ふぇいと/えんじぇるないと〜異英霊召喚譚・〜


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1: ハウス (2004/04/11 21:26:27)[hausu7774 at yahoo.co.jp]

―――その少女は、英雄などでは無かった。

「なぜ、助けてくれたの―――?」

ただ、流されるままに辿り着いた場所で、少女は一人の男と出会う。

「私を・・・抱いて、下さい」
「一つ聞くが・・・それは優しくか? 激しくか?」

男の名は葛木宗一郎。
少女の名はエンジェル。
冬木に聖杯戦争の嵐が吹き荒れる中、二人は静かに時を過ごす。
しかし。

「バーサーカー、やっちゃえ!!」
「にっ、逃げましょう、宗一郎さんっ!」
「む、分かった」

闘いの渦は二人を逃がしはしない。
少女がサーヴァント・・・・・・キャスターである限り。


【ふぇいと/えんじぇるないと〜異英霊召喚譚〜】


「アンタ達が平和に暮らしたいだけって言うなら、俺とセイバーが守ってやるさ!!」
「シロウ・・・それは・・・・・・」

父の遺志を継ぎ、遺品である魔銃・ブラックバレルを手に戦う少年、衛宮士郎。
そのサーヴァント、剣の英霊セイバー。

「キャスターなのに魔術を使えない!? じゃあアンタ、何ができるってゆーのよ?」
「ええと・・・・・・そうだ、ギターが弾けます!」

冬木市の管理者であり、聖杯戦争に勝利すべく教育を受けた魔術師、遠坂凛。

「・・・・・・ふむ。端的に言ってキャスター・・・・・・君に楽器の才能は無いようだ」
「はうぅ〜〜ん!?」

皮肉屋だが心根は優しい、サーヴァント・アーチャー。

「ええ〜〜っ!? 葛木先生が婚約者を連れてウチに居候〜〜!?」
「しばらくご厄介になります、藤村先生」
「先輩、くっ、葛木先生って・・・・・・」
「あー、桜、別に葛木がロリコンって訳じゃ無いぞ」

匿われた衛宮邸の片隅の小さな部屋で、少し調子外れの小さな恋のメロディーを爪弾くエンジェルと宗一郎。
それが。

「ねぇ、衛宮さん。もしも・・・もしも私が、戦う気になっちゃったら・・・・・・貴方のその銃で、私を殺してくださいね」
「エンジェル・・・なにを?」

ゆっくりと、音を立てて崩壊してゆくのは。

「桜・・・お前の中の闇、今こそ解き放つのじゃ!!」
「おっ、お爺様・・・嫌・・・嫌・・・イヤアァァァァァァァァァァァァァァァ!?」

避けられぬ運命であったのか?

「なっ、なによ!? セイバーを飲み込むあの影はっ!?」
「くっ・・・・・・シロウ、シロウー!!」
「セイバアァァァァァァァァ!?」

壊れていく平和。

「まさか・・・・・・桜が聖杯!?」
「その通りじゃ、小僧」

壊れていく日常。

「殺れ、アサシン」
「―――心得た、魔術師殿」

そして、暗殺者の兇刃が葛木の命を奪う時。

「やだ・・・やだよぅ・・・返事して・・・目を開けてよ、マスター!!」

少女は、殺意にその身をまかせる。
壊された小さな平和。
奪われたささやかな愛。
男の名は葛木宗一郎。
少女の名は―――

「タイプ・ビーナス。
天使型の胞子を撒き散らし、その星の生態系自体を死滅させる環境型侵略生物。
金星より飛来したアリストテレス。
その星の系統樹の、最強に位置する者・・・・・・アルティメット・ワン」

冬木の空を覆う巨大な天使。
舞い落ちる翼から生まれ出でる肉食の天使の群れが、街も、人も、蟲も、全てを食い尽くしてゆく。
それは、まさに世界の終わり。

「こんな・・・こんな所でワシが死ぬじゃとおぉぉぉぉぉ!?」
「それがアンタの報い・・・いいえ、私達のあがないよ、臓顕。けれど―――」

死んでゆく人々。
悪も、善も、全てを飲み干す暴食。

「―――けれど、けれどまだ、世界を終らせるわけにはいかんのだ!! 行け、ライダー、衛宮士郎!!」
「任せて下さいアーチャー・・・このペカサスが、必ずや士郎をヤツの所まで!!」

誓いを、ここに。
ただこの手の黒い銃弾だけが。
街を覆うあの天使に死をもたらす事が出来るのだ。

「エンジェルっ・・・エンジェルうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――少女は、英雄などでは無かった。
ただ、人々が夢想した小さな幻。
今はもう、何処にも居ない少女の。
調律の合っていないギターだけが、今も衛宮邸の客間の隅に転がっている。


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