ピッ
それは、電子音。
自ら影に潜り神秘となる魔術とは違い、誰はばかることなくこの世を解き明かす科学の産物。
ピッ
一定の間隔を揺らぐことなく途切れることなく、その音が響き渡る。
それは、終わりの音にして、始まりの音。
万人にそれを知らせるべく作成された、人の手になる福音である。
ピッ
幾度かめの音。
そう。
これから始まる。
誰もが焦がれ、誰もが望んだ。
神ならぬ人間によって与えられる世界の成り立ちをしらせる、聖なる託宣。
そう。それは、常に新しい――
ピーン
「七時のニュースをお知らせします」
キャスター×キャスター
「さて、まずは先ごろ冬木市で開催されている、大五次聖杯戦争についてのニュースです」
神妙な、しかしけして崩れぬ美しい顔で原稿を読み上げるのは、先ごろ結婚をし、絶頂どころかそのまま昇天しそうなほどの幸せを自覚する、エルフミミが眩しいニュースキャスター、メディア=葛木(28)である。
美人キャスターとして、絶大な人気を誇る彼女の結婚は放送局の内部どころか彼女を目当てにニュースを見ている者達にも、大きな衝撃を与えた。
それはもう。上を下への大騒ぎ。
連日抗議と詳細の説明を求める電話が鳴り響き、不幸の手紙や祝儀袋の入った書留が送られてくる。
彼女の出社時、退社時を狙って報道陣、追っかけ、黒いベンツ等が局の入り口に押しかける。
さらには、彼女を密かに手篭めにしようとしていたマーリン局長が驚きのあまり「なんだってー!?」と、叫んだショックで脳溢血で倒れ、入院。一月経った現在も予断を許さぬ状況になるほどだ。
なお、現在は副局長キシュア氏が代理で指揮を執っている。
そんな人気者の彼女を見事射止めたのは、彼女が言うには社会派の男、葛木宗一郎。
確かに彼はある学園で倫理と世界史を受け持つほどの社会派で、蛇のような暗殺術をかくし芸として披露する、どこかの犬と名前の響きを同じくする男である。
美女と柳生の結婚と揶揄された二人ではあるが、その出会いはあまりに劇的で、そして幻想的であったという。
その内容を問われると彼女は、
――優しくて激しい。
といって頬を赤らめるだけなので、詳しい内容は不明であるが。
ともかく社会的には多大な影響を与えた彼女と彼の結婚だが、彼らの周囲の友人達は、心のそこから祝福してくれた。
「うむ。どうか幸せに」
とは、葛木の弟分を自称する少年で、教え子でも有る少年の科白だ。なお、結婚式は仏式である。
そんなわけでメディア=葛木は今日も元気に原稿を読む。
「はい。天気予報士のべディヴィエールさんでした。では、CMです」
―――戦え
「行くぞ、セイバー!」
「はい、シロウ」
マスターとサーヴァント
――生き残るのはただ一組
「アーチャー!」
「ふむ。期待に沿おう」
二人で一つの戦闘生物
―――奇跡を欲するのなら汝
「は、やるじゃねぇか。侍」
「ふ。そちらもな、槍の騎士」
己を鍛え、技を磨け。
――最強を証明せよ。
「エクス・カリバー!」
「ベルレ・フォーン!」
全知全能を持って、敵を討て!
サーヴァントシステムにより召喚された自らのパートナーと供に戦え!
三回限りの命令権・令呪を使い、危機を好機に!
そして、一撃必殺も夢ではない。
真の名をもって放て!法具!
タッグ格闘ゲーム
Fight/stay side 〜セイギノミカタ〜
今夏、発売予定!
