それは有り得たかもしれない物語 そのにじゅういち


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1: 久遠 (2004/04/05 21:24:28)[kuon_kurotuki at passport.net]

  
 注意1:この作品の弓さんはアーチャーではないです。

 注意2:これはfateもしとは一切関わりがありません。

 注意3:これは電波による二次被害作品です。

     fateもしを書いていて本編で使用不可な電波がきたため別の作品として誕生しました。

 
 以上を踏まえた上で読んでやってもよいという奇特なかたは下へどうぞです。





    











 



 

        それは有り得たかもしれない物語 そのにじゅういち


 side by エミヤ
 

 また夢を見た。

 かつて見たアルトリアと呼ばれた少女の夢。

 国にその身を捧げ、王として生きた少女の夢。

 昨日、聖剣を見たせいだろうか?

 いや、それなら彼女がカリバーンを持っているのは不自然だろう。

 だとすれば、これは衛宮士郎の見ている夢だろうか?

 なら納得がいく、道を違えたとは言えその根源は同じ存在なのだから。

 

 side by 凛


 眠い、いつもよりもずっと眠い。

 これも昨日バトラーが宝具二つ分の力を受け止めるなどという馬鹿げたことを

 したせいだろう。

 まあそれはいい、過ぎたことだから。

 とりあえず今はあの執事の入れた紅茶を飲むとしよう。


 まだぼんやりとした頭で居間に向かう。


 ピンポーン


 どうやら桜も来たようだ、

 私の考えが当たっているなら桜は――、


 「えっ? ライダー……?

  なんで貴女がここにいるの……?」


 「おはようございますサクラ。

  むっ、セイバーそれは彼が作ってくれた『私』の玉子焼です」


 「そんなことはない、これはバトラーが『私』に作ってくれた玉子焼です。

  挨拶が遅れました、おはようございますサクラ」
 

 「桜おはよう、今日はちょっと遅かったな。

  ん? 桜とライダーって知り合いだったのか?

  ……あっ! 慎二に紹介されてたとか?」


 ――どうやら彼は稀に見る鈍感技能を持っているようだ。


 ……英霊二人の朝食の取り合いはあえてスルーする。


 それにしても慎二との一件、ライダーの令呪が本にあること。

 これらを考えれば桜が……って士郎は桜が魔術師だって知らなかったか。

 
 「士郎、何寝ぼけたこと言ってるのよ。

  桜がライダーを知ってるのは彼女が本当のマスターだからでしょう」


 「はあ? なんでさ?

  間桐の魔術師は……っていけね!」


 桜が魔術師じゃないと思っている士郎が言いよどむ。

 全くなんでここまで鈍いのかしら、変なときには感がいいくせに。


 「それは仕方ないだろう凛。

  衛宮士郎にとって間桐桜は日常の象徴とも言える存在なのだからな」


 バトラーが私の心の声に答えるように言ってくる。

 って! なんで私の考えていたことが解るのよ!?


 「簡単なことだ、君は顔に出やすい」


 ……また出ていたのだろうか?

 ちょっと恥かしい。

 私は内心を押し隠して士郎の横に座る
 

 「バトラー、取り合えず紅茶を入れてちょうだい」


 「どうぞ、凛お嬢様。

  こちらに既に用意してあります」

  
 そう言って素早くお茶の準備をしてくれる我が執事。

 こういうところは本当に執事らしいと思う。

 ……セイバー、ライダー、お願いだから私を睨むのを止めてくれないかしら?

 朝からその視線はヘビィなんだけど。

 
 
 side by 士郎

 
 それにしても桜がライダーのマスターだったなんてなー。


 「ご、ごめんなさい先輩……私先輩のことを騙して……」


 「ん? いや騙されたなんて思ってないよ。

  それに桜が悪いんじゃないんだしさ。
 
  ところで遠坂達は何時から気づいてたんだ?」


 オレなんて全く気づいてなかったぞ。
 

 「私が確信を持てたのは昨日からね」


 「あれ? でも桜が魔術師だってことは知ってたんだろ?

  なら遠坂ならきっちりチェックしてたんじゃないのか?」


 「……なんか引っかかる言い方ね。

  チェックならしたわよ、ただどう言う訳か桜からは魔力を感じなかったかの、

  それに真っ先に令呪の有無は確認してたのよ。

  ……その時にはもう本に移してたみたいだけど」
 

 遠坂がそっぽを向きながら答えてくる。


 「んじゃバトラーは?」


 「私か? 私は彼女を最初に送っていった時から気づいていた」


 「……ってことはマスターである私に今まで黙ってたのアンタ?」

 
 と、遠坂さん。

 笑顔なのに目が笑ってないですよー。

 
 「ふむ、よく言うだろ凛。

  敵を騙すにはまず味方から、と」


 「だ、騙してどうするのよーーー!!!???」

 
 がーっと大声で怒鳴る遠坂。
 
 甘いな、伊達に何回もくらっていないぞ!

 オレは自分の耳を耳栓でガードしつつ桜の耳を手で押さえる。

 その瞬間桜がビクッと身じろぎしたがここは我慢してもらう。

 バトラーの方を見ると、バトラーは普通の耳栓をしていた。

 そう、バトラーは普通だった、何が普通でないかと言うと。


 アイツはセイバーとライダーに何時の間にか出したイヌ耳型とウサ耳型の耳栓を着けていた。


 ……一生ついて行くぞバトラーいや、兄貴!

