聖杯戦争  もう一杯  まる15(Mさっちん・ネロ 傾 ぼこぼこ


メッセージ一覧

1: 微妙 (2004/04/07 20:48:42)[sevenstar_2 at hotmail.com]

「なるほど、ギルガメッシュはその子のためにライオンの子供を取りにアフリカに渡るのか」

「へぇ、ただの金ぴかかと思ったが中々男前な事しようとしてるんだな」

「ほんの気まぐれだ」

「いやいや、一人の女のためにそこまで出来るってのはすげぇぜギルガメッシュ」

「そうだな、そんな事しそうなのは有間くらいだと思ってたよ」

「・・・ふん」

乾姉弟の家でギルガメッシュはビールを片手にまったりと過ごしていた

「どんどん飲め、お前の出立祝いだ金ぴか」

乾一子がギルガメッシュに酒を勧める

「貰ってやる、ありがたく思え雑種」

「そうそう、そのカッコじゃ目立つからよ
 俺の服くれてやるよ、なんか気に入ったのがあればもってって良いぜ」

「礼は言わんぞ、雑種」

割と溶け込んでいた







      聖杯戦争   もう一杯  まる15









琥珀さんがお星様になり、秋葉が元のサイズに戻った

「・・・・・兄さん、さっきの事は本当なのですか?」

秋葉は少し落ち着いたらしい
まぁ、あれだけ暴れてまだ暴れたりないとか言われても困る

「いや、なんと言うか言葉のあやみたいなもんだったんだ
 まだ遠野の屋敷から出て行くつもりはないよ」

出来るだけ優しく刺激しないように笑いかける

「そうですか」

「え、そうなの?」

アルクェイドはまだボケボケしている

「アルクェイドさん、次ぎ合う時には私は弱点を克服しているでしょう
 決着はその時まで持ち越します」

そう言って、秋葉は夜の町に去っていった
結局、俺とアルクェイドが同じホテルで寝泊りしていることは打ち明けていない
というか、言ったら死ぬ

「いたた・・」

「あ、大丈夫!?」

うっかりさっきの女の子を忘れていた
琥珀さんのドロップキックを顔面に貰ったのは流石に効いただろう

「平気です・・」

「志貴、そう言ってることだし私たちも帰ろ。なんだか注目の的みたいだし」

「え、いやそういう訳にも行かないだろ
 すっ飛んでった琥珀さんも探さないといけないし」

「あれ位じゃどうせ死なないわよ
 それよりこんな所でサーヴァントと戦う羽目になったらどうするのよ」

「?アルクェイドがいれば大丈夫だろ」

なんかアルクェイドの様子がおかしい
焦ってる様な感じだ、何か隠してるんだろうか

「だったら志貴はここでその子の手当てでもしてて」

そういって人の波を飛び越えてどこかへ行ってしまうアルクェイド













屋根から屋根へ飛び移り、遠野君の居た場所へ向かう
道路を走らないのはまた車に轢かれたからだ、しかもガテン系トラック

「流石にちょっと死ぬかと思ったよね」

途中でその辺の服屋で服を買って着替えていこう
血塗れで遠野君に会ったらビックリさせちゃうもんね
再会を夢想してニヤニヤしていると深夜までやってる良心的な店を発見した

