居間に不穏な空気が漂っている。
テーブルを囲んでいるセイバーとバーサーカーを除く、全サーヴァント。
この空気の発生源は、そこだった。
「アーチャー、てめえは止めたほうがいいぜ」
不敵に笑いながら言うランサー。
「貴方こそ、止めたほうが良いと思われますが」
淡々と告げるライダー。
全員が腕を頭上に上げている。
その手には、薄い長方形の物体。
他の者が持つソレを見ては、全員が何かを考えているようだ。
「レイズ」
そう言って、手元の蜜柑一個をテーブルの中央に置く真アサシン(通称・中の人)。
「む、私はドロップしよう」
そう言ってアーチャーは、ソレをテーブルの上に伏せて置いた。
「じゃあ、私はレイズ」
キャスターがそう言って蜜柑を中央に置く。
ライダーとランサーもレイズといって蜜柑を中央に置いた。
「では、コールだ」
四人の顔が、緊張した面持ちに変わる。
そして、手に持ったソレをテーブルの上に出す。
ランサーはハートと数字の六。
ライダーはダイヤと数字の十。
真アサシンはスペードと英文字のJ。
キャスターは、ハートと数字の九。
と、それぞれに絵柄と文字が書いてあった。
まあ、大人数の遊びの定番『トランプ』だ。
ちなみに、あいつらがしているのはインディアンポーカー。
この場合、中の人の勝ちだな。
「ちっ」
自分のカードを見たアーチャーが、舌打ちをしている。
カードはスペードの2。
ジョーカーに次ぐ、二番目に強いカードだ。
「ランサー、貴様騙したな!」
「ブラフだブラフ。騙されたほうが悪い」
取っ組み合いの喧嘩になりそうな雰囲気だが、気にしなくても良いだろう。
遠坂が仲裁に入ってるし。
セイバーとバーサーカーが居ない理由だが、
バーサーカーは何を言ってるのか解らないので、満場一致で退場させられた。
セイバーは既にチップ代わりの蜜柑が無くなり、退場している。
ちなみに、セイバーは皆から罰ゲームを言い渡されている。
その内容だが――
「セイバー」
「な、なんです、す……しゅ……か、シ、シロウ」
こんな感じだ。
『す』を『しゅ』に変えろ、という罰ゲームを実行中。
顔を真っ赤にして、必死に言おうとしてるセイバーは萌えだ。
「開き直った方が、恥も少なくて良いと思うぞ」
と助言をするが、実はセイバーに言わせたいだけの人として終わってる俺。
「シロウ」
貴方は優しい人だ、と涙を滲ませながら言うセイバー。
それでも、先程の助言は何の解決にもならなかったりする。
立ち上がりながら開き直ってやる、と宣言するセイバー。
罰ゲームを実行しない、という選択肢は無いのだろう。
セイバーは勝負事関係には厳しいからな。
「シロウ。そろそろ次の脱落者が出る様で…しゅ」
容姿とその言動から、セイバーがどうしても幼い子供に見えてしまう。
なんていうか、こう、抱きしめたくなる感じ。
「シ、シロウ!?」
む、どうやら本当に抱きしめていたらしい。
抱き心地が良いなあ、セイバーは。
「は、離してくださ――ふあ!?」
胡坐を掻きながら、セイバーを抱きしめる。
擬音は多分『だきだき』だと思う。
途中からセイバーも満更ではなくなったようで、俺に体重を預け大人しくしていた。
セイバーの抱き心地を存分に堪能していると、突如悪魔が御降臨。
「――衛宮くん。君は何をしているのかな?」
ピシリ、と体が凍ったかのように動かなくなる。
セイバーはいつの間にか、気持ちよさそうに眠っていた。
首筋に何かを押し付けられる。
多分、遠坂の指だと思うのだが。
「私のフルパワーのガンド、喰らってみる?」
「いえ、遠慮します。遠坂様」
「遠慮しなくて良いわ。出血大サービスだから……貴方の血がね」
その言葉と同時に、俺はセイバーを担いでテーブルに向かって飛んだ。
直後、銃声に似た音と共に、先程まで座っていたところに焦げ跡がつく。
左肩にセイバーを担ぎ、右腕でテーブル上の蜜柑を数個掠め取る。
数発飛んできたガンドを紙一重で避け、強化した蜜柑を投げつけた。
殆どがガンドと相殺し、一つだけが遠坂の薄い胸板に当たる。
既に強化の解けていた蜜柑は、勢い良く破裂した。
ビチャリ、と嫌な音がして果汁が飛び散る。
俺は少しの被害で済んだが、遠坂と付近のサーヴァントは果汁まみれだ。
良く熟れていたんだな、あの蜜柑。
少し場違いなことを考えて、現実から逃避する。
主に、賭けを邪魔されたサーヴァントや怒り狂うあかいあくまから。
DEAD END
あとがき
頭にアンテナが付きました、どうも鴉です。お久しぶり。
電波を受信しました!! イエーイ、電波最高♪
内容とかは、書きたい事を適当に書いたので自分でも良く解ってません。
いや、……正直すまんかった。
他の執筆中のSSの続編ですが……もう少しお待ちを。
多分、半年くらい(長ッ!)
おまけ
柳洞寺山門にて
「私は忘れられているのか」
花や鳥に話しかける青年――佐々木小次郎の姿があった。
「■■■■――!」
ちなみに、巨体――バーサーカーも。
おまけ2
衛宮士郎は数日後、無残な姿で発見された。
体は血塗れならぬ、果汁塗れ。
成分から、これは蜜柑の果汁であることが判明している。
尚、彼は発見当時うわ言のように「蜜柑怖い」と呟いていたそうだ。
彼は只今、自宅にて精神療養中である。