「では行きましょうか、シロウ」
「ああ。よいしょ、っと…」
最近俺はよくセイバーと買い物に行く。
なぜかって? それは以前セイバーにせがまれて一度買い物に連れていったら、商店街の人たちに「セイバーちゃんはどうしたんだい?」だの「あら、今日は一人なのねぇ」だの言われるようになってしまったからだ。
桜のときはこんなこと無かったのに…
で、商店街に着き、八百屋に向かったのだが―――
「おっちゃん、いつもの」
「はいよ、無農薬ニラね。しかしランサー君もよく来るねぇ」
「そりゃしょうがねえよ。ここの野菜食ったらスーパーのなんて食えたもんじゃねえ」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか。うちに野菜卸してくれてるいとこも報われるってもんだ。ほら、ちょっとオマケしといたよ」
「へへっ、そいつはありがてえ。サンキュー、おっちゃん!」
ランサーがいたよ、オイ。しかも常連っぽいし。
「ん? よお、坊主」
「あ、ああ…」
「シロウ、そうではないでしょう!」
身構えるセイバー。
「ハッ! そうだった! ランサー、お前いったい何を…」
「夕飯の材料を買いに来たんだが」
「そうか。俺たちもだ」
「お互い大変だな」
「シロウ!」
「まあまあ、そういきりたつなよ。それともこんなところで戦うつもりか?」
「…戦闘狂のあなたの言うこととは思えませんね」
「いや、生前から料理は好きでな。今はこの時代の料理を勉強中だ」
「しかしサーヴァントが買い物とは…」
「実際お前も坊主と来てるじゃねえか。それに… お、来たぞ」
ランサーの視線を追う。そこには―――
「……む?」
アーチャーが居やがりました。
「お前もかよ!!」
「仕方なかろう。凛に家事全般を任されているのだ。もし逆らおうものなら…」
急にその場でうずくまってガタガタ震え出すアーチャー。
……遠坂、お前はいったい何をしたんだ?
「そうだ、今からお前の家行って夕飯作ってやろうか?」
こいつアーチャーを完璧にスルーしやがった。
「え、いいのか? でも…」
「かまわねえよ。野郎は俺が帰ってこなきゃ出前でもとるだろ」
「それじゃあ、お言葉に甘えようかな」
ランサーが作りに来てくれるんなら食費が浮くし。
「シロウ! 自ら敵サーヴァントを招きいれるなど、正気の沙汰ではない!!」
「ランサーって器用そうだよな。きっと料理も上手いんじゃないか?」
「さあ、そうと決まれば早く家へ戻りましょう。行きますよ、シロウ、ランサー」
その変わり身の速さが素敵だよセイバー。
そして俺たちは家へ向かった。
アーチャーはまだ震えていたが関わるのはよそう。
きっと時間が癒やしてくれるさ!
ランサーは中華を作ってくれた。
じつに素晴らしい出来だった。
ただ一品を除いて。
俺は何故あんなものを口にしてしまったのだろう…
「か、辛、いや、痛いですシロウ―――!!」
「…オヤジ、俺は正義の味方になれなかったよ―――」
「お、おい、どうした!! 大丈夫か、お前ら!?」
やはり敵サーヴァントを招きいれたのは失敗だったみたいです。
人はマーボーで逝ける…
その頃、冬木市郊外の森にある城ではこんな会話がなされていた。
「ああ、あれはおいしかったな〜 …そうだ、バーサーカー、ちょっと買い物に行ってき
てちょうだい」
「■■■■?」
「タイヤキっていってね、こんな形してて、あんこが入ってるのよ」
「■■■■!!」
「はい、五百円。セラとリズに見つからないようにね。いってらっしゃ〜い!」
……タイヤキ屋ピンチ!!
Fin
『ランサーが書きたい!』
この想いだけで書いたらこんなんできました(笑
例のごとく勢いだけで書いてます。
それでは、読んでいただきありがとうございました。