ある冬に冬木市で起こった聖杯戦争。それは10年前のように聖杯の破壊というカタチで終わりを告げる。
だが10年という短期間で行われた二度に渡る聖杯の破壊は災いを呼び寄せてしまう。
「あたしの目的はあんたへの復讐」
衛宮を名乗り復讐を行うキリツグの子。
「僕の名はデュンケル。出来そこないの聖杯さ。」
聖杯でないゆえに不死を求め戦闘用ホムルンクスとなった少年。
「我が望みは殺戮のみ。」
この世を滅ぼし全てを滅ぼす魔剣をもつサーヴァント
「フム、この地もなかなかよい。」
人の噂をカタチとするタタリ
しかしまた味方もいた。
「いいのですか?これは私個人の問題です。」
「今更それはないだろうシオン」
アトラスから来た錬金術師と直死の魔眼を持つ殺人貴
「竜之炎壱式砕羽!」
火影の血をひく炎術士
「突き刺され俺の武装練金」
「臓物(ハラワタ)をぶちまけろ。」
バタフライから錬金術を譲り受けたドイツ人を追う少年と少女
「この世に未練などない。だがお主らの行いは目に余るわ。」
主君への忠義を尽くすサーヴァント
復讐、タタリ、魔剣、様々な不吉が起こる中、再び行われる、聖杯を巡る戦い。
そして少女と少年は再び邂逅を果たす。
「セイバー・・・・・・。」
「問おう。あなたが私のマスターか?」
乞う!ご期待
クロスオーバー予定作品
月姫(メルブラ含む) 武装練金 烈火の炎(ただし烈火のみ)
後書き
まだ3話までしか進んでませんが思い切って載せることに。この上は完結させるまで血反吐はくのみと覚悟しましょう。
第一話 不穏な影
―シロウ・・・・あなたを愛している・・・・―
そう言い残して金色の髪の少女は消えていった。その時の様子は鮮明に覚えている。
いやその時だけではない。彼女がいた頃のことは今でも鮮明に思い出せる。そうこのように夢見るまでに・・・。
「ん、ああ・・・・」
布団から体を起こす、朝の光がやけにまぶしい。
「夢か・・・・・・・」
ようやく収まっていた矢先にこれだ。遠坂に「未練なんてない。」などと言っておいて、自分はまだ未練たらたらだったらしい。
「先が思いやられるよな・・」
そう呟いた後、頬をペシリと叩き気合を入れなおす。さて、それでは朝食でも作りますか・・・・・。
interlude 1−1
そこは地下室というには広すぎた。なのに全く開放感がないのはどういうわけか。それはそこの空気と下で這いずり回る虫のせいであろう。その中で生きてる人間は二人。
「さて朝にもなったし、もういいじゃろう。」
そのうち一人は老人だ。そしてもう一人は忌まわしき部屋の床に座り込んでいた。
「フム、昨晩は魔力を消費しすぎたからの。調子はどうじゃ。」
それに答える声は弱々しい。
「どうして・・・・もうこんなことする必要無い筈。」
「何をゆうとる。アレが成功した以上おぬしにも分かっておろう。再びはじまるんじゃよ。あの儀式がのう。」
そういう声はどこか興奮している。無理もない。こうまで早く機会が巡ってくるとはさすがに予想外であった。さらに容易した器の方もいい具合である。半年前焦って使わなくてもよかったとつくづく思う。
「この度こそ叶えてみせようぞ。我らマキリの悲願を。」
ハハハハハと嬉しそうに笑う声を聞きもう一人の人影はギリと歯を食いしばった。
interlude out
「士郎〜いってくるね。」
弓道部の朝練をしに行った藤ねえを見送った後、後片付けに入る。今日は桜が来なかった。具合でも悪いんだろうか。イリヤもつい先日実家(ドイツにあるらしい)に行ってしまって(そろそろ戻ってくるだろうが)今日は藤ねえと二人きり。親父の死んだ直後を思い出す。あれからもう4年が経とうとしている。その間に随分いろんなことがあったがここ半年の変化が郡を抜いていてそれ以前などもはや霞のようだ。
「そういえば遠坂も来なかったな?」
「いま来たわよ。」
イキナリ背後から声がかかった。振りかえると遠坂が立っていたわけなんだが・・・。
「どうした。遠坂?」
あきらかに変だ。いや、いつもの格好なんだがなんだか顔が怖いぞ。
「ん、ちょっとね。いきなり朝から協会から連絡があって。あ、食べながら話していい?ついでにイリヤにも聞いてほしいんだけど。」
そういってまだ片付けてなかった朝食に箸をつける。
「最近、妙な通り魔が横行してるんだけど」
「待てよ?そんなニュース聞いてないぞ?あれから新都もここいらも平和だし。」
「ここの話じゃないの。それどころか個別の事件発生地帯は最低50キロは離れてるし日付も不規則。だから警察じゃあ同一犯とはされてないらしいわ。」
「分からないな。協会がそんなこと気にするとは思えないしそもそもその妙なことってなんだ。」
「被害者がすべて魔術師。これが第一の共通点。」
フム、そいつは確かに協会が・・・・・ってええっ!