「ふむ。これもよいかもしれんな」
言って、頭の中の新作一覧表にチェックをいれる。同時に、メモリーカードが不足していることを思い出し、明日買い足そうと決意する。
「この世も面白くなったものだ。雑種どももよいものを作る」
誰ともなしに呟くは、この世の全てを手に入れし、王の中の王。
その名をギルガメッシュ。
今、コトミネ教会の自室にて日本酒(菊姫)をきこしめしている。
肴は富山県からの直送であるホタルイカ。
どちらも微妙な珍味であるが、かの王の財力を持ってすればどれほどのものでもない品である。
シャワーを浴び終わってガウンを着込み、恐ろしいほど柔らかく、豪奢なソファーに座っている。
傍若無人、傲岸不遜、を地で行く彼だが、そんなことは特別なことではない。彼は王なのだ。並び立つものなどない唯一無二の王。
ゆえにその世界に己以外に人はおらず、居る必要もない。
だが、彼は王であるがゆえに寛大である。
傍に置く価値のある者達にはそこにあることを許す。それは絵画、音楽から、建築物、イルミネーションに至るまで。
美しい、楽しいものであれば、彼はそれを認め、愛でるだけの優雅さをもっている。さすがは王。
因みに、最近のお気に入りはTVゲームである。
プレイステ○ション、ドリ○ムキャスト、バーチャルボ○イ、プレ○ディア、PIPI○@、etcetc……。発売された「ゲーム機」と呼ばれるほぼ全ての機種を網羅しており、全て稼動可能状態にたもたれている。さすがは王。
先ほどからテレビを見てコクコクと頷く彼は、ここ十年の殆どを教会の中のテレビの前で暮らしている、引きこもり予備軍でもある。
だが、ネットゲームはやらない。あのように王を待たせるようなゲームはふざけている。
”ギル”という名前のキャラで参加しており、”片腕”という名の引き立て役(経験地稼ぎ仲間)もいたが、余りの遅さに呆れてはてた。
ISDNなのだから我慢しろといってはいた。よくはわからんが、王たる自分に待てなどとふざけている。
「む?そろそろか」
時計を確認し、居住まいを正してテレビに向き直る。ビデオの予約が出来ていることを確認。
あらゆる敵を打ち砕く王たる彼が、それほど慎重になる番組が始まるのである。
「セイバーの『喰いしん某、蛮罪』〜!今日は、メシアンというカレー専門店に来ています」
CM明けから始まり、次の番組までの”繋ぎ”として僅かに数分間だけ存在するこの番組は、一言で言えばグルメ番組である。
金髪、碧眼、美少女であるセイバーが日本全国の飯屋へ一回の放送で一つずつ訪れ、実際に食べてその感想を言うという、ただそれだけの番組ではある。
御飯がおいしければ、コクコクハムハムと見ただけで幸せになれる、スキル:セイバーこっくりEX(効果:腹ペコセイバー萌えにクリティカルヒット)が発動し、視聴率が70%を超え、裏番組が致命的なダメージを受ける。
そのため、他の局ではこの時間が終わるまでは決して番組が始まらないほどである。
ただし、不味かった場合は聖剣を振りかざし、真名開放、店とその周辺はまとめて草も生えていない広場になるという、まさにキラータイトル。
なお、別の時間にやっている『突撃粉砕!となりの蛮行犯』は、冬樹の虎がよそ様の晩御飯を食べつくしながらねり歩くものであり、こちらもぎりぎりである。
ともかく、バイトらしき眼鏡の女性によって、運ばれてくる品。
「さて、ではいただきます」
別売りのカレーパンとともにやってきたチキンカレーを前に手を合わせる。彼女は礼儀正しい。
カレーパンから先かカレーライスから先か迷った彼女だが、「やはりカレーライスから先に食べるのが人の道でしょう。ええ、そうでしょうとも」
とのこと。本人には譲れない線が有るらしい。
白米とそれに適するだけのルーを掬い取る。当然ここで米とルーの割合を間違える彼女ではなく、また、スプーンからこぼれてしまうような愚を冒すこともない。
以前彼女の目の前でルーと御飯をぐちゃぐちゃと混ぜ合わせるという行為をやってのけた者(AD、間桐慎二)が居た。
当然逝った。もはや塵も残ってはいない。
何故か黒くなったセイバーと、漢の背中で怒りを語る撮影監督(アーチャー、グルメ番組一筋20年)が悪鬼に見えた、と、その時のスタッフの竜牙兵B(25歳、座右の銘は肉を切らせて骨を絶つ)のトラウマになっている。
過去のいやな思い出は拭い去る必要などなく、今からカレーを食す彼女からは既に抹消されている。
輝く米、適度な粘りのルー、味のしっかりしみこんでいるであろうチキン。
