初めて凛と呼んだ日(M:遠坂凛  傾:恋愛 )


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1: 傾奇者 (2004/04/11 19:27:24)[kabukimono5232 at hotmail.com]

初めて凛と呼んだ日

彼女を見た世の男性は10人中、10人は美人と答えるだろう。
緩くウェーブのかかった艶やかな黒髪。意志の強そうな大きな眼。整った顔立ち。きめ細かい肌。ほっそりとした肢体。そして鮮烈な赤。
しかし、こうも全面に黒いオーラを出していると近寄ってくる男性も少ないだろう。彼女こと遠坂 凛は激烈に不機嫌であった。
原因は彼女の魔術の弟子でもあり恋人でもある衛宮 士郎にあった。
朝のホームルーム、彼女の席から少し離れたところで彼はクラスの女子生徒、数人と話していた。

「衛宮君、夏があけてからなんか雰囲気かわったよね〜」

「うんうん。身長も伸びたしね〜。顔つきなんかも男らしくなったし。」

聖杯戦争という馬鹿げた殺し合いを生き抜きいた経験。セイバーとの鍛錬、凛の魔術講座、そして士郎の愚直な性格が
精神的にも身体的にも彼を「少年」から一人の「男性」へと変貌させるのは半年間というのはけして短い期間ではなかった。
急激な変化は周りに注目されるものである。しかも、今までたいして目立たなかった少年がである。
女生徒達の反応は押して知るべきものだろう。だが、この朴念仁にはそんな自覚はもちろん無い。

「そ、そうかな?」

「そうよ〜。体つきなんかめちゃめちゃがっしりしてるし〜。試しに力こぶ作ってみてよ〜。」

「うん?こうか?」

「きゃ〜。なんかぶら下がれそう。えい!」

女子生徒が彼の腕にぶらさがってくる。

「うわ!!やめろって!!」

士郎は顔を真っ赤にしていう。

「すご〜い。全然びくともしない。麻美〜、あんたもぶら下がってみなさいよ〜」

「じゃあ衛宮くん、アタシもいくよ〜」

もう一人の女子生徒も士郎の腕にぶらさがってくる。

「ちょっちょっと勘弁してくれよ〜」

「すごい!すごい!二人ぶら下がってもびくともしないよ〜」

その時、士郎の背中に強烈な悪寒が走る。
ギギッと音がしそうな風に振り向くと最高の笑顔で微笑んでいる、あかいあくまがいた。




二人は並んで士郎の手作り弁当を食べている。場所は屋上。九月の初めにしてはすごしやすい陽気だ。
だがそんな天候とは逆に息苦しい沈黙。あまりの息苦しさに意を決して士郎は話しかける。

「あの〜、遠坂?なにをそんなに怒ってるんだよ?」

「別に怒ってなんかないわよ」

ぶすっとした表情で答える凛。

「怒ってる」

「怒ってない」

「怒ってる」

「怒ってない!!」

「怒ってる!!」

「怒ってるに決まってるでしょう!!」

はぁ〜と士郎はため息をついて

「やっぱり怒ってるじゃないか〜」

「怒るに決まってるでしょう!なに!?今朝のあれ!女の子にちやほやされちゃってさ。
鼻の下伸ばしてニヤニヤして助べったらしいったらありゃしない」

「ちょっとまて、遠坂。別に俺は鼻の下も伸ばしてないし、ニヤニヤしてもいないぞ。
第一、俺はホント困ってたんだから。」

「困ってた?だったらちゃんと断るべきでしょ!!」

「ちゃんと断ってたじゃないか」

「あれで断ってる?あれで断ってるなら世話ないわ。」

凛は顔を士郎にグッと近づける

「うわっ、とっ、遠坂、近いって!」

「近い?ふ〜ん、衛宮君は彼女達とはくっついても良くて恋人でもある私は近づいちゃ駄目なんだ?」

「そんなことあるわけ・・。」

「そんなことあるわけもかかしも無い!!士郎!あなた最近、すこ〜しチヤホヤされるからって
勘違いして、周りに愛想、振りまきすぎてるんじゃないの?」

「ば馬鹿、そんな風にいうなら俺にも言い分があるぞ、遠坂。」

「言い分てなによ?」

「俺が愛想振りまいてるっていうなら遠坂のスカート、あれはなんなんだよ?いかにも私の足を見て〜
みたいな短さは?正直、見てるほうにとっちゃ目の毒以外の何物でもないんだぞ。」

