Over Works (M:士郎 傾:割とギャグ)


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1: 九重近衛 (2004/04/05 17:22:04)[c6h2ohno23 at yahoo.co.jp ]

「はぁ・・・。どうしてこんな事になっちゃったんだろ・・・・・・」

ここは深夜の学校の廊下。目の前には、槍を手にした蒼い鎧の男。その男は俺を殺そうと睨み付けてくる。
死ぬのは恐ろしいけれど、ただ死ぬだけなら良かった。でも今は違う。
ついさっき、俺はとんでも無いことをしてきたところだ。
今死ぬと死んだ後もの凄く不名誉なことになってしまう。
死ぬ前に何とかしたいけど残念なことにそれは無理そうだ。


俺はバイト帰りに所用があって学校へ立ち寄った。
非常口と職員室のドアをピッキングで開け中へ忍び込んだ。
桜に合い鍵をあげた後、自分の鍵をなくして以来自分の家の鍵をピッキングで開け閉めしていた俺にしてみれば、学校の鍵を開けることは容易だった。
目的は学年末考査の問題用紙の確保。
俺の成績はぶっちゃけると酷かった。
今回はもう後がない。今回失敗すればかなりの確率で留年することになってしまう。
正義の味方を目指す衛宮士郎にとって、それはどんな悪よりも許せないことだった。

問題を写し取った俺は非常口のドアを施錠しようとしているところだった。
そのときふと金属のぶつかり合うような音が鳴っていることに気がついた。
止めておけばいいのに、つい気になって音のする校庭の方へと見に行ってしまった。
そこで見たものは信じられない光景だった。

赤い外套を纏い一対の夫婦剣を手にした不審者と、蒼い鎧に身を包み長剣を手にした不審者が、目で追うことが不可能なくらいの速さで斬り合っていた。
あまりの光景に俺は目を逸らせなくなっていた。
しばらく見ていたら二人は距離をとり何かを話し始めた。
遠くて何を言っているのかは分からなかったが、話し終えたとたん蒼い男が剣を捨てた。
それと同時に空気の凍り付く気配。気付けば蒼い男は三叉の槍をその手に持っていた。
二人がなぜ争っていたのかは分からない。
でも、あの槍は確実にあの赤い男をコロス。
正義の見方を目指す者としてそれを見過ごすことは出来ない。
だから咄嗟に走り出した。あの蒼い男は目撃者は始末するために追って来るだろうと直感的に思った。
だからあの蒼い男が気付くように態と大きな音を立てて校舎へ向かって走った。


そうして今に至るわけだが、やっぱりこのまま死ぬのは嫌だ。
しばらく睨み合っていたら蒼い男は面倒くさそうに槍を構えながら、

「何か思い残したことはないか?」

なんて聞いてきやがった。
俺はというと、

「じゃあこれを処分しておいてくれないか」

なんて返事をしながらテストの問題を床に置いた。
蒼い男は笑いながら頷いた後、

「血を絞る三叉(トリアイナ)」

そういいながら槍を俺に向けて突き出した。
槍は俺の体には届いていない。
なのに、口からは血が溢れ体は力を失い前に倒れ込んだ。
その直後人が近づいてくる足音が聞こえた。
さっきの赤い男だろうか、蒼い男は舌打ちを一つしてそのまま逃げるように走り出した。
テストの問題処分してくれよ。と思いつつ意識は闇の中に消えていった。



あとがき
初めまして、九重近衛と申します。思いつきで書いちゃいました。
この話だけだと士郎めちゃくちゃ馬鹿になってますけど、
実際には原作より強かったりすると思います。
それと折角だからとランサーは違う人にしました。
ぶっちゃけるとポセイドンです。三つ又の槍持ってます。
効果は血の流れを操り心臓を破壊するって感じです。
SSを書くのは初めてで、まだまだへたくそなんですけど、
頑張るので読んだ感想なんかを頂けたらとても嬉しいです。

2: 九重近衛 (2004/04/05 22:52:37)[c6h2ohno23 at yahoo.co.jp ]

いんたぁる〜ど


ランサーが取り出した槍を構えた瞬間、私は死を予感した。
しかしその予感は突然現れた誰かのおかげで見事に外れてくれた。
私が安堵していると、アーチャーが寄ってきて、

