ハガネ3 (M:士郎・周りの女性 傾向:IF After Fate


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1: k (2004/03/27 19:25:15)[zanjin1 at hotmail.com]



Interlude 凛─

─またな。

 あのばか、いや、ばかは私か…。
階段を降りてる時、士郎の「またな。」が聞こえた。普通ならばドア一枚を隔ててそんな小さな呟きなど私の耳に届くはずも無いのだが。ここで私は一つ忘れてたことがあった。聴力増幅の魔術を切っていなかったのだ。
おかげでそんなわずかな呟きが私に届いてしまった。

「─そんなこと言われたら…。」

きっと今の私の両ほっぺたは、私の大好きな色になっているであろうことは予想がつくが、

「…ふん。」

自分ながら、なんて意地っ張りなものだろう?

───Interlude Out


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 HAGANE  閑話 "友達"前編
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 遠坂と別れた後、廊下を教室に歩いていく最中に一成と美綴にまた会った。

「衛宮、どこ行ってたのさ?」
「そうだ、席を外す時など、一声かけるのが礼儀だろう。」

 あの時は何であんなにも取り乱したのか自分でもわからない。…逆に今、何でこんなに落ち着いているのだろうか…?

「いや、悪い、突然気分が悪くなってさ」

 とりあえず無難に答えておく。まぁ、嘘でも無いか。

「ほぉ〜」
「なるほど、そうか」

 む?何だ?二人とも納得してない顔をしている。

「私ゃてっきり、可愛い子にどっかに呼び出されたのかと思ってたわよ。」
ニンマリとした表情を浮かべる弓道部元部長。
「衛宮はモテるからな。」
意味のわからないことを言いながら
コクコクと一休さんばりに肯いてる小坊主。

「何の話だよ?」

「クラスの者が噂しておったぞ衛宮。」

 ?

「体育館裏で桜に引き止められたあげくに、さらには大声で告白されて」
「その後すぐ遠坂 凛に屋上に呼び出されたのであろう?」

ボッ
 なぜだかわからないが一気に顔が赤くなってしまった気がする。

「そそそ、なななな─」

 ヤバイ、非常にヤバイ、舌が回らない。

「うむ、照れるな衛宮。ただ、友と思ってくれるならば、どちらを選んだのか教えてくれても良いと思うのだが?」
「クラスメートとしても是非教えてもらいたね。片や才色兼備、片や良妻賢母。お二方とも学園のアイドルときたもんだ」

 二人とも顔がニンマリしている。美綴はわかるが、一成のこんな顔など初めて見る。

「ななな、ちがっ─」

 ヤバイ、まだ舌が回らない。

「やっぱりあれかい?桜の年季勝ちかい?」
「遠坂 凛は信用ならぬ、やつの色気に血迷ってはいかんが、抗うのも難しかろう?」

 確かに二人とも…って何考えてんだ俺はぁ!!

「それとも…」
「外道の道に堕ちたのか衛宮?」
「私も二人ともっていうのはさすがに見損なうよ?」

 あぁぁああ、非常にヤバイ、っていうかヤバイ所じゃない、このままだとこれが噂になって広がってしまう!!ワラキアの夜の再来なのか?!って誰だよワラキアって!?
ヤバイどころかYABAI!!って英語にしただけじゃん!?

 もう頭が熱暴走中だ。

「おねえええちゃんもぉおおお、二人ともなんてぇえ認めませええええええん!!!!!」


 ここで虎が来た。さすがタイガー、野生の狩猟者。獲物を狩るタイミングを心得ている。



Down Memory 一成─

 俺が衛宮士郎と出合った場所はうちの寺、柳洞寺だ。確か中学の終わりの方だっただろうか?
 あの時の俺と今の俺の性格は、かなりかけ離れているだろうという自覚がある。
何をやってもイライライライラ。病的なまでに神経質だったものだ。
そして、普段からもガラガラだが、いつにも増して誰も来ない日の夕暮れ。境内を掃除している時に、宮士郎はブラリとやってきた。
 珍しい時間に来るもんだと思いながらも、掃除に意識を戻して
─思い直して一応挨拶をしておかねばと思い振り返ると、既に姿は影も形も無い。不思議な参仏客だと言う印象を受けた。


─そう、今でも衛宮は十分幼さの残る顔立ちだが、当時はもっと幼かった気がする。


 それからも、この不思議な参仏客は良く来たのだ。
"良く来た"どころでは無く、ほとんど毎日と言ってもいいのでは無かろうか。ただ、時間は決まって夕暮れ時だったが。
 夕暮れの時間にブラっとやってきて、ふと目を逸らすといなくなっている。化生(あやかし)の類かとも思えるくらいに不思議な存在。だからだろうか?俺が興味を持ったのは─


───Memory Out


Down Memory 綾子─


─私が衛宮士郎と出合ったのは高校で部活選びをしていた時だったろうか?

 私は元々最初から弓道部に入ろうとしていたわけじゃない。いや、そもそも入る"動機"も無く、やろうとする"意思"も無い。ようはアウトオブ眼中。
 それが今は弓道部で部長まで勤め上げたのだ。振り返ると不思議に思える。

 私が弓道部に入ろうと思い至るまでには、多少の紆余曲折があった。まぁ衛宮士郎というのがその中心で合ったのだろうが─

─入学当初、私は入る部活を決めかねていた。

「うーん、女バス(女子バスケット)部も中々いいわね。」
「綾子は何でもできるからなぁ。」
「体を動かすのは得意なのさ」
「いいなぁ、私なんて全然ダメだもん」

 何でもない話を友達とする。運動は小さい時から得意だ。いや、むしろワンパク坊主と良く間違われて私も変に思うが、ワンパク坊主になろうとしてたフシすらある…。
 部活見学をしている時に色んな所でつまみ食い、少しやらせてもらってみたが、どれも標準以上にできて周りを驚かせる。当然だが、色んな所からお声がかかってきた。自尊心がどんどんどんどんと満たされて行く。いい気持ちだ。

「あ、見て見て〜、あんな所に…弓道部?があるよ〜」

 そう言われ顔の向きを変えてそちらを見てみる。

「うわぁ、結構立派ねぇ〜」

 確かにまだ建物も新しく、かなり奥行きもあるようだし。
でも…

「人、少ないよ?」
「確かに少ないね〜、じゃあ入ってみようよ」

 なんで"じゃあ"なのかわからないが、少し興味も惹かれたので覗いてみようかな─


──そこが運命の分かれ道。ここでその友達が弓道場に気づかなかったら。ここで私が既  に入る部活を決めていたら。ここで…
  IFを一個でもリアルにしていたら、多分美綴綾子は弓道をしていない。
  ここで私は衛宮士郎に出会った。そして弓道を始めた。それがイマへの分岐点。

───Memory OUT


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