遠坂凛Side
「ん………」
体が重い。
て言うか苦しい、寝返りをうとうとしたけど動けない。
苦しい、ホント苦しい、どうなってんだ。
「む―――」
眼を開けてみると真っ暗で。
私の顔はなんだかやわらかいものに包まれていた。
凛と剣と永久の旅人・その2
なんだこれは。
私の頭がやわらかいもので包まれている。
というか、後ろから押さえつけられているような―――
「ん―――」
とにかく、このままでは窒息しそうなので脱出を試みる。
「ん、ん、ん……」
足を使ってズリズリと進む。
人の顔発見。
……………なんで?
寝起きで回転数の著しく低下した頭で考える。
機能の記憶は――――
サーヴァント召喚 → 初歩的なミス → セーラー服 → 居間 → 作戦会議
この後は………ああそうだ、居間で寝ちゃったんだ、そこから導き出される今の状況は―――
急に眠気が襲ってきた → 睡眠薬を盛られた
ベッドの中で抱きしめられている → 情事の後
「……………なんでやねん」
寝起きの私は思考パターンがすごいことになるようだ。
今想像したことはありえないだろうけど、なぜ葉月は私を抱きしめて眠っているんだろうか。
さっきのやわらかいものは葉月の胸だったようだ、今それは私の胸に押し付けられていて、圧倒的質量が感じられる。
目線を下ろして確認。
「……………」
……でかい、桜よりでかいなこれは。
セーラー服の襟元から谷間が見える。
「――――む」
一緒に私の胸も眼に入るが、谷間とは程遠く、葉月の胸を押し付けられても、ほとんど形を変えていないのだった。
ちなみに葉月の胸は、私が少しでも動くと、ふにゃんふにゃんと形を変え、私の胸に大変よい感触を伝えてくる。
「――――――――――」
ふにゃんふにゃん
「……ん……」
ふにゃんふにゃん
「…あ……ん…」
「―――――――はっ」
しまった、葉月の胸の感触を存分に味わってしまった。
見ると葉月は心なしか顔を紅潮させていた、ちょっと息も荒かったりする。
「――――!」
ヤバイヤバイヤバイ、葉月、それはやばいって、私にはそっちの趣味はないはずなのに、理性を抑えないと思わずそのふくよか過ぎる胸を――(自主規制)――したくなってしまうじゃない――――
クールダウンクールダウン、落ち着け遠坂凛、あっちは女、私も女、この状況は性的興奮を覚える状況ではない。
OK、OK、そう、私はノーマルだ、こんなことで性的興奮は覚えない。
――――そう、だからこれは目覚めのスキンシップだ、女同士なのだからいくら触っても問題ない。
「……………」
なんかおかしい、さっきから悪魔がささやいてる気がする。
――――まぁその辺は悪魔のせいにして、私はセーラー服の襟元から見える葉月の胸の谷間に直接手を――――
って、なにやってんだ、私――――直接触ったらすっごい気持ちよさそうだとかそんなことを―――考えてない考えてない…………
「……お姉ちゃん…」
「――――!」
葉月はそうつぶやくと、閉じられている目蓋から涙を一筋流した。
それで私の葉月に対するさっきのもやもやした気持ちは一瞬で吹き飛んだ。
「おね…ちゃん……お姉ちゃん…」
葉月はその言葉を繰り返していた、まるでそれ以外の言葉を知らないかのように。
私を抱きしめる腕に力が入り、葉月は眉を寄せ、静かに涙を流し続けた。
「……まったく、起きるに起きれないじゃないの……」
窓から外を見てみるとすでに昼のようだ、今から学校に行く気にはなれない。
……まぁ、しばらく葉月のお姉ちゃんになってやるのも悪くない。
「……桜には、こんなことしてあげられなかったわね……」
養子に出された自分の妹を思い浮かべながら苦笑して、私は葉月の背中に手を回し、しっかりと抱きしめた。
「…お姉ちゃん…お姉ちゃん…」
抱きしめてやると、葉月の表情は緩み、微笑みながらも、流れる涙の量は増えていった。
「まったく、どんな夢見てんだか」
葉月は、抱きしめる私の腕を姉の腕と思っているのだろう、今は頬に涙の後を残し、微笑みながら静かに眠っている。
わたしが離れようとすると、とたんに不安な表情になり、涙をこぼすので動けない。
そんな葉月の頭をなでながら考える。
葉月の姉はその腕を放すだけで二度と会えないのかと。
「……………」
……それにしてもいつまで寝てるんだろう。
時計を見ると三時ごろだった、おなかすいたし、聖杯戦争の準備もしなくちゃいけない、そろそろ起きるべきだ。
「私はそう思い、抱きしめている巨大な妹(仮)を起こす決心をする」
葉月の肩をつかみ、揺さぶる。
「葉月、起きて」
「…う……ん…」
服が乱れているせいで、葉月の動作はいちいち艶っぽい、今この場面を誰かに見られたら絶対誤解されるだろう。
と、しばらく揺すっていた葉月が薄目を開けていた。
「あ、葉月起きた?寝すぎよあなた」
「……………」
「ほら、ちゃんと起きなさいってば」
「――――初美」
「え―――――」
葉月が何かをつぶやいたと思ったら、私は葉月にのしかかられ――――
葉月と唇を重ねていた。
あとがき
まず前回のお詫びから、前回に『もともとボクがいた世界なら何億年たっただろうか』と書いてますが、何百年の間違いです、ごめんなさい、結構見直したつもりだったんですがこんなデカイ間違いが残っていようとは、今回からさらに見直すことにします、それはもう上から下まで嘗め回すかのように。
と、言うよりいきなり億単位の間違いかよ、スケールでけぇな自分。
今回はちょっと短いですね、まぁ前回が長すぎたということで。
初美は例の彼と一緒にいるので葉月は帰るに帰れないんですね、嫉妬に狂って自分でも何するかわからないから(勝手な解釈です)。
んで、寝ぼけてるときは、女の人がすべて初美に見えてしまう、と。
設定無茶苦茶ですね、凛が壊れてるし、むぅ、シリアスはどこ行ったのだ、ほのぼのギャグじゃないか、これ。
全然進んでないな、脇道それすぎ、聖杯戦争が始まるまでどれぐらいかかるやら。
次回予告『〜凛と葉月の危険な密室、乱れたセーラー服の誘惑〜』(大嘘)
……このSS読んでくれる人いるのかなぁ。