注:若干のキャラ破壊がありますが気にならない方のみご賞味ください。
『ああ、先輩、これでやっと私のものになるんですね。』
<桜陰謀事情>
「んーーーーーーー。」
穏やかなとある日曜日の朝、俺こと衛宮士郎は悩んでいた。
「?どうしたのよ、かぼちゃの煮つけなんか真剣に睨んで。」
そうちゃぶ台の向かい側から話し掛けてくる今日も今日とて赤揃えの彼女。
某大佐も裸足で逃げ出す赤いあくまこと遠坂凛。
俺の師匠であり、現在恋人である魔術師だ。
「どうしましたシロウ、先ほどから箸が進んでないようですが。
このかぼちゃの煮つけに何か問題でも?」
そう隣から話し掛けてくる白と青基調の落ち着いた服装の彼女。
小柄に見えて実は同じような白と青基調の巨大ロボットも尻尾を巻いて逃げ出すほどの英霊、アーサー王ことセイバーさん。
聖杯戦争のために召還されたが、戦争が終わったあとも俺の傍にいてくれる、俺のサーヴァント兼剣の師匠だ。
「シロウ、好き嫌いはいけません、あなたは育ち盛りなのですから、しっかり食べて頂かないと困ります。」
「む、いや、かぼちゃは嫌いじゃないぞ、ただ、だなあ・・・。」
「ただ、なに?ひょっとして桜が作ったものは食べれないとかそんな感じだったりするのかな衛宮クンは?」
実にいやらしい顔をしてそんなことをいう遠坂。
桜というのは俺の後輩で、二年位前から家の手伝いをしてくれている俺の妹、みたいな女の子だ。
今日の朝食だって桜が作ってくれたものだ。
桜には慎二という兄がいて、今回の聖杯戦争でなんだか偉くとんでもない事になって入院している。
それでつき物が落ちたのか、なんだかいっぱいいっぱいだったあいつもどうやら昔の皮肉屋だけど悪いやつじゃなかったあいつに戻ったらしい。
それが嬉しいのか、桜は見舞いに毎日のように通っていて、ここに来るのは週末くらいなものだ。
今日も朝食を作ったかと思うと、『兄さんのお見舞いに行ってきます。』とさっさと行ってしまった。
でもまあ、あのふたりが仲良いのはきっといいことだ、うん。
で、その桜さんに作っていただいたかぼちゃの煮つけなんですが。
小鉢に一人一人取り分けられたかぼちゃは実に美味しそうだ。
見た目もいい、においもいい、きっと味もいいんだろう。
でも、頭の中では空襲警報が鳴り響いている。
『絶対それを食べてはいけない。』
衛宮士郎を構成しているもの全てが警告を発している。
とにかくこのかぼちゃの煮つけはなんだかよくわからないけどとにかく「ヤバイ」。
「ん?何?腐ってるとか言うんじゃないでしょうね、私の分はもう食べちゃったわよ。」
「凛、それはない、この南瓜は昨日シロウが購入したものだ、一日で腐るような事は流石にないかと。」
「へー、セイバーったら、士郎と二人でお買い物にいったんだー、いいわねー仲良くて。」
「凛・・・、昨日は貴女も居たではありませんか・・・。」
「ちっ、ひっかからないか。」
「当たり前です、凛、ここ数ヶ月貴女にどれだけそのような戯言をいわれたことか・・・。
しかし今はそのような事を言い合っている場合ではありません、シロウ、一体どうしたと言うのです?」
「まあ、そうね、体調が悪いのなら早めに行ったほうが良いわ、春先の風邪は性質が悪いわよ。」
――う、二人が心配してくれるのは、すごく嬉しい。
「いや、体調の問題じゃなくて、このかぼちゃの煮つけがだなぁ。」
「なんです?」
「なんなのよ?」
「・・・なんだろう・・・。」
はあ?とばかりにあきれ返る二人、頼むからそんな蔑む目で俺を見ないでくれ。
「と、とにかく、このかぼちゃはまずいんだ、それだけは確かだ!」
ひょいぱく。
ひょいぱく。
もくもくもくもくもくもくもくもくもくもくもく
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ
コクン
ゴックン
「美味しいですよ、シロウ。」
「美味しいわよ、衛宮クン。」
――いや、あんたらそうじゃなくてだなぁ。
「はあ、シロウ、やはり体調が悪いのではないですか?
確かにこのかぼちゃの煮つけは士郎の味付けには遠く及ばないものの、それでもサクラなりの工夫が凝らしてあります。
それを不味いと感じるのはやはり味覚に問題があるのでは?
私の経験上、風邪を引いたときなど味覚が変わることがあります。」
要するにシロウは風邪を引いたのです。
セイバーはむん、とばかりこちらを見据えてそう結論づける。
「そうよー、風邪って怖いのよ、風邪引いて味覚が破壊されたって人もいるんだから。
そうすると美味しいご飯も作れなくなっちゃうわよ、衛宮クン?」
ここぞとばかりに増援を送り込む赤いあくま。
「な!シロウ、それは困る、サーヴァントとして要求します、今すぐシロウは休養を取るべきだ。」
その増援を受けて一気呵成に攻勢に出るセイバー。
最早満身創痍のわが軍、そろそろ「やらせはせんぞー」とか言うべきだろうかなんて考えていると、
「ま、大丈夫よセイバー、別にコイツの体調に問題はないから。」
なぜか突然に出された休戦協定。
「?どういうことです、凛?」
「ああ、これね、ほんの少しだけど魔力がこもってるの。」
――魔力?