既に匂いで期待に染まった瞳を潤ませながら、はくり、とスプーンを加える。
瞬転
「こ、これはぁー!?」
セイバー、覚醒。
新たなセイバーの魅力を発掘しつつ、その番組は滞りなく終了。
テレビ局では85%に達した視聴率にいつもは無口なプロデューサーが吼えていた。
「■■■■■■■■■■!」
ただし、その発言は部外秘であるため、一部音声を変えている。
サウンドエフェクトは冷静沈着な氷室女史。いつもクールに仕事をこなす。
そして、満足気な顔のセイバーがいつもの言葉で番組を締める。
「次回も、エクスカリバーで、エクスキュート!」
様々な意味で洒落になっていない。
ただの一言でお茶の間に居るであろうものたちに戦慄を与える。さすがは騎士王。只者ではない。
「く―――はは、はははははは!!! なんだそのギャグは、我を笑い殺すつもりかセイバー!」
毎回笑う英雄王。その財力もギャグセンスも計り知れない。
「どうした。ギルガメッシュ」
入ってきた彼は、言峰。この教会の所持者にして、管理人。
「どうしたもこうしたもあるか。ふ、ははははは。さすがは我がセイバーよ」
「ふむ。またか」
特に感慨なく頷くと、彼の横に座り、チャンネルを変える。
王の傍らに座するなど本来許されざる罪であるが、英雄王は頓着しない。言峰だから。見たい番組も今はないし。
「どうした、普段テレビなど見ぬお前が」
「うむ。今日は特別な日でな。これを逃すわけにはいかぬ」
ほう、と声を上げるギルガメッシュ。
この男が、そこまでこだわるとは珍しい。さて、このチャンネルの番組はなんであったか。
料理番組であったことを記憶している。大して興味もなかったので、詳しい内容は分からない。
言峰のほうを見ると、十年前の宿敵の養子に出会ったような顔でノートとペンを握り締めている。
「ふむ。我も付き合ってやろう」
戦いの幕が開く。
そう。まさに幕が開く。
壮大な音楽。豪奢な舞台。ここは大森林の中に建つ、堅牢で、かつ、優美さを損なわぬ城。アインツベルン城。
そしてその主、華麗な衣装をまとった、パーフェクトイリア。
部隊袖から壇上までやってきた彼女は、そこにある籠の中のミカンとリンゴのうちリンゴを手に取り、カプリと齧る。
にこりと笑い、
「わたしの魅力が確かならば、いつか必ずルートが作られるはずである!」
といつもの科白でその戦いを宣言する。かなり本音の魂の叫びに、聞くものは打ち震える。そして、それがけして遊びではないことを実感するのである。
幼いといえども、さすがはユスティーツアの末裔。その胆力は、並いる者では対抗できない。
番組の内容だが、宣言とは関係なく料理対決である。
毎週挑戦者がやってきて、三人居る料理の達人のなかから一人選び、それと味で勝負する、というものだ。
ただし、生放送。その全てを逐一観察され、醜態でもさらそうものなら、その場で全国の笑いものになるは必死である。
達人は、全部で三人。シロウ、リン、サクラ、それぞれに得意な料理が違う。
今日の挑戦者は男。何故か語尾にアルがつく変な奴。
その変人、泰山の店主が選ぶのは、やはり中華。そして、対戦相手も中華。
そして、激しい煙(ドライアイス)とともに三つある看板の内の一つが開く。ツインテール中華のリンが、深いスリットの赤いチャイナドレスで優雅に立っていた。
その金と銀であしらわれた扇でもって口を隠しつつ、目だけで微笑んでいる。
似合う。似合いすぎる。
中国系マフィアの女ボスで十分に通じる。
やがて二人が調理場という名の戦場に立ったことを確認し、白雪の妖精が、厳かに告げる。
「それでは双方。戦闘開始!」
白いメイドの銅鑼の音とともに、激闘が始まった。
「ぬうう。出来る!」
叫びながら高速で鉛筆を動かす言峰。
そのノートには、料理に使われた材料、調味料の量、焼き蒸し揚げるその時間、その盛り付けに至るまで、細大漏らさず書き込まれている。
彼は、この時を持っていた。
その技術は正に門外不出。中華を知るものであれば誰もが知りながら、たどり着くことは万に一つ。
さすがは聖域。正に聖地。
中華の泰山、その日本支部。
あらゆる食客をうならせ、時に再起不能にする禁断の秘術が、中華四千年の禁を破り、今ここに、テレビという願望機を通して日本中に配信されている。
さらには、これまでリンがその師より伝授されたといわれる禁断の料理が出されるとのこと。
そのような絶好の好機、逃せるはずがない……!
瞬きする間で決着が尽く死闘を繰り広げる両者に、負けるどころか勝る勢いで手を動かす言峰。
彼は今、神速の領域に在る――!
