「士郎、おめでとう。」
「士郎、おめでとー。」
「衛宮さん、祝福しますよ。」
「衛宮さん、おめでとうございます。」
「あは〜、衛宮さん、おめでたいですね〜。」
「衛宮様、お祝い申し上げます。」
「ニャー。」
「あ、ありがとうございます。」
錬剣の魔術使い・最終話
冬木教会。神の家でありながら、忌まわしき過去の在る場所。だが、この日、そこは溢れんばかりの幸せを約束する場所であった。
結婚式。愛し合う者同士が、神の前で永遠の愛を誓う儀式。
ただ、今日この日のそれは、普通から逸脱したものだった。何せ、新郎は一人に対し、新婦は七人だった。倫理も、法律も知った事じゃないといった感じである。
事の起こりは、新婦全てが、産婦人科で「おめでた」を宣言されたことだ。それを聞いた新郎の後見人である老人が、
「そうか!!じゃあ、祝言挙げなきゃなあ!!がっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
と、自分の夢の実現を目論んで、あっという間に準備を進めたのだ。ちなみに、重婚は犯罪だろうと言うツッコミは、
「法律なんぞ糞喰らえい!!紙切れなんぞどうでもいいわい!!要は坊主とあの娘らが幸せなら良いんじゃあ!!」
と、おっとこ前に断言なされた。そして、五年前に赴任して来て以来の親友となった老神父に式を頼んだのだ。で、この神父も類は友は呼ぶに相応しく、
「神の愛は無限だからネ〜。幸せなら赦してくださるヨ〜。う〜んラヴイコーズピース。」
と、宗教倫理をうっちゃった返答である。ホントに神父か!?
「お姉ちゃんは許しませんーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
最後まで抵抗した新郎の姉代わりを自認する女性は、新婦達の熱い?説得により、渋々ながら認める事に相成った。子供の命名権が与えられた事が余程効いた様だ。
「絶対、おばちゃんって呼ばせないんだから!!!!」
ベビーグッズを買い揃えてるのは、気が早い気がするが。しかも全部虎柄。
新郎の控え室。白のタキシードに身を包んだ白髪の青年は、そわそわと落ち着かない。と、
コンコン。
ノックの音にびくりとする。
「は、はい。」
「失礼するぞ、衛宮。」
「一成!!久し振りだな。」
「うむ。衛宮も息災そうで、何より。ただ、五年ぶりの再会が、こんな事になろうとはな。」
「む。」
「しかも、七人相手とは。加えて、遠坂とそれに匹敵する女怪までおる。もはや呆れるほかない。」
「むむ。」
「本来なら、このような結婚、親友として取り止めさせるべきなのだろうが。」
「止めないのか?」
「言って止めるような衛宮ではあるまい。お主の頑固さは知っておるつもりだ。それに…」
「それに?」
「先ほど美綴に引っ張られ、新婦の控え室に行ったのだ。みな、一様に幸せそうな綺麗な表情であった。あの表情を見て、今日の式を止めさせようと出来るものはおるまい。」
「一成…」
「衛宮、精進しろよ。七人の人生を背負うのだからな。」
「違うよ、一成。俺達は並んで一緒に歩いて行くんだ。それに、人数はその倍だぞ。」
「ふむ、然り。………遅くなった、衛宮。おめでとう。」
「ありがとう、一成。」
「ところで、先ほどこの部屋を出て行かれたのは知り合いか?」
「ああ、この間知り合った人達だ。色々と世話になったんだ。」
「そうか。祝福は多い事は良いことだ。さて、それでは、俺も礼拝堂の方に行くとしよう。また、後でな。」
「ああ、後で。」
バタン。
一成が部屋を出て行った。独りになる士郎。その背後に迫る影に士郎は気付かなかった。
所変わって、新婦の控え室。七人の新婦は、それぞれのイメージに合った純白のウェディングドレスに身を包んでいた。
「うんうん、皆綺麗だねぇ。お姉ちゃん、攫って行きたい気分だよぅ。」
「藤村先生、無理だと思いますけど。」
はわ〜と行った感じの藤村大河に、冷静に美綴綾子が突っ込む。
「それにしても、新婦が七人とはねえ。衛宮の奴もやるもんだ。」
新婦は、アルトリア=セイバー=ペンドラゴン
遠坂凛
遠坂桜
イリヤスフィール=フォン=アインツベルン
ルヴィアゼリッタ=エーデルフェルト
セラ=アインツベルン
リーズリット=アインツベルン
以上、七名である。
最初、この結婚式の招待状が来た時、美綴綾子は猛反対した。凛は親友であるし、桜は可愛い後輩だ。自身の倫理観、価値観が受け入れられなかったし、こんな結婚で幸せになれるはずもないと衛宮家に乗り込んだ。だがその考えは粉砕された。これでもかっと言わんばかりに幸せそうな八人がいたのだ。最早、どうしようもない。それなら祝福してやる、と色々と付き合ったのだ。
「「「「「「「フフフ。」」」」」」」
幸せ一杯ですと恍惚とした表情の七人。この新婦達を見て横槍を入れようとする人間はいないだろう。先ほども、柳洞一成が、七人を見て納得して去って行ったばかりだ。
「しかも、全員「おめでた」。世の女誑しも膝折りそうだね。」
「アヤコ、シロウを有象無象と一緒にしないでいただきたい。」
「そうよ、綾子。あんなのが何人もいたら、世界は滅亡するわよ。」
