讐しようとしてランサーを向かわせたのは別になんでもない。正統な権利といえるではないか」

「いや、別にそんなのはどうでもいいのだけど。で、そのマスターはなんのサーヴァントを連れているわけ? バーサーカー、ライダーは除くとして・・・アサシンかキャスターというところかしらね。でもそのクラスはランサーより低いはずよ。敗れる可能性は低いと思うけど」

凛は思いだす。学校でアーチャー相手に激闘を繰り広げた青い槍兵を。2人の戦いを見て彼女はサーヴァント同士の戦いというものに戦慄したのだった。むろん一度殺されて、更にもう一度殺されそうになった士郎も同じ思いだ。ランサーは絶対無比の必殺技を放ってサーヴァント中最強と言われるセイバーに深手を負わせたのだ。あれから数日たった今でもその傷は癒えていない。あんな強敵を倒す相手がいるとは信じられなかった。バーサーカーならありえるかもしれないが言峰は別のマスターを示唆している。


その青い槍兵が今は「変態」のサーヴァントとして修一郎に仕えているなど夢にも思わない2人である。合掌。


「いや、アサシンやキャスターなどよりも恐ろしいサーヴァントだ。そのマスターはメイドを連れていた」












「うらぁ!! 歯ぁ食いしばれぃっ!!!」

「ごふがぁッ!!!」

言峰の言葉に凛は魔力の乗った一撃で言峰を殴りつける。血と前歯を飛ばして言峰は壁にめり込んだ。病室を壊した彼はあとできつい折檻を看護婦から受けるはめになるのだろう。
なにせ冬木市立病院のモットーは
「患者に人権はない。取れるモノ(金)はケツの毛までむしり取れ。逆らうヤツは地下特別室へ」
である。こんな病院が厚生省に認められているあたり世も末である。時代は病んでいるのだ。

「言うに事欠いてそれかぁ!!メイドだと!?メイドに負けるランサーがどこにいる!?だいたい聖杯戦争にメイドのクラスはないはずでしょーがッ!! さあ、立て綺礼!!本当のことを言え!!」

無理です遠坂さん。言峰は壁にめり込んでピクピクしています。あ、魂が半分抜け出ました。士郎はガクガクプルプル震えながら部屋の隅で震えながら呟く。

「ごめん、切嗣、正義の味方になる前に死ぬかもしれない」

そして祈る。どうかこっちに八つ当たりされませんように。そんな無力な男たちに代わりバゼットが口を開く

「待て、遠坂。言峰の言っていることは本当なのかもしれん。今回の聖杯戦争について言えばイレギュラークラスが出たとしてもおかしくはない可能性があるのだ」

「・・・どういうことよ」

変なことを言ったら殺す、と顔に浮かべて凛は低い声でバゼットに言う。士郎ならゴッドハンドの宝具を持っていても一撃で死なす視線を平然と受け流してバゼットは続ける。

「そのマスターが今回、私が聖杯戦争を棄権するにことになった協会からの捕縛対象かもしれないのだ」

「どういうことよ」

凛の目が真剣になる。
捕縛対象、それは協会より封印指定をうけた魔術師や魔術使いのことをいう。
しかも協会は聖杯戦争といういつ起こるかわからない、聖堂教会すら関心を示す聖杯への戦いを彼女に棄権して捕縛任務につけ、と言った。その捕縛対象が今回の聖杯戦争に絡んでくるとなると彼女も真剣にならざる得ない。

「私は協会によって呼び戻されたあと、アインツベルンの本拠地に行った。その捕縛対象によってアインツベルンが一夜にして壊滅したとの情報を受けて、な」

「なっ、アインツベルンって言ったらバーサーカーのマスターの!」

士郎が声を上げる。

「そうだ。冬木の聖杯の一族。遠坂、間桐と並ぶ古い魔術師の一族だ」

「そんな歴史ある一族を一夜にして壊滅させたと言うの、そいつは」

「ああ、現地は酷いことになっていた。ああ、思い出しただけで胸糞悪くなる」

凛の言葉にバゼットはギリッと唇を噛む。
士朗はこの場にいないイリヤのことを思い出して胸が痛んだ。彼女の帰る場所はもうない。魔術師とはいえ幼い彼女にはひどく酷なことだろう。たとえ自分が彼女に殺されそうになったとしてもそう思ってしまう衛宮 士郎という人間はひどく気のいいやつなのだ。