「よっと」

屋根から下りて財布を確認
福沢さんが一名、夏目さんが二名

「まぁ、何とかなるかな?」

ちょっと不安だがそれほど高いもの選ばなければ何とかなる
と、視界の端に黒い犬が写った

「遠野君って犬好きかな」

そう思って犬に近づく

「うわぁ」

近づくにつれて犬の姿がハッキリした
ドーベルマン?
なんか恐ろしく強そうな犬だった

「えらい筋肉質なんだね」

おいでおいでーと手のジェスチャー
筋肉質な犬には意味が伝わったのかテコテコと歩いてくる

「いい子だねー」

と言って頭を撫でる



ガブチョ


私の右腕をヒラリとかわし、ガブリと噛み付く筋肉質な犬
犬の牙が深々と腕に突き刺さる

「・・・・え〜と、離してくれる?」

もしも〜しと、話しかけるも完璧に無視される
ギチギチと腕に食い込む牙

「いたたた!ちょ、離してってば!」

犬ごと腕を振り回して犬を振り払おうとする





ガブリ




「え?」

見ると左腕にもいつの間にか犬が噛み付いていた

「痛い痛い!離して!」

ふと気がつくと、筋肉質な黒い犬に取り囲まれていた

「・・・・何これ?」

――――ワンワンパニック?















「・・・」

女の子は立ち上がって不審気に辺りを見渡す

「どうかしたの?」

「いえ、ちょっと用事を思い出したので行って来ます」

「そうなんだ」

「それでは、あまり夜中は出歩かないほうがいいですよ」

そう言って女の子は歩き出す
こんな女の子に注意されるなんてね、と心の中で苦笑をこぼす

「あ、そうだ」

「どうかしましたか?」

「うん、さっきの金髪の吸血鬼、アルクェイドっていうんだけどさ
 血を吸ったりしない、いい吸血鬼だからさ何もしないでくれないかな?」

女の子はちょっとビックリしたように俺を見た後

「解っています、貴方達はとても仲が良さそうでしたから」

笑顔でそう言って、どこかに行った

「・・・結局名前も聞かなかったな」

空を見上げて、誰に言うでもなく呟いてみる









「もう!」

バシンと右腕を壁に叩き付けて犬を殺す
ちょっと可哀想かな、思ったが
犬が黒い泥みたいになってどこかへ消えたのを見て罪悪感は消し飛んだ

「・・・どういう生き物よ・・」

言いながら左腕の犬を地面に叩きつける
その犬も泥になって消えていった

「うわぁ・・・どう見ても普通じゃないよね、コレ」

こびり付いた気持ちの悪い泥を腕を振るって振り払う
遠巻きに見ていた犬達が低く唸り出し、
次の瞬間には飛び掛ってきた

腕に力を込め、爪を振るう
犬は爪に触れるとバラバラに引き千切られて泥になっていく

「気色悪いなぁ、もう!」

あっという間に犬は全て泥になる


「なるほど、並みの吸血種ではないと言うのは本当だったか」


泥達の帰る先に男の声がした
底冷えするような冷たい声

私の前に声の主が姿を見せた

コートの隙間から見える体は、黒い輪郭だけしかない
目は人間らしい感情を亡くした冷たい目

「我が混沌の一部にするに相応しい」

コートがはためき、虎や豹などの猛獣が姿を現す

「食え」

この人はまずい、絶対私の手に負えないのが解る


マスターが言っていた事を思い出した
27祖の第10位、ネロ・カオス
私より遥かに強い吸血種の名前







さっちんとネロ・カオスが対峙する数百メートル離れたのビルの上

「参ったわね、よりによってネロ・カオスがサーヴァントだなんて」

サーヴァントと吸血鬼の気配がごちゃごちゃで
良く分からないから目視で確認しようと思って見てみればこれだ

「志貴の魔眼はあんまり使わせたくないし・・」

彼の体はボロボロだ、きっと私に直死の魔眼があれば
黒い線で塗りつぶされた悲惨な体が見えるんだろう

「とりあえず、様子見ね」









猛獣はそれほど怖くない
確かに噛み付かれれば怪我はするだろうが
それがそのまま死に至る訳じゃない、傷で死ぬより早くその傷を吸血鬼の体は直すだろう

(だけど、あれには勝てない)

猛獣達を引き千切る私を冷たい目で見ている男

―――怖い

素直に思った、私では絶対に殺すことの出来ない化け物
逃げるなんて出来るわけ無い
あの男が私を逃がすつもりが無いんだから
逃げれる訳が無い

(遠野君に会いに行くだけなのになんでこんな事になってるんだろう)

