あの日見た色をまだ覚えてる
群青色と、水色と、紫色と、オレンジ色が混ざった空。
それに、赤い色と黒い色。
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HAGANE 第0話 "交差"
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Interlude ─凛
「あのばか、どこ行ったのよ…!」
士郎の髪の毛を目印に追いかけていたのだが見失ったらしい。
屋上と校舎裏も行ったし、そ、その、ちょっと恥ずかしかったけど男子トイレの前なんかも少しうろついてみた。
「ったく、まさか帰ったわけじゃないでしょうね?」
さすがにあいつの家まで追いかける気にはなれないわよ…。そんなことを考えながら卒業式の行われてる体育館に戻る廊下を歩く。
そこでふと、声が聞こえた。それも知ってる声が…二つ。
───…の……なん…わた……!!
かすかな声だが、これは桜、間桐 桜の声だろう。
─間桐 桜。私の血の繋がっている後輩。本当は遠坂 桜であったかもしれない存在。…単純に妹とは呼べないけど、でも私の妹。
───…だ…俺は…い…。
そして正に私の探してた人物、衛宮士郎の声も聞こえる。まさか体育館裏にいたとは、「灯台下暗し」ってやつね…。がっくり来るわ…。
二人には悪いが、魔術で耳を少し強化して聞き耳を立てる。
───…悪い…ど、東京に行くって決めたんだ。」
「どうしてですか!!?」
(くっ、桜声大きすぎよ。)
耳を強化せずとも聞き取れるほど大声で桜が叫ぶ。どうやら衛宮君が東京に行く行かないでもめているようだ。
彼のことだから藤村先生と桜にはきちんと話して納得させたわけでなく、行き当たりばったりで、卒業式当日なんかにバレてしまったのだろう。
「どうして!?先輩の行く大学って別に専科でもなくて、こっちにある大学にだって同じような学部はあるじゃないですか!!」
「それでも…」
「先輩、一年前から変です。今までよりもボーッとしてるし、まるで今までと斜め30度くらい性格が違うじゃないですか…!!!」
「そんなにボーッとしてるつもりも無いんだが…。」
「ボーッとしてます!!」
やはり桜も私と同じで、いえ、彼に親しい人はかなりが気づいているようだけど。衛宮士郎は一年前、正確に言うと聖杯戦争が終わってから、今までの衛宮士郎とは少しズレてる印象を持っているようね。
「ごめん、こんな大事なことを黙ってた俺が悪いのはわかってるよ。」
「だったら!悪いと思ってるならこっちの大学に!」
(桜も無茶を言うわね…。)
桜はヒートアップしすぎて回りが見えていないらしい。野次馬も数人だがいるし。廊下からチラチラと見られていることにも気づいてない。
「いや、学費も振り込んだし、今更受けられるとこなんて無いぞ…?」
珍しく衛宮君が正論を言っている。
「う、でも、でも…だったら一年留年すれば!!」
そこまで言うか。
「ゴメン、もう決めたんだ。」
「…こんなにお願いしてもダメなんですね…。」
桜が長い髪の毛を垂らして衛宮君をジーッと見つめている。あ、衛宮君の顔が引きつってるわ。
と、そこで桜が駆け出した。
ダッ!
「先輩なんて大好きです〜〜〜!!」
駆け出す方向は校門。それにしても、あれって告白なのかしら…?
「こ、告白されたのか…?」
鈍感な衛宮君も少しは考えるそぶりをしているようだが、なんとなくモヤモヤしたので、ここで声をかけることにする。
「あら、モテモテね。衛宮君」
───Interlude Out
桜が駆け出して行ってから、頭の回転が追いつかない。なぜ学校の話題から俺が好きなどという話になるのだろうか…?