一瞬が数刻にも感じられるその激闘。先に料理をあげたのは、挑戦者。
そこには、真紅の神秘。麻婆豆腐が出来上がっていた。
数秒の差で料理を完成させたツインテール。
麺のツヤ、スープの光、キムチの色。どれをとっても申し分なし。
乙女の嗜みキムチラーメン。
「そこまで!」
白いメイドのジャッジの宣言により大きく打ち鳴らされる銅鑼。
完成された芸術ともいえる料理たちは、料理界の重鎮、この道500年の生きた伝説、ゾウケン氏の席に運ばれていく。
そして、いざ、試食。
まずは、挑戦者の方から。
「ほう!」
ゾウケン氏が声を上げる。
ありえない。神の舌を持つと言われ、様々な料理を口にしてきた彼が、さして特別な料理でもない麻婆豆腐に感嘆の声を上げる。
それは、どれほどのものなのか。見ているだけの者にとって、歯がゆいことこの上ない。
そして、キムチラーメン。
スープをすする。きちんと音を立てるのがマナーである。
ここまでは前哨戦。合格。
そして、麺。
箸でつまみあげるとスープと絡まり、新たな湯気が立ち上る。
一息にすすり上げる。途中で噛み切るような無粋はしない。
こんどはキムチと麺を同時に摘み上げ、口へ。
「!…………」
ぱちりと箸を箸置きへと置き、黙考。
しばしして筆を執り、結果表に印を入れる。
さて。
その結果は。
CMのあとで。
緊急告知!
ついにあの人がやってくる!
「く、なんてこと」
「大丈夫か!?」
「しっかりしてください、先輩」
中華のリン、最大の危機。!
宝石の使い手、金髪縦ロールからの刺客!
金髪同盟のハーフエルフ美少女。
そして何よりツインテール。
リンは、そのまま敗北するのか!?
次週、パーティー料理対決!
活目して待て!
流れるCMを無視して立ち上がる。
「ふむ?もう見んのか?」
「決着はついた。これ以上ここに留まる必要もあるまい」
その顔にかげりはなく、ただ絶対の自信と僅かな満足が見て取れる。
「ほう。説明してみろ」
「簡単だ。彼の老人は無言であった。普段ならば必ず文句の一つも言うであろうあの男が、だ。それの意味するところはただ一つ。言わなかったのではない。言えなかったのだ」
それは、つまり。
「あまりのうまさに声も出なかった、ということか」
「そのとおりだ」
服を翻しながら、歩み去っていく男。扉を閉める際に、声が聞こえる。
「もっとも、リンにアレを出させた時点で、彼の敗北は決定していたのかもしれんが、な」
CM明けのテレビ画面からは、敗北した男の悲壮な顔が大きく写っていた。
めぼしい番組を見尽くして、さて、そろそろ眠ろうか、と腰を上げたところで扉が開き、小柄な影が入ってくる。
「ギルガメッシュ様ぁ〜」
ぺたぺたと素足で歩いてきたその子の名は、アンリ・繭。
足元まで届く漆黒の髪。大きく優しい黒の瞳。
好きな番組ジャンルは時代劇。今は作家、後藤氏原作の大河ドラマ『コジロー』に嵌っている十歳(推定)児だ。ミュー、と泣いたりはしないことを明記しておく。
「どうした、童。もう寝る時間であろうに」
子供を気遣う優しさを見せる王。
「はい。あのぉ、そのぉ、ギルガメッシュ様は、もうお休みになられるのですか?」
黒いふりふりのワンピースの裾をいじりながら、うつむきながらも目だけで見上げてくる。
「うむ。それがどうした」
優しく微笑む、英雄王。他の者にそんな顔を見せることはない。
この者だけに見せる、特別な表情。彼は、アンリに、以前失った半身を重ねているのか……。
たしかに、あの者も、よい笑顔を見せた。
「あの、よろしければ、その、テレビを貸していただけないか、と」
「ふむ?」
少し考える、ふりをする。
とくに意味の無い、他愛のないいたずらである。
「えと、そんな、ああ、なんてこと!失礼なことを申しました。どうぞお気になさらずに、お休みくださいませ」
あせあせと手を振り全身で動揺を表すアンリに、軽く笑う。
「よかろう。貸してやろう」
「え、ああ、ありがとうございます!」
繭の、顔がほころぶ。あまりに眩しいその笑顔に、王も満足する。
「また侍の切りあいを見るのであろう?」
「は、はい。『暗殺!仕事人2』を!」
それは、最近3が始まった、高視聴率番組の名前である。
