聖杯戦争 もう一杯 まる4
―――――体は不幸で出来ている
血潮は悲劇で心は悲運
幾たびの日常を越えて見てるだけ
ただ一度のデートもなく、
ただ一度の進展もない。
彼の者は常に独り、裏路地で不幸に酔う。
それ故に、生涯にHイベントはなく。
その体は、きっと不幸で出来ていた――――。
「切なぁぁあああああああいいい!!!」
遠坂凛はこれまでにないほどの夢見の悪さだった。
「リン、起きたのですか」
「セイバー?あれ、私寝ちゃったの?」
目覚めると隣には衛宮士郎の元サーヴァント、セイバーがいる
「はい、あなたはバーサー・・もとい、さっちんを見た後、気を失ってしまいました」
「そうだった・・・前回のアーチャーよりも悲惨だわ・・」
思い出すとまた昏倒しそうになる・・。
大体、弓塚さつきってどこのどなた様よ、100%英霊とかじゃないでしょう、アレ。
「遠坂?起きたんならちょっと相談があるんだけどいいか?」
「・・・後にして・・」
究極に機嫌の悪い今の私に相談乗れなんて無理だと気付きなさい、士郎。
不機嫌な顔のまま居間に出る。
綺麗に片付けられた居間、多分士郎とバーサーカーが片付けたのだろう。
落ち着きがないようにキョロキョロとしている私のサーヴァント。
「お、おはよう御座います。マスター」
バーサーカーが挨拶してくる。
前回のムキムキマッチョさんが出てきても困るがこんな弱そうなサーヴァントが出てきても、困る。
というかアーチャーが出てくればなんの問題もなかったのに・・。
「おはよう、バーサーカー」
テーブルには朝ごはんが並んでいる。
私が起きるまで待っていてくれたのだろう。
「「「「いただきます」」」」
4人そろった所で御飯を食べ始める。
あんまり食欲ないんだけどなー。
「ってバーサーカーも御飯食べるんだ」
「やっぱり食べないよりは食べた方が、用意してくれたし」
「リン、サーヴァントとて御飯は必要です。特に朝食を食べないと力が出ません」
「それに御飯は皆で食べた方が楽しいしな」
会話もそこそこに食事は済んだ。
士郎の料理はやっぱり美味しい、私は朝弱いから作ってもらうと助かるわ。
「そうだ遠坂、相談あるんだよ」
「そういえば言ってたわね、なんだっけ?」
「俺とセイバーのサーヴァント呼び出すって言ってたけど、俺は魔力が少ないから呼んでも大した活躍できないと思うんだ」
「・・・そうね、魔力があってもサーヴァントが変なので役に立たなさそうな事だってあるしね」
皮肉と自嘲を込めて言う
しょぼーんとしているバーサーカー
「リン、さっちんは弱くはない」
それにセイバーが反論する。
「本気?あんなのが役に立つとは思えないんだけど」
「リンは昨日の掃除を見ていないからです、彼女はタンスを片手で持ち上げていました」
「・・・・・・マジ?」
「本当の事です。力だけならバーサーカーとして相応しい」
「・・・・・」
「信じられないならステータス見てみればいいじゃないか」
真名 弓塚さつき
マスター 遠坂凛
クラス バーサーカー
筋力 A
耐久 B
敏捷 B
魔力 C
運 −A
宝具 E
スキル
不幸 EX /めっちゃ不幸
気配遮断 A+ /ストーカーとして磨き上げられた技能
復元呪詛 B /傷がすぐ治ります、とても便利
吸血鬼 A /27祖候補です。晴れた日は日傘が必須
宝具
ナシ
「・・・・・微妙」
「そこまで卑下するほどではないと思いますが?」
「私あんまり特技無いから仕方ないよ・・」
ふふ、と哀しい笑みをこぼすさっちん。
「って!良く見れば吸血鬼じゃない!人間じゃないのになんで呼ばれてんのよ!」
「そうだよね私みたいな化け物なんてお呼びじゃないよね・・」
体中から不幸オーラを撒き散らすさっちん
「う、ご、ごめんなさい。今のは言い過ぎたわ。
それはそうと、なんで私に召還されたのかしら?なにも関係する様な物持ってないのに」
「遠坂と髪型が似てるからじゃないか?」
「あ、そういえばマスターと私の髪型って似てるね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ああ、もう駄目だワケ分かんない。
「士郎、相談する事があるんでしょう」
「そうだった。俺が呼び出しても魔力供給が少なくて役に立たなさそうだから、
セイバーだけが呼び出せばいいんじゃないかって聞きたかったんだ」
「もう好きにしなさい・・」
セイバーがなにやら難しい呪文を唱えている。
遠坂とは別の、自分の呪文を唱えているんだろう。
セイバーがマスターになるなんてなんだか変な感じだな。
あ、呪文が終わったみたいだ。
ドドーンと魔方陣を中心に衝撃が走る。
「我を呼び出したのは貴様か?」
・・・・・・・・・・・
セイバー、寄りによってなんてものを・・
