α(最終更新3/25)のあらすじ。
黒セイバーが限界して、セイバーが青と黒2人になった。
「セイバー×セイバー×セイバー」β1
「く、は……っ」
ぱたっ
いきなりだが、稽古の最中にセイバーが倒れた。
こんな時に限って遠坂も桜も藤ねぇもいない、黒セイバーも桜と外出中だ。
……さあ、どうしよう。
親父は死ぬ間際まで衣食住以外の自分の面倒は全て自身でやっていた。桜が倒れたときもせいぜい部屋に運んで食事を用意したくらい。藤ねぇにいたっては看病された側だ。こうしてみると、衛宮士郎は他人の看病を真面にしたことが無い―――
「う、……」
とうに気を失っているセイバーが苦しそうにあえぐ。居ても立っても居られなくなって、急いで部屋に連れて行き、布団に寝かしつける。
けれどそこまで。あと俺にできることは、せいぜい汗を拭くことくらいしかない。
どのくらい時間が経ったのか。
「ん…………」
セイバーの目蓋が開く。
彼女はしばらくの間ぼぉっとしている。そのうち、はっとした表情になって起きようとするけれど、「……く」身体がそれを許さなかった。
「―――ああ。気が付いたか、セイバー」
「……シロウ。私は、どうして」
「ああ、あれからずっと眠っていたんだ。あ、俺は大丈夫だから。セイバー軽かったしね」
「――――申しわけありません。稽古の最中に倒れるなど」
「いいから休んどけって。そんな体調で頑張るなよ」
おそらくは、アレの再発。
限界している本体――この場合は青セイバー――に影響は無いと(偽装)友人が言っていたけど、心配なものは心配だ。
今回何に分かれるのかは判らないが、魔力を提供する俺たちには限界がある。
もしも、供給不足になって消えてしまうなんてことなど、考えたくもない。
「……シロウ。その、ずっと私の手当てを……?」
「手当てといっても汗を拭く程度さ。俺は遠坂みたいに、英霊の症状を看る事はできないから」
「―――私の看病などしなくても構いません。シロウも稽古の後で疲れているはずだ。貴方も休んだ方が」
「ばか。いくら俺が疲れているといっても、セイバーは病人なんだぞ。病人はだまって自分の体のこと考えてろ」
言いながら、俺は近くの洗面器に手を伸ばす。
洗面器には冷やしたタオルがあって、俺はタオルを絞って――流石に身体を拭く訳にはいかないので――額に浮かぶ汗を拭う。
セイバーは黙ったままその行為を受けていたが。
「……シロウ、これは、照れる」
真っ赤になった顔でそんなこと言う。
「? セイバー、どっか痛むのか? また熱が出てきたみたいだけど」
こっちも照れ隠しに必死だ。
「い、痛むところなどありません……! いえ、そうではなく、もうシロウも休んでください。
今は元気かもしれませんが、貴方も疲れているはずだ。今休まねば必ず明日に響きます」
「まあ、それは、そうだけど」
言い淀みつつ、俺はタオルを絞る。
「けど、今は俺の方が元気なんだ。
病気の女の子を放っとくなんてできるか。俺が看守るのは当然だろ?
「――――」
セイバーが何か言いたげにしている。けれど、何も言えないみたいだ。
「……。では、私が落ち着いたら休むのですね、シロウ」
「当然。俺だって、眠らなきゃ保てないから」
いつもの調子で言う。
……そうして、照れくささを堪えながらセイバーの看病をし続けた。
……なんかこのままいくと、白い指や華奢な腕とかを見て女の子だなーって思ったりして冷静でいられなくなって俺が笑っていてくれた方が嬉しいって事に狂いそうになって彼女を抱きしめてため込んだものを吐き出して彼女を困らせて卑怯だと言われても告白して拒絶されて無理矢理唇を奪って互いに殻を捨てて……!!