「それで、私はどうすればいいのだ?」

なんて聞いてきやがった。それでランサーがさっきの人影を追っていったのだと気が付いた。それこそ文字通り消すために。

「何してるのよ。早く追いなさい」

私の言葉をうけアーチャーはすぐにランサーを追いかけていった。
私は自分が助かったことで失念していた。
ランサーが口封じのために目撃者を殺すことは容易に予想できた。
アーチャーにランサーを追わせた後、私も急いで追いかけて開いていた非常口から校舎の中に入ると、アーチャーの足下にはさっきの人影が倒れていた。
私はアーチャーに再びランサーを追うように命じた後、その人影が誰だったのかを確認しようとして息を呑んだ。

ある意味で私のよく知っている奴だった。
衛宮士郎。クラスは違うしほとんど話したこともないけれど、弓道部のエースだったりもの凄いお人好しだったり学年トップクラスの馬鹿だったりと何かと有名な奴だ。
私はこの馬鹿が無性にむかついてきた。何故こんな時間に此処にいたのかと。
本来ならこんな馬鹿は見捨てていくのだけど、私はこいつが死ぬことで酷く悲しむ人がいることを知っている。
こんな感情は心の贅肉でしかないけれど、それでもあの子には泣いて欲しくない。
だから覚悟を決めて、惜しかったけど父の遺産であるペンダントを使い、倒れているこの馬鹿の心臓を復元した。
何とか治療を終えて帰ろうと立ち上がったとき、ふと床に落ちている白い紙が目に付いた。

「げっっ!!」

思わず口走ってしまった。
テストの問題だった。おそらく学年末考査の問題を盗みに来ていたのだろう。聞いた話だと、次のテストが駄目だったら留年らしい。
そのあげく、戦いに巻き込まれて死にかけた。っていうか、私が助けなかったら死んでたし。
こいつはもう救いようのない馬鹿だ。

「何でこんな奴なんか助けちゃったんだろ」

だんだん自分が情けなくなってきて。
とりあえず悔しかったので魔力をたっっぷりと込めた手で、こいつの頬を十往復ぐらい引っぱたいてから帰ることにした。


いんたぁる〜ど あうと




何故か頬がもの凄く痛くて目が覚めた。
起き上がるとき首も寝違えたように痛かった。
状況がいまいち掴めない。周りを見回すとそこは学校の廊下のようだった。
立ち上がろうとして廊下が血に塗れていることに気が付いたとき、さっきのことを一気に思い出した。

「そうだ、テストの問題。」

自分の周囲には落ちていなかった。
付近のゴミ箱を覗いてみても入っていなかった。
あの蒼い男が処分してくれたのだろうか。

「・・・・・・どうせ殺さないんだったら、置いていってくれれば良かったのに」

そう愚痴を零しながら、血に塗れた廊下を拭き、何故か落ちてたペンダントを拾い、もう一度職員室でテストの問題を写し取ってから、家に帰った。
家に着いた頃にはもう日付が変わっていた。




あとがき
今回も士郎君は馬鹿でした。
次回からは少しずつシリアスになっていきます。
タイトルの意味や士郎の能力に関しても次回から少しずつ明かしていく予定です。
とりあえず読んで頂けたら嬉しいです。

3: 九重近衛 (2004/04/06 23:05:53)[c6h2ohno23 at yahoo.co.jp ]

玄関の鍵をいつものごとくピッキングで開けて、居間に行くとテーブルには夕食が置いてあった。
桜が用意しておいてくれたのだろう。
お茶を飲み一息ついたところで、昼から何も食べていないことに気が付いて置いてあった食事に手を伸ばした。
しかしそれは突然鳴り響いた警報により阻まれた。
明らかな敵意を持った誰かがこの家に入り込んだ。
おそらくはさっきの蒼い男。やはり口封じに来たか。
赤い男との戦闘を見たかぎり、あれは普通の人間が勝てる相手ではない。一度殺されかけているしそれは嫌と言うほど分かっている。
それでも死ぬつもりはない。
さっきはどうしようもなくて死を受け入れようとしたが、こんなところで死んでる暇なんて無い。
俺にはやるべき事がある。たとえあの誓いを破ることになっても、生き抜かなければならない。
俺は戦う覚悟を決めて立ち上がった。のはいいんだけど、周りには武器がなかった。
台所には包丁もあるけれど、槍が相手では何にもならない。

