「仁義なき裸足の衛宮士郎:妄想作戦」(


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1: YATU (2004/03/25 23:21:46)[thecountrylawyer at yahoo.co.jp]


(注:この作品はフィクションのフィクション、二次創作であり『激しく』原作とはかけ離れたガイキチワールドによって構成されています、あらかじめご了承ください)

 


 俺は何故か暗い部屋にいた。そこには一人の女が居る。
 藤ねえだった。
 なぜか黒い着物を着ていて、微妙にはだけた胸元にはサラシが巻かれている。腕組みをして背後には「ズゴゴゴ」という怪しげな効果音があった。

 初っ端から嫌な予感である。

 俺はとりあえず「どこ、ここ?」と聞こうとしたが口から出た言葉は

「姐さん、亀の野郎を殺ったりましたぜ!!次はどいつですかい!?」

 テンションハイの物騒極まりない言葉だった。なんでやねん、と関西弁で心の中で自らに突っ込みを入れる。俺の口は俺の意思とは無関係の言葉を紡いでいた。
 すると、藤ねえはまるで「極道の女」と書いて「ゴクツマ」と呼ばれる勇ましい女人のようなおごそかな口調で

「次は、あの神父や、あン男はな、自分が辛いもん食いたいゆうて、ウチのシマの中華料理店を買収したンや、タマとったりぃ!」

 ずびし!と効果音を立てながら、指先を俺に向けた。
 どんな状況だよ、と心の中で突っ込む俺の意識はよそに、俺は

「合点だ!」

 承知すると、俺の身体は部屋を飛び出した。藤ねえの家だった。ちょっとややこしめの人々が生活を営む場所でもある。
 いつの間に俺は構成員になったのだろうか、などという疑問が頭をかすめるものの、俺は夜の街に飛び出していて、なぜか都合よくいた神父と即座に出会い、次の瞬間、返り討ちにあっていた。というかこちらは何もしていないのに、問答無用で奴のラリアットが俺の首を捕らえている。
 豪腕が唸り、俺の体は空中で一回転半、某テキサス系プロレスラーに似た見事な一撃で、俺は背中をアスファルトに叩きつけられて、気絶した。
 消失する意識の中で、俺はどこかの誰かを呪うように呟いた。

 なんてイントロだ、と。


 俺は目を覚ます。何故か自宅の道場で寝ていたようだった。長時間固い床に転がっていたせいか、強張った体を起こして、立ち上がり軽く伸びをした。

「なんで俺、こんなところに?」

 ぐるりと周りを見渡す。昼の柔らかな光が窓から差し込んでいる。一片の曇りもない晴天が窓の向こうに見えた。

 しかし、違和感があった。

 道場にかけられた掛け軸が妙なことになっているのだ。いや、掛け軸自体は普通である。だが、そこに書かれた文句が

「天上天下唯我独尊」
「油断大敵」

 というある意味では水と油にも似たものなのだ。しかも「我」のルビが「オレ」になっていた。

「?」

 俺は首を傾げた。誰がこんなものを…と考えたところで外からざわめきが聞こえた。というか歓声と言ったほうがいいかもしれない。とりあえず声のする方に向かう。

 そこは居間だった。セイバーと藤ねえ、桜がいて、いつもの情景。
 のはずが居間にいるのは一人だけ、しかもいたのは異物だった。

「ギルガメッシュ……なぜここに?」

 金髪の男は答えずにテレビに釘付けになっている。競馬中継である。馬がゴールについて当確順位が電光掲示板に表示されるのを見て、ぱっと見た感じでは分からないが、わずかに全身をわななかせているギルガメッシュ。彼は目を輝かせながら、俺のほうへ振り返る。その表情は歓喜に彩られていた。

「……ふっ、誰かと思えば雑種か」
「いや、だからなんでここにお前がいるんだよ」
「テレビがある家は我の知っている限りここしかなかったのだ、感謝しろ、王たる我が使ってやっているのだからな!」
「えらそうな口で情けないことを言うなよ……で、なにしてたんだよ」
「見れば分かるだろう? 競馬だ、言峰に教えてもらった、おもしろいぞ」

 と言いながら、テーブルの上から備え付けの煎餅(無論、俺の家のものである)をつまんでかじる。もはやなにがなんやらだが、とりあえず聞いてみる。

「勝った?」

 すると、待ちかねたようにギルガメッシュは哄笑する。

「無論だ! 我を誰だと思ってる! 我こそは」
「あ〜、はいはい、分かったから、いくら勝ったんだよ」
「この時代、この国の通貨で1000万だ!」
「……おお!! それは凄いぞ、ギルガメッシュ、さすが黄金律を持つ男!」
「ふふふ、当然のことだ! 見よ、この馬券を!」

 と彼は一枚の紙切れをぴっと俺の前に差し出した。どうやら件の馬券のようである。それが出るところに出れば、1000万の価値を放つと考えるだけである意味での畏怖のようなものがこみあげてくる。
 そして、再度哄笑するギルガメッシュ、俺もなんだか嬉しくなってきてしまう。手にとってまじまじと見つめる。「第9レース 2−7 100000円」これが当たったらしい。俗に言う万馬券と言うやつだ。それに気づくとなぜだか馬券は重たくなって持っているだけで微妙に手足に震えがくる。
 ギルガメッシュの哄笑が続く中、ふっとテレビの音が耳に届く。どうやら、先ほど行なわれたレースのリプレイのようだ。まじまじと見つめた。

「さあ、第九レース、最終コーナーを回って先に抜け出したのは2番のゴールデンリッチ、続けて7番。17番、6番……」

 そして、ゴールした馬を見た瞬間、俺ははたりと馬券を落とした。手の震えは止まらず、全身が震え始めている。ちなみにギルガメッシュはまだ高笑いしている。

「なあ、ギルガメッシュ」
「ふはは……ん? なんだ、雑種、せっかくの気分を」
「お前の購入した馬券はなんだ?」
「決まっているだろう、それ、今電光掲示板に写っているではないか、2−17、2番ゴールデンリッチ、17番キングオブソード 俺が買うにぴったりの名だと思ってな」

 俺は馬券を拾い、ぴっとギルガメッシュに見えるように向けた。

「2−7 10000円」

「……」
「……」
_| ̄|○

 途端、がっくりとうなだれてギルガメッシュ。

「油断した……」
「またですか、もはや一種のスキルだな」

 俺のツッコみが悲しく響く薄ら寒い居間。そんなアンニュイな午後だった。

――続く!?


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