今日はちょっと運が無いかも
そう思った理由は簡単、きっとここで私は殺されるだろうから


「成る程、吸血種としてはまだまだ未熟だが
 潜在的には素晴らしい力を持っているようだ」

ふむ、と考える様に腕を組みながらコートから猛獣を出す

「もう!一体どれだけ出てくるのよ!」

「知りたいのなら教えてやる
 私の体には666の命がある、つまり666匹殺すことが出来れば貴様の勝ちだな」

666回って・・
今迄何匹倒したっけ?

「ちなみに、貴様はまだ一匹も殺せていないぞ
 貴様が倒したと思っているものは混沌に還っただけだ」

「・・・・聞かなければ良かった」

そう言いながら、のしかかって来た虎の頭を吹き飛ばす

「ふむ、諦めたのかね?」

「諦めれるわけ無いでしょ!まだ遠野君にだって会ってないんだから!」

腕にこびり付いた泥を振り払う
そこら中に泥が飛び散って酷い様だ

「だが、勝てないという事は分かってるんだろう?」

「・・・・」

嫌な人だ
私を諦めさせようとしてる

「そうそう簡単に諦めてあげないんだから!」

「ならば仕方ない
 貴様如きに使うのはいささかやり過ぎかと思ったんでな」

「・・?」

何を言っているのか解らず眉をしかめると
そこら中に飛び散っていた泥が足首に絡みつく

「きゃ!な、なにこれ!」

「なに、真祖を捕らえる時に使おうと思っていたものだ
 どうにも今日は忙しくなりそうだからな、早めに片を付けよう」

「ちょっと!冗談じゃないわよ!」

足首に絡みついた泥は段々上に迫ってくる
爪で振りほどこうとするがまるでほどけない
無意味に足を傷つけるだけだ

「ふぅ〜」

大きく息を吐く

「どうした?もう抵抗は諦めたのか?」

「諦めるわけ無いって言ってるでしょ・・!」

力一杯敵を睨む

「ちょっと痛いから心の準備をしてただけ!」

爪を振り上げ、自分の足に向かって振り下ろす

「・・・なんと」

爪が足の半ばまでめり込んだ
筋肉の切れる音が聞こえる

「っくぅ!」

もう一度爪を振り下ろす

「ああああああああああ!!」

ブチブチブチ

「いったぁ!!」

膝から下を地面に残して後ろへ飛び退く

「はぁはぁ・・」

すっごい血が出てる
復元呪詛で治るかなこれ

片方足を無くし、体を引き摺りながら距離を取る

「無意味な」

「な、なによ、黒い泥みたいのから見事に逃げたじゃない・・」

血を亡くし過ぎて朦朧とする
視界が霞んで良く見えない

「その体でどうやって次の一撃を避ける?
 下らん、結局私に手間を取らせただけだったな」

霞んだ視界に見た事も無い不気味な生物が写る
蜘蛛みたいな蟹?
なによあの変な生き物は








左足を失い、逃げる気も失せたのか
目の前の女は、ぼんやりと目の前の獣を見ているだけだ

「ふ―――ん」

つまらない、もう少し遊べそうな気もしたが

「・・?」

サーヴァントになってからどうにも不安定だ
以前の私なら遊んだりせず早々に食らっていただろうに

「それにしても、こうまで脆いとはな
 否、成りたてにしては良くやった方か」

どちらにしろ
これ以上時間を書ける理由も無い
すぐ向こうに真祖の姫君が居る

「少々物足りないがな」

目で獣に命令を下す
目の前の女を食らえ、と





―――痛い

なんか噛み付かれてる
よりによってあの蜘蛛とも蟹とも付かない変な生き物にだ
めちゃくちゃ痛い

けど私は吸血鬼なんだ、こんなやつ爪で一薙ぎしてやる

あれ?
腕が動かない?どうして?