 
 「凛、落ち着け。

  今は彼女をどうするかを考えるべきだろう?」


 むむ、桜をどうするかって、


 「兄、っとバトラー、お前何が言いたいんだよ?」


 「彼女が協力してくれると言うなら私としても願ったりだ。

  だがそうなると彼女の身体についても聞かなければならない」


 桜の身体……なんかエッチだ。


 「どういうことよバトラー。

  桜から魔力が感じられないのと関係があるの?」


 「その通りだ凛。

  彼女から魔力をほとんど感じない、

  かといって隠していると言う訳でもない。

  ライダーの方に回しているからとも考えたが違うようだ」


 うーん、どう言うことだ?

 さっぱり解らん。
 
 
 「私はこういうパターンを幾つか見たことがある。

  おそらく身体の中等に魔力をとっている何かがあるのではないか?」


 その言葉を聞いて桜がビクリと震え、俯く。

 オレは桜の手を握ってやる。

 桜はほんの少しだけ握り返してくれた。 



 side by ライダー


 「だが私はこういうパターンを幾つか見たことがある。

  おそらく身体の中等に魔力を採っている何かがあるのではないか?」


 驚いた、サクラの身体の中に寄生する蟲に気づくとは。

 だがどうする?

 サクラはシロウに蟲のことを気づかれたくないだろう。

 それにあの蟲の翁に知られたらただでは済みそうもない。

 私はサクラの方に視線を向ける。

 私のマスター、私を使うだけでその身体に負担を掛けてしまう。

 だというのにそれをシロウの前では一切出さないようにできる少女。
 
 出来ることならサクラには幸せになって欲しい。

 その為には蟲が邪魔になる。


 「サクラ、話しにくいのなら私から話しますが?」


 「……ありがとうライダー。でも、自分で話すわ」

 
 その後、サクラは自分のこれまでのこと、

 今の自分の状況を話していく。

 全てではないがそれでもサクラにとってはとても苦しいはずだ。

 シロウやリン、セイバーはサクラのことで純粋に怒ってくれている。

 そこでバトラーを見る。
 
 彼は何時もの様に感情を表に出さず何かを考えている。

 私は彼を信頼しているし、そ、その……あ愛、愛している。

 彼ならサクラを救ってくれるのではないかと期待してしまう。

 そして、


 「……殺すしかないか」


 彼はそう呟いた。



 side by 凛


 「……殺すしかないか」


 頭の中が真っ白になる。

 コイツは今何と言った?

 桜を殺す? 私の妹を?

 
 「バトラー、聞き捨てならないことを今言ったわね。

  どういうことか説明してもらうわ」


 拒否も黙秘も許さない。

 返答しだいでは契約を切ってもいい。

 彼は私の問いに、何処からか槍を出すことで答えた。


 「凛、私を信じられるなら黙ってみていることだ」


 そう言い桜に向けて槍を構える。

 即座に士郎とセイバーが桜の前に立ち、ライダーも桜を守るように横に立つ。

 
 「バトラー何を考えているのですか?」


 「今は説明できない、そこを退いてくれ」

 
 二人はほんの数秒見つめあう。

 
 「……解りました、私は貴方を信じます」


 「助かる」
  

 そう言い、槍をランサーの如く構える。

 バトラーは私に信じれるなら、と言った。

 なら、


 「シロウ、彼を信じましょう。

  彼ならサクラを救ってくれると私も信じます」


 ライダーが私の言葉を先に言ってしまう……悔しくなんてきっとない。

 
 「桜、バトラーは変な奴だけど信頼できるわ。

  コイツを信じてくれないかしら?」


 「姉さん……解りました。

  先輩、手を握っていてくれますか?」

 
 「ああ、嫌だと言っても握っててやる」

 
 むむ、こんな時に何雰囲気出してるわけ?

 真面目にやりなさいよ!


 「さて、話はすんだな。

  ……いくぞ! ランスオブビースト!」


 その真名と共に桜の心臓を槍が貫く。



 side by 桜


 「さて、話はすんだな。

  ……いくぞ! ランスオブビースト!」


 バトラーさんの言葉によって槍が私を貫いた。

 ……?

 多少身体が重いけどほとんど痛くない? 

 それに身体の中の異物感がなくなっている!?


 「え? どうして……槍は私を貫いたのに」

 
 「桜! 大丈夫か!?

  何処も痛いところとかないか!?」


 先輩が心の底から心配そうに言ってくれる。

 私はそんな簡単なことで幸せな気持ちになれる。
 

 「……それで、どういうことなのですかバトラー?」


 セイバーさんが聞く、


 「アノ槍は化物を屠るための最強の一、

  故に人を傷つけずに化物、この場合蟲だけを殺すことができる」


 バトラーさんは疲労した顔でそういう。


 「ちょっとバトラー!?

  アンタどうしたのよ!?」


 「この槍は本来私が使うことができないモノだ。

  それを無理矢理使ったんでね、反動がきたのだろう。
 
  なに、少し、休めば、回復する……」

 
 そう言って消えるバトラーさん。

 展開についていけずお礼を言えなかったが元気になったらお礼を言おう。
 
 
 「良かったな桜」

 
 「……はい!」


 私は先輩に精一杯の笑顔で応えた。


 
 ふぃん




 あとがき

 どうも久遠です。

 何がしたかったかと言うと、獣の槍を出したかったのですよ。

 そしてfateルートでの桜の救済、不幸は苦手と言うか書けないので。

 桜に寄生した刻印虫が神経と同化しているとかなんとかは考えない方向で。

 どうか笑って、もしくは見なかったことにして見逃してくれると助かりますです。

 ネタ
 >ランスオブビースト 獣の槍
 うし○ととら 最強の化物器物、持ち手の任意で人を傷つけないことが可能。       
 作られ方が干将莫耶と同じ。寧ろ干将莫耶の設定を知り獣の槍じゃんと突っ込んだ
 ことによって登場することとなりました。
 バトラーは担い手でないので本来使えんです。


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