「美綴先輩、士郎さんの相手は一人じゃ………」
「そうだよ、アヤコ。シロウは皆で相手しなきゃ。」
「アヤコ。わたくしたちは闘っているのですわ。」
「シロウに対して、力不足は否めませんが。」
「シロウ、絶倫超人。」
興奮しているのか、かなりきわどい事を言っている。ははと庇っているのか、怒っているのか分からない発言に乾いた笑みを浮かべる綾子。結婚式の準備期間中、何度も見た光景だ。
まあ、幸せそうで、結構なことだ。
心の中で呟く。問題はたくさんあるだろうが、大事な物は全て揃ってるようだから、大丈夫だろう。
「さて、それじゃ、あたしも礼拝堂の方に行こうかね。行きましょうか、藤村先生。」
「え〜、もう?」
「ここにいたら、惚気を聞く羽目になりそうですし。」
「そうだねー。それじゃ、皆、ブーケは私目掛けて投げるように!!」
「ズルは駄目ですよ。ちなみにあたしはOKだ。」
「私は、後が無―」
話しながら出て行く二人。残された新婦達は、夜の話題で白熱していた。
「「「「「「「シロウ(士郎)は………」」」」」」」
礼拝堂。身内にしては少々多いが席は埋まっている。国際色豊かな参列者が見守る中、セオリーを無視して、新婦が先に入場して来る。新婦の人数が多いため、新郎を待つ形にしたのだ。ルヴィア以外は、全員雷画と入場してくる。爺さん泣きすぎ。そして、不良神父の前に七人の新婦が並ぶ。後は新郎の登場を待つばかりである。
ギィ〜〜。
扉が開く。と、そこには、
「「「イッセイ!?」」」
「柳洞君!?」
「柳洞先輩!?」
「ミスタ・リュウドウ!?」
「イッセイ?」
「え、衛宮が見当たらん!!!」
「「「「「「ええ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」」」」」」「ええ〜。」
ドドドドドドド〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!バタン!!!!!!!
「シロウ!!!」
「士郎!!!」
「士郎さん!!!」
「シロウ!!!」
「シロウ!!!」
「シロウ!!!」
「シロウ。」
無人の部屋。と、よく見れば、テーブルの上に青い封筒。すぐさま破り、中の紙を確かめる。
ゴメン。士郎借りてくわ。て言うか師匠の先を越そうなんて生意気なのよ!!
AOKO
「「「「「「あの女〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」」」」」」
「卒業?」
「追うわよ!!!」
「勿論です!!!」
「絶対、逃がしません!!!」
「許さないんだから!!!」
「思い知らせてさしあげます!!!」
「私達は待機ね!!!」
「うん、了解。」
ドドドドドーーーーーと出て行く新婦。
「先生、やり過ぎだろう。」
「ブルーも追い込まれてるんだよー。」
「これは、遠野君にも責任の一端が在りそうですね。」
「へ?」
「兄さんの不始末は私達の不始末でもあります。」
「あは〜、秋葉様、重婚を認める法案を通す準備は万端ですよ〜。」
「秋葉様、電話一本を、GOです。」
「いや、何を?」
「士郎に負けられないよ!!!」
「「「「衛宮さん(様)に負けられません!!!」」」」
「ま、待ってくれ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
これより半年、世界を舞台にした追いかけっこが繰り広げられた。流石に出産時には解放してくれたようだ。そして、改めて結婚式が行われた。ちなみに二組。組み合わせは言うまでもない。
それから―
人々を助けるため、何の制約もなしに、魔術を使う男がいた。それゆえ、封印どころか抹消指定を受け、教会にも狙われる魔術使い。万の神剣・魔剣を行使し、剣の支配者たるその男は、「錬剣の魔術使い」と呼ばれた。
ちなみに、彼より恐れられた五人の奥様ズ(残り二人は戦闘向きではないので、子供達とお留守番)。彼と相対した者達は、「五、五色のあくまがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」とうなされたそうな。
HAPPY END?
あとがき:やっぱり最後まで強引!!!な福岡博多です。いや、僕、メイド二人も好きなんで。て言うか、慎二とゾウゲン以外皆好きじゃあああああああ!!!ま、士郎の相手は五人じゃ無理なんですよ、奥さん。志貴より健康体だし。で、士郎の世界行脚に五人は付いていくだろうけど、子供達の世話をするのに二人は適任だろうし、こんな形にしました。雷画と神父の設定、奥義テキトー。
それにしても、終わらすのも難しいもんですなあ。とにかく、この話はここまで。まあ、悪戯爺コンビの活躍?に立ち向かう士郎たちの明日はどっちでしょう。皆様の脳内で補完してください。僕、矢折れ楯尽きましたんで。今まで読んでくださった方、ありがとうございました。稚拙なものでありましたが、楽しんでいただければ幸いです。何か思い付いたら、また書きたいんで、そのときは、生暖かい応援よろしくお願いします。生SAYONARA。