「どいつもその町を任される位の実力のある魔術師よ。まあ私ほどじゃないわ。シロウよりずっと強いけど。」
なんか気にかかる一言があった気がするがあえて無視。
「それで、そいつがどう関ってくる?」
「ここまで来れば明白でしょう。そいつの次のターゲットはこの町である可能性が高い。だから気をつけろって。」
なんてことだ。もしそれが本当ならそいつは確実に遠坂を狙うだろう。なんといっても公式に聖杯戦争を生き残ったのは彼女だと言われている。無論本当は俺なのだがただでさえ地主を無視した魔術師。協会に目をつけられるのは得策ではないと言って遠坂が変わってくれたのだ。
「いいのかよ。一人でウロチョロして。」
「最近の被害が昨日。昨日の今日で襲ってはこないでしょ。被害者は皆夜にやられたっていうし。大丈夫。他のヤツならいざ知らず返り討ちにしてやるわよ。っていうワケで士郎付き合いなさい、ついでにしばらくここに厄介になるから。」
「って今更いわれてもなあ・・・・」
さすがに個人的な荷物まで置いてないが以前遠坂が使ってた部屋はそのままだ。夕食まで食べに来る彼女に魔術を教わる(といっても魔術回路の開発など技術以前のしろものだが)際、簡単なことならここで出来るようにしてあるし。それにそんな話を聞いて黙っていられるタチではない。ソイツが何者かは知らないが正義の味方を目指すものとして放ってはおけない。結局、コイツの言うことを承諾する以外オレの道はないのだから。
interlude1−2
「ここが冬木市か」
夏だというのに黒のジャケットを着た青年が呟く。ここは冬木駅、道行く人の中でその銀髪だけが目立っている。
「なるほど、儀式にふさわしい土地だ。しかもアレが来ている。なかなか面白いゲームになりそうだね。」
そしてふわりと消えていく。そのさまを不審に思うものはいなかった。
interlude out
第二話 強襲
「おっす。こっちは終わったぞ一成。」
「ウム、毎度すまぬな。衛宮。」
結局あのあと昼飯を食いながら簡単な会議をした。といっても二人で夜の探索をするといった類でそれも明日からだとか。まあそうでなければこうやって備品の修理などさせてはもらえまい。なにせ、遠坂はあの性格だからこう、と決めたら強引なんて言葉がかわいく思えるくらい引っ張ってくれるし。
「いいって。好きでやってるんだし。それで次はどこだ?」
「もう今日はいい。そんなに働かされるものか。」
「でもできるうちにやっといた方がいいぞ。もうすぐ夏休みだし。」
「・・・・・・人のいいのは認めるがそれも度が過ぎれば及ばざるが如し。特に半年前少し直ったのかと思えばまたぶり返している。」
「え、オレは別に変わってないぞ。」
「いや、そうは思えん。セイバーさんが国元へ帰ってからというものなにかますます危うくなってきたぞ。」
「そんなことない。俺は大丈夫さ。」
もうセイバーのことは吹っ切った。いや吹っ切らなければならない。彼女は果たすべき責務を果たし今はゆっくり休んでいるだろう。そして残った俺は俺の生き方を貫くため必死にならないとあいつに申し訳が立たない。
「・・・・・まあ、いい。こういうことは己で知るものだ。ところで今日はもう本当にいい。わが寺でちょっとした祝宴をやるのでな。早いうちに帰ってこないといけないのだ。」
「祝宴てなにさ。」
「半年前壊れた箇所がようやく修復したのだ。今日は肉も食えるらしい。」
普段から精進料理が主食の一成が嬉しそうにいうのを聞いて別の意味で心が痛んだ。確かに派手にやったからなあ。
「以上より今日はこれにて終わりだ。帰るとしようか。」
ああ、と答えようとして違和感を感じた。なにかあたりの空間が隔離されたような感じ・・・・
(これは遠坂に魔術講義でやってもらった。人払いの結界!まずい、狙いは分からないけど一成が巻き込まれる!)