―――痛い

ああ、動くわけ無いか
私の腕はもう食べられちゃってるんだから

―――痛い

どうしよう、足も片方しかないし
これじゃ遠野君に会いにいけない

―――痛い

あとどれくらい私の体は残ってるんだろう?
足は片方残ってたけど、腕はもう動く気配も無い
お腹の辺りも痛い、体中がズキズキ痛む
痛まない所はきっと無くなってるんだろう

―――痛い

ああ、衛宮さんのご飯食べて栄養補給したい
ちょっと血が亡くなり過ぎだよね
マスターに言って輸血パックでも買ってもらおう
セイバーさんの稽古は暫くお休みできそう

なんだ、悪い事ばっかりでもないかも



次の瞬間、視界が真っ赤になって何も見えなくなった










妙な幻想種を大量の魔力を注ぎ込んだ一撃で叩き壊す

「さっちん・・!何でこんなところに・・」

体中食い荒らされて、不幸なのに明るかった女の子は見る影も無い

両腕は既に無く、足も片方かろうじて付いているだけ
臓物も幾つか亡くしているようだ
抱きかかえた体が酷く軽かったのはその所為だろう

「・・・今日は客人が多いな」

「貴様がやったのか・・!」

憎悪を込めた視線で男を見る

「取り込もうと思ったのだが
 思いの他弱くてな、力だけは素晴らしかった故食らうことにした」

「貴様・・・!」

「都合がいいと言えば都合がいいな
 どの道二人とも手に入れるつもりだったのだ、ここで混沌の一部に取り込んでやろう」

サーヴァントが死ぬ時は消えてしまう
さっちんは消えない、ということはまだ生きているのだろう
だが放って置く訳には行かない
早く回復できる場所に連れて行かないと・・

「どうしたアーサー王、こないのならこちらから行くぞ?」

「貴様にかまっている時間など無い!」

私の真名を知っている以上隠す必要も無い
風王結界を解き、一撃で殺す!

「む?」

空気中のマナを食い荒らし
体中のオドを使いきる気で一撃を放つ

  エクス
「約束された――
         カリバ―!!
      ―――勝利の剣!!」


光がネロ・カオスを消し飛ばす―――

「・・・急がないと!」

さっちんを抱えて家へと急ぐ





「あれ?」

気が付くとセイバーさんに抱きかかえられていた
両腕と片足が無いのを考えると、夢ではなさそう

「さっちん・・!気が付きましたか・・」

「セイバーさんが助けてくれたんだ」

「それより傷、何とかなりそうですか?その・・死んだりしませんよね?」

心配してくれてるんだ

「うん、家に帰ったらちょっと血を分けてくれると嬉しいけど
 多分ゆっくり休めば平気だと思う」

「そうですか――」

ふぅ、と安心したように息を付くセイバーさん

「いっつもご飯食べてるだけだったセイバーさんが
 今日はなんだか凄くかっこよく見える」

「・・・・さっちん
 傷が治ったら後の稽古を楽しみにしていてくださいね」

ふふり、と笑ってそんなことを言うセイバーさん
なんだかこっちの方がセイバーさんらしくていいかな

「あー、それにしても疲れた
 それになんだかお腹すいたー」

なんだか結局遠野君に会えなかったし







「とんでもない威力ね・・」

自分の居たビルが両断されたのを見て呟くアルクェイド

「まぁ、ネロ・カオスがこれくらいで死ぬとも思えないけど」







「・・・・」

バラバラぶちまけられた泥が形を持つ

「あれがエクスカリバーか」

聞いていたほどではない
しかし、大きな痛手には変わりはないか

「真祖を手に入れるのはまたの機会だな」

とりあえず栄養が足りない
真祖が居ると言う事は前回の小僧が居るかもしれないと言う事だ
焦って前回の二の舞になるわけには行かない、今は力を蓄えよう


記事一覧へ戻る(I)