……
なにを、ばかな。
寝込みの病人を襲うなど、正義の味方にあっていいものか。
「……すぅ……」
とか妄想している間に彼女は眠ったようだ。よかった、あのままでいられたら、どこまで理性が持つことか。
見れば、相変らずセイバーの額に大粒の汗が浮かんでいる。そっとそれを拭ったとき、汗が首筋まで流れているのに気付いた。
布団を少しめくってやる。すると、服が汗でびっしょりだった。この季節でも、身体を冷やしたら多分、サーバントでも体調は悪くなる、と思う。
それは、服を替えれば済むこと。
そのためには、服を脱がして、身体の汗も拭いてやらないと、ダメな訳で。
……あくまで看病だ。そこに疚しい気持ちは微塵も無い。
だとしたら。親父、これは正義だよな。
心の中の切嗣は、こぶしを作り親指を立て歯を光らせて遠い目で、「ぐっじょぶ」と言っている。
うん、これはきっと正義。ならば、なにを躊躇うことがあろうか―――
前よし。右よし。左よし……天井と畳に異常なし。
では、一番、衛宮士郎、セイバーを脱がしにいっきまーす!
がば。
ごそごそ。このボタンを外して、えっとこのリボンをほどいて……って。
ああもう脱がしにくいなこの服―――っ。なんで遠坂はよどみなく脱がせられるんだろう。
「当然でしょ。もともと私の服なんだから」
「ああ、なるほどね」
自分の服なら慣れているのは当り前だ。思わず納得する。
「一応聞いておくけど、一体どうしたの?」
不思議なことを聞いてくる。見たまんまなのに、判らないのだろうか。
「剣の稽古中にセイバーが倒れたんで看病してる。たぶん、あの病気が再発したんだと思う。
熱は無さそうなんだけど、さっきまですごい汗かいてたんだ。
汗吸った服をそのままにしておく訳にはいかないだろ。サーバントでも身体冷やしたら調子悪くなりそうだし」
「ふんふん、まぁそんなところね。で、衛宮くんは何をしているのかしら?」
「そりゃあもう、服を替えようと脱がしてる最中さ」
「替えの、服も、な・い・の・に?」
「……あ、それは気がつかなかったよとおさ―――ってとおさかーーっ?!」
振り向いて目に入ったものは、遠坂の足。というかふともも。
うーんまぢかで見るとやっぱりキレイだなー。シミとかホクロ一つないってのがぐっどだよな。
でも膝が見えないのはなんでだろう? あぁ、斜めになってるからか。うん、視界の隅っこに見えた。
でも段々ふとももが大きくなっているのはなんでだろう? あぁ、迫ってきてるからか。
なんか膝が側頭部を狙っているような感じなのは気のせい……じゃねぇー!!
――ごす
しゃ、シャイニング・ウィザード……
でも遠坂、ミニでそれやると見えるぞ……
「やかましいっ! このエロ士郎が!!」
ばきゅんばきゅんばきゅん
ガンドに塗れ、薄れていく意識の中で、「そう言えば、後ろを確認していなかったな」ってことを思った。
人の気配がする。あぁもうそんな時間かと思ったとき、その声を聞いた。
「……シロウ、起きてください。我が軍は兵糧攻めに遭い壊滅寸前です」
……それはちょっとおかしくないかセイバー?
まぶたを開けて、俺のとなりに鎮座しているであろうと思われる信楽焼の狸を拝見する。
自分を見つめる瞳は、なぜか緋色。って、聖緑じゃない!?
がばっ、とはね起き、ようとしてやっぱり起こすのは上半身だけにする。
そこにいたセイバーは、ちょっと、いやかなり。
赤かった。
「……夢か」
いきなり現実逃避の俺。
「む。そう来ますか。それならばこちらも手段は選びません」
と言うが早いか、俺の布団に潜り込む。鎧は解除しているらしく、容易く侵入を許してしまう。
「な、な、セイバー、なにを、して―――」
「このまま誰かに見つかってボコられるか、素直に起きて朝食の用意をするか。さあシロウ、貴方の未来だ。後悔しないよう選ぶのです」
「……っ、わかった、わかったよ。すぐ起きるって。だから早く出てってくれー」
朝だから見られたくないモノがあるし、それ以前に、女の子の目の前で着替えるなんて恥ずかしいことできない。なのに。
「それはできません。私が出て行った後、シロウが絶対2度寝しないとはいえないでしょう。ならば、ちゃんと起きるまでここで待ちます」
「セイバーが出て行ってくれないとこっちが布団から出れないんだよ」
「むむ。意地でも起きたくないのですか。いいでしょう。それほどの覚悟があるのならば」
耳元で大きく息を吸いこむ音がする。ということは?
「おーきーてーくーだーさーいーしーろーうーー!!」
み、耳が、きーんきーんきーんってする!