そこで、俺が今逃げている張本人の声が聞こえた。
「あら、モテモテね。衛宮君」
「─遠坂…。」
聖杯戦争の戦友、完璧超人遠坂 凛。いや、逃げていたはずだろう俺?っていうかモテモテって…。
「衛宮士郎君。少し聞きたいことがあるのだけど。いいかしら?」
聖杯戦争は思い出したくない。でも、今の遠坂から逃げるのは無理そうだ。
「あぁ、屋上でいいか?」
「えぇ。…一緒に行くけどいいわね?」
逃げるつもりは無いのだが、まぁ俺が言っても信用はされないか。
「あぁ、行こう。」
屋上に場所を移した。さて、
準備。 防音、 領域 終 了
「――――Das Schliesen auf Gegend.Vogelkafig,Echo」
遠坂の魔術が発動する。
「まぁ、多分聞き耳立ててるやつもいないだろうけど、一応声が漏れないようにしたわ。
─で、聞きたいのは聖杯についてよ。」
遠坂と俺を含めて7人の参加者。それぞれが理由は異なれど聖杯を求めたはずだ。
でも俺はあの時、、、
「あぁ、多分想像は付いてると思うが、壊した。あれは聖杯なんてもんじゃない。全くの別物だったからな。」
「…そう。」
その言葉にはどんな感情がこもっているのだろう?
俺は彼女について詳しいことなんてわからない。でも、聖杯戦争に向けて色々準備をしていたのは知ってる。
また、遠坂ならば、その力を求めたわけでなく、もっと別の、何か理由があったはずなんだ。
「ま、あのエセ神父の手に渡るよりかは全然マシね。」
「言峰は─「いえ、言わなくてもわかってるわ。予想はついてる、勝者は常に一人だもの。」
彼女の書類上の養父について言おうとしたのだが途中で止められた。今度もまた彼女の胸にはどんな感情た飛来しているのだろう?いや、彼女は魔術師だ、それもこの歳にして一流の。既に自分の中での決着は付いているだろう。
俺みたいな、俺みたく─臆病者じゃない。
「ふう。これでケジメはついたわね。─やっぱり日本を離れる前に知れて良かった。」
そうか、やっぱり気になってたんだな。俺も逃げていたのがバカらしくなるくらいに落ち着いて…
─あれ?彼女は変なことを言わなかったか?
"──日本を離れる前に、、、"
「…って!!お前外国に行くのか!?」
「あぁ、あなたは知らなかったわね、ずっと私を避けていたから。」
うぐ、何となくバツが悪い。
「卒業したら、いえ、明日には倫敦へ飛ぶわ。一応聖杯戦争の勝者ってことになってるから時計塔にフリーパスで入れるようになってるの。」
勝者?
「あぁ、これもあなたは知らないわね。協会では生き残ってるのが私だけってなってる、イコール勝者ってことよ。あなたはイレギュラーであり、そして言峰も登録すると言いながら協会への報告はしてなかったようだもの。」
「なるほどな…。もう日本には帰ってこないのか?」
「そうね、勉強するとなると、至りたいもの。多分生きてるうちに会うことはもう無いでしょう。」
そこでチャイムが鳴る。卒業式が終わった。
「そろそろ帰るわ。これから荷物の整理もしないといけないし。」
「そうか…」
─なら俺に、聖杯戦争の協力関係にあった衛宮士郎に言えることなんて多くない。だから
「─元気でな。」
「あなたもね。」
─遠坂が屋上のドアを開けて
ガチャ
─蝶番の軋んだ音がする
きいぃ
─そしてドアを閉めて
バタン
─階段を降りる音が聞こえた
トン、トン、トン…
───それが、俺の人生の中でも最も印象に残るであろう少女、遠坂 凛との別れ。
…でもまた会える気がして
「またな。」
なんて呟いてしまった。
-----後書き-----
はい、これで卒業式が終わりました。
伏線張ってみたり…。
ポイント
・Fateで遠坂凛は死にかけで放置されてた。
・イリヤは郊外の城でメイド2匹と生活中。
・虎寅トラ
・桜が暴走気味。
・呪文に手を加えてみたり。
・ちょびちょび書いてます。
読んでくれてありがとうございます。
それと、感想とか書いてくださった皆様、とても嬉しかったです。
次回は多分冬木町との別れかなぁ。