「凛、まさか、毒薬か呪いの類ですか?」
セイバーが真剣な顔をしてそう問う。
それに遠坂はなんでもないのよとばかりにひらひらと手を振って答える。
「別に、魔力っていうか想念みたいなもの、ごく微量で、悪さできるようなもんじゃないわ。
士郎は世界の変化に敏感だから、きっとそんな微小な量でも異常を感じてしまったんでしょうね。」
「し、しかし凛、私は気づきませんでした!
私の直感はAランクのはず、シロウが気付いたのなら私も気付かないわけがない!」
がっ、とばかりに遠坂に詰め寄るセイバー、自分の能力が鈍ってるというのは彼女には耐えられないのだろう。
「そりゃそうよ、セイバー、だってこれ毒じゃないもの。」
「あ・・・。」
まあ、俺に効かない様な魔術が、いくら魔力を抑えるために対魔力が下がってるセイバーに効くわきゃないよなぁ。
「なるほど、つまり私が無視するほど弱い魔力だと。」
「そ、まあ士郎は対魔力無いも同然だから敏感になるのも当然ってわけ。」
――なんか遠まわしに馬鹿にされてるような気がしないでも・・・。
「でもさ、何で俺の煮付けににそんな魔力こもってたんだ?」
「いったでしょ?これって想念みたいなもんだって。
つまりね、この煮付けを作った人は士郎の分にだけ『特別な強い思い』ってヤツを知らず知らずのうちにこめちゃったのよ。」
――特別な強い思い?
「特別な強い思いって・・・。」
何さって聞こうとして止めた。
なんだか遠坂がとってもにこやかに笑ってる。
背筋に悪寒が走る笑顔ってのもなかなか人にできない事だと思う、うん。
「なるほど、そういうことですか、凛。」
どうやら理解したのかうなずくセイバー。
でもどうしてその目がすっごく冷たいんだろう・・・。
「そういうこと、で?どうするセイバー?」
氷の微笑を浮かべる遠坂、絶対零度の視線を向けるセイバー。
「マスター、支持を。」
「おっけー、セイバー、んじゃまとりあえず。」
まさに前門のあくま後門の獅子。
その最強タッグの対戦相手は・・・、俺?
「食べちゃいましょ。」
「食べましょう。」
ひょいぱくひょいぱくごっくんひょいひょいぱくこくんひょいぱくぱくぱくこくん。
――うああ。
すごい勢いで目の前の煮つけを平らげてしまった二人。
全く同時に食べ終え、ずずーとお茶をすすって湯飲みを置く。
正に完璧なユニゾン。
「ではシロウ。」
「んじゃ士郎。」
がっ、と両脇をつかまれる衛宮士郎。
気分は捕獲された宇宙人。
「あの、これからどこへ・・・。」
「剣の鍛錬です。」
「魔術の修行よ。」
――待てい。
「ばっ!両方できるわきゃないだろーが!」
「できますよ。」
「できるわよ。」
右側にはすっかり武装したセイバーさん。
ってか魔力消費するから使えないとか言ってませんでしたか。
左側には光る左手を高高と上げる遠坂さん。
ってかそれって魔術刻印っていうものによく似てるんですが。
――って、え?これって・・・。
「あ、あの、俺はこれから一体どうなる・・・。」
「覚悟してください、シロウ。」
「覚悟してね、衛宮クン。」
――い・・・
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
続く
interlude
夕方が終わりを告げ、真円を描く月が夜の帳を下ろし始めた。
いつもは騒がしいはずの衛宮邸は、不可思議なほどの静寂に覆われている。
カチャリ。
その静寂を目前にして、一人立つ私。
「…。」
月光は雲に隠れ、世界は一色の黒。
その中をゆっくりと泳ぐように玄関に辿り着く。
幸い結界は反応しない。
おそらく私に「敵意」を感じなかったのだろう。
妙な話だ、私はこれからある意味先輩を「襲う」のだから。
「あ、そっか。」
この結界を作ったのはこの家のかつて主である先輩のお父さん。
そのお父さんの結界が私の思惑に反応しなかったと言う事は…。
「先輩のお父さんは私の事認めてくれましたってことですね。」
そうだ、そうに違いない。
うんうんと頷いて戸の合鍵を取り出す。
先輩からもらった私の命より大切な宝物の一つ。
きっとこれは今日の為に先輩が渡してくれたのだ。
「先輩、先輩の好意が今まで理解できなくてごめんなさい。」
――今から飛んで行きますから待っててくださいね。
カラリ。
ゆっくりと戸を開ける。
ここも一面の闇、普段なら今の時間居間から騒がしい声が聞こえてくるはずなのだがそれがない。
それも当然。
今日は一番騒がしい藤村先生は教員の集まりで居ない、
二番目に騒がしい戸遠坂先輩は今日は用事があるらしく居ない、
何気に騒がしいセイバーさんは遠坂先輩の用事に必要らしく居ない。
今日はこの家に先輩一人。
まるで惑星直列のような偶然。
そもそも私がこんな事をするには原因がある。
それはある日の事。
いつもの朝食をいつもの顔ぶれでとっていたときのこと。
セイバーさんが突然こう切り出した。
『凛、シロウと睦み合うのは結構ですが、あまり大声を出さないほうが良い、近所に聞こえます。』
小学生じゃないんだから、それの意味するところくらい分る。
その後藤村先生を交えて問い詰めたところ先輩と遠坂先輩は付き合っていて、もう関係まで持ってしまっているとのこと。
その後独自に調べたところ、その頻度実に月二回。
全く、遠坂先輩は先輩が健全な青年男子という事を忘れているのだろうか。
特に先輩は健全な中でも特に健全だったりする事を知らないのだろうか。
先輩の平均自己処理率が以前月一度程度だったのが、二人が付き合い始めた頃あたりから週三回に激増している。
多分遠坂先輩がなかなかサセてくれないからだろう。
しかも隣の部屋にセイバーさんが寝ているものだから、土蔵で爆発物処理を行っている始末。
先輩、きっと死にたくなるくらい情けないでしょう?