凛は目を吊り上げて

「!!衛宮君、あなた私をそういう目で見てたんだ。もう私たち付き合い始めて半年以上たつのよ。少しは私のファッションぐらい
理解してくれてもいいじゃない!!おまけに私が必死こいて教えても魔術の腕は上がらない、英語もペケ。いったいどうなってるのよ?」

こうなっては売り言葉に買い言葉である。士郎もムキになって反論する。

「なんだよ、魔術や英語は今は関係ないじゃないか!!よし、わかった。この際だからはっきり言わせてもらう。
確かに魔術や英語を教えてくれるのは本当に感謝してるよ。でもな最近なんかお前おかしいぞ。
前からだってそりゃ厳しかったけどなにをするにしても、もうちょっと余裕があった。
でも今はなんだか毎日、焦ってるいるように見えるんだ。
この前だってセイバーとの鍛錬でちょっと魔術講座に遅れてきたら物凄い剣幕じゃなかったか。昔はイヤミの一言で片付いてたぞ?
なぁ遠坂いったいお前どうしちまったんだよ?」

「っっっ〜。いったい誰のせいで焦ってると思ってるのよ!!私の気もしらないで!もういい!!
こんな馬鹿弟子とてもじゃないけど倫敦につれてけないわ!!師匠の私が赤っ恥かくのが目に見えてるからね!!」

彼女は言った直後に後悔する。
それは嘘。心にも思っていないこと。話の流れでつい出てしまった一言。でもそれは口から出れば力を持ってしまう。

士郎は何も答えない。いや、何も答えられないのか。

「しっ、士郎?」
場が凍る。そして士郎が何かをつぶやく。

「遠坂・・・。それは本気か?」

「えっ・・」

「それは本気かって、聞いたんだ遠坂」

(冗談に決まってるでしょ!そんなの)

と笑って答えてしまいたい。だが何かがのどに詰まってるようにその一言がでない。

―――重い沈黙、そして士郎は

「わかった、遠坂。お前がそんな風におもってるなんて俺、全然きづかなかったよ。ホント、ごめんな・・・。
こんな馬鹿弟子じゃとても倫敦に連れいていけないのも当然だよな。ハハッ・・。」

そう、静かにそしてひどく寂しげにいった。

こいつは何を言ってるんだ?
私と一緒に潜り抜けた聖杯戦争なんだったのよ!?
二人が初めてつながったあの夜は!?
それからの一杯の思い出は!?
今まで育んだ私たちの絆はそんな簡単に切れてしまうものなの!?
そんなっ、そんなっ、簡単に!!
ねぇ、士郎!?答えてよ!!

心の中で叫ぶ。くやしい!くるしい!かなしい!せつない!それらがない交ぜになった感情が凛を支配する。
何か一言いえば簡単に解決するのかもしれない。しかし何かいえば終わってしまう。そんな恐怖が凛に言葉を発させなかった。

これはかつて経験した死に直面した恐怖とは違った初めて感じる恐怖。これは女としての恐怖。思い人が去ってしまうという恐怖。
そして、その恐怖は彼女の人生において初めての純粋な意味での逃亡を決行させた。