「セ。セイバー耳元で大声……!」
「最後の手段です。こればかりは使いたくはなかった……」
とそのとき、どたどたと駆け上がる、死刑執行人たちの足音が聞こえた。
「シロウ、何事ですか!」
「士郎、誰の声よ今の!」
「シロウ、朝ご飯はまだですか?」
その後の惨状は、語るべくもない。
「……とりあえず士郎のことは置いときましょう。で、また増えちゃったワケね、セイバー」
「すみませんシロウ」
「俺に謝る必要なんて無いぞ」
「いえ、そうではなくて……ごはん――」
「そうよ。にしてもあなた、朝からずいぶんぶっちゃけたことするわね」
赤セイバーの方を向いて言う。
「いつも貴女がすることですから」
「な……っ、士郎が迷惑してるでしょってんのよ」
「その困惑した表情を見るのが貴女の生き甲斐ではないのですか、凛」
「く、朝食が作れないと困るじゃない」
「……ご安心を。元々朝食を摂らない貴女が困ることはない」
「……魔力供給をあなただけ切り離すことだって出来るのよ」
「それならそれで、新しいマスターと契約するまで。幸い、マスター候補はすぐ近くにいますから」
すごい。遠坂が問答で競り負けている。やはり、毒には毒が効くというのだろうか。
2人の目線がぶつかり合って、弾ける火花が目に浮かぶ。
俺とセイバーはおろおろするばかり。
黒セイバーは、「ご飯、まだでしょうか」我関せずを貫いている。
と、今にも刃がぶつかりそうになったそのとき。
――ぴー
ご飯が炊けた。
「ふう。セイバー、一時休戦よ」
「わかっています。この続きは、ご飯の後で」
2人が鞘に収める。と同時に俺達は溜め息。
これで平穏に戻れた、と、このときはそう思っていた。
けれども。
(こくこく×3
はむはむ×3
シロウ、お代わり×3)×4
……何かの方程式だろうか。
「……セイバー……食べる量って、やっぱり変わらないのか?」
「申し訳ないがシロウ、それはありえない」
「魔力供給は最低量には十分ですが、いざというとき力を発揮できなければ意味が無い。その分を食事から取るのは当然の事でしょう」
つまり、単純計算で3倍。
ただでさえ厳しいのに、衛宮の家計はあっというまに火の車だー!!
遠坂ー、仮にもマスターなら助けてくれー
「いやよ」
「ほう、それもいい考えですね。足りない分はマスターから直接頂きましょう」
と、トンデモナイことを赤セイバーは言った。
魔術師から直接もらう。けれどセイバーが血を啜るなんて考えられない。ということは、つまりアレをすることで―――
「そ、そんなこと―――」
「んなことダメにきまってんでしょうが! 士郎は私のなんだから!」
思わず吹き出しそうになる。遠坂お前、この話でそれを言っても効果がないって気付いているのか?
案の上、何のダメージも受けなかったように赤セイバーは口元に手を当て、それはまるであかいあくまのように微笑んで。
「凛、なにを勘違いしているのです。“シロウ”とは言っていませんよ。私は“マスター”からもらうと言ったのです
「え?」
「幸い貴女は魔術師として優秀な上に器量もいい。行為する上でなんの障害にもなりません」
「え、え、ええぇぇっ?!」
それは、いわゆる、女性をたたえた詩で名高い女流詩人サッフォーの生地である島が元になった性癖ですか?
「元よりシロウでも凛でもどちらでも構わない。まぁ、凛がダメだと言うのであれば仕方がありません。シロウ、貴方からいただくことになりますが」
両刀っすかー?
「うぐ……」
遠坂が苦悶の表情をしている。―士郎、何とかならない―な目線をしてきたけど、そりゃ無理ってもんだろ。
たとえ拒否しても、あかいセイバーは許してくれなさそうだし。
「……わかったわよ、出せばいいんでしょ、お金!」
わたしの一ヶ月分の努力の結晶がーとか言いながら、懐から宝石を取り出す。
「凛」
「むっ、何よ。足りないとでも言うの?」
「貴女に感謝します」
「っ〜〜〜!」
天敵、出現。
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あとにかくもの
マテリアルにあるものの、ゲーム中には出てこなかった赤セイバー登場です。
これってオリキャラ、になるのでしょうか?
段落わけ模索中です
気づいたこと
青・黒・赤ではあまりにあれなので次回は
青セイバー→セイバー
黒セイバー→Bセイバー
赤セイバー→Rセイバー
と試験的にやってみます。