――でも先輩、私が来たからにはもう大丈夫ですよ。
先輩の求めとあらば、週六回でも七回でも外でも学校ででも先輩のシたいときにサセてあげますから!
ぐっと拳を握り締めて気合を入れる。
居間についた、光も無く深海のような闇の中、私は最後の仕上げにかかる。
ぼふっ。
紙袋を下ろす、中にはいわばこれから戦場に赴く私の必殺の宝具が入っている。
その真名、「萌え殺す百人」(大きめのYシャツ)。
見た目は只のYシャツ。
普通の紳士物の洋服店などに行ったら二束三文で売っている代物。
ただ、この宝具は特定の条件下で絶大な効果を発揮する。
女性が素裸の上に一枚だけそれを着る。
人呼んで『裸Yシャツ』。
その効果はまさに絶大、全身において重要な部分を隠しておきながらそれでいて隠し切れていないと言う見えそで見えないチラリズム。
さらにそのYシャツからすらりと突き出したなまあし。
誰が考え出したかは知らないが、これぞまさに人類の至宝というに相応しい。
と、土蔵においてあった先輩の本の特集記事に書いてあった。
わざわざドッグイヤーまでしていたと言うからにはよっぽど感じ入るものがあったのだろう。
他にもいろいろとあったのだけどいきなりハードなのから行って嫌われたらいけないのでひとまずこれに決定した。
でも、先輩。
――先輩の趣味って意外と特殊なんですね。
でも嬉しいです、先輩。
遠坂先輩みたいな人だったら死んでもやらないような事ばっかりでしたけど、私だったら全部やってあげれますから。
ええ、もう××だって〇〇だって△△だって、でも××って少し痛そう…。
でも、他ならぬ先輩のためですから!
準備は万端、後は先輩の部屋に向かうだけ。
先輩は今頃きっと暗い情念と戦っている。
その理由は簡単、私が今日の朝食にとある薬物をしこんでおいたのだ。
それは間桐に代代伝わる『媚薬』。
もともとは、魔術回路が減ってきて大規模な魔術行使が出来なくなった数代前の血縁のものが、乏しい魔力でもなんとか魔術行使を行うため、自分の魔力を増幅する研究を行っていたらしい。
これはその副産物。
もともとは対魔力の増幅に用いるはずの薬物だったと言う。
極微量の無害な魔力が込められており、本来なら蚊に指されたようなものでも、薬の成分が魔術回路を刺激し、その極微量なはずの魔力に過剰反応してしまう。
いわゆるアレルギー反応と言われるそれに近い。
そのため一時的に対魔力が一ランクアップすると言う優れものだったはずなのだが、案の定副作用が発見された。
対魔力と言うのは魔術回路から体表面に流れ出た魔力が皮膚組織を覆うことによって発動する。
魔力の量が大きければ大きいほど対魔力が大きくなるという仕組み。
只、いったん流れ出た魔力は魔術回路に戻る事が出来ないため、汗と共に発散させられるか、魔術回路とは関係ない血流にのるのが通常。
ところがこの薬によって本来の魔力量以上の魔力が体表面上に流れると、発汗や血流による魔力の処理は間に合わず、体の中に魔力が篭り始める。
それが過ぎると、体が魔力を放出しようとし始める。
そして手っ取り早い魔力放出が性交。
つまり性欲を刺激して自衛しようと言うことだ。
これが『媚薬』なのはその副作用による、因みに対魔力が強ければ強いほど効果が高い。
魔術師である先輩の対魔力は知らないけど、その効果は絶大だろう。
もし先輩の対魔力が低くても問題ない。
この薬には改良に改良が重ねられ、魔術師でない普通の人間にも効果が在るように出来ている。
――兄さんが我慢しきれなかったくらいですから。
入院してから、兄である間桐慎二は今までとは人が変わったようになって、
『桜、おまえに一生掛けて償いたい。』
なんて今までのことを反省するような事を言って来た。
そのお言葉に甘えて本人の同意なしにこの薬の実験台になってもらった。
ここのところ見舞いに言ってたのはそのため。
かぼちゃの煮付けが薬の違和感を一番消してくれるという結果もそのときのもの。
結果は良好、兄さんは病室で自己処理中、看護師さんに見つかって怒られる始末。
魔力がほとんどない兄さんですらその有様なのだ。
つまりもう先輩はまな板の上の鯉、どう合っても私からは逃げられない運命。
先輩の部屋の前に来る。
緊張でこのまま失神してしまいそうだ。
そっと襖に耳を寄せる。
――先輩の苦しんで喘いでる声聞いておかなくちゃ…。
きっと可愛いんだろうなぁなんて思いながら耳を澄ます。
…。
…。
…。
…あれ?
声が聞こえないそれどころか物音一つしないのはどうしたわけだろう。
――ひょっとして、土蔵かな?
でもそれはない先輩自身やりにくいってぼやいてたくらいだから土蔵とは考えにくい。
すっ。
襖を静かに開ける、予想通り誰も居ない。
「先輩、どこ行ったんだろう。」
火照りを押さえるためにシャワーでも浴びているんだろうか、でもそれなら入ったときに物音位してるはずだし…。
――あ!