流れる涙を隠さずに顔を真っ赤にして走り去る彼女。

止めることもできず、沈痛な面持ちで、力なく佇む彼。

天に流れる雲はそんな二人を知ってか知らずか
ただ、ただ流れていくだけだった。





放課後、士郎は一人とぼとぼと歩いていた。いつも隣にいたあの「あかいあくま」は今日はいない。
結局、凛はあの後、気分が悪いからといって早退してしまった。
なぜ、止められなかった?なぜ、あんな愚にもつかないことを言ってしまったのか?
ひどい後悔が彼を苛む。こんな時、あの赤い弓兵ならどうするのだろう?
「そんなこと私に聞くな。この馬鹿者が」という声が聞こえる気がする。
きっと遠坂は今、住んでいる衛宮邸でなく自分の自宅に帰ってしまったに違いないと思う。本来なら直ぐにでも遠坂邸に
赴くべきなのだろう。しかし彼の足は遠坂邸には向かなかった。そこに向かえば、決定的な何かが起こってしまうかもしれないから。
結局は士郎も凛と同じ恐怖を感じていたのである。




気がつくと自宅に到着していた。玄関を開けるとそこには、セイバーが腕を組んで士郎を待ち構えていた。

「セ、セイバー・・・。ただいま。いったいどうしたんだよ?そんな所にに立って?」

セイバーは美しいエメラルドグリーンの瞳で士郎を見据えていった。

「それはこちらのセリフです。先ほど凛が帰宅してきましたが帰るなり自室に直行して一歩も出てきません。」

「!?あいつ帰ってきてるのか?」

「はい。いったい学校でなにがあったのです、シロウ?帰ってきた時の凛の表情は普段の彼女からとても想像出来ないものでした。」

「そっそれは・・・。」

「私は凛のサーヴァントでもあり、あなたを守る剣でもある。私にはそれを聞く義務がある。」

金紗の髪の騎士王は強い眼差しで士郎を見つめる。少しの沈黙。そして、

「わかった。全部、話すよ。」

士郎は学校で起こったことを全て話した。朝のホームルームでのこと、昼食でのケンカ
そして彼女を止める事ができなかったことを。

士郎の話を聞いてセイバーは深いため息をつく。

「はぁ〜。二人そろいもそろってなんと不器用な。」

「ちっとまてセイバー、俺はともかく遠坂は違うだろ?」

「違いませんよ。それに士郎はその後に鈍感がつくんです。だから私も桜もくろ・・。」

「?セイバーと桜がどうかしたのか?」

セイバーは真っ赤になって慌てる。

「いっいえ!何でもありません!!それはもう完膚無きほどに!!」

士郎は少し悄然としない表情。

「とっ、とにかくシロウも凛もおたがいに言葉がまったくたりていない。こういってはなんですが今回はいい機会だと思います。
今まで言うべきことするべきことをしっかり彼女に伝えてきなさい。」

「でも、遠坂は・・・。」

「シロウ、もし凛があなたに愛想を尽かしているならここには帰ってきません。きっと自宅に帰っていたでしょう。しかし彼女は
ここに戻ってきた。なぜかわかりますか?彼女はあなたに止めて欲しいからここに戻ってきた。シロウと凛の絆でもあるこの家に。
早く彼女の元に行っておあげなさい。それともあなたはそんなに凛と倫敦に行くのが嫌のですか?」