「一成・・・オレ忘れ物したから先に帰っといてくれ。」
「ム・・それなら校門で待ってるが?」
「どこへ行くの?衛宮士郎。」
声が背中から聞こえる。そいつの姿を凝視する。夕暮れの逆光なのでわかりにくいが年は桜と同じ位だろうか?髪の短いジーパンをはいた人影が見える。と、隣にいた一成が倒れた。
「一成!」
「大丈夫。ちょっと眠らしただけだから。話があるのはおまえだけだ。」
「お前、魔術師か?」
「そうさ。それにしても何だ。お前ろくに魔力を感じないぞ。ほんとに魔術師か?」
「ああ、だが一体お前はなんだ。話からして狙いは俺だろうけどあいにくよそのヤツに狙われるようなことはした覚えがない。」
「そちらにはなくてもこっちにはあるんだよ。オレの名は涼原ナツキ。いや、衛宮ナツキといったほうが分かりやすいか。」
今、なんと言った。衛宮だと。そいつはオレの名前のはず。もしそれ以外にいるとしたらそれは。
「キリツグの実の子供さ。仇を討ちにきた」
interlude
「いや、悪いね。遠坂。付き合わせちゃって。」
ここは冬木中央公園。とりあえず、家に帰って準備でもしようかと思っていた矢先綾子に呼び止められここに誘われたのだ。
「いいけど、なんでここなのよ。もっといい場所あるでしょ。」
「いや、なるべく人のいない所で話したいんだ。」
といってカバンをベンチの上に置く。カン、とつけていたお守りらしき玉が当たる。(なんでも、お父さんが関東に行った時お土産で買ってきたものらしい。高一の頃からだからもう、二年か)
「ねえ、ちょっと聞きたいことあるんだけど,いい?」
「いいけどあんまり深い質問はなしよ。」
「イヤ、あんたのことじゃない。衛宮のことさ。」
ふと足が止まる。なんか意外な名前が出てきた。
「あら、衛宮君のことなら彼自身に聞けばいいんじゃなくて。それに彼とはあまり面識がないわよ。」
「あいつに訊いてもはぐらかされるだけだ。というか、お前が衛宮んちに通ってるのは知っている。」
「な、なんでよ。」
「やっぱり、そうか。」
!はめられた。私としたことがこんな単純な誘導尋問に引っかかるとは。
「ああ、全くの勘ってわけでもない。情報源は桜だ。」
桜?それはおかしい。あの子はこういうことを言いふらす子じゃないのに。
「つい最近だが部活で帰るとき、5人分の食材を買わないといけないとか言ったことがあってね。さてここで問題だ。桜が衛宮んちに通ってるのは知ってるし、あそこは藤村先生やあとあの銀髪の子、イリヤって言ったっけ?もいる。さて残る一人は誰か?」
「それだけで、私と断定するのは無理でしょ。」
「いや、そのあと、もう一人って誰?って訊いたらなんか答えにくそうだったから遠坂かなって、あの子遠坂のことになるとなんか変な感じになるしさ。」
少々論理が飛躍しすぎてるとも思えるが結果がついてきてるのでおとなしく白旗を上げることにする。
「OK。で訊きたいことって。」
「アイツに何があった?」
・・・・・随分ストレートな訊き方をするわね。
「何って言われても・・・・」
「なら、お前がどう感じてるかでいい。とにかくなんか危ういだよ。衛宮は。半年前まではまだ周りを見ていた。でも今は違う。なんか遠くばかり見てて近くが見えてないっていうか、いついなくなってもおかしくないって感じがするんだ。」
そう言って一呼吸おく。
「あいつは、ああいうやつだから。生徒会の仕事とか手伝ったりするのは当たり前だなんてみんな思ってるかもしれないし、本人も自分がしたいからって言ってる。でもさ、なんか今のアイツを見てると何かを忘れたくてやってる風にしか見えない。」