そう言えば入ったとき先輩の靴がなかった!
緊張してたから気が付かなかったけどそれってもしかして遠坂先輩の家に…。
「あ、あーーーーー!」
ありえる。
先輩がいくら遠坂先輩にそういうところ見せたがらないとしても、薬の影響が強ければ我慢できなくなってって可能性もある。
そ、それにあの先輩の事だ、なんか体調悪いなーと思って何気なしに遠坂先輩の家にってっことも…。
「だ、駄目!」
急いで居間に戻って鞄を開く。
受信器を取り出して先輩の服に縫い付けてある盗聴器に周波数を合わせる。
ガガッ、ガガッ。
ああ、なんでこんなときに限って受信状況悪いのだろう!
しばらくうろうろと歩き回って電波の届く場所を探す。
すると…。
ガガッッ。
「ん…、あ…、あふっ…。」
「ん…、く…、と…、とお…さ…か。」
水っぽい音とくぐもった声。
あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
――い、いやああああああああああああああああ!
Interlude out
続く
「ん…、あ…、あふ…。」
「ん…、く…、とお…さ…か。」
頭の中にあるのは熱い唇の感触。
その事だけが頭を走り回り他の考えを消していく。
いけない。
頭の中でこのまま溺れてしまえと何かが囁く。
まずい。
「ん…。」
遠坂の舌が口の中に入ってくる。
とても熱い。
熱くて口の中が焼けそうだ。
駄目だ。
何が駄目なのか、早く冷やさないと火傷をしてしまう。
さあ、早く自分の舌でこの熱さを消してしまわないと…。
「駄目だ…、とおさか…。」
顔に手を掛けて無理やり引き離す。
鼻先数センチのところに遠坂の火照った顔がある。
「はぁ…、はぁ…。」
鼻にかかる遠坂の吐息が思考を壊していく。
しっかりしろ、まずは思い出せ。
そうだ、こういうときはまず状況を把握しないと。
――えっと、確か夕方に遠坂に家に来てくれって呼び出されたんだよな。
なんだかえらく辛そうな声だったのを覚えてる。
風でも引いたのかと来て見れば、呼び鈴を押しても誰も来ないし、心配になって中に入ったんだっけ…。
中に人の気配が無いもんだから遠坂を探し回ったら、風呂場から音がして、呼んでも返事が無いもんだから、怒られるの覚悟で中に押し入ったら、遠坂が浴室で蹲ってて、大丈夫かと助け起こしたら…。
――いつのまにか…、こうなっていた、と。
腰が痛い。
無理も無い、いきなり押し倒されて浴室で打ったのだから。
でもそんな事より目の前の遠坂が怖い。
浴室なので当然のように全裸。
塗れた髪はいつもより綺麗で髪が触れている肌がジンジンと熱い。
それでも怖いのに、目がもっと怖い。
潤んだ目。
熱が篭っていて、そこに映っているのは俺だけ。
可愛い。
堪らなく可愛い。
その遠坂が誘っている。
男である衛宮士郎はもうとっくに陥落してしまった。
ほんの一握りのこった理性が必死に止めている。
「とお…、さか、落ち着け…、なんで…、こんな事…。」
舌が回らない。
もう今すぐにでも遠坂の口の中に舌を入れてめちゃくちゃに掻き回したい。
それなのに…。
「士郎…、嫌?」
――嫌なわけ無いだろう!
ああ早く味わいたい。
その瑞々しい果物みたいなくちびるはすごく…すごく美味しそうで…。
でも。
「どうしたんだよ遠坂…、変だぞ…。」
すごく変だ。
おだてた豚が木に登るくらい変だ。
「ふんだ、誰のせいでこんなになってると思ってるのよ…。」
上気した顔で拗ねるように口を尖らせる遠坂。
「―――!」
それがもう堪らないほど可愛くて。
寄りかかられたせいでずぶぬれになってる服とか床のタイルが固くて痛いとかもうそんなどうでもいいことを必死に考えて遠坂から目をそらしていた。
「しょうが…、無いじゃない…、もうこんなに…、なっちゃってるんだからぁ…。」
遠坂の手が俺の手をつかんで遠坂の秘所へと導く。
「ばっ…!やめ…。」
ぬちゃり。
遠坂の大事なところは、水ではない、もっと粘性の高い液体で濡れていた。
「ぐっ…!」
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!
それに触れた途端、俺のモノが勢いよくたち上がった。
何しろ今日はジーパンだったりする。
なりあまるモノが収まる余裕も無くジーパンの中で暴れまわっている!
でも少し頭がはっきりする。
今日の遠坂はおかしい。
これでこのまま流されたら後で何されるか知れたものじゃない。
でももう俺一人じゃどうにも…。
――そうだ、今日はこの家にはセイバーが…。
「とお…、さか、セイバーは…。」
遠坂が家を出るとき今日は用事があるとか言ってセイバーを連れていった。
セイバーなら止めてくれる。
「破廉恥な!」とか言って止めてくれるに違いない。
この状況に比べれば竹刀でドつきまわされるくらいなんでも無い。
ぎゅっ。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
このばかおれのをジーパンの上から握りやがった!
「ふん、セイバーは関係無いでしょ…。」
怒ったような顔をして拗ねる遠坂。
だから駄目だって、そんな顔したら俺の理性がどうかなってしまう!