顔を髑髏面で隠し、様々な暗殺術を駆使して弱気を助け強気を挫く、義理と人情と感動の物語である。
それまで時代劇中ナンバーワンの視聴率を誇っていた、銃使い、老魔術師、ヤクザの親分の三人が活躍する、『三匹がKILL!』を僅差で破ったのも2だ。
蒼崎女史の手になるリアルな人形により、緊迫感の有る殺陣が可能となっているのが大きな要因であろう。
ただし、メインキャラの全員が同じ顔をしているため、見分けがつきにくいというものであり、また、何故か代替わりしても顔が変わらない不思議な番組でもある。
もっとも、アンリは、その全員を見分けるほどに嵌っている。3が始まったので、前回までのものを見たくなったのだろう。
DVD全24巻初回版五万八千円税別である。
「そうか。では思う存分見るが良い」
「はい!ありがとうございます!」
「ふ。ではな」
「はい!」
背を向け、扉を潜って、寝室へと赴くギルガメッシュ。
明日買うべきメモリーカードを忘れないようメモに書き、ベッドの枕元に有る、浅黒い肌の少女型の目覚まし時計の下に置いた。
この目覚まし時計は、少女が手に持っている風鈴が綺麗な音色を響かせるため、彼のお気に入りである。
ベッドに潜り込み、最後に見たアンリの笑顔を反芻しつつ、明日の番組を、頭の中の番組表でチェック。
「ふむ。そうか」
『ライダー姐さん ひらり、途中乗車の旅』に赤いマーカーでラインを入れ、静かに笑う。
……この世も、悪くない。
SEE YOU/GOOD NIGHT……
さて、そのころのアンリ・繭
「今週もやってきた!気になるあの子のハートを貫け!ランサーの、恋のお悩みコーナーだ!」
『一撃必殺!』の垂れ幕の元、やけにハイテンションなのは、長い髪を縛った、男。
その男気にほれ込む少年少女は案外多く、この番組も深夜枠としてはそれなりの人気が有る。
「さて、それじゃあ、最初のお便りから!何々?冬木市の、PN.三つの枝、さんから」
『最近、どうもクラスメイトの彼女のことが気になって仕方ないんです。私も女なのですが、これはおかしいでしょうか』
文を読み上げるのは心を射抜くキューピッド、アヤコ・ザ・エンジェル。その、あまりに感情の入った朗読は、今日も、視聴者の胸を和弓で打つ。
「若いうちはそういうことも有るもんさ。気にすることはねぇ、がんがん押してけ。取りあえず、飯にでも誘ってみるんだな」
「そうだったんだ……」
今回の悩み相談が、見事に自分のことと当てはまる。
そう。今回テレビを貸してもらうように頼んだのは、今抱えている自分の恋心をどうするべきか悩み、答えを得る手がかりにするためのものである。
その本人に嘘をついたことは心が痛むが、しかし、仕方ない。
それに、それだけの価値もあった。
「待っていてください、ギルガメッシュ様!」
いそいそと計画を練り始めるアンリ・繭。
はにかむ姿は夢幻の妖精の如く、微笑む姿は春の太陽の如く。
育ててくれた黒いおねえちゃんの影響で、華麗に可愛く育った少年である。
彼が、凛ルートで見事王の胸を貫くことに成功したことは言うまでもない。
FIN
あとがき
まさか、SSを書く日がこようとは……
恐るべし!就職活動!
すいません。現実逃避です。
主なキャラは全部出しました。
初のSSですので、見苦しい点などはお目こぼしください。
なお、副題がギルガメッシュナイトであることは言うまでもありません。
おまけの番組表
大河ドラマ コジロー
実際に存在しない人物を書いた大河ドラマの異色作。
余りにも有名すぎる、宮本武蔵との対決のあと、実は生きていた、という場面から始まる。
様々な地を放浪し、剣のみによって身を立てる彼は、ついには国の外へと出向き、武蔵戦では未完成だった秘剣、燕返しを会得するに至る。
そして国に戻ってきた彼は、ある山寺で、異国の王との対決により命を落とすことになる。
最期まで壮烈な人生であった。
ライダー姐さん ひらり、途中乗車の旅
様々な乗り物に愛馬のペガサスで接近。行動中のそれに乗り込んで、乗っ取り華麗に操縦。
一流とよばれる乗り手たちのプライドを粉砕する番組。
もちろん、安全運転、発着もパーフェクトに決める。
先週はステルス爆撃機。今週は新幹線のぞみ。次週はボンドカー。今度の特番はスペースシャトル。
三匹がKILL!