その言い方は正しいと思う。私には「未練はない。」なんて言ってみたもののそんなわけはない。理想だからではなく人として好きだった少女がいなくなったのだ。それも、もう二度と戻らない形で。だからと言って嘘をついた彼を責めることはできない。彼にとってセイバーとの約束は絶対でありそれを守るためにも今立ち止まるわけには行かないのだ。そしてそれ故に危うい。セイバーが去ってからの彼はただガムシャラだ。私の魔術講義にしても、こっちが課すノルマを片っ端からやろうとする。そして終わればすぐ次を求める。正直その熱心さには尊敬を通り越して寒気すら覚える。確かに
彼は魔術師として学ぶには遅い頃だ。しかし、彼の魔術は基本からあまりにかけ離れていて一般的な魔術的常識で推し量ることができない。それゆえに
慎重になるべきなのに急ごうとしている。先月もまだ開いていない魔術回路を無理やり開ききろうとして危うく死にかけた。その様を叱りつけながら思った。
これでは持たない。輝きすぎる炎は早く燃え尽きる。
「ゴメン、綾子。」
でも、謝るしかない。アイツの欠点が分かっててでもそれを口にしたとて彼は止まらない。いや、止まることを許されないと思っている。卒業するまでになんとか目処をつけたいけど。
「・・・・・そうか。お前もそう思ってたんだな。それが分かれば今はいいさ。」
「え?」
「衛宮のことを心配してくれてるってことが分かればいいってことさ。実をいうとね、この質問をお前にしろって柳堂に言われたんだよ。」
「柳堂君に?」
「まあ予算のことで話してるうちにね。」
その言葉に目を覚まされる。
アイツを気にかけてるのは私一人じゃない。そんなの当たり前のことだけどこうして言葉にしてもらえるとつくづくそう思う。さて今の気持ちをどう言葉にしようかと思ってると
「さて、もうよいかな。」
その言葉に背中が一瞬にして凍りついた。それはまごう事無き殺気。
久しぶりの・・・そしてあまり経験したくないその感覚。
振り向くと髪の長い黒い鎧を来た男がいた。
「遠坂凛、その命我が糧とする。」
interlude out
訂正 一話で凛が「イリヤにも聞いてほしい。」とありますがここではイリヤは実家に行っていていないという設定ですので悪しからず。
第3話 錬金の戦士と勇士
「か・・た・・き?親父はもう・・・」
「切嗣が死んだのは知ってる。本当ならアイツを殺してやりたいがそれは叶わない。ならばアイツの忘れ形見であるお前を殺す。」
マズイ。ここには一成がそばで倒れている。とりあえずここから離れないと。
「くっ。」
全速力で駆け出そうとする。倒れている一成には悪いがここは全速で離脱あるのみ。
「そう身構えるな。まだことを構える気はない。」
「は?」
「いや、そのつもりだったが気が変わった。その程度の魔力しか持たないお前を今の状態で殺すのはつまらない。どうせならサーヴァントを呼び出してからだ。」
・・・まて今すごく懐かしい言葉が出たが。
「サーヴァントだって。ってことはまさか、」
「そう、聖杯戦争の再開だ。」
interlude by 遠坂凛
「綾子逃げて!」
そう言って足に魔力を込め全速力で走ろうとする。なんてうかつ。魔術師襲撃事件の知らせを受けたのについ他人といっしょにいた自分を。だが今はここから離れないと・・・
「悪いけどここから逃すわけにはいかないよ。」
もう一つの声。私の行き先には銀髪の男がいた。
「くっ。」
ピタリと止まる。
「逃がすわけないだろう。ミス・トオサカ。もちろんそこのお嬢さんもね。」
「なっ、あ、綾子は関係ないでしょう」
「何を今更、僕達は魔術師だろ。その存在は人に知られてはならない。ゆえに知ったものは必ず殺す。当たり前だろう。」
淡々とそう述べる。そう、それが魔術師の掟。でも、認めるわけにはいかない。身勝手かもしれないけど綾子は私の親友なんだから。
「さて、一度きりの出会いとはいえ自己紹介しないのは失礼にあたるな。
僕の名はデュンケル・フォン・アインツベルン。」
