交わるは直死(M無し 傾クロスオーバー)


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1: 十七夜 (2004/03/29 00:20:12)[ryououkidesu at yahoo.co.jp]

時既に遅し、ランサーは行ってしまった。
アーチャーにランサーを追ってもらって、その場に佇む。
目撃したのは学校の生徒だと思う。
私と同じか一つ上、もしかしたら後輩かもしれない。
アーチャーは”消しに行った”と言った、多分その通りだろう。
時間は一分ぐらいたった頃だろう。
アーチャーの居る場所は分かっている、
校舎の中、一階の廊下だ。
不注意だった。辺りは月光に照らされ、遠くでも良く見える。
物音がして、正門のある場所を遠めで見る。
人だ、門を乗り越えて、まっすぐに私の所へ歩いてくる。
「君、大丈夫?」
年は同じ、違う。
人懐っこい笑顔のせいで、三つは若く見える。
「驚いたよ、音がした方向にこの学校があって、よく見えなかったけど喧嘩?」
見られた、だけどこの人の感覚はどうだろう?、
魔術師が使役できる存在とは言え、彼らはただの使い魔じゃない。
人間霊として昇華し、英霊となった存在。
もちろん、人間以上の破壊力を持っている彼らの戦いを、
”喧嘩?”と言っている。
この人にとっては戦争でさえ喧嘩?と、言ってそうである。
「それより、さっきの奴らは何処に行ったの?時間が時間だし送っていこうか?」
うわっ、優しい。第一印象が人懐っこいで、第二印象が優しい。
「(アーチャー、戻ってきて)」
アーチャーに呼びかけると、遠くから戻ってくるのが分かる。
出来れば、このままで帰ってもらいたい。
だけど、見られたからにはアーチャーが言っていた通りにするしかない。
どう見てもただの人間、アーチャーだったら苦しむ暇、自分が死んだとさえ分からないほどあっけなく殺すと思う。
「どうしたの?怪我でもした?」
アーチャーが戻ってきた、霊体になっているから姿は見えない。
だけどちゃんと私の後ろに居る。
「(アーチャー、お願い)」
アーチャーは一瞬で具現した。
人には見えない速さで、その人の後ろに回りこむ。
音は無く、どう考えても気づくことは無い、はずだった。
いきなり、私を押し倒した。
気が動転する、始めてあった男の人に押し倒された。
それだけで頭の中が白くなる。
「大丈夫か?」
男の人はいきなり立ち上がると、来ていたコートの上着に手を入れた。
ゆっくりとした動作で手を引き抜くと、一振りのナイフが握られている。
「お前か、さっきここで喧嘩してたのは?」
私も立ち上がる、具現したアーチャーは誰の目にも映る存在だ。
この人は私を押し倒したのではなく、私を助けてくれたらしい。
「場合によっちゃお前を殺すしかない」
男の人は腰を深く落す。
「凛、どうする」
困ったのか、アーチャーは眉尻を挙げ、私に聞いてきた、声を出して。
「えっ?君達知り合いなの?」
男の人は驚いている、声を聞いても分かる。
かなりあせっている声室。
「まさか、君を守るための喧嘩?」
「まぁ、そんな感じです」
顔を隠して相槌を打つ。
「何だ、これじゃ俺すんごくカッコ悪いじゃないか」
男の人はナイフをポケットに仕舞う。
「凛、どうする。君の命令が無ければ動けない」
「えぇ、本当にどうしましょうか」
真剣に考える、実際ここまで拍子抜けするとは思わなかった。
「君は相当強いね、それなら俺が送ることは無いみたいだから」
男の人は歩いていく、堂々と普通に門へと歩いていく。
「凛、いいのか?目撃者だぞ」
言われて思い出す、このままにするのはかなり危険だ。
「アーチャー、あの人を押さえつけて」
私の命令に従って、アーチャーは跳躍する。
目標は無防備な背中、記憶を書き換えればすむんだけど。
私にはそんな器用なこと出来ない、それならば、言峰に頼るしかない。
頭のなかで思案する、ドサッ、と男の人が倒れる音がした。
音がした場所を目で見ると。
おかしな光景が広がっていた。
男の人はぴんぴんしている、倒れているのはアーチャーだ。
どうやら当身か何かをやられたらしく、もう立ち上がろうとしている。
「駄目じゃないか、彼女を送っていかないと」
的外れなことを言っている、幾らなんでもサーヴァントを倒れさせるなんて人間業じゃない。そこで、絶対にありえないが、一応考えたほうが良いことが頭に浮かぶ。
あの男の人は、魔術師か、もしかしたらサーヴァントなのだ。
こんな時間に歩いていたのは情報集めの一環、もしかしたら、地形を把握していたのかもしれない。
「聞きたいことがあるんだけど?貴方は魔術師?」
一応問いかけてみる、顔を横に振っている。違った、
「貴方サーヴァント?」二つ目の質問、もちろん顔を横に振った。
「じゃあ、貴方誰?」最後に質問、男の人は自己紹介で答えた。
「俺の名前は遠野志貴、知人の用と、会いたい人がこの街に来るって聞いて今日来たんだ」
名前は遠野志貴と言うらしい。
彼が私達の戦争に入ってきた、八人目のサーヴァントと同じイレギュラー。
この時の私は、八人目のサーヴァントも、この人がどういう人かも何も知らなかった。

プロローグ終了です。

第一話は、セイバー召喚の衛宮家から始まります。











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