我がマスターの為に (M:バーサーカー 傾:シリアス)


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1: 麻貴 (2004/03/19 15:11:23)

Fate本編や設定と違う箇所が多々ありますが、お許し下さい。





















 此処は山奥にあるアインツベルンの城。
 今まさに失われようとする命が二つ。
 一人は雪のように白い銀の髪をした少女。
 一人は命を呈し少女を護った鋼の巨人。
 巨人は既に動かないはずの四肢に力をいれ、契約を果たさんとする。
 





           < 我がマスターの為に >





 私の名前はヘラクレス……サーヴァントとして呼び出された、クラスはバーサーカー。
 元来バーサーカーのクラスは特性上自我を持たない。自我を失くし、狂う事で、戦闘に おいては最強を誇るクラス。
 並の魔術師はバーサーカーを召還した瞬間に令呪の契約を強制的に解除される事もある という、それは感情を封じ、破壊のみを成す
 力の強大さを物語っている。
 しかし、今回のマスターは違った……外見は幼いがその人にあるまじき魔力を以って私 を現界させ、制御していた。
 その身は人形……聖杯を宿すだけの為に作られた人形……少女は自分の事をそう称し、 嘲笑っていた。
 少女のマスターとしての最初の命令は“何があっても自分を護れ”というものだった。
 そこに少女の意思はなく、ただアインツベルンの者達によって言わされた命令……。

 アインツベルンの者達は、毎日マスターと私を様々な場所に放置した。
 時には一面が毒の花畑、時には仮初めの命を与えられた人形達の中へ……私はマスター を護る為に目の前の障害を、潰し、破壊し、消し 去った。
 私が指を動かすだけでマスターは痛みで悲鳴を上げた。私が少し動くだけでも、膨大な 魔力が使われる。
 私はマスターの命を護る為、そして痛みを少しでも早く和らげる為に素早く敵を殲滅せ んと戦った。

 マスターは生きようとする事をしなかった……それは魔力が消費される度に起こる想像 を絶する痛みから逃れる為に死のうと考えたのか
 ただ目の前の事を素直に受け止めようとしたのか、あの時少女の心は“死”んでいた。

 聖杯戦争が始まる少し前、彼らは私達を雪山へと放置した。
 周りには、狼の群れがいた……いつもなら咆哮を上げ、殲滅をするところだが
 今回はそれが出来なかった。
 マスターが弱りきっており、これ以上魔力が失われればどうなるか分からなかったの  だ。
 いかに感情を封じようと、根本に存在する理性までは封ずることは出来ない……マスタ ーとサーヴァントという関係だからではなく、
 また命令されたからでもなく、私は自分自身がこの少女を護りたいと思ったから護って きた。
 しかし今度ばかりは敵を倒すことが出来なかった……自分が消えるのを恐れたわけでは ない。
 ただ背中にいる小さな少女が死ぬのを見ることを恐れていた。

 久しぶりの獲物なのか、奴らは一斉に向かってきた……私は最小の動きでマスターを庇 い、奴らの攻撃を一身に受けた。
 爪で腕を引っ掻かれ、牙で首を咬まれたが、マスターが今まで感じていた痛みに比べれ ば何でも無かった。
 更に私はヘラクレス、その宝具は十二の試練を乗り越えたこの身体……十二回の死を迎 えねば私は死なない。
 皮膚が裂け、血が吹き出る。その様子を見ていたマスターが叫ぶ。
「―――――――――!!」
 何と叫んでいたのかは覚えていない、しかし彼女が初めて“生きたい”と願う気持ちは 伝わった――――
「うおおおおぉぉぉぉぉぉ――――――!!!」
 咆哮を放ち、手にした斧剣で“敵”を討ち滅ぼした。

 戦いを終えると、マスターは私の手を握り、初めて私に向かって―――
「バーサーカーは強いね」
 “人の言葉”を発してくれた。
 その身は私が倒した敵の返り血で赤く染まり、弱りきった身体は存在すら希薄……しか し私を見上げたその顔は―――
 雪の様に白く、綺麗な笑顔……私の力を信じ、決して疑わない信頼の笑顔がそこにあっ た――。
 ならば私もその信頼に応えよう……マスターの前に立ちはだかる敵は全て私が排除する。
 マスターが死ぬ時は私が敗北を喫した時だけだ……私が死するその時まで、この身の全 てを使ってマスターを護り抜く。
 私は腕の中で眠るマスターを起こさないように、小さな声で

 ―この身が―

「我の名はヘラクレス、ギリシャ神話において最強の神」

 ―呼び出されてから―

「我の宝具はゴッドハンド……神々の十二の試練を乗り越えたこの身体」

 ―ただの一度も―

「勝利を手にするその時まで、この身と力をもってお前を護ろう」

 ―なされなかった―

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、今契約は完了した」

 ―名を名乗ると言う契約を終えた―



 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 それは夢だった……私が召還されてから、マスターのパートナーになるまでの夢。
 何故サーヴァントの身で夢を見たのか……何故あの時の夢なのか……私はほとんど動か ない首を少し上げて、目の前の“モノ”を見た。
 私の目の前には金の髪と紅の眼を持つ男……ああ、そうか……私はこの男との戦いで敗 れたのだ、だとしたらあの夢は死ぬ前の走馬灯の ようなものなのだろう。
 この身に宿る十二の命も尽きた……あとはただ消えゆくのみ……。
 未練はない……この身は元より作られた器……器の中身が流れ、無くなる……ただそれ だけの事。
 気掛かりなのは、私というモノがなくなり、果たしてマスターは大丈夫なのか……目の 前の男が何かを見ている。
 その視線の先は……我がマスター、イリヤスフィール。
 マスターは泣きそうな顔で私に走り寄る……逃げろ、と言ったが声にならない。
 男がマスターの目を潰す……瞬間怒りが湧いたが身体が思うように動かない。
 目を潰されながらもマスターは私を探す……私を見つけると安堵の表情を浮かべる。
「―――――――――」
 何かを言っているが、既に何も聞こえない。
 薄れゆく意識の中、最後になるであろう自分のマスターの顔を見る。
 その表情は安らかで、何一つ疑いの無い顔だった。
 彼女は信じていた、いや今も信じているだろう……“自分のバーサーカーは最強”だ  と。
 ならば私はその信頼に応える……意識が途切れるその瞬間まで、私は彼女を護る。
 
 その小さな身体の全てを私に委ね、安心したかのように眠る彼女に改めて誓う。

  ―私を―
 
「我が名はヘラクレス、ギリシャ神話における最強の神」

 ―最後まで―
 
「我が宝具は既に無く、あるのはこの身体ただ一つ」

 ―信頼してくれた―

「私が死するその時まで、例えこの身が動かずとも、お前を護ろう」

 ―小さなマスターの為に―

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、今再び契約は完了した」

 ――最強である証明をしよう――




 終わり



 後書き
 初めまして、今回初投稿しました麻貴といいます。
 最初に書きましたが、今回のSSの内容はFate本編や設定と違うところがいくつかありま すが、ご了承下さい。
 また書き終えて気付いたのですが、今回のSSと、とあるサイトに掲載されているSSの
 内容がいくつか似ている部分があるみたいです。(気のせいかもしれませんが)
 言い訳に聞こえるかもしれませんが決してパクッたのではありません。

 最後に私のような素人の拙い作品を読んでいただきありがとうございます。
 感想などを頂ければそれを励みにまた投稿しようと思います。


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