拳銃使いは正義、老魔術師は真理、ヤクザの親分は仁義のために邪魔する奴らを叩き殺す血と涙と汗と男気の時代劇。
毎回毎回3桁以上という死人。人きり系時代劇としても死人が出すぎである。
ついた渾名が『倍汚廉子・時代劇』
ゲームCM:ANOTHER
―――戦え
「あんたも私のサーヴァントみたいなもんでしょ」
「……なんでさ」
コンビ変更自由自在!
――生き残るのはただ一組
「フフ、それでは頑張ってもらいましょうか」
「く、貴様ぁ」
法具連発!魔力充填キャスターモード。
―――奇跡を欲するのなら汝
「ナインライブズ!」
「我が身がセイバーか。ふむ。元よりこの身は剣に捧げているが」
反則!クラス変更!
――最強を証明せよ。
「体は で出来ている」
「あいつ、また無茶して……。あんまり、持たないわよ」
そして、特定コンビだけの究極奥義!
タッグ格闘ゲーム
Fight/stay side 〜セイギノミカタ〜
「いくぞ英雄王。武器の貯蔵は十分か」
今夏、発売予定!
このような場所を提供していただいているこのページの管理者様方、ならびに、この文を読んでただいたかたに感謝を。
ありがとうございます。
これより下のスレッドは、上記の内容に触れるものです。
もし読んでいない方がおられれば、先に読まれてからお進みください。
なお、上記の内容に、変化はありません。
申し訳有りませんが、注意をしてください。
一部の方に突っ込まれたのですが、このSSに存在するキャラ。
アンリ・繭(ミューと泣かない)
は、『男』で、あります。
よく読んでいただければそのような記述があると分かるかと思われます。
むちゃくちゃかわいい女装美少年(腹黒)。
を想像していただけると分かりやすいと思われます。
勘違いされた方、申し訳ありません。
こちらの筆力不足でありました。
せっかくですので、ネタを思いついたはいいが、書けなかったった没ネタを掲載させていただきます。
恋の相談が真アサシンであった場合
彼のハートをがっちりキャッチ!そのまま貴方の元に!
今夜も、彼を見守ろう!
というキャッチコピーの元、その人に気付かれずに家に潜み、寝床に進入。
後はそのまま夜這いというようなそんな技術を教える番組。
実践、這い寄る混沌テクニック。
今夜も貴方の妄想心音。
等のコーナーがある、ストーカー実践講座になっていたはずです。
当然講師はハサン氏。
副講師として、未来を占う晶女史と、闇のことなら任せとけ、の魔法少女マジカルアンバーさんがおりました。
ランサーの大海原にかけろ!
毎週海に出かけて、そこで魚を釣るというつり番組。
ただし、ランサーの兄貴は素潜りの上槍一本で魚を取る、正に男のためのつり番組。
ゲイボルクの名と供に、どんな魚も決して逃がさず、一突きでしとめる正に神業。
さあ、君も男の戦いを見よ!
次週は、ザトウクジラと一騎打ち!
ちょっぴり大人へ、大・変・身。(深夜枠)
番組に命を賭ける竜牙兵Aの手によるもの。
彼は、素人女性に突撃、写真を取らせてもらうというそれだけの番組。
タイトルに意味もセンスもないのは彼のせいである。
因みに、凛ルートの、学校で凛に近づいた竜牙兵は彼である。
彼女の慌てて萌える仕草を近距離激写しようとしたが、士郎により阻止、返り討ちにあう。
現在、彼は複雑骨折で入院中のため、この番組は別の番組に切り替わっています。
料理対決!
士郎VS式
和食勝負
それは、正に日本人としての戦いである。
方や日本料理の技術の粋、懐石料理。
方や、人の心を揺さぶる家庭料理。
どちらも料理、どちらも心。
勝つのはどちらか!
士郎:肉じゃが、金平ゴボウなどの。家庭の味。お袋の味。
式:素材の持つ力を極限まで生かした和懐石
作者が懐石料理を知らないので判定不能。
琥珀VS桜
洋食勝負
琥珀:……いろいろ
桜:愛という名の妄執
どちらも異物混入でドロー
以上