「・・・あまり見せるものでもないが現場の写真だ」

そう言ってバゼットはスーツの内側から写真を取り出して凛に渡す。それを横から覗き込む士郎。

「なっ!!」












そこには大きなネズミとアヒルに囲まれて笑顔でピースをするバゼットの姿があった。

「・・・これって」

ジト目でバゼットを見る凛と士郎。

「すまん。それはこっちに着たついでに経費で遊んだディズニーランドの写真だった。本物はこっち。いや、楽しかったぞ。自腹を切らないで遊ぶというのは」

そう言って写真を数枚取り出す。

「・・・っ!」

「酷い・・!!」

あまりの酷さに2人は絶句する。
そこに写っているのはこの世の地獄とも言うべき光景だった。









メイドだった。












しかもただのメイドじゃない。
いい年こいた中年のおっさんがメイド服に身を包み微笑んでいた。
化粧で白い顔。
塗りたくった赤い口紅。
薄い頭にはカチューシャがついている。

「なっ!これは、これは倒すべく悪じゃないかっ!!!切嗣!!俺はこの世の悪を見た!!」

叫ぶ士郎。青い顔をして凛は写真をバゼットに返す。

「死者は一人も出ていないがあちらの世界に全員が旅立っていたよ。その恐ろしさに私は何度もこいつをぶっ放してやろうかと思ったよ」

「その意見は正しいッ!!こいつらはメイドを、メイド服を汚したッ!!死刑だっ!!」

泣き叫ぶ士郎に裏拳を放ち黙らせる凛。士朗は鼻をいい具合に潰して壁に吹き飛ぶ。そのまま動かなくなる。

「アインツベルンは聖杯をあきらめてメイドによる世界平和のためにこれら活動するそうだ。ホムンクルスの技術で大量のメイドを作り出し世界中にメイド喫茶を出店する計画を立てているらしい」

それはそれで正しいのかもしれないがその、自分たちまで化粧をしてメイドの格好をすることはないだろう。魔術師としてのアインツベルンは死んだ。

「それで、そのアインツベルンを狂わせたヤツがこの聖杯戦争に参加しているかもしれないと」

「ああ、言峰の見たマスターはメイドを連れていた。そしてこの事件もメイドだ。それにこれは私が独自に調査したのだが言峰の教会が破壊される前、新都のホテルが倒壊した。表向きはガス爆発だということになっているがこれにもメイドが関係しているらしい。メイドを連れた男が倒壊直後
にこの付近で目撃されている。ほかにも居酒屋や深夜のファミレスなどいたる所でメイドを連れた男を目撃したとの話だ。これがどういう意味かわかるか。遠坂。このマスターはメイドのサーヴァントを連れて新都を歩きまわり他のマスターを挑発しているのだ。街にさまざまな悪影響を与えて、な」

「聖杯の一族であるアインツベルンをメイドで崩壊させ、この聖杯戦争のある冬木でメイドのサーヴァントを連れて聖杯戦争に参加している男・・・」

「そうだ。十中八九こいつが捕縛対象だ」

バゼットはそう宣言した。






3: 黒の衝撃 (2004/04/13 01:40:00)[dzeden at ybb.ne.jp]






「に、にいさん・・・・」

間桐 桜はそう言って絶句した。
冬木市立病院の地下特別室。凛と士郎が言峰の病室でバゼットと話をしているちょうどその時、彼女もまた病院にいたのだ。場所は4階と地下2階と離れていたが。
彼女の前には今朝、警察のお世話になったあと「手がつけられない」との理由で冬木市立病院に入れられた兄、慎二がいた。

「ほっほっーう。けつだけせいじーん」

そう言って桜の前で汚い尻を振っているのはまぎれもなく慎二である。全裸で。

「に、兄さん、それはしんちゃん違いです。それは確かに兄さんのは幼稚園児並みですけど」

さらりと毒を吐く桜。
しかしその言葉に反応できないぐらい慎二は別世界の人間になっていた。
ここまで案内した看護婦が言っていた言葉を思い出す。




「いや、あれはもう駄目だね。向こうの世界に逝っているから。多分あんたが誰か、ということもわからないよ」
その看護婦はそう言って、足元の男に鞭をくれる。その男の尻には「何か」がささっていた。嬉しげに悶える男。
ああ、先輩もこうやって躾することができたら・・・とか思ったのは乙女?の秘密だ。