アインツベルン!ってことはイリヤの・・・でも待ってドイツに本拠地を置く彼らがこの地に来たということは。
「どうやら知らないようだね。聖杯戦争が再開されたということさ。」
「嘘よ。あれからまだ半年経ってないわよ。」
「ならば君の目の前にいるのはなんだい。」
そういって黒い鎧の男の方に目を向ける。確かに、言われてみれば人間とはケタの違う魔力を持っているのが分る。すぐに分らなかったのは多分アイツの持つ存在の薄さ。黒い鎧と対照的な白い髪。その容姿が生きているものという認識をなくさせているのだ。
「理解したようだね。もう少し話してもいいんだけどあいにく、こちらも追われている身でね。手早くいかせてもらおうか。」
そしてそいつらは動き出した
interlude by 美綴綾子
あたしの目の前で起こっているのが現実か?なんて思ってしまう。そんな体たらくだからアイツらの言葉なんてほとんど理解できない。分っているのは遠坂が狙いだっていうことと自分の置かれている状況が限りなくヤバイことくらいだ。かといって逃げることもできない。コイツらには人の身では叶わない。そのくらいは私でも分る。そうしてそいつらは動き出した。白髪の方が遠坂を銀髪の方が私をという具合に。それでもせめて一発ぐらいぶん殴ってやろうと拳を振り上げたとき
「当たれ!俺の武装錬金!」
なんて言葉とほぼ同時にものすごい音が聞こえやがった。ついでに目の前には大きな槍。っていうかでかすぎるぞ。
「・・・・大丈夫か!」
なんて声と共に同じ年位のセーラー服の女の子と学ランの男の子が来た。
のはいいが女の子の方の足についてるロボットアームみたいなものは何だ?
「カズキ!アレほど人前で武装錬金は使うなといったろう。」
「イタイ、イタイ」
あ、男が女の足の鎌でドツかれてる。ますますあたしの理解の外だ。
「もうここまで追ってきたとは錬金の戦士を甘く見たかな?」
参ったとばかり髪をかきあげる
「そういうことだ。もう逃げられんぞ。ここで二人共殺してやる。」
「殺す?錬金の戦士は冗談が下手なようだ。ムーダー・・・・殺れ」
「指図されずとも命は頂く。」
そう漏らしたかと思うとそいつは掻き消え・・・・
ドガッ!
槍を持った少年を槍ごと吹き飛ばした。さっきより断然はやくなっている。この場合、槍ごと吹き飛ばした怪力を誉めるべきかその速さに反応してとっさに槍を剣に向けた少年を誉めるべきか判断しかねる。
「う、うわあああああ。」
「カズキ!」
そう叫びつつ足の鎌を男に向ける少女。その速度も尋常ではなくあたしではあっさり穴だらけになるのがオチだろう。だが4方向からくるソレをソイツはいともたやすく弾き、あろうことか反撃してくる。
「くっ、コイツ。」
4対1と手数で勝るにも関らず勝負は互角。そんな均衡状態の中
「ジュースティングスラッシャー。」
槍の少年が突撃してくる。その叫び声に反応して少女は後ろに飛んだ。
「甘い。」
それもあっさり止められた、と思いきや
「斗貴子さん!」
「臓物(ハラワタ)をぶちまけろ!」
ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ!
刃が相手の腹に纏めて突き刺さる。普通の人間なら死んでもおかしくない傷。
「やった!」
「ダメ。まだ生きてるわ。ソイツ!」
遠坂の叫びが終わらないうちに鎌が刺さった態勢で体を回転させていき、そして
ズポッ!
体に刺さっていた刃が抜かれると同時に少女は空へ放り出される。そこであわや地面に叩きつけられるかと思いきや
カッ、カッ、カッ、カッ
足の鎌で激突は免れるが振りまわされたのが悪かったか少しふらついている。
「錬金の戦士、少し見くびりすぎたか。ならば・・・・」
「綾子危ない!」
「え、」
気づくと黒い剣が伸びてくる。それは今にも私の心臓を貫かんとして
カキィィィィン!