「な!き、貴様ギルガメッシュ!?」
「ほう?我を知っているのか女」
そういえば聖杯戦争の記憶は残らないって誰かに聞いた気がする。
「・・・・」
「・・・・」
無言で睨み合うセイバーとギルガメッシュ
なんでサーヴァントなのにこんな反抗的なんだこいつは。
「ふむ」
なにやら納得顔の金ぴか
「我がお前に召還された理由が分かったぞ。 愛だ」
・・・・・・・・・
記憶はなくても中身は一緒なんだ。
「喜べ我と結婚させてやる」
「馬鹿なことを、私にはシロウがいます」
「我の物にしてやるといっているのだ有り難く思え」
「私に呼び出されたサーヴァントが何を言うか」
今にも戦いだしそうな雰囲気の二人
「セイバー、いざとなったら礼呪があるだろ。それで何とかしてくれ」
「は、そうでした!」
「いたのか雑種、今なら見逃してやるぞ。我と女はこれから忙しいのでな」
「さっさとどうにかしてくれ・・」
きつい頭痛に苛まれながら言う。
どうしてこんな変なのばっかり呼び出すんだろう・・
「シ、シロウ!何を命令すれば!?」
慌ててるセイバーって珍しいなー
「王である我に命令するなどとおこがましい事は止めるがいい」
じりじりとセイバーににじり寄るギルガメッシュ
「せ、正座しろギルガメッシュ!」
「「・・・・」」
セイバーが凄い事になってる
俺?現実逃避中です
「 正 座 を し ろ と 言 っ て い る !!」
礼呪が一つ消える
「リン!リン!大変です!ギルガメッシュがー!」
説明中
「はぁ!?ギルガメッシュを呼んだの!?」
慌てて地下室へと向かう遠坂とセイバー
やる気ない足取りで付いていく俺
なんとなく付いてくるバーサーカーことさっちん
「・・・・・」
ギルガメッシュが正座をしている
ビシっと背筋を伸ばしてで金ぴかの鎧を纏いながら
「うわぁ・・」
「シュールな光景ね・・」
「リン!どうしましょう!コレのマスターには絶対になりたくありません!」
「我をコレ呼ばわりとはいい度胸だな」
正座している所為で怖くもなんとも無いギルガメッシュ
「んー、どうしても嫌なら自害でも命令してみれば?」
「なっ・・!」
サラっと遠坂が酷い事を言った
流石に絶句する金ぴか
「・・・・・・いいかもしれません・・」
「え・・ちょっとそれは酷いんじゃないですか・・?」
一応、同じサーヴァントとして何か思うところでも有るのだろう
「あ、ちょっと待った。自害は最後の礼呪でもできるから、腹踊りしながら町を闊歩させるとかして遊んでからにしない?」
遠坂はやっぱりいじめっ子だった
もっと酷い事をサラリと言っている。
「ななななっ・・・!」
そんな事など想像さえ出来なかったのか金ぴか様は大層お怒りです
「それ、いいですねリン」
ニヤリとフルアーマーダブルセイバーになって笑う
セイバー・・セイバーだけは綺麗なままで居て欲しかったよ・・
心の中で呟く俺
「ちょ、ちょっと!いくらなんでも酷すぎますよ!」
バーサーカーことさっちんが赤いあくまとフルアーマーに立ち向かう
「さっちん、この男は前の聖杯戦争でも、その前の聖杯戦争でも私を付け回してくれました。
私に胃に穴が開きそうなほどのストレスを与えたのです。コレくらいの復讐は当然でしょう」
「当然ね。ストーカーなんて馬鹿げた事したのに
コレくらいの報いで済ませてやるなんて、むしろ寛大だと思うわ」
「その通りです。ストーカーなどと馬鹿げた行為をするからにはそれ相応の報いがあって当然です」
傲然とセイバーは言い放った。そこへ
「セイバーさんの馬鹿!」
バキャン!
バーサーカー、さっちん平手打ちが飛んだ。
セイバーはぐるんぐるんと回転し、そのまま壁にめり込む。
平手打ちか?アレ。
「な、なに・・を・・・」
「セイバーさん・・貴方がそんな人だとは思わなかった
愛の形は様々なの。例え付回したとしてもそれは愛から来た真の行動。
それに報復するなんて・・酷すぎるよ!!」
悲痛に叫ぶさっちん。
「雑種・・」
ギルガメッシュはちょっと感動しているらしい。目が潤んでいる。
「金ぴかさんへの命令を取り消してあげてセイバーさん」
「そういえばバーサーカーの技能の中にストーカーとか書いてあったわね・・」
ボソっと呟くリン。
そうかこの子は普通に見えたけどギルガメッシュと同類なのか・・・。
「さっちん、それだけではありません。
この男は付回すどころか私に襲い掛かって私は重症を負ったりもした」
「私だってそれ位したわ!遠野君が好きだったんだから!!」
「したのかよ!」
思わず突っ込む
誰とも知れない遠野君に同情してしまう俺。
「・・・もういいです・・。止めますからとりあえず壁から引っこ抜いてください」
この手の人種に話し合いは無駄だと解ったのかセイバーは妥協した
――――
続くはずです_| ̄|○