「にいさん・・・私が桜だということもわからないんですね・・・」

肩を震わせてうつむく桜。そんな桜の前で

「ぞーさん、ぞーさん、ぷーらぷーら」

と楽しそうに踊る慎二。

「兄さん、兄さんは向こう側に逝けて幸せかもしれないですけど残される私はどうするんですか?」

「けつだけせーじんー!」

「兄さんが、兄さんが全裸で・・・猥褻物陳列罪なんかで捕まって・・・」

涙ぐむ桜。それを無視してひたすら踊る慎二。

「残される私は酷い恥さらしですよ。もう、学校で噂になっているんですよ? 間桐の兄貴が海浜公園で裸踊りして捕まったって」

「ぞーさんぞーさん」

「今日なんか辛かったですよ。他のクラスからも見に来るんですよ。哀れみの視線ですよ。先輩なんて『まぁ、桜。人生辛いこともあるさ・・・あはははは』って言いながら目を逸らすんですよ!?」

「おしりふりふり〜」

「ええ、兄さんがどこで裸踊りしようと勝手です。だけどそれは私に迷惑のかからない場所でやってください。私に迷惑がかからないんだったら獣○しようが連続幼○誘拐犯になろうが、婦○○行魔になろうが歌○伎町○丁目で働こうが別にかまいません。私は兄さんが私に迷惑をかけることだけが許せないんです!!」

ぞわぞわと影が揺れている。床が、壁が、空気が黒い。そんな状況すら理解できないのか慎二はただ踊り狂う。

「ええ、兄さん、今は幸せでしょうね。あちらの世界へ逝って。私がわからないぐらい幸せなんでしょうね。でも兄さん、私たちは一応兄妹ですから一人だけ幸せになるのはどうかと思うんです」

顔を上げた桜は見事に反転していた。もう、そりゃ、真っ黒と。











「死なない程度に呼び戻してあげます」




















それは恐怖と言う言葉を知らないとされる冬木市立病院特別室担当の看護婦さえ背筋を震わす
悲鳴が地下病棟にこだました。

「な、何事ですか?」

「なんでもないです。兄が少し怖い夢でもみたようです」

驚いた看護婦が駆けつけるとそこにはにっこりと微笑む桜と部屋の隅で膝を抱えてガタガタ震えている慎二の姿があった。

「じゃあ兄さん、私もう行きますね。もう二度と、死ぬまで病室から出ないように。じゃないと私今度はもう少し強く怒りますからね」

そう言って病室を出て行く桜に看護婦は恐怖と同時に同属の匂いを感じた。

その後、桜の元に冬木市立病院から特別室の専属看護婦としてのスカウト状が大量に送られてくることになるのだがそれはまた別のお話である。












桜がエレベーターを使い1階に戻ると病院内ではすさまじい騒ぎになっていた。

「ちっ、けが人が逃げたぞッ!!!」

「追え!逃がすな!!」

「病院内から生かして帰すなッ!!」

「抵抗するなら射殺しても構わん!!」

とても病院関係者の言葉とは思えない言葉をわめきながら駆けていく看護婦。
緊急警報が鳴り響き、銃器で武装した看護婦が大量に廊下を走り回っている。
近くで銃撃戦が起こっているのかすさまじい銃声が聞こえ、爆発音が聞こえる。
それはまるで戦場。
もうここは病院じゃねぇ。
そして桜はそこでとんでもない光景を目にする。

「え!?遠坂先輩と・・・先輩!?」

椅子で作られたバリケードを突破し武装した看護婦を蹴散らして走ってくるのは遠坂 凛、そしてその凛とショットガンをぶっ放す女性に肩をかりてなんとか走ってくる衛宮 士郎の姿だった。




4: 黒の衝撃 (2004/04/14 00:30:57)[dzeden at ybb.ne.jp]

厄日だ。
日本刀を片手に襲い来る看護婦にガンドをぶっ放して凛はギリッと奥歯を噛み締める。吹っ飛ばされた看護婦の代わりにまた新手が襲いかかってくる。きりがない。凛の隣でショットガンをぶっ放していたバゼットが舌打ちをする。

