その御方は颯爽と現れた。
杖らしきもので槍を防ぐと悪漢は土蔵をでて一足にて距離を置く。
今目の前に居られる方はすぐに誰だか分かったが、余りの非現実さに我が目を疑った。
しかしその御方は確かにそこに存在し、その神々しい姿を俺が見間違う筈はない。
その御方とその従者は余りにも有名で、最強だった。
俺が知る限り最も多くの悪を打ち倒し、そして無敗。
そう、俺の目の前には徳川権中納言光圀(水戸の黄門様)がいらっしゃったのだ!!
――最強の英霊――
『プロローグ』
「七人目のサーヴァントだと! てめぇ何者だ!」
「なに、ただの旅の隠居じゃよ。それよりも、引く気は無いのじゃな?」
「はっ! ふざけるな。爺さん一人に何が出来る!」
悪漢は知らない。
この御方の最強の従者達を!
「ふむ、では仕方ない」
黄門様の辺り一帯に力が収束していく。
杖を突き出し、腹の底から声を出して言う。
「助さん格さん、やっておしまいなさい!」
「なに!」
悪漢がそう叫ぶのと同時に、黄門様の左右の空間から二人の男達が出現し敵に迫る。
あれは間違いない。
剣の達人佐々木助三郎に体術の達人渥美格之進だ!
そして戦いは始まる。
三人の戦いは人のものではなく、悪漢は急所を次々と狙う直線的な槍の豪雨を繰り出す。
それを何の苦もなく捌ききり、逆に攻める助さん!
超人同士の壮絶な捕り物が目の前で展開されている。
助さんの技で槍の動きを封じられている所に、絶妙の連携で格さんが飛び込み悪漢の腕を取り、締め上げる。
そして、
数々の悪漢を平伏させたその手腕で、今宵の悪漢も追いつめた!
強いぞ助さん格さん!
「いてててて! いてぇって、オイ!」
「暴れるでない」
地面に這い蹲る悪漢は格さんの呪縛から逃れようと暴れるが、完全に組み敷かれその身動きを封じられる。
「ふむ、引いてくれるな?」
黄門様が悪漢に問いかける。
黄門様、そんな事いわずにもっと痛めつけてやってください!
「ちくしょー、覚えてやがれ爺!」
格さんが腕を解くと同時に塀を越えて逃げていく。
「まったく、ご老公に向かって爺とは何事だ!」
助さんは刀を鞘に収めつつ黄門様の元に来る。
「はっはっは、良いではないか。して、お前さんの名前は?」
「え、衛宮士郎ですっ!」
黄門様に話しかけられて、心臓が爆発しそうになる。
お、落ち着け、俺。
「では士郎。かような老人ではあるが、これから宜しく頼みますぞ」
「はい!」
何の事かはさっぱり分からなかったが、水戸の黄門様に出会えてしまった俺にそんな事を考える余裕はなかった。
ただただ黄門様とその従者の勇士に見惚れていて、何故黄門様が出現したのかも謎のままだ。
だがここから、衛宮士郎と黄門様との正義の味方ぶらり旅〜冬木編〜が始まるのだった!
続く……。
本編が短いので――
『勝手に物語予告!』
黄門様ご一行の前に次々と現れる悪漢(サーヴァント)たち。
物語は奇想天外?(でもないか…)な方向に進んでいく!
〜第一話:空に舞う燕〜
紫の陣羽織を着る悪漢、アサシン佐々木小次郎と助さんの壮絶にして華麗なる剣の舞。
互いに決定打が打てず月の陰るまで続く剣戟。
「ふむ、月が隠れてしまいそうだ。貴様との死合い面白かったが……決着をつけさせてもらおう」
そして小次郎の燕返しが助さんを襲う!
〜第二話:ガチンコファイト〜
拳と拳がぶつかり合う漢のバトル!
不可思議な拳法に追いつめられる格さん。
「ふむ、ここまでしても死なぬとは。人の身でないか――」
かろうじて受けきるも、絶体絶命か!?
〜第三話:闇を飛び交う赤い風車〜
陰で暗躍する黄門さまの陰のお目付け役でもある忍、弥七。
他サーヴァントの情報が、赤い風車により次々と黄門様の元へと運ばれる!
「ご隠居、弥七からです」 「うむ」
黄門様一の信頼を受ける忍は今日も闇夜を駆ける!
〜第四話:お色気担当は誰だ?〜
お色気担当対決勃発?
お銀とライダーの入浴悩殺対決!
そこに乱入する間桐桜と遠坂凛!
「な、何してるんですかあなた達!」 「士郎ーーー!」
士郎を真っ先に戦闘不能にするのは果たして誰か!?
〜第五話:マッチョ×マッチョ〜
アインツベルンの森で激突する二人(一人と一体?)の巨漢。
必ずといっていいほど何かを破壊しながら登場する猿面軍団の親玉、飛猿。
「■■■■ーーー!!」
その破壊衝動より生み出されし怪力は狂人を追いつめる!
〜第六話:エンゲル係数上昇中!〜
衛宮邸で一人飯を食らい続ける男、八兵衛。
「こら八兵衛、少しは遠慮したらどうだ」
「食べ始めたら止まりませんよ、ご隠居」
彼の者に意味はなく、その身は食欲で出来ていた!
〜最終話:最強の宝具〜
最後の最後にして明らかになる黄門様のクラス。
そして炸裂する究極の宝具!
「っく、英雄王である我が何故このような爺に跪かねばならんのだ!」
身体の自由を奪われ、黄門様の前に跪く英雄王。
そして物語は終焉を迎える。
事の終わりに高らかに響く決め台詞!
「これにて一件落着。 はぁっはっはっはっ!」
最強の英雄により、冬木に平穏が訪れる―――。
〜あとがき〜
すみません冗談です。
決して続きません。
マジにこんなもんやったら周りからさんざんっぱら叩かれて廃人になりそうです。