「嫌なわけなんて無いだろう!!今の俺には遠坂がいない毎日なんて考えられない!!」

セイバーはやさしげな微笑を浮かべ

「では、答えがでてるでしょう。あなたが今、凛にいうべきことを伝えてきてください。」

士郎の瞳に力が戻る。

「わかった、セイバー。俺は俺がいうべきことを遠坂に伝えてくるよ。後、ホントありがとな、セイバー。俺、目が覚めたよ。」

彼女は喜びとちょっとした後悔を混ぜて

「どういたしまして。」

と答えた。

士郎が行った後、セイバーはつぶやく。

「私も人のことを不器用だなどと言えませんね。だが、これでいい。私も士郎と凛が並んでいない毎日など想像できないのだから」




士郎は凛の部屋の前に立って声をかける。

「遠坂、俺だ。」

答えはない。

「いいか、入るぞ。」

意を決してドアノブを回そうとする。鍵は・・・かかっていない。そこに士郎は希望を見出す。
まだ遠坂は俺を拒絶してるわけじゃない・・・!
中に入ってみる凛はベッドに突っ伏していた。制服は着っぱなし、美しい漆黒の黒髪はベッドにめちゃくちゃに広がっていた。
普段の彼女から想像できないあまりにも弱弱しい姿。言葉が思いつかない。重苦しい沈黙。そんな沈黙の中、以外にも口火を
切ったのは凛だった。

「いつも不安だった・・・。」

「えっ?」

「いつも不安だった!!いつか士郎が私から離れていっちゃうんじゃないかって。私よりもっとあなたのことを幸せにできる人が
現れるんじゃないかってそう思ってた。」

士郎は慌てて答える。

「そんなことあるわけないじゃないか!!おれにとって恋人ってのは遠坂だけだ。」

そう断言する。しかし凛は

「私だって最初はそう思ってた。どうやって士郎を幸せにしてやろうかと考えるだけでも楽しかった。
だけど、だんだんと「アイツ」に似てくるあなたを見てどんどん怖くなった。」

凛の言う「アイツ」。衛宮士郎の理想の成れの果て。あの赤い背中を士郎は思い出す。

「アイツはあなたの未来。似てくるのは当然だと思う。だけど怖い。私が士郎を「アイツ」にしちゃうんじゃないかって・・。
もしそうなら私は士郎から離れるべきだと思う。でもねそれは無理。死んでも無理よっ!!
士郎にはじめて抱かれた時、私はこれ以上、人を好きになるって思いもしなかった。それぐらいあの時、士郎が好きだった。
けど、それは違った。いつも士郎の顔を見るたびにもっと好きになった!士郎の声を聞くだけでももっと好きになった!
士郎に抱かれるたびに私は新しい恋をあなたにしてた!」

凛は起き上がり士郎に顔を向ける。その顔には涙の跡にまた涙が流れるそんな状態だった。そして凛は続ける。

「最近あなたと歩いてるといろんな女の子が振り向いてくる。桜だってセイバーだってそう。いつもあなたのことを見てる。
あんなきれいな二人だけでとんでもないライバルなのに他の女の子まで出てきたら私どうしたらいいのよ!!
こんな強気なだけで女の子らしくない私はどうしたらいいのよ!!」

士郎は何もいえない。憑き物でも落ちたかのような顔をしてる。

「何よその顔は!?もう、なんとかいってよ!士郎!」

士郎を大きく息を吸い、そして凛の隣に静かに腰をかけ語り始めた。

「正直、以外だった。」

「イ、ガ、イ?」

「ああ、以外だった。俺も同じなんだよ、遠坂。俺もあの夜、遠坂をはじめて抱いた時、これ以上ないくらい遠坂が
愛しかった。でもそれは違った。いつも遠坂を見るたびに俺はもっと遠坂を好きになっていった。
声を聞くたびに遠坂がもっと愛しくなった。遠坂を抱くたびに俺は新しい恋を遠坂にしてたんだ。
でも不安だったよ。遠坂は学園のアイドルでしかも合うたびにどんどんキレイになっていく。だからいつかもっと遠坂を
幸せにできるやつが横からかっさらっていくんじゃいかって。」

