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HAGANE 第0話 "彼"
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聖杯戦争と、そしてセイバーとの別れから、既に1年とちょっと経った。
俺、衛宮士郎は大学へと進路を決定した。成績は可もなく不可も無く、いやどちらかというと僅かながら良かったのと。一成に良く学校の備品を直してくれと頼まれ、断りもせず直してたおかげで、教師方の覚えが良かったので大学へは推薦で入れた。
他の受験生には悪いが、早々と10月頃には結果が出て、最近の受験戦争なる聖杯戦争に劣らぬ戦争へは参加せずに済んで、ホッとしている。
本来、俺は高校卒業と同時に働こうと進路を考えていたのだが、冬木町の寅さんこと藤ねぇに
「お金だったら心配しなくていいから、大学に行きなさい!
今の時代、大学も出て無いんじゃ見くびられるわよ!」
などと、将来はスパルタママになるだろうなぁ的なセリフを言われ、大学進学へと進路を変更したのである。
昔の、いや、聖杯戦争前の俺であったら、こんなことを言われても、既に自分で決めたことを曲げようとはしなかっただろう。
だが、聖杯戦争が終わってから、俺はみんなに言わせると「柔らかくなった」とのこと。違うんだけどなぁ…。
大学へ入るという風に進路を変えたのは、別に藤ねぇに説得されたという理由だけでは無くて
あの日
聖杯戦争の終わった日
セイバーと別れた後
衛宮士郎は魔術師を辞めた。
衛宮士郎は特異であることをやめた。
衛宮士郎は正義の味方になりたいと言う情熱も失った。
ただ普通であることを望んでいる。衛宮士郎という、ただの「人」になろうと考えているからだ。
なぜこう考えてしまったのかはわからない。あの日、どこかが壊れ/凍っ/割れてしまったのだろうか…。
だから今の衛宮士郎は、"世界"に足を片っぽつっこんでしまった、ただの半端な「人」だ。
聖杯戦争の時の協力者、遠坂とは元の関係、学園のアイドルとその同級生の関係に戻っている。話しかけたことは無いし、あちらからもしてこない。時々視線を感じるが、俺から話しかけるキッカケを作る気にはならない。
正直に言おう。俺は聖杯戦争を思い出したくは無い。思い出させる物すべてを遠ざけたい。
セイバーのことすら思い出したくない!!
自分がこんなに弱かったなんて知らなかった。
夜、枕を涙で濡らすことも良くある。
一晩眠れないことだって良くある。
冷静に見えても内側ではヒステリックな時だってある。
俺はただの人間になってしまった!
弱くなってしまったんだ!!
もうすぐ卒業。
冬が終わり、また別の春が訪れる季節。
俺は冬木町を出て、東京の大学に進学することになっている。
Ps.藤ねぇって気づいて無いっぽいな…俺が東京行くの。
-----言い訳風後書き-----
いや、すいませんm(__;)m
ふと心に浮かんだ妄想です。
この物語では、本編の士郎よりも心が弱い士郎だったらという
Afterではなくて、もしかしたらIFな物語。
魔術師でも、魔術使いでも無い普通の一般人になろうとする士郎。
セイバーを失って、心の弱い士郎。
でも、彼の能力は決して彼から離れることは無くて
特異な物は特異な者を呼び寄せる、みたいな感じで書いていきたいと思っています。
主に心理描写と、普段の生活にスポットを当てていきたいですが
なんせ初めて書くもんで勝手がわかんないです。
意見、感想、希望などがあったらどうぞ言ってください(o*。_。)oペコッ