「遠坂…!セイバー居るんだろ?どこだよ…。」
それを聞くと、遠坂はなんだかとてつもなく悪い予感のする笑顔を浮かべた。
「ふうん、キスだけで許してあげようと思ってたけど、そんなこと言うならもう許してあげない。」
そういうと、俺にのしかかったまま器用に浴室の戸を空けた。
何があるのか、浴室の向こうにはさっきまで何もなかったはず…だった。
「セイバー、アンタのマスターがお呼びよ。」
脱衣所の隅のほう、入り口からは死角になっているところに…。
「ひっ!」
なんだか妙な声を出すセイバーが居た。
その姿はいつものような凛としたものではなく、肉食動物に襲われて隠れて怯えている小動物を思わせた。
目に理性はほとんど残っていない。
辛うじて意識を保っていると言った感じだ。
それは遠坂のような、いや、遠坂よりもっと悪い印象を受ける。
「で、どうするの?」
――どうしよう。
なんだか藪を突ついたらヤマタノオロチが出てきたようだ。
詰まるところ前門の遠坂、後門のセイバー。
いや、もうなんだ、逃げ道なしって言うか向かうところ敵だらけって言うか渡る世間は鬼ばかりって言うか俺の服のボタンをはずしていくんじゃない遠坂!
「セイバー、見て、これ。」
俺の胸板があらわになる。
遠坂に見られるのも恥ずかしいのに、セイバーにまで見られたら恥ずかしくて死にたくなる。
だと言うのにセイバーのヤツ…。
「あ…。」
じっと、俺の胸を見つめていた。
「ほら、セイバー、これ。」
そう言って遠坂は肩の辺りについている赤い腫れを指差した。
それは確か、朝方にセイバーにしばかれたときについた蚯蚓腫れ。
「ああ…。」
ふらり、っと覚束なく立ち上がるセイバー。
――ちょっと待て
さっきまで気がつかなかった、いや、気が付かないようにしてきたが、セイバーは遠坂に借りたのか大きめのYシャツを着ていた。
いや、それしか着ていなかった。
ズクン
「ぎっ!」
下半身が限界とばかりに暴れ出す。
無理もない、だってこの角度からだと、セイバーの大事なところが…。
「シ…、ロ…、ウ。」
うわごとのように俺の名前を呟きながら、ふらふらと近寄ってくるセイバー。
彼女はシャワーを浴びたわけではない、なのに、彼女の内股はしっとりと濡れていた。
――だめだセイバー、遠坂だけでも限界だっていうのにこの上おまえまできたら…。
ちょこん、と俺と遠坂の隣に座る。
その目は何も見えていないし、きっと何も聞こえてはいない。
でもその目はじっと俺だけを見つめていた。
「あう…。」
その、捨てられた子犬みたいな目が、俺の理性を剥ぎ取っていく。
じっとセイバーを見ていると、頭を撫でてやりたくなる衝動に駆られる。
そんな俺の葛藤をよそに、俺の体を舐めるように観察すると、
「ああ、痛そうですね…シロウ。」
そう言ってセイバーは、
ぺロリ
その蚯蚓腫れを子犬のように本当に舐めてきた。
「!!!!!!!!!!!!!」
やばい。
何がやばいって傷を舐められてる感触もそうだが、一心不乱に自分のつけた傷を舐めつづけるセイバーが堪らなくやばい。
「だめよセイバー。」
他の腫れに移動しようとしたセイバーを止める主。
――そうだ遠坂、早くセイバーを止めて…。
「そっちは私のガントの傷よ、セイバーは自分の傷つけた傷だけにしなさい。」
コクン、とセイバーが舌を出したまま頷く。
そして俺の目の前には、
――子犬のように竹刀の傷を舐めるセイバーと、
――猫のようにガントの傷を舐める遠坂がいた。
「!」
溶ける。
脳が溶ける。
ピチャピチャと言う音と胸に感じる生暖かい感触が脳を蕩かしていく。
ビクン
イタイイタイイタイイタイイタいイタイイタイ!
もう折れる、これ以上やられたら俺のが折れる!
せめて場所だけでも動かそうと手をやると、
「だめ、ちょっとは苦しみなさい。」
と遠坂に止められた。
「シロウ、シロウ…。」
「ん…、あ…、ん…。」
ピチャ、ピチャ、ピチャ
ぺロ、ペロ、ペロ
二つの水音が湿った浴室に響く。
体を這いまわる舌の感触と下半身の痛み。
もう狂いたいのに痛みで現実に引き戻される。
その繰り返しが俺から思考を奪っていく。
「凛…。」
セイバーが舌と水でべとべとになってしまった俺の胸から顔を上げると、お預けを食らった子犬みたいな顔になっていた。
「そうね、もう良いわよセイバー。」
何を言っているのか、蕩けた頭では分らない。
ただ、何か下半身のあたりがもぞもぞと…。
――って待て。
「ばっ!や、止め!」
止める暇もなく、チャックがずらされると、トランクスの穴から勢いよく俺のが飛び出してきた。
「―――!」
恥ずかしい、もうたまらなく恥ずかしい。
あの時アーチャーに殺されとけばよかったと思うほど恥ずかしい。
それなのに、
パクリ
と、唐突に俺のが温かいものに包まれた。
――セ、セイバー?
セイバーが俺のを咥えている。
しかも口いっぱいに頬張って。
「ん…、ちゅぷ…、あ…、む…。」
的確に俺の弱点を捉えてくるセイバー。
「ああああああ!」
気持ちいい、いままで痛かったってのもあるがそんな問題じゃない。
頭が痺れる。
思考が壊れる。
さっきから我慢しつづけで脆くなった理性が今度こそ決壊する!