部屋に静謐が立ち込める。でもそれはわづかだった。

「ふふっ」

「ははっ」

「「あっはははっ!!」」

もう二人に暗さはない。あるのは笑顔。凛の笑顔は少々、涙混じりだが。

「なによ、結局、二人で同じことで悩んでたんじゃない。あ〜あ、なんだか泣き損しちゃったな。」

「けど、俺は踏ん切りがついた。俺は遠坂に本当に伝えるべきことを言うよ。」

「?」

「俺は馬鹿だから「凛」のことをまた泣かせてしまうと思う。でも「凛」の涙は全部俺が受け止めるよ」

士郎はそういうと凛の涙をぬぐってあげる。

凛は茫然自失だ
こいつ「遠坂」じゃなくて初めて「凛」って呼んだ。その事実にたどりつくまで数秒。
そして凛の顔はあっという間に茹で上がる。

「っつ〜っっ!!ちょっちょっと、あんたズルイわよ。何もこんな時に下の名前で呼ぶなんて!!」

「嫌か?」

「そっそんなわけないじゃない!!嬉しいわよ!!」

そういって凛は顔を背ける。そして

「もう一回いって」

「え?」

「だからもう一回、名前をいって。」

今度は士郎の顔が茹で上がる番だ。そしておずおずと言い出す。

「えっ、えっと、凛?」

ここで「あかいあくま」の本領発揮である。

「よく聞こえない。」

「凛」

「もう一回」

「凛!!」

凛はそれを聞くと士郎の胸に思い切り抱きつく。そして凛は士郎に止めを刺す!

「えへへ、嬉しい。それと、だ〜い好きだよ!士郎!」

強烈な一撃だった。甘い匂い。柔らかな胸の感触。そして最高の笑顔が士郎の理性を崩壊させるのには
十分すぎる破壊力を持っていた。

野・獣・轟・臨!!

「凛、俺これから一杯、凛のこと「鳴」かせたい」

「え?」

凛が答えるまもなく士郎は凛の耳を甘噛みしてくる。

「ひゃう!!ちょっと、士郎、待ってってば!!」

「待たない。もう我慢できないよ凛。」

「凛」という呪文がまた彼女の顔を赤くする。

「それは反則だって、うっ、うんっ!」

うるさいとばかりに士郎は凛の唇を自分の唇でふさぐ。だが・・・。

「シロウ!!そこまでです!!」

セイバーがドアを蹴破り乱入してきた。驚いた二人は一気に離れる。セイバーは士郎を睨み付け

「シロウ!!わたしは伝えるべきことを伝えろとはいいましたが、そこから先へ進めとは一言も言ってません!!」

とまくし立てる。

「それに凛も凛です!?何であそこで拒まないのですか!?」

凛は真っ赤になって

「なっ、なっ、なんでセイバーがいきなり入ってくるのよ!?もしかしてアンタ、まさか・・・?」

「はい。先ほど士郎にも言いましたが私は凛のサーヴァントでもあり士郎を守る剣でもあると。ですから二人の様子を
ドア越しにしっかりと見守らせてもらいました。」

「「っっっ〜〜〜〜〜!!!」」

「あの〜セイバー?それはどこらへんから・・・。」

士郎はおびえる小動物の目で彼女に質問する。

「はい。だいたい凛の「いつも士郎の顔を見るたびにに好きになっていった」の下りあたりからでしょうか」

それを聞くとあまりの恥ずかしさに士郎は耳まで真っ赤にして硬直し凛はベッドの上をのたうちまわっていた。
セイバーはそんな二人にかまわず告げる。

「とにかく!士郎、そろそろ夕食の時間です。サクラもタイガも部活が終わるころですし、そろそろ準備を始めたほうがいいと思う。」

これを聞くと二人は「「そっちが本命なんだな・・。」」と心の中でハラペコ騎士王に突っ込んでいた。





「シロウ、おかわりをください」
「士郎〜〜〜!!おかわり〜〜〜〜!!!」

と、同時に三杯目のおかわりを要求するセイバーと大河。ちなみに桜は二杯目に入っている。
この大食い達のおかげで、最近の衛宮家はエンゲル係数はうなぎのぼりで上昇中だ。士郎は財布の中身を思うと暗澹とした気分になる。
士郎は手早くご飯を盛る(もちろん山盛り)。