「なんて装甲だ。日本の看護婦は化け物か!?」

いえ、多分ここだけです。











襲撃は突然だった。
いきなりドアが開き数人の看護婦が部屋に乱入してきた。彼女らは血に餓えた獣のような目で室内を見渡し、床で意識を無くしている士郎に目をつける。

「けが人だな」

「けが人だ」

ニタリ、と悪鬼も震えるような笑みを浮かべて彼女たちは士郎にせまる。

「なっ、士郎をどこに連れて行く気!?」

「決まっている。けが人は治療しなければならない」

凛の問いかけに応える看護婦。士郎は先ほどの裏拳で鼻がつぶれたままだった。そのダメージはセイバーの鞘による脅威の回復力すら上回っていた。

「・・・遠坂、ここをどこだか忘れたか。冬木市立病院だぞ。時計塔の魔術師たちですら恐れる魔境だ。そんなところでけが人を出すなどヲ○クの群れにロリ○ルマー少女を放り込むようなものだ」

「なんか例えが具体的すぎるような気がするけど要するに私のミスを指摘しているわけね」

一瞬、道場で竹刀を構える大河とイリヤの姿が見えたのは気のせいだ。多分。

「・・・ま、終わってしまったことをアレコレ言っても仕方がない。で、どうするのだ?」

「無論、逃げるわよ」

その言葉にニヤリと笑いバゼットはショットガンを士郎に迫っていた看護婦にぶっ放す。吹き飛ぶ看護婦、だが壁に叩きつけられた彼女は平然とした顔をして立ち上がる。

「邪魔するなら排除する」

「上等」

かくして白衣のアマゾネスたちとバゼット、凛の2人の魔術師たちの死闘が始まった。










飛び交う銃弾とガンド。巻き添えを食った入院患者の悲鳴と看護婦たちの怒号。もうここは病院じゃねぇ。白く消毒液の匂いが漂う病院の廊下を凶悪な銃器で武装した看護婦が銃撃戦を行う光景はかなりシュールだ。

「くっ、ガンドを受けても平気だなんて」

「噂は本当だったようだな。冬木市立病院ナース服改。まさかこれほどまでの装甲と機動性をほこるとは・・・」

バゼットが弾を補充しながら呟く。現在彼女らは廊下の角で看護婦の猛攻を避けていた。すさまじい数の弾丸の嵐、壁が見る見るうちに蜂の巣になる。ハンバーガーヒルも真っ青だ。

「なによ、そのナース服改っていうのは」

「七大制服の一つだ。かの征服王が夢にまで見た理想の制服の一つ。彼は熱病に冒されながら『ナース服改』が見たかったと言って没したということだ。着るものにすさまじいまでの運動性と防御力をもたらす女性限定の宝具。世界のお宝ハンターが追い求めて止まない秘宝だ」

真剣な表情で語るバゼットに半ば引きながら凛は尋ねる。

「マジ?」

「大マジだ。真実は着なり。おまえのガンドと私のショットガンがほとんど効いてない現実を見ればわかるだろう?」

なんだか世の中の理不尽さに頭を抱えたくなる凛だった。

「さて、いつまでも頭を抱えていないでボウヤを起こせ。強行突破をかける」

「そうね。このままだとらちがあかない。せめて士郎には盾になってもらわないと・・・」

平然と非道なことを言う凛。彼女の中では士郎の命などタンポポの綿毛以下の軽さだ。
凛はまだ気を失っている士郎の胸倉を掴むとビンタを繰り返す。

「・・・あ、あれ?遠坂。俺は一体」

気がつけば目の前に遠坂の顔。ちょっとドギマギする士郎に

「いいから、何も言わずに黙って私に従いなさい。さぁ、前に出る」

ドンっと突き飛ばす。そこは射線の上、士郎の目に映ったのはこちらに向けて銃口を構える看護婦たちの姿。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!」

戦場のダンス。ジルバ、タンゴ、チャチャチャ・・・その上に全てデスが付く思いつく限りのダンスを踊る。バゼットは士郎に攻撃が集中する中、スーツから取り出した手榴弾を放り投げた。
数秒後、轟く爆音と爆風。吹き飛ばされ壁に叩きつけられる士郎。再び気を失いそうになった士郎に蹴りを叩き込む凛。恐怖で半ば呆けた士郎の手を引っ張って凛とバゼットは看護婦たちの群れを駆け抜ける。待合室のイスで作られたバリケードをガンドの一斉掃射で吹き飛ばし玄関へと迫る。