「うるさい。」
唇に感触、遠坂のぬくもりが顔いっぱいに広がる。
まずい、もう壊滅的にまずい。
セイバーが見えないのに感覚だけが下半身にある。
何されているかわからない不安が極上のスパイスになって射精を促す。
「ん…、はん…。」
目の前の遠坂が俺を求めてくる。
今までした事ないようなディープキス。
舌と舌が溶けて繋げるように絡めてくる。
首に回された腕が熱い。
俺の胸を掠めるように当たる乳首の感覚も、顔にかかる息も、ひたすらに熱い。
「と…、お…、さ…。」
「し…、ろ…。」
ああ欲しい、遠坂が堪らなく欲しくて唇に吸いつく。
左手で遠坂の頭を抱え込む。
「ん!ん!あむ…!」
唇と言わず舌も口の中も徹底的に愛撫する。
「や…、だ…、しろ…。」
やだって言っても知らない。
遠坂の抗議を無視して右手を遠坂の秘書に滑りこます。
「あ!駄目!そこさわっちゃ…。」
ピチャリ
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
触っただけで軽くイったらしく、遠坂はひくひくと痙攣すると俺にしなだれかかってきた。
「ばか、イっちゃったじゃない。」
なんて拗ねる遠坂、ああ、やっぱり遠坂は可愛…。
「ほう、シロウは凛さえよければ他はどうでも良いのですか。」
――え?
チュウ
!
不意打ち、遠坂に気を取られた隙に、セイバーは思いっきり俺のを吸い出した。
ドク、ドク、ドク
「ああ、あ。」
堪え様もなくセイバーの口に射精した。
――うあ?
射精している、吐き出しているはずなのに、なぜか自分の体に何かが逆流しているような感覚。
その、表現はすごぶる悪いのだろうが、出されているのは自分ではないかと錯覚する。
「ん…。」
ゴクリ、とセイバーが精液を嚥下する音がいやに生々しい。
それで脱力したのか、ぺたりとタイル張りの床に座り込んだセイバー。
口の傍からこぼれる精液と、セイバーの唾液が、なんだかすごく扇情的で…。
「ん、セイバー、落ち着いた?」
「ええ、少しは、ですが魔力が抜けきれていないですから数分経てばまたあの状態になるかと。」
気だるげに俺に寄り掛かる遠坂と少し拗ねているようななんだかいつも通りのセイバーさん。
「そ、ん…、駄目だわ、ましにはなったけどやっぱ魔力吐き出さないと止まらないみたい。」
遠坂は、んじゃお先に、なんてサウナでも使うかのような挨拶をするとこっちに向き直りやがった。
「ふうん、いつも一回だからそれだけしか持たないのかと思ったら、なんだ、結構元気じゃない。」
――?
さっきのセイバーを見て興奮したのか、俺のは再び空を向いて屹立している。
いや、ていうか遠坂。
「ばっ!そんな事ないぞ遠坂!いっつももっとしたいと思ってるけど…、遠坂が嫌がるからだなぁ…。」
俺がそう抗議すると、ふぅん、なんて素っ気無く返事をしたかと思ったら、
「…言ったらもっとさせてあげるのに…。」
なんて可愛い事を呟いた。
「え?」
「何でもないわよ、士郎は黙ってまぐろになる!」
――まぐろかよ…。
真っ赤になって何もするんじゃないとやけに理不尽な要求をしてくる裸のあくま。
ゆっくり俺に跨ると俺のを遠坂の秘所にあてがうと、
「いい、動かないでよ、動いたら酷いからね。」
なんてのたまった。
それになんだか腹が立った。
腹が立ったから遠坂の腰を掴むと、
「え?あ、し、士郎、ちょっと!」
一気に遠坂に突き入れた。
「あ、ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
またぴくぴくと痙攣する可愛い奴。
「なんだ、もうイきそうだったんだな遠坂。」
「ばかぁ!我慢してたのにぃ!」
ああ、やっぱ遠坂は可愛い、セイバーも十分可愛いけど、この調子をはずされた遠坂には適わないと思う。
あ、でも恥ずかしがってるセイバーも可愛…。
ギュウ
「いたたたたた!へんなとこ抓るな!」
「今私以外の女の事考えてたでしょ。」
――なんでわかるんだ?
「いい?他の女の事を考えるな、なんて言わないけど、私抱いてるときくらいは私の事だけ見て。」
わかった?なんてジト目で見つめる俺の恋人。
わかった、ていう返事の代わりに、
ぐっと遠坂の腰を掴むと、
「あ?また!士郎…!」
もう思いっきり抽挿をはじめてやった。
「ああ!ば、ばかぁ!だめぇ、こんなに…。」
うん、困ってる遠坂は可愛い、それにめったに主導権なんて握らせてくれないんだからこれくらいしてもバチは当たらないだろう。
そう思いながら騎乗位の状態でいつもより激しく腰を打ちつける。
「いやぁ、だめぇ士郎!おかしくなっちゃう!おかしくなっちゃうよぉ!」
「遠坂、動くとやりにくいぞ。」
「ばかぁ!ばかばか早く止めなさいよぉ!」
なんとも遠坂が動くものだからやりにくくてしょうがない。
というわけで体を起こして遠坂を抱きしめる。
専門的に言うと正面座位といったところか。
「な!なにするのよアンタ!」
さっきのお返しとばかりに鎖骨のあたりを舐めまわす。
最近見つけた遠坂の性感帯。
因みに首筋と臍の辺りと内股の辺りが赤いあくまの弱点だったりする
だから臍が擦れる様にぎゅっと腰の辺りを引き寄せて。
「ひゃ!」
内股も当たるように余った手で足を捕まえる。
「やぁ…、やぁめ!」
そんでもって首筋を舐める。
うん、完璧、一回やってみたかったんだこれ。
「ひゃうぅ、ら、らめぇ…。」
もう呂律の回らなくなった遠坂の声で限界。
力無くぽかぽかと背中を叩く遠坂が可愛いし、胸に押し付けられたおっぱいがふにゃっとして気持ちいいし遠坂の中は何より最高に心地良い。
「あっ!あっ!あっ!」
だから遠坂をせめたてる。
ひたすらに遠坂の腰に自分の腰を打ちつける。
「やらぁ!イっちゃう!し…、ろ!イっちゃうぅ!」
ぎゅっと遠坂が俺を抱きしめてくる。
そろそろ俺も限界、だから遠坂の耳にそっと唇を寄せて。
「愛してるよ、遠坂。」
「!あ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
その一言で今日何度目かの絶頂を迎える遠坂。
きゅう、という遠坂の締め付けにこっちも果てようと…。
――!