「創るしかないか・・・」

そう呟き目を閉じた。

「――――投影開始」

その言葉とともに魔術回路を起動する。八節の工程のうち第五節・第六節は飛ばし素早く剣を創り出した。

「よし、うまくいった」

出来たのはアーサー王が持つ伝説の聖剣エクスカリバー。見た目だけなら完全に複製されたそれはそれは、中身は空っぽで本来の力は何一つ持ってはいないものだ。
他の人から見れば失敗昨にすぎないそれは、それでも俺にとっては成功作だった。
八節のうちどれか一節飛ばしただけで、中身のまるでない形だけの剣しか創り出せない。
でも俺の場合は全ての工程をこなすと、刃は欠けて刀身はひび割れた朽ちた剣を創ることしかできなくなってしまう。
自分の中で最強の物をイメージして創られたそれは、その実ただのがらくたにしかならない。
だから俺は工程を二つ飛ばすことによって、あえて不完全な剣を創っている。そして、

「――――同調開始」

空っぽの剣の唯一の利点。それは強化しやすいことだ。
通常、強化の魔術は隙間を探しそこに適量の魔力を流すことで成る。
けどこの剣は全てが隙間だから流し過ぎないようにしてただ魔力を流すだけでいい。
剣にある程度の魔力を込めて構える。

「そろそろ行かせてもらうぞ」

庭からそんな声が聞こえたと思ったら、次の瞬間には台所でもの凄い破裂音が鳴っていた。
直感でこの部屋は危ないと思った俺は、窓をたたき割り部屋から跳び出した。

「ぐゎあぁぁぁぁぁああっっ!!」

庭で待ちかまえていた男に左足を前から、台所の水道管から溢れ矢のごとく飛んできた水に右足を後ろから貫かれた。
元から逃げ切る事は無理だとは思っていたが、これで本当に不可能になった。
もうこいつを倒すことでしか、否、一撃で殺すことでしか生き残る術はない。
乱れた呼吸を整え、自分の足に魔力を流し込み強引に立ち上がり、投影した剣を敵に向けて構えなおした。

「小僧、そんな偽も――――

奴が言い切る前に、奴に向かって斬りかかった。
奴はこの剣を偽物と思って甘く見ている。それこそどっかの英雄王のように。
だから身をもって思い知らせてやる。この剣の本当の威力を・・・。

「――――超強化(オーバーロード)」

その呪文を口にしたのと同時に剣は光を放ち、敵を斬りつけたのと同時に剣は砕け散った。




少しして放たれた光と剣の砕け散る音がやんだ。
腕の感覚がない。地面には腕が転がっている。
自分の腕に視線をおろすと、まだ腕は繋がっている。
魔術の反動で皮膚は破れ血管は裂け神経は千切れているけど、それでもまだ腕は繋がっている。
ならこの腕は・・・

目の前には片腕の男。左腕は肩から先は無くなっていて、傷は胸に及んでいる。
相手が普通の人間だったら、今の一撃で殺せていた。たとえ魔術師でも確実に致命傷だ。
でも相手は自分が思っていた以上の存在で、一撃で殺しきれるような相手じゃなかった。
さっきまでとは違い男の目には確かな殺意。
男は残っている右腕だけで槍を構え直し、

「・・・死ね」

ただ一言、静かにそう告げ槍を一薙した。
俺を土蔵まで吹っ飛ばし、とどめを刺すためにこっちへと歩み寄ってくる。
土蔵の中にはかつて投影した空の剣が何本も置いてある。
なのに腕も足ももう動いてはくれない。
結局俺はあいつに殺されるしかないのか

気付いたら俺は泣いていた。
泣くのはあの日以来初めてだ。
衛宮切嗣−父と呼び慕い、師と呼び敬った、十年前俺をあの死に満ちた世界から救ってくれた男−の最期。
自分の理想に殉じた男の死を悼み俺はひたすら泣き続けた。
そして散々泣いた後俺が彼の理想を継ぐとそう決めた。
なのに俺はまだ何もしていないうちに死んでしまう。
そんな自分の非力さがただ悔しくて泣けてきた。

「これで終わりだ」

男が俺の胸に槍を突きつけた。
冗談じゃない。まだ何もしてないのに終われるはずがない。
魔力も残っている。出来ることはある。
さっきので殺しきれなかったのなら、それ以上の存在を創るだけだ。
目の前の敵を殺せる物
ただそれだけをイメージして何も考えずに魔力を解き放った。




槍が胸を貫こうとした瞬間、それは一人の少女によって防がれていた。




あとがき
前回まではふざけてたけど、今回からはちゃんとシリアスしているつもりです。
士郎が完全な物を投影できない理由はいずれ明らかになります。
次回からはセイバーさんを初めもっといろんな人に頑張ってもらう予定です。


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