「衛宮君、あたしも。」

めずらしく凛が二杯目を要求してきた。

「あっ、ああ。」

なんだかいや〜な予感がする・・・。そんな悪寒をふりきり二杯目を凛にわたす。

「ホラ、遠坂。」

うけとらないどころか、士郎を睨みつける。

「あの〜、遠坂さん用意できたんだけどな〜?」

うけとらない。

なぜ受け取らないのか桜と大河は不思議そうな目で凛を見ている。セイバーは我、関せずだ。

そして、やっと士郎は理解した。この「あかいあくま」の姦計を。は〜〜っと大きく深呼吸して

「凛、ホラ。」

と、ぶっきらぼうにそして照れながらいった。

「アリガト!士郎!」

そうして「あかいあくま」の笑顔で答えた。これがやりたかったんですね、遠坂さん・・。

大河と桜が固まっている。そして爆発した!!

「ちょっと、今のどういうことよ〜〜〜〜!!!シ〜ロ〜ウ〜〜〜〜〜。」
「ちょっと、今のどういうことですか!!先輩〜〜〜〜〜!!!!」

士郎は胸倉を大河と桜につかまれる。大河の行動は理解できるが桜が今日は半端じゃない。

「さっ桜、ふじ姉、くっくるしい〜〜。勘弁してくれ〜。」

だが「あかいあくま」の姦計はまだまだ終わらなかった。凛は二杯目に手をつけず立ち上がる。
そうして彼女は核爆弾を落とした!!

「そうだ、士郎。後で私の部屋にきなさい。さっきは私をたくさん「鳴」かしてくれるっていってたもんね。楽しみに待ってるわ。衛・宮・君。」

そうしてスタスタと食卓を去っていく「あかいあくま」。士郎は完璧に観念した。
「虎に絞められ悶死しろ」と言う声が聞こえる。

そして、とうとう必殺のタイガーギロチンチョークが炸裂した!!

「士郎〜〜〜〜。お姉ちゃんは、お姉ちゃんはそんなふしだらな子に育て覚えはありませ〜〜〜〜ん!!!!!!」

力が入ってる!力が入ってる!! でっでっ出た〜〜〜!!虎の顔だ〜〜〜!!!

「うふふっ、藤村先生。あまりやりすぎちゃだめですよ。私の分もしっかり残して置いてくださいね!」

あ〜黒い、黒いよ、桜。なんだか背後に黒いオーラが見えるよ桜。消え去りそうな意識の中、士郎はそんなことは思っていた。

セイバーはそんな騒ぎの中
「むむっ!!このたくあんは塩加減が絶妙ですね。漬物というのも奥が深い」
とコクコクとうなずいていた。




凛は一人、衛宮邸の廊下を歩いていた。顔には本当に幸せそうな笑み。空には月が光を放っている。
彼女は思う。今日という日を。

今日はたくさん悲しかった日。でも、一番嬉しかった日。

あいつが初めて名前を呼んでくれた日。

あいつが初めて私を凛と呼んだ日。

あいつは来年になっても今日のことを覚えてるだろうか?

多分アイツのことだから忘れてるに違いない。

それだったら何度でも思い出させてやる。

私がどんなに嬉しかったかを。私がどんなに士郎を大好きかってことを。

毎年、毎年、死んでからも。それから先も・・・。ず〜〜〜っと。

柔らかな月光に包まれ彼女は一言

「一緒に幸せでいようね。士郎。」




どうかこの二人に柔らかな幸せが降り続きますように・・・・。




























2: 傾奇者 (2004/04/11 20:34:14)[kabukimono5232 at hotmail.com]

勢いで投稿して後の祭りになっている傾奇者です。ホント、誤字が多くてすみません!!
穴があったら入りたい気分です・・・。次回からは(次回があればいいけど)
このようなミスがないようにいたしますのでどうか皆様、ご容赦くださいませ!!


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