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――運命の輪―― 最終話 ”epilogue.”
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聖杯戦争から半年。
俺こと衛宮士郎は、片腕となって病院で入院していた。
ちなみにこの病院は、当たり前だが協会関係の経営しているものである。
俺の病室は面会謝絶。
遠坂と桜、セイバーとライダーしか入れないようになっている。
何故入院しているかというと、実のところ俺にも解っていない。
遠坂が言うには、
「いきなり片腕になってたら周りの人が不信に思うから、良い義手が手に入るまで入院してなさい」
と、いう事らしい。
今、遠坂が大師父という人と共に、目下探索中だ。
後は、他の皆の事なんだが、
先ずは遠坂。
協会の方で裁判が行われたらしいのだが、これも大師父とかいう人が無罪放免にしてくれたらしい。
たしか魔法使いだとも聞いたし、何者だよ、大師父とかいう人。
遠坂は最近、倫敦から日本に戻ってきて俺の義手の調整、及び調査をしているらしい。
桜は間桐の屋敷を売り払い、家の屋敷に住んでいる。
その際に手に入った莫大な財産を、偶に遠坂が借りているようだ。
俺の義手も、その金で買うらしい。
……桜が、桜がブルジョワジーに。
冗談はさて置き、桜はアンリマユと繋がっていた後遺症であっち側との接続がまだ生きている。
膨大な量の魔力が桜の体に溜まっているので、定期的に吐き出さないと桜の体が持たない。
まあ、ライダーを現界させているから、それなりには減るんだけど。
余った分が勿体無いということで俺の方に供給してもらっている。
次にセイバーとライダーのサーヴァント二人組み。
ライダーは桜が現界させ、セイバーは遠坂が現界させている。
セイバーは遠坂が勿体無いと留まらせるが、如何せん魔力が足りない。
その助力を俺がしている。手っ取り早い魔力供給をしているのだ。
その辺は察してくれ。人とは想像力が豊かな生物だから大丈夫だ。
大体は、
――桜から供給してもらった魔力を、今度はセイバーや遠坂に分け与える。
こんな感じ。
最後にイリヤのことなのだが。
はっきり言うと行方不明。
聖杯戦争の後、錬成されたロンギヌスを持っていなくなったのだ。
遠坂が言うには、ロンギヌスを売り払って金を手に入れるつもりらしい。
……違うと思うが。
まあ、イリヤも目下探索中である。
まあ、他の皆はそんな感じなのだが、俺は病院の個室で、暇を持て余していたりする。
片腕が無くなってからは、そう不自由な生活を送っているわけではない。
学校や藤ねえたちには、俺は海外に行って暫らくホームステイをしていることになっている。
だから入院している間に、スパルタなラテン語、イタリア語、ドイツ語等の講習を受けていたのである。
大体の読み書き、及び日常会話程度なら出来るようになった。
これも、俺の血と汗と涙の結晶だな。
それで、今日の講習も終わり暇なわけだ。
窓から、空を仰ぐ。
――逆行は止まった。
原因となる大聖杯が壊れたからだろう。
俺は、聖杯戦争の期間以外の日常を今過ごしている。
この日常は、今までで最悪の。そして、最高の日常だ。
欠けた者もいる。犠牲になった者もいる。
しかし、俺にとっての大切な人は誰一人として欠けてはいない。
今の俺にはそれで十分。
この後の日常がどんなものかは、解らない。
聖杯戦争のような戦いの中か。
今のような平凡な日常の中か。
それでも、これからの未来には何かしらの幸福が待っている。
そう、信じていよう。
……そういえば、
「桜と約束した花見を、まだしていなかったな」
今の季節は夏。既に過ぎてしまった春の行事を思い出した。
病院の窓から見える、春にはピンクに染まる桜並木を見る。
青々とした葉が茂り、太陽の日差しを浴びて緑が映える。
――まあ、季節は巡る。そして、また春になってから、すればいいか。
春が来て夏になり、夏が来て秋になり、秋が来て冬になり、冬が来てまた春になる。
それはまるで螺旋。運命の輪のような回り続ける輪廻の輪。
正しい位置に戻った歯車が、もう狂わないように願う。
近くに置いてあったCDプレイヤーに、一枚のCDを入れる。
病院の雰囲気に合った、緩やかなメロディに病室が包まれる。
コンコン
ノックの音がする。
立ち上がる。
さて、今日のお見舞いは一体誰が来たのだろうか。
「開いてるよ」
扉から入ってきたのは――
『
日の光に照らされる病院の一室。
――One room of hospital compared with light on day.
一番奥の個室で、小さなメロディが奏でられる。
――Small melodies are played most in the private room in the interior.
まるで誰かのささやかな幸せを祝うかのように。
――Like celebrating someone's small happiness.
まるで一つの物語の終わりを告げるように、そして、新しい物語の始まりを紡ぐかのように。
――Like spinning the start of a new story like reporting the end of one story.
流れるように染み込むように、白い室内に響き渡り続けた。
――It sounded indoors white as soaked as flowing and it kept extending.
真っ白な部屋の色を、他の色に染め上げるかの如く。
――Is the color of a pure-white room ..other color.. dyed up? 』
―― FIN ――
副題の意味は『結末』です。(たぶん)
あとがき
投稿停滞の後は、いきなり完結かよ!!
といった突っ込みは、受け付けておりませんのであしからず。
完結してしまいました。
今まで、どうもパソコンの調子が悪く、投稿しようとするとエラーが発生してました。
それで、この間良く解らないのを試験的に投稿したところ、やっとのことで成功いたしましてですね。
その後、今まで書き溜めていた分を投稿しようと思ったのですが、如何せん量が多い。
もうすぐ完結しそうだったので丁度いいと、全部終わってから一括投稿しました。
よくある逆行ものの中でも、特に駄作の部分に入るであろうSSですが、自分では満足だと思っています。
ご愛読してくださった皆様、どうもありがとうございます。
追記
意味深な終わり方をした通り、続編でも書いてみようかな〜と思っています。
外伝風なその後の短編とか、続きものの長編とか。
希望があれば、感想掲示板に書いておいてください。
出来うる限り、頑張ってみます。
(もうこんな駄文読みたくもねえ!、という人がいれば止めておきますが)
あと、一つだけ言いたいことがあるので、ここに挙げときます。
・ロンギヌス、及びタスラムについて
このネタは書き始めの頃にすでに決まっていたもので、温存しておいたものです。
他のSSで既に使用されているのを発見したのですが、他にネタが浮かばない。
失礼とは思いながらも、このままで投稿させていただきました。
ご不満が有るようでしたら、精一杯の謝罪を致します(金銭関係以外で出来うる限り)