弾かれる。
「え、」
見ると鞄についていたお守りの玉が光ってる。と、同時に頭の中に妙な言葉が流れ込んできた。
(ええい、何だって言うのよ)
ワケが分らないがこの状況に比べてひどいことなんてそうそうあるまい。
(ええい、ままよ、ってヤツ?)
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の珠に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「綾子!それは・・・」
玉の光が増す。その光があまりに眩しくて、眼を瞑る。そしてようやく光が収まる頃、眼を開けると羽織を着た侍がいた。
「何者だ。」
初めに口を開いたのは銀髪の少年。
「みて分らぬか。そこの白髪の男と同じサーヴァントよ。」
「セイバーか?」
「セイバー・・・・というと剣の英霊のことか。いや、わたしも剣を使うがソレほどの腕前ではない。敢えていうなら、勇士・・・・ブレイバーといったところか。」
「ブレイバー?」
「そう、得意な武器などない。誇れるのは主に対する忠誠心と仲間を思う義の心。主よ。命じてくだされ。」
「主ってあたしのこと?」
「そなた以外に誰がいる。私のシンボルである玉の持ち主であるあなた以外に誰が我が主たりえましょうか。」
「ええと・・・・・・」
あたしが右往左往していると
「戻れ!ムーダー!ひくぞ」
銀髪は左手を輝かせると白髪の男と二人で颯爽と消えて行った。
「逃がすか!」
「待て!カズキ!アイツらは市街地の方に向かった。追えば一般人を巻き込む。」
「う・・・・」
「それより、状況の把握が先だ。話してもらえますか。遠坂家の現当主?」
「ええ、当主ってこの子のことだったの!」
「どんなのだと思ったのよ・・・」
あ、遠坂のやつが憮然としている。
「ええと、髭とか生やしてて回りにメイドさんとかいて椅子にふんぞり返ってワイン飲んでるとか?」
「失礼よあんた。でも、まあいいわ。助けてくれたことには変わりないしここは我慢しましょう。さて立ち話も何だし落ち着けるところで話をしましょう。綾子もいいわね。」
「あ、ああ。」
「待て、主よ。うかつな信用は・・・・」
「ああ、大丈夫だ。アイツはアタシをだますようなヤツじゃない。」
どうやらとんでもない運命とやらに巻き込まれたようだがまあ、それは仕方ない。
それにあの遠坂が絡んでくるなら私も受けてやろう。夕暮れの帳が落ちる頃私はそう思った。
interlude out
後書き
ええ、ようやくクロス予定作品の一つ、「武装錬金」の登場です。なんで彼らがここにいるか次の次位話すことにしてまずカズキと斗貴子のパラメーターから。(今回でてきたサーヴァント、ムーダーとブレイバーのステータスはかなり後で登場予定)
武藤カズキ
筋力C 耐久B 敏捷D 魔力D 幸運B 宝具A
宝具サンライトハート(光をもたらす心の槍)形状 槍
実は威力においてはゲイボルグ並。あたれば決定打になれる。ただし使う本人が未熟故にBまでがせいぜい。刃は攻撃、柄で防御、布で強化、及び目くらまし兼明かりと思ったより使い勝手はいい。ただその大きさで攻撃パターンが限られ読みやすいのが難点。
津村 斗貴子
筋力D 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運C 宝具B
宝具
バルキリースカート(乙女操る死神の鎌) 形状 足に付属する4本の鎌つきロボットアーム
本来は3本を牽制に使いのこる一本でとどめを刺すいわば不意打ち用。(4本同時に攻撃に回せるのは一重に斗貴子の技量による)
基本的に個人パラメーターは人間なのでC,Dが多いです。ただし、カズキは威力に関して十分ですし斗貴子も速さと手数でサーヴァントを翻弄する位はできます。ただし、人間やホムルンクス(戦闘型)とは違いサーヴァントを傷つけることはできても倒すのは余ほどのダメージが必要。今回思いっきりバルキリーの餌食になったムーダーのダメージは3割と言ったところでしょう。