「ばっ!とおさか!はなせ!」
――な、なんでしがみついて来るんだよ!
「ばか!は、離せ!」
「いや。」
――なんですとー――!
「離せ、遠坂!じゃないとだなぁ!」
「出しちゃえ。」
――ばかー―――――――――――!
「出来るかんなもん!早くどけ遠坂!」
「やだ。」
「なんでさ!」
「そんな呼び方じゃやだ。」
「OK!わかった!なんでも呼んでやるから早くどけ!」
「じゃあ…、
私の事名前で呼んで」
――よりにもよってそこきますかーーーー!
でも手段は選んじゃいられない、もうこうなったら毒を食らわば苺までだ!
ああもう名前でも何でも呼んでやろうじゃないか!
――り…、
「…凛…。」
ぎゅ
あ゛…
どく、どく、どく
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
反則だ、名前を呼んだらすごい勢いで締め付けて来るなんて卑怯だ。
出てる、なんかもうすごい勢いで出てる。
ああ、なんだろう、すごく気持ちいいんだけど、遠坂だからとっても嬉しいんだけど…。
なんだろう、何かとても大事なものがなくなったよ…う…な…って?
――?!??!??!!!!!
逆流してくる!
さっきの比じゃなく何かが逆流してくる!
これじゃ俺が遠坂に出してるんじゃなくて!
――遠坂が俺に何か出してる!!!!!!!!!
「あ、あう…。」
あれ?俺なんで悲しくないのにないてるんだろう…。
「何泣きくさってんのよ、このケダモノ。」
――誰の所為だと思ってるんだ誰の…。
「ふうん、私の中に出してそんなに気持ちよかったわけ?」
――ああ気持ちよかったさ、でもな、俺はそれ以上に…って。
「あ゛…、遠坂。」
つーん
「とおさか。」
つーん
「…凛。」
「何?」
――なんかむかつく。
「おまえ…、きょうは…、その…。」
「危険日、ばっちり危険日、これ以上ないってくらい危険日。」
――ぎゃあ
なんかすっごくにこやかに笑うと遠坂はゆっくりと腰を持ち上げて俺のを引き抜く。
ぬちゃり
と言う湿った音がして萎えた俺のが引き抜かれると、
ごぽり
と、白濁とした液体が遠坂自身から流れ出た。
「うん、これだけの量ならばっちりとまったわね。」
「なにがさ。」
「受精卵。」
――着床!?
「いや、まずい、それは駄目だぞ凛。」
「なあんにもまずくないわよ、ね?セイバー。」
ピト
あ、なんか誰か後ろから抱き付いてきた。
「シロウ…。」
こ、このなにか被虐心をそそられるこへは…。
「せいばー?」
くるっと振り向くと、最初に脱衣所で怯えていたときのように上気しきったセイバーの顔と…、その…。
濡れて透けてるはだかYシャツが…。
「あ、また勃った、士郎元気ね。」
「とお…、いや、凛、お願いです止めてください。」
懇願する。
「いや。」
即座に却下。
「凛…、私はシロウが欲しい…。」
――だぁから耳元でそんな甘えた声を出すんじゃない!
「いいわ、本番は禁止にしようと思ったけど、そんなおいたするんなら容赦なしね、セイバー、気が済むまで存分にやったんなさい。」
――おまえも許可出すんじゃない!
「あ、因みに私まだ満足してないからそのつもりでね。」
――マジで!
目の前には全裸で仁王立ちしてる凛様。
ってかはだかで仁王立ちはやめてくれ。
背中にはもうすっかり出来あがっちゃったセイバーさん。
ってか耳に息吹掛けるの止めてください。
――なんか、これに似た情景をごく最近見たような気が…。
「シロウ…、シロウ…。」
「大丈夫よ士郎、たーっぷり可愛がってあげるから。」
――い・・・
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
epilogue
「サクラ、説明を要求します。」
「桜、説明してくれる?」
ここは翌日の衛宮家居間。
ただいま学校をサボって間桐桜の弾劾裁判実施中。
検事セイバー、裁判長凛、弁護士なしの暗黒裁判。
俺?