「え!? 遠坂先輩と・・・先輩!?」

桜がそんな3人を見て声を出したのはそのときである。











え?なんで、なんで先輩が姉さん・・・遠坂先輩と病院に?もしかして先輩けがしたんですか?ナースプレイ?患者さんと看護婦さんの夜勤病棟禁断の愛!?初な青少年にお姉さん看護婦の誘惑。「おねえさん、僕もう・・・」「だめ、もう少し我慢なさい」「でも、僕ああっ!!」って先輩その隣の大人の女性はなんですか!?女医ですか。女医と看護婦、3人の禁断の関係ですか!?3Pですか。どうして私じゃ駄目なんですか!?先輩あんなに私の胸にドキドキしていたのに年下は駄目ですか?もしかしてお姉さんが好きなんですか!?先輩だめです。今、時代は妹です。ひそかに先輩の部屋にシスター○リンセスを置いておいたのに。先輩、妹は数です。秘蔵コレクションをみんな妹系AVに変えたのに・・・・



(中略)




・・・・先輩が望むならどんなプレイでもバッチリです。もうそんな貧乳女とは手を切ってください。
遠坂先輩、いえ、姉さん。また私から幸せを奪っていくんですね。ええ、わかりましたそういうつもりならば私も容赦しません。全力でお相手させていただきます。






乙女?の妄想は伊達じゃない。
一瞬で反転、黒桜化する。その姿、まさにキリングヒロイン桜。さぁ、屍の山を築きましょう。












「む、遠坂。あそこですさまじい魔力と殺気をこちらに向けて放っているのはおまえの知り合いか?」

「へっ・・・って桜!? なんでこんなところに!?」

「遠坂先輩、いえ、姉さん。先輩とナースプレイですか・・・ふふっ。私の先輩をかっさらう泥棒猫にはおしおきをしなければいけませんね。ええ、私が禁断の蟲プレイで姉さんを地獄へ送ってあげます。浮気者の先輩にもおしおきです。」

「桜、何を言って・・・それに遠坂を姉さんって・・・?」

「な、なにばらしてんのよ!! それに何を勘違いしてるの!!被害妄想もはなはだしいわね。だいたい士郎は私の下僕なんだから私がどう扱おうと勝手よッ!!」

「いや、遠坂、俺は誰のものでも・・・」

「あんたは黙ってなさいッ!!」

「先輩は黙っていてくださいッ!!」

「・・・はい。すみません」

発言権も人権もなし。すごすごと下がる士郎。
バゼットは逃走中なことも忘れて睨み合う遠坂と桜、背後から迫る看護婦軍団を確認してため息をついた。

「ボウヤ。自分の運が高いことを祈れ」

























「つ、疲れた・・・」

凛はそう呟くとベッドに倒れこんだ。体はあちらこちら痛むし服もボロボロだ。しかしなんとか無事に帰って来たと言う事で良しとしよう。あの後の惨劇を思い出すたびに悪夢にうなされることになるだろうが・・・酷い戦いだった。ガンド、宝石魔術、黒い影と蟲の大群、武装ナースの襲撃それはアルマゲドンもかくや、と言うべき壮絶な光景だった。

「まったく・・・勘違いもいいかげんにして欲しいわね、桜」

戦いは看護婦軍団、バゼット、士郎、たまたま巻き込まれた不幸な患者の犠牲の上に終了した。
最後まで立っていた凛、桜の両名が気づくとそこは瓦礫とこれ以上ないぐらいの悲惨な格好をした重傷者の山だった。死人がでていなかったのは無意識のうちに力をセーブしたのか運命の神が微笑んだのか。まぁ、どちらにしろ幸運なことである。

「・・・なんか、忘れているような気がするけど」

まぁ、いいか。忘れているようなことならたいしたことではない。凛はそう呟いて眠りの中に落ちていった。



















翌日、アーチャーのことを思い出した凛が令呪で彼を呼び出したが、アーチャーはすでに真っ白な灰に燃え尽き別の世界に旅立っており、完治までに3日を要したという。










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