セイギノミカタ2


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1: ポックル (2004/04/06 09:08:59)[fwiy1899 at nyc,odn,ne,jp]



 覚えているのは、たくさんの人が死んだこと。

 自分が彼等を見捨てて逃げたこと。

 脳裏に浮かぶ真っ赤な街並み。

 黒こげの死体。
 血で染まった道路。
 置き去りに去られた人の絶望的な表情。
 悲痛な叫びが耳を木霊する。

 覚えていようと少年は思った。
 忘れられるわけがないけれど、それらを全部覚えていよう。

 本当は死ななくて良い生命があったことを。


「やあ、起きたみたいだね」
「──っ!」

 思考にふけっていたせいだろうか、声をかけられるまで気がつかなかった。
 部屋の中に見知らぬ男が入り込んでいた。

「そう警戒しないで欲しいな。怪しい者じゃないんだ」

 両手を挙げて自分の安全性を主張する男。
 そもそも、怪しくない人間は自分が怪しくないなんて言う必要がないのだ。
 そう言った意味では、男は十二分に怪しかった。
 じっと凝視して、その表情を窺いながら尋ねる。

「……オジサン、誰?」
「僕かい? 僕は切継。御宮切継さ」
「エミヤ……?」
「切継でいいよ」

 そう言って朗らかに微笑む姿さえ、疑りの目で見てしまえば、どこまでも信用ならなく見える。
 それでも、君の名前を聞いていいかなと尋ねられて少年は素直に答えた。

「しろう」
「シロウ? 士郎でいいのかな」

 指で空に字を書く切継に、少年──士郎は頷く。
 切継はしばらく自分に刻み込むようにシロウ、シロウと呟いていたが、やがて納得したようにしきりに首を上下させた。

「うん、御宮士郎で語呂も悪くないね」
「え……」
「あ、言ってなかったっけ。今日から君、僕の子供ってことになるから」

 ──は?


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