無理、そんな体力欠片も残ってない。
「とぼけないでください。」
「とぼけない事ね、もうネタは上がってるわ。」
――まーね、朝のかぼちゃが原因なのは目に見えてるから。
「あれで魔力が暴走したんだっけ?」
「そうです、そんな事でもなければ、私があ、あのような行為に及ぶわけはありません!」
顔を真っ赤にして原告論及をするセイバー。
「へぇ、その割にはノリノリだったじゃないセイバー。」
「凛、あれは違います!魔力の所為であって、私の本心では!」
「そう?『シロウは凛のように激しく愛してはくれないのですね』とかなんとか言ってたのは魔力の所為?」
「そ!そうです!大体私がシロウを欲しているなどと…!」
「んー、欲してない奴に処女あげるんだセイバーって。」
「凛!貴女という人は!」
がー、とほえるセイバー。
うん、まあ、なんだ、俺はセイバーの開通式をしてしまったワケなのだが。
これがもう聞くも涙語るも涙…。
「ま、冗談はそのくらいにして、で、桜、何か申し開きがある?」
議題を進める凛に最初はおろおろしていた桜だが、唐突にむん、と気合を入れて凛を睨み返した。
「そうですか、なら言わせていただきます。
遠坂先輩?遠坂先輩は先輩と付き合っているんですよね。」
「ええそうよ、これ以上ないってくらい愛し合ってるわ。」
「なら!先輩を悲しませるような真似は止めてください!」
なんとも怨念の篭った台詞に、沈黙する裁判関係者一同。
その沈黙を破るは裁判官。
「何言ってるの?私が士郎を悲しませるわけないじゃない。」
「何を言ってるんですか!先輩は苦しんでいるんですよ!」
「な!本当?士郎。」
――いや、さっぱり覚えが…。
「遠坂先輩は、二人が付き合い出してから先輩が週に三回自分で処理しているのをご存知なんですか!」
――あんたなにいってんだ。
「な!」
「しかも一回につき二発ですよ!
どれだけ先輩が我慢していることか…、先週の木曜日なんか四発ですよ四発!
新記録ですよ!」
――さくらさん、ちょっとまってください。
「え?シロウは昨日の回数は九発でしたが。」
――せいばーさんもまってください。
「ばか!あんたそんなことしてたの!」
――りんはいちばんまってくれ
「ばかばかばか!私がいるってのにそんなことして!なんで一言いわなかったのよ。」
なんでってそりゃ凛が疲れてるときもあるし次の日学校だしそんなに凛がほしいっていったら嫌われるかもしれないし…。
と、言う旨について証言すると。
「ばかぁ!いやだったら断るし、そんなので嫌ったりしないわよ!」
裁判長ご乱心。
ごめん凛、可愛いけどちょっと食傷気味。
「しかも土蔵ですよ土蔵!恋人として情けないと思わないんですか!」
「あ!あんたそんなとこで…!セイバー!あんたシロウの隣に寝てて気付いてなかったの?」
「その…、申し上げにくいのですが…、気付いてはいました。」
――気付いていたんですか…。
「いえ!シロウのプライバシーを侵害するつもりはありませんでした!
ただ、真夜中に土蔵に行くのでいつもの鍛錬かと思ってシロウが無理をしないように見守ろうと…。」
「で、とんでもないの見守っちゃったワケね。
なるほど、道理で士郎の変な趣味知ってたわけだ。」
――変な趣味?
「あ、あの、シロウが喜ぶ服装が良いと、あ、あの時は薬の所為でそう言った奇妙な考えを!」
「そんなのどこで知ったのよ。」
「その…、土蔵にシロウが隠してあったのを…。」
――見ちゃいましたか。
「違います、先輩の嗜好は『半脱ぎ』です!」
――桜、そんな異議いらない。
「な!しかし水着のようなものが大半を占めていましたが。」
「先輩は全てが見えている事より割合隠しているものを好む傾向があるのです。
それからセイバーさん、その入った所すぐにある和箪笥に隠してあるのはダミーですよ。
本命は二階の屋根裏に隠匿しています。」
――お願い桜後生だから止めて。
「とにかく!」
裁判長の一喝。
「士郎、今度から我慢できなくなったらちゃんと言いなさい。
いい、女のプライドに関わるんだから以後気をつけなさい!
その…、相手出来ない時でも、手でシテあげることくらいなら出来るから…。」
黙って頷く。
多分男のプライドなんてもう二束三文で質流れだろうなぁ…。
「そう、じゃ、被告人衛宮士郎に判決を言い渡します。」
――待った!
「待て!被告人は桜だろ!」
「何言ってんの?桜には感謝こそすれ恨む理由なんてないわ。」
「ど、どう言う事ですか?遠坂先輩?」
「士郎?私の事呼んでみて?」
「?凛だろ?」
「え?えー―――!」
「そ、おかげさまで名前で呼び合う仲になったわ私たち。
と言うワケで判決、士郎、向こう1ヶ月毎晩私の相手ね。」
――意義あり!
「ばっ!り、凛!」
「これにて閉廷、じゃ、今晩の買い物にいくわよ士郎。」
「だ、だめーーーーー、そんなのだめーーーー!」
「セイバー。」
がしっ、と桜を羽交い締めにするセイバー。
「凛、これでいいのですか?」
「上出来、じゃ、後宜しく。」
「承知しました、サクラ、貴女は少々性根を叩きなおす必要を感じます。」
「え?」
「それじゃ行くわよ士郎、今日からしばらく牡蠣鍋に牡蠣フライと牡蠣ずくめね。」
――亜鉛中毒になるってそれ。
「さあ、サクラ行きますよ。」
「さあ、行くわよ士郎。」
「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」
【END】
すいません、ごめんなさい。
ノリと勢いだけで書いてみたかったんです。
桜好きな人ごめんなさい。
前回好きで今回も見てくれた人、凛様〜の反動です。
次はちゃんと書きます。
桜物も今度きちんとやります。
だから今回はみのがしてつかあさい
というわけで次回予告
「三枝さん昼食事情」でお会いしましょう
今後執筆予定
短編
「衛宮家親子事情」「セイバーさん恋愛事情」「凛様初恋事情」
長編
